PandoraPartyProject

シナリオ詳細

迷える友に安息を

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 時刻は夕方。花が咲き乱れることで知られる町「フロゥ=フラウ」の広場の前で少女2人が喧嘩している。
 見たところ、大体16~17歳くらいだろうか。
「エリーがグズグズしてるから、欲しかったお花が売り切れちゃったじゃない!」
 赤い髪を高い位置で結びポニーテールにしている少女が、ものすごい剣幕で怒鳴る。
 しかし、怒鳴られている金髪のおさげの少女も負けじと言い返す。
「で、でも! アンナだってフラフラと別の街歩きしてたじゃない! 私だけが悪いんじゃないよ!」
 年相応とはとても思えない内容で喧嘩する2人。内容としては本当に取り留めのないものだ。
「もういい! あんたなんか知らない!」
 そういうと、アンナはエリーを置いてつかつかと歩いていく。
「いいもん! 私だってあなたのことなんか知らない!」
 逆方向にエリーは歩き出す。

ーーそれが、二人にとっての最期の会話となった。

「え……? 噓でしょ……? エリーが……。」
 仲直りのつもりで持ってきた、カモミールの花束と、ティーバック。
 それがエリーの手に渡ることはなかった。
 エリーはその日の帰り道の森の中で、不運にも魔物に襲われ、亡くなったのだ。
「私が、あの時ちゃんと謝っていれば……」
 アンナはずっと、後悔の念に苛まれることになる。

 エリーがいなくなってしまい10日後、アンナの耳にとあるうわさが舞い込む。
 エリーが、アンナを探して森の中をさまよっているというのだ。

 さて、この世界には「十三日忌」という概念が存在する。死者の魂は13日後に冥界へと送られ、新しい魂に生まれ変わるというものだ。
 しかし、それはこの世への未練を清算した者だけの話。未練を清算できなければ、悪霊としてこの世に留まり続けることになる。

 アンナは、エリーの思いを聞きたかった。
 そして、喧嘩のことを謝りたかった。
 急いで森へ向かい、ほどなくして、開けた場所にエリーの姿を見つけた。

「エ……エリー?」
 しかしそこにいたのは、彼女だけではなかった。無数のゴーストがエリーにまとわりついている。
 そして、エリー自身も、悪霊になりかけている。
 この世にとどまる悪霊は、後に別の死者を自分たちに引き寄せようとする。
 未練など晴れることなどないのに、それを延々と繰り返すのだ。
「アンナ、私は、アナタヲ、許……」
 恨めしく、どこか悲し気な表情でエリーはアンナに手を伸ばす。

「このままじゃ、エリーが……!」
 しかし、アンナは戦い方など知らない、普通の女の子。
 このままだと、エリーに近づくことすらできない。

 もどかしさと自分の弱さへの怒り、そしてあの日に対する後悔……様々なものがこみあげてくる。
 少女はただただ、夕日に背を向け涙を流すしかできなかった。

NMコメント

【シナリオ概要】
 こんにちは、NMの水野です。
 今回は、依頼人のアンナとともに彼女の友人エリーの最期のお見送りをしていただきます。
 友達の最期を見送るとき、あなたは何を伝えますか?
 
●世界観
 よくある王道のファンタジー世界です。
 普通に魔物も出ますし、夜はゴースト(悪霊)も出ます。
 特筆すべき点といえば、この世界には後述する「十三日忌」という概念があります。
 
●十三日忌
 四十九日を想像してもらえれば分かり易いかと思います。
 この世界では、死者の魂は13日後に、冥界へと送られることになります。
 しかし、それはこの世への未練を清算した者だけの話。
 未練を清算できなければ、悪霊としてこの世に留まり続けることになります。
 この世にとどまる悪霊は、後に別の死者を自分たちに引き込もうとします。
 未練など晴れることなどないのに、それを延々と繰り返すのです。

●やるべきこと
 未練を清算できず、未だこの世に囚われているアンナの友人「エリー」を、この世から解放し見送ってください。

●依頼人アンナについて
 どこにでもいる16歳の普通の女の子です。
 明るくて元気はいいのですが、ちょっと頑固なところがあり、相手に対して譲ることをしません。
 事の発端になったエリーとの喧嘩でも、彼女は最後まで謝りませんでした。
 アンナはこのことを悔いており、エリーに謝って見送る前に仲直りしたいと思っています。
 
●アンナの友人エリーについて
 どこにでもいる16歳の普通の女の子でした。
 少し引っ込み思案なところがあり、言いたいことを言えない性格の子ですが、アンナに対しては幼馴染ということもあり、多少自分の主張はしていました。
 彼女はアンナと喧嘩したその日の夜、家に帰る際に通る森の中で魔物に襲われ、亡くなっています。

●敵について
 ①エリー
 悪霊になりかけている少女です。
 ですが、人間だったころの理性が残っているからか、攻撃については本気を出してきません。
 ある程度ダメージが入ると、正気に戻るでしょう。
 謝りたい、でも恨めしいという気持ちが、まだ彼女の中でせめぎあっているようです。
 なお、イレギュラーズの皆さんは普通に戦えますので、その点についての心配は必要ありません。

 ②まとわりつくゴースト
 エリーの周りに十数体、悪霊であるゴーストが纏わりついています。
 アンナはあくまでも普通の女の子なので、ゴーストには太刀打ちできません。
 なお、エリー同様イレギュラーズの皆さんは普通に戦えますので、その点についての心配は必要ありません。


 皆様のご参加をお待ちしております。

  • 迷える友に安息を完了
  • NM名水野弥生
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年06月25日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)
片翼の守護者
星影 向日葵(p3p008750)
遠い約束
ハク(p3p009806)
魔眼王

リプレイ


「友人同士の再会に水を差すとか空気の読めない輩だこと。」
 『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)は、ムッとした表情で森の中をイレギュラーズ、そしてアンナと共に歩いていた。だいたい喧嘩が発端なんだろうけど、という言葉が聞こえてか彼女の夫『紅獣』ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)がポツリと呟く。
「喧嘩、喧嘩なぁ……しないに越したことは無いな、うん。」
 エリーが亡くなった事の発端そのものは、喧嘩というほんの些細なことに過ぎない。
 しかし、それが最後の会話になってしまったという話は、年が近いであろう『天色に想い馳せ』隠岐奈 朝顔(p3p008750)と『魔女見習い』ハク(p3p009806)の二人にも、想像しただけで悲しみに暮れ後悔に苛まれるものだったのだろう。
「……ハクは、親しいお友達との喧嘩別れとかまだ経験した事無いのですが……。それでもアンナ様を見ていると分かるのです。きっとそれが辛くて悲しい事なんだって……。」
「うん。私も、幸運にも身近な人が、大切な人が亡くなった経験は無いから、アンナさんに対して、何かを言える訳ではないけれど……。」
 浮かない顔で少女たちは言葉を交わす。が、それは一瞬のことだった。少女たちが想いを伝えるため、二人はアンナに呼びかける。
「ですから、ハクはアンナ様とエリー様を助けたいです! このまま悲しいお別れなんて……そんなの駄目なのです。それに……エリー様を悪霊になんてさせる訳にはいかないのです!」
「私も、ハク君の言うとおりだと思う。エリーさんへの道なら、私達が切り開く事が出来る。だから、どうか貴女達が後悔しない選択を。」
 アンナは、うん、ありがとう、と、涙を目に浮かべながらもその瞳に強い意志を宿す。
 グリムゲルデ夫妻は、それを後ろから見守っている。
「後悔する位なら時間のある今のうち……お互い謝ってスッキリしてから逝った方がいいだろうさ。」
「そうね。だいたい喧嘩が発端なんだろうけど、引っ掛かってることはさっくり解消して。それに……。」
 ルーキスは続ける。
「死者やら幽霊やらは、生きている人間が羨ましくて仕方ないらしいけど。時間は戻らないんだし。それこそ思っても仕方ないことなのにね?」
 大人しく次の流れに身を任せるのが最良だよ、と話しているうちに、森の中の少し開けたところに出てくる。
 開けたところ、とはいえ、その空は暗く曇っているのだが。
「んー、うーん……わかってはいたけど陰気臭い。」
ルーキスがそうつぶやいたその時。
……『彼女』は姿を現した。


「エリー! エリーなんでしょ?!」
 アンナの呼びかけが森の中に木霊する。その声に反応したのか、黒い靄のようなものが、エリーの周りにまとわりつく。
「ア……ア……ナ……」
 悪霊に変貌する寸前なこともあるせいか、エリーは言葉を紡ぐことも叶わず、絡みつく靄でアンナを貫こうとする。
 エリーに駆け寄ろうとするアンナの前に、朝顔とルナールが立ちふさがるように割って入る。
「エリーに謝りたいんだろ?それならそれが叶うようにおにーさんが護ってやるさ。」
「さぁ、私の後ろに! 大丈夫、貴女を絶対に傷つけないように守りますから!」
 分かった、とアンナは二人の後ろに隠れるが、悪霊たちは構わず彼女に引き寄せられていく。
 朝顔はすかさず、悪霊たちに呼びかける。
「貴方達も何らかの未練で彷徨っているみたいですが……だからといって、自分達の仲間を増やしては誰も報われないでしょう?! ……物理的で申し訳ありませんが、成仏願います!」
 悪霊たちは朝顔の声に反応し、彼女に飛び掛かる。
 それを、ハクは見逃さなかった。
「さあ、我が魔眼で不幸になるです!」
 刹那、悪霊たちがエリーたちから引きはがされたと思うと、その動きがピタリと止まる。
「ふっふっふ! この『魔眼王』のハクの魔眼に恐れ戦くがいいのです!」
 我ながらファインプレーなのです、とハクは得意げだ。
 動きが止まった悪霊たちを、朝顔は鋭利な乱撃で一体、また一体と悪霊を仕留めていく。
 自分の周囲の悪霊を粗方片づけたことを確認し、少女二人は顔を見合わせ笑った。
「朝顔さんは、アンナさんのことを、お願いしますです。エリーさんのことは、ハクに任せるのです!」
「ありがとう。ハクさんもエリーさんのこと、お願しますね。」

 その頃、ルナールはアンナを抱えて退避しながら、ルーキスにも残りの悪霊に対して対処を要請する。
「ルーキス、敵が近すぎる。吹っ飛ばそう」
「わかったわ。……ほら、その他大勢はお呼びじゃないよ、下がって下がって。」
 放たれる雷撃はうねり、のたうち、蛇のようにゴーストたちを貫いていく。一体、また一体と貫いていくにもかかわらず、そのはなかなか減らない。
「んもう、しぶといなぁ」
 そういうと彼女は魔力を精一杯込め始める。
「霊体なら汚れないからいいか、引き裂いちゃうから下がってルナール先生。」
「謝罪の手伝いに来て、依頼人護れませんでしたは恐ろしく笑えないな? ……頼むぞ。」
「もちろん。何かの拍子で死んじゃったら目も当てられないしネ。 私はいいから、そっちカバーしてあげて。」
 分かったよ、というとルナールはエリーに向き直る。
「そろそろ正気に戻ったらどうだ? 時間が無くなる一方だぞ?」
 少女は親友に、懸命に何かを伝えようとする。しかし、それとは裏腹に、言葉は刃となってしまう。
 守り続けるだけでは限界がある。そう思ったその時、朝顔とハクが二人に合流する。
「私はアンナさんを守りながら、ハクさんと一緒に呼びかけます! ですから、ルーキスさん、生き残りの悪霊は任せました!」
 頼もしい少女の声に、大人がが応えないわけにはいかない。
「はーい。任せといて。それじゃ……野次馬はさっさと帰りなさい。」
 悪霊たちの集合地点にゼロ距離で放たれたその一撃は、十二分に彼らを退散させるに足るものだった。
「ふぅ、ざっとこんなもんね。あぁ、本当にしつこかった。」
「だな。あとは、年の近いお嬢ちゃんたちに任せよう。」
「そうね。その方が何かここりに響くこともあるだろうし。」

 森の中のその場所は、悪霊も弱っていることもあり、静かな空気を取り戻しつつあった。
 それと同時に、エリーの周りの靄が晴れていく。最後の一押しで、少女たちは攻撃を続けるエリーに呼びかけ続ける。
「目を覚まして下さい! 貴女の本音(こえ)を聞きたがっている人がいるんです!」
「そうです! 少しは頭を冷やすのです! エリー様!」
「それでも誰かを傷つけないと耐えられないなら、私が全部受け止めます!」
「ここで仲直り出来なかったらもう一生仲直り出来ないのです。そんなの悲し過ぎるのです……お互いの本心(おもい)を語ってほしいのです!」
 エリーはハッとした表情でその手を止める。朝顔とハクの後ろには、それでもなお素直になれないアンナの姿が目に映る。
 アンナさん、と朝顔は語り掛ける。その声色は優しさを帯びている。
「さっきも言った通り、私は誰かと死に別れた事はまだ無くて……だから月並みな事しか言えないし、何が正しいのかも分からない・けどアンナさん。きっと、エリーさんを開放できるのは貴女だけだと思うんです。後悔するって分かっていて、強がるのは誰も救われないですよ。」
「変に言い残して後悔するぐらいなら全部言っちゃえ言っちゃえ。死んだ後も会えたっていうのはある種の幸運だ。」
「だな。後悔は心のシミみたいなもんだ、下手をしたら広がって浸食される。だからこういう時は素直が一番だぞ。」
 グリムゲルデ夫妻はアンナの方をポンと叩く。アンナは振り返って頷く彼女の目には涙と一緒に決意が滲んでいた。

 4人は少し距離を取って、静かにそれを見守った。
 彼女たちが何を語り合ったのかは分からない。しかし、互いの表情に『未練』という言葉が似つかわしくないということだけは明らかだ。
 ーーそして、最期(別れの時)がやってきた。
 少しずつ空が晴れてくると同時に、エリーの姿も見えなくなっていく。
 「またね。」
 待って、といいたいのをこらえて、アンナは見送る。
 エリーもまた、アンナに何かを伝えようとしたが、その姿は消えてしまった。

 彼女が旅立つのを見届け、アンナはイレギュラーズに向き直る。
「本当にありがとうございました。皆さんがいなければ、私……。」
 みなまで言わなくていい、と夫妻が優しく頭を撫でる。
「言いたいことは全部ぶちまけたかい? ……まぁ、その顔は、ちゃんとできたみたいだね。えらいえらい。」
「ま、同じ奇跡が何度も起こるとは限らないし、基本的に奇跡に頼るべきじゃないさ。」
 そういうとルナールは誰にも聞こえない声で呟く。
「……友達、か……難しいもんだなぁ。」

 雲一つない快晴。その空は二人の旅立ちの背中を押している。
 先立ってしまった少女と、残されてしまった少女は、この世でもう二度と会うことは叶わないだろう。
 それでも、前に進むしかないのだ。
 少女達が最後の言葉を交わした森の中では、色とりどりの百日草が咲き誇る。
「ありがとう。ずっとずっと、大好きだよ。」
 遠く離れた友を、これからも見守り、思い続けるかの様に。

成否

成功

状態異常

なし

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