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シナリオ詳細

<Liar Break>反撃のゴリライダー使い

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 勇敢な男たちがマスケット銃を構えたときには、標的はもう目前まで迫っていた。
「っ! こいつ、速す――」
 発砲寸前で銃をもぎ取られた青年の悲鳴にも似た叫びは、毛むくじゃらの怪腕に殴られたことで途絶えた。家屋の外壁に叩きつけられ、血の跡を引きながら青年が崩れ落ちる。
「よくも!」
 若い仲間の無惨な姿に激昂し、壮年の男性が銃口を敵に向けた。乾いた銃声が響く。だが胸から血を噴きこぼしたのは壮年の方だ。
「バ、バケモノめ……」
 壮年が倒れる。奪い取ったばかりの銃で壮年を射殺したのは黒い毛むくじゃらの獣――ゴリラだ。だが下半身はゴリラのそれではなく、逞しい駿馬のものであった。
「……ここも長く持ちそうにねぇな」
 ゴリラと馬を合成したようなモンスター、それが二頭も町を闊歩しているのを窓から覗き見て、酒場の店主は歯噛みした。モンスターどもが家屋へ強引に侵入しては、そこから悲鳴が響き渡っている。ここへやってくるのも時間の問題だ。
「お前ら! 今すぐ裏から逃げろ!」
 酒場に立て籠もる三十人ほどの老若男女に、店主は大声で指示した。
 モンスターは二頭とも、まだ斜向かいの家の中だ。逃げるなら今しかない。現状に悲観したのかうずくまってしまっている若い男の肩に手を置く。
「しっかりしやがれ! まずは女子供を――」
「ウアアア!」
 店主のこめかみを鈍痛が襲った。若い男が奇声をあげるや、立ち上がりざまに手にしたピストルで店主を殴ったのだ。豹変したように奇声をあげる若い男をすぐさま周りの者が取り押さえる。
 だが異変はこれだけではなかった。少し離れた場所にいる女性が突然、隣の女性に殴りかかったのだ。さらにそれに触発されたかのように別の場所でも殴り合いが始まる。
「やめろお前ら……そんな場合じゃ……」
 極限状況におけるパニックか? いや違う。そんな生易しいものじゃない。
 これは……

「む~ぅ。全員で殺し合うのを期待していたのだがぬぇ~」
 酒場の阿鼻叫喚をつまらなそうに観察しながら、シルク・ド・マントゥールの獣使い(ビーストテイマー)エヌエは酒瓶を呷った。最近は暑くて喉がよく渇く。
「これもあの連中のせいだぬぇ。なにが『絆の手紙作戦』だ、よけいなマネを~……ぬ?」
 ここにはいない憎きギルドを脳内で八つ裂きにしていたエヌエだが、そこでふと、町の外へと走る人影を見出した。
「惜しかったぬぇ。我々が幻想領から脱出するまで、猛獣といっしょに踊ってもらわないとぬぇ~」
 にんまりと嗤って、エヌエは拳銃の引き金に指をかけた。

●幻想の檻
 ノーブル・レバレッジ作戦は大成功した。
 貴族や民衆は味方となり、国王フォルデルマン三世がサーカスの公演取り消しをするまで至ったのだ。
 この事態に身の危険を感じたかサーカスは王都から逃走。
 だがそれ以上逃がすつもりはない。貴族派や民衆はローレットに協力的で、各地で検問を張り、封鎖を行ってくれている。幻想に釘付けとなったサーカス団が捕捉されるのは時間の問題、なのだが。
「サーカス連中が各地でバラバラに事件を起こし始めた。もう魔種、ないし<終焉(ラスト・ラスト)>勢力ってことを隠す気はないらしい。悪あがき、最後のバクチ……いや、ほとんど暴発か。だが暴発ゆえに重大な被害を招く怖れもある」
 騒動を起こすことで利己的な貴族たちの結束を乱し、『幻想の檻』を崩すのがサーカス団の目的だろう。だがそうは問屋が卸さない。
「お貴族様方には何が何でも封鎖を維持しろ、と伝えてある。あとは、お歴々の信頼を一身に受ける俺たちがサーカス連中を直接やればいい。それで奴らの狙いはご破算だぜ」
 そう言ってから、レオンはある町の情報を口にした。
 イミニール男爵領の町で、サーカス団の放ったモンスターが住民を襲っているのだという。
「このモンスター、それと操っている奴をぶっ飛ばしてやろうぜ。もう逃げ場はないってな」

GMコメント

 お世話になります。吉北遥人です。
 サーカス団との戦いも佳境に入りました。連中の狙いを打ち砕いてください。

 というわけであなたたちの敵はゴリラだ。もといゴリライダーだ。

■勝利条件
 モンスター二体とサーカス団員一名の撃破。

■敵情報
・ゴリライダー×2
 ゴリラの膂力と馬の脚力を兼ね備えた怪物。武器を使える程度に知能が高く、奪ったマスケット銃でも攻撃してきます。
 先にエヌエが倒された場合、そのターン終了後に逃走します。

使用技(二体とも共通)
 殴打:物至単。殴って攻撃します。
 突進:物中貫・ブレイク。蹴り倒しながら疾走します。
 銃撃:物遠ラ・乱れ。銃で攻撃します。弱った対象を狙いやすいです。

・エヌエ
 サーカス団の獣使い(ビーストテイマー)。チビで酒飲み。
 町のどこかに潜んでおり、イレギュラーズに居場所を看破されるまでは隠れて銃撃してきます。隠れている間は銃撃の命中補正がアップします。
 エヌエを倒したら『原罪の呼び声』の影響がなくなって、住民たちの異変も収まります。

使用技
 使役:物中単・体勢不利。ゴリライダーを操り、二体同時攻撃を行わせます。
 調教:物近範・治癒。食べ物で対象を回復します。
 銃撃:物遠ラ・乱れ。銃で攻撃します。弱った対象を狙いやすいです。

■住民情報
 酒場に多くの住民が集まっています。
 多くの住人はイレギュラーズの活躍によって狂気耐性がついていますが、五人ほど『原罪の呼び声』の影響で暴れています。放っておけば誰かしら死者が出るでしょう。
 戦闘力はたいしたことはなく、イレギュラーズ一人で、一ターンにつきいっぺんに三人ほど無力化できるでしょう。
 狂気に陥った者も耐性のおかげで、今回に関してはまだ正気に戻ってくることができます。

■戦場
 町の目抜き通り。左右に商店や家屋が建ち並ぶ、ほぼ一直線の舗装路です。
 敵味方双方にとって戦いやすい地形と言えます。


 補足等は以上となります。
 それでは皆様の熱いプレイングをお待ちしております。

  • <Liar Break>反撃のゴリライダー使い完了
  • GM名吉北遥人(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年06月29日 22時46分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (10人)

サーシャ・O・エンフィールド(p3p000129)
宵の狩人
御幣島 戦神 奏(p3p000216)
黒陣白刃
黒須 桜花(p3p000248)
黒傘の君
セアラ・シズ・ラファティ(p3p000390)
flawless Diva
レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)
赤々靴
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
クロネ=ホールズウッド(p3p004093)
自称騎士の騎士見習い
シエラ・クリスフォード(p3p004649)
守護者の末裔
ロクスレイ(p3p004875)
特異運命座標
天宮 詩音(p3p005363)
エンド・モラトリアム

リプレイ

●潜伏
 窓のガラスと枠の間に短剣が勢いよく刺し込まれた。たったそれだけで、大きな音が立つこともなく窓ガラスにひびが入る。
「よし、上手くいったか」
 音を出さずに窓を破る三角割りという手法だ。マイナスドライバーがないので代わりに魔力銃(ソード・マギ・リボルバー)に付属の短剣を用いたのだが、刃が薄いのが功を奏した。二、三度繰り返してひびを増やすと、『森の一族』ロクスレイ(p3p004875)はひびに囲まれた部分のガラスに指圧を加えた。あっけなくガラスが外れ、そこから手を差し込み――窓を解錠する。
「敗残兵の掃討だなんてウッキウキでヤっちゃうに決まってるじゃないっすかー!」
 民家は無人だった。住人は酒場に避難しているのだろう。ロクスレイに続いて侵入した『戦神』御幣島 戦神 奏(p3p000216)が陽気な足取りで二階へ上がって、窓から表の舗装路を覗き見る。
「まっ、何も気にせず力を振るえる事に感謝しましょうかね。ってゴリラじゃん! やだー!!!!!」
「変な感じの相手ですが、銃を持った騎兵そのものな戦闘能力は脅威的です。気を引き締めていきましょう」
 窓の外、市民たちが倒れる目抜き通りを我が物顔で歩く、ゴリラと馬を合成したような猛獣――ゴリライダーを目の当たりにして、奏が床を殴る。一方、『自称騎士の騎士見習い』クロネ=ホールズウッド(p3p004093)は油断ない視線を舗装路や、他の家屋の二階窓に走らせていた。
 あの猛獣を使役するサーカス団員がどこかに潜んでいる。今回、こっそり現地入りしたイレギュラーズが、こうして民家に忍び込んでまで慎重に機を窺っているのは、ひとえにそのサーカス団員――獣使いのエヌエに察知されないようにするためだ。
 住民を救うためにも、一刻も早く敵の位置を特定する必要がある。それでクロネは、使役や銃撃をするために戦場を見渡せる場所にいるのでは、と捜しているのだ。
「ここが正念場、騎士的にもきっちりと解決していきたいですね」
「そうだな。力もない住民に手を出すのは気に食わない」
 猛獣への敵意を隠さず頷いたのは『絡繰人形』黒須 桜花(p3p000248)だ。
「更に言うとサーカス連中も気に入らない。だから倒す。徹底的に」
「『人々の心を乱す存在を許してはいけない』――そう神も仰っています。であるのなら、わたしは神の剣となりましょう」
 託宣を告げる巫女のように決然と言ったのは『flawless Diva』セアラ・シズ・ラファティ(p3p000390)だ。その瞳には一片の迷いもない。
「ゴリライダー……モンスター知識で知ってても実物を見るのは初めてですね!」
 各々、為すことは同じでも想いは多種多様だ。猛獣を見つめる『宵の狩人』サーシャ・O・エンフィールド(p3p000129)の目がきらきらと輝いている。
「お肉はどんな味かな? 毛皮は高く売れるかな? 死体の処理なんて誰もしないでしょうし、全部が終わった後は私が頂いても良いですよねっ」
「はっはー! そいつはゴキゲンなプランだな。よけりゃちょいとお裾分けを……っと、始まりだ」
 ロクスレイが顎で示した先、目抜き通りを白髪の少女――『守護者の末裔』シエラ・クリスフォード(p3p004649)が走っていた。

「うーん、ゴリライダーに見つかっちゃったな」
 別の民家内から外を窺う『空虚なる■■』天宮 詩音(p3p005363)だったが、ふとその表情が曇った。その視線の先では、『シエラ』がゴリライダーに追いかけられている。もっとも、本物のシエラは詩音から少し離れた所で、能力発動に備えて集中している。
 外を走る『シエラ』――詩音が練達上位式を用いてほうきから変化させたそれは、エヌエの居場所を探るための『囮』だ。
 町の外へ逃げ出すそれをエヌエが撃てば、銃声などの情報から位置を割り出せる。その計画も囮がゴリライダーに始末されてはご破算であったが、『『幻狼』灰色狼』ジェイク・太刀川(p3p001103)に焦りの色はない。この状況も想定済みだ。
 フリーオフェンスで冷静に自己強化をするジェイクが見据える先で、民家から六人の仲間が飛び出した。囮とゴリライダーの間に割り込むように殺到する。
「今のうちっすね。酒場へ急ぐっすよ!」
『特異運命座標』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)と詩音が裏手から家を出て、日陰を選びながら酒場への道を駆ける。
 途中、白と黒の刀を手に猛獣へと突撃する奏の声が、高らかに聞こえた。
「ここまで大騒ぎにさせたんだし、がっかりだけは、させないでよね! まぁ所詮は獣だ。刺激的にやろうぜー」

●索敵
「イレギュラーズ参上っす。暴れるそこ、静かにするっすよ……!」
 レッドと詩音が裏口から乗り込んだとき、酒場は喧騒と混乱に包まれていた。急に暴れ出した者、わけもわからず殴り返す者、両者を止めようとする者、たまらず泣きだしてしまった者……
(今はローレットと幻想にとって大事な時。ならばボクも先輩イレギュラーズに倣って助力していくっす!)
 胸に熱い決意を秘めたレッドは、明らかに狂気に陥った者を見定めると、そちらへ素早く蹴戦を仕掛けた。赤い靴による強烈な不意打ちに住民の男性が昏倒したときには、レッドは即座に別の対象へと忍び寄り、絞め技で意識を刈り取っている。
 詩音もまた手にした楽器を暴れる女性に叩きつけていた。女性の手から拳銃がこぼれる。もし少しでも遅れたら誰かが撃たれていたかもしれない。危なかった。
 ――表から聞こえる戦闘音に混じって、銃声が響いたのは、狂気に陥った五人を制圧し終えたのとほぼ同時だった。
「囮が撃たれた」
 銃声は外からのものだ。式神の消滅を詩音が察知する。イレギュラーズの介入もあって静まりつつある店内にレッドが叫んだ。
「机や物陰に隠れるっす!」
 窓から酒場内に銃弾が飛び込んできたのはまさにその直後のことだ。擦るような異音とともに鋭角に床を跳ねる弾丸が店内に恐怖を呼び起こし、住民たちがレッドの警告通りに動く。
『原罪の呼び声(クリミナル・オファー)』の影響を確認できていたエヌエが酒場に攻撃するのを、レッドは懸念していた。
 少し前までは酒場内に潜んでいる可能性も捨てきれなかったが、今は――

 ゴリライダーや仲間のものではない銃撃が囮を撃ち抜いたとき、ジェイクとシエラも自らの役目を果たすべく動いていた。
 ジェイクは超嗅覚によって、大気中に混ざる火薬・硝煙の臭い、獣臭や酒の匂いを嗅ぎ分けていく。
(イカレタサーカス共を打倒するのは今だ。奴らが包囲網を抜けようと必死に暴れているのは、悲鳴を上げて弱っている証拠じゃねえか)
 今日で決着を付ける――強い意志の下、感覚を研ぎ澄ます。情報の奔流を瞬時に精査し、臭気はあるのに『その臭いがあるはずのない場所』を浮き彫りにしていく。
 続けての銃声――酒場が狙われたものだ――を耳にしたとき、怪しい箇所は一点に定まった。
 その箇所をシエラも超視力で視認する。エネミーサーチの感知には引っかからないが、もはや疑いようはない。虚ろな目に一瞬光が横切る。『ソウルリンカー』――味方と感覚的に情報を伝え合えるギフトを行使したのだ。
「……これで皆との情報共有ができてます、後は討つのみです。行きましょうジェイクさん」

 桜花がバラードを味方陣へ詠いあげ、切ない空気をサーシャの矢が貫いた。狩人たるサーシャは獣の泣き所にも詳しい。脚に矢が突き立ったゴリライダーの速度がガクンと落ちる。
「ゴリライダーはですね、脚を狙うのがいいんですよ。馬の倒し方と同じですね。上半身のゴリラは握力が強いので接近戦だと大変かもです」
「それはいい情報……ですねっ!」
 ゴリラに掴まれた騎士剣を、その手を切り裂きながらクロネは力任せに引き戻した。華麗かつ素早いステップで巧みに位置を変えると、サーシャが開陳した動物知識に従い、馬脚へと剣を突き込む。
「そーら、くらえー!」
 脚を裂かれて体勢の崩れた猛獣へと奏が躍りかかった。スカートを激しく翻しつつ、二刀を振り下ろす。刃は存外硬い皮膚に弾かれるが、それで引き下がる奏ではない。弾かれた反動を振りかぶる力に変換し、嵐のように刃を叩きつける。
 白と黒の乱舞を止めたのはマスケットの銃声だった。もう一頭のゴリライダーが発砲したのだ。肩を撃ち抜かれた奏が背中から路上に倒れる。
「おっと、その攻撃は通さねえぞ」
 続いての奏を狙った発砲は、桜花が日傘(カランコエ)を盾にしたことで事無きを得た。しかし桜花の口からこぼれたのは舌打ちだ。集中攻撃を受けていたゴリライダーが反撃とばかりに疾走してきたのだ。防御態勢をとった桜花、奏、そしてクロネがまとめて突き飛ばされ、重い馬蹄に踏みにじられる。
「はっはー! まさかファンタジー世界で銃撃戦することになるとはねー」
 マスケット銃で追撃しようとするゴリライダーの周囲を、黒マントが躍った。狙点を定めさせない滑らかな動きで翻弄しつつ、ロクスレイの両手で銃火が閃く――轟音三つ、一拍置いてまた三つ。至近距離で叩き込んだ魔力弾計十二発。
「銃使いだからと侮ったかい? 俺は接近戦も得意なんだぜ」
 フードの下、口元に笑みを刻んで、ロクスレイがゴリラの怪腕のリーチから飛び退く。入れ替わるように猛獣を襲ったのは黒い魔力――セアラの呪術だ。
「短期決戦とはいきませんか……」
 敵二体とも範囲内に入れば大技が使えるのだが、今は呪術で応戦するよりなかった。厳しいが、障害物で射線を逃れたセアラの紫瞳に諦めの意志はない。神の声が聞こえる限り、セアラは戦い続ける。

 戦況を不機嫌そうに見下ろしつつエヌエは酒瓶を呷った。口をつけてから、もう空っぽなことに気付く。
「ギルド・ローレット! どこまでも忌々しい連中だぬぇ」
 エヌエがいるのは、酒場の斜向かいにある民家の屋根上だ。左右に程よい出っ張りがあって隠れるのに都合良かったのだ。その代わり日射しの直撃が暑くてたまらないが。
 都合良いと言えば狙い撃ちもそうなのだが、ローレットの連中はさっきから、ここからでは微妙に狙いにくい場所に位置取りしている。これでは獣どもに処理をさせるしかない。それも悪くはないのだが――
「む~ぅ。いっそ俺も下りて始末しにいくのがいいかぬぇ」
「それなら手伝ってやるぜ」
 背後から自身を覆った影にエヌエが気付いたとき、ジェイクがその背中を思いきり蹴り飛ばした。

●天誅
 十メートル近い高さを頭から落ちたにもかかわらず、その小男はまだ生きていた。これが魔種の生命力か。しかし痛みはあるらしく、舗道まで下りてきたジェイクを見る目は血走っている。
「ただでさえ暴力が氾濫している世界なのにそれを増長させるなんて……私には納得出来ません!」
「黙るぬぇ、正義の味方気取りが!」
 批判しつつシエラがリーディングを試みるが、思考の読み取りは遮断されるように抵抗された。ブロッキングによる無力化か。
「ゴリライダー! 同時攻撃でこいつらを殺すぬぇ!」
 エヌエの眼光がカッと瞬いた次の瞬間、獣使いの命令を受けた二頭の猛獣は疾走を開始している。
「おっと、合流はさせねぇっての」
 ロクスレイの魔力銃が閃いた。走り抜けようとする猛獣どもを押しとどめるように至近距離から二丁銃を叩き込む。勢いの弱まったところをクロネが盾を構えて立ちはだかる。
「全力の一撃を放ちます。クロネさま、皆さま、退避を」
 走りながら警告したのはセアラだ。それを聞いてクロネが、ゴリライダーの殴打を盾で受け、その衝撃にあえて押されることで距離をとる。代わって距離を詰めるセアラの杖が昏い光を灯した。
 神薙――擬似神性による薙ぎ払いは、ゴリライダーの片割れに致命的な熱量と衝撃を与えていた。みるみる精彩を欠くゴリラの首を奏の黒刃が刎ね飛ばした。
 残る一頭はまだ体力は残しているものの、動きが荒い。その胴体に毒苦無が突き立った。酒場から合流したレッドが突き刺したのだ。
「悪気はないっすけど住民の安全の為に死んでもらうっす!」
 レッドの頭を潰すべくゴリラが腕を振りかぶる。だがサーシャの矢がその脳天を捉える方が早かった。目と目の間を射抜かれ、ゴリライダーは糸の切れた人形のようにどうと崩れ落ちた。
「そんな、ありえんぬぇ!」
 絶望したように叫びながら、エヌエが発砲した。拳銃弾はとっさに全力防御したシエラに突き刺さったが、ほぼ同時に降り注いだ治癒光が彼女の傷を癒やす。少し離れて見守っていた詩音による回復だ。
「正義の味方気取り? とかさっき言ってたっけ?」
 ゴリライダーを倒したイレギュラーズが集まってくる。肩をぐるんぐるん回しているのは奏だ。
「正義の味方はもう飽きたし? ここにいる私はあんたをぶちのめす殺戮者だっただけさ!」
「モンスターはすでに討ちました。さあ、覚悟してください!」
「好き勝手やった罰、受けてもらうぞ」
 クロネと桜花の言葉に、エヌエの喉がぐびりと鳴った。とっさに振り返るが、そちらにはいつの間にかシエラが回り込んでいた。逃げ場はない。
「死ぬにはいい日だろ?――狂ったサーカスに天誅を」
 獣使いとしてならばともかく、エヌエ個人にイレギュラーズ十人を凌ぐ能力はない。
 ジェイクのバウンティフェアー、シエラの魔力放出を皮切りに、魔種の小男へと一斉に攻撃が開始された。

●治癒
 猛獣、そして原罪の呼び声による脅威が去った町では、負傷者の救助が進んでいた。
 詩音も回復に協力し、まだ息のある者を急いで運び出していく。ちなみにゴリライダーの死体は、サーシャが嬉々として暗がりに引きずっていった。今頃は肉を切り落としているだろう。
「絆の手紙作戦でも少し謳わせて頂いたのですけど」
 狂気に呑まれない勇気を歌で奏でて、皆さまを励ましましょう――そうセアラが歌声を紡いだ。それは疲弊しきった酒場内の人々の心を癒していく。歌声もう一つ。桜花も加われば、唱和した美声は酒場の窓から通りにまでよく響き渡る。
「おい! オレん家の窓が割れてんだがどういうことだ」
「ヤー、非常事態だったっつーことでカンベンしてくれ!」
 ここを去る前に窓の修理を手配しなきゃな、とロクスレイは思った。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ゴリライダーは馬部分の肉のほか、ゴリラの脳みそが美味だそうな。後者はゲテモノ食いの人々にウケるかもしれない。
 さておきお疲れ様です。
 エヌエと猛獣を分断したことにより、相手の本領発揮を封じることに成功しました。まともにやり合えば戦闘不能もありえただけに、索敵と作戦はお見事だったと言えます。
 ご参加ありがとうございました。

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