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シナリオ詳細

【原初の呪面】呪いの仮面は静謐に

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●町は大変なことになっているようです
「ひひひ……」
「ゴアア……」
 奇声を上げ、よだれを垂らしながら街路を歩く人々がいる。
 そんな人々を遠巻きに眺めながら、恐れつつひそひそ話をしている人々もいる。
 そのいずれもが、思い思いの仮面を顔につけていた。町の人の誰も彼もが、例外なく。
 今もまた通り過ぎていった、狂った様子の覆面を身に着けた男をちらと見ながら、白い狐面を被った男が仲間に声をかけた。
「どうなっているんだ、最近……」
「最近とみに呪われた者が増えているぞ」
 声をかけられた青い紋様の入った猫面の男が、力なく頭を振った。二人の話を聞いていた、この町のまとめ役らしい金色のベネチアンマスクを身に着けた男性が腕を組みながら言う。
「今日は、『朱狐』と『花紋』がおかしくなった。『黒虎』に至っては呪いが進行しすぎて、自ら呪いを振りまく有様だ。早急に『無貌者』となってもらわねばなるまい」
 そう話し合いながら、三人の男性は一様に額を押さえた。
 この町には最近、『呪い』によって心身を蝕まれるものが続出していた。呪いにあてられた人々は狂い、獣のように振る舞うものも出ている。
 呪いが進行しすぎた『黒虎』に至っては、もはや人間だった頃の面影すらない。今は彼の家族が家の中に閉じ込めているが、じきに仮面を剥がされ、町から放逐されることになるだろう。
 こんな事になったのも、全て「あの仮面」のせいだ。そんな噂がまことしやかに囁かれていた。
「やはり、『呪面』が盗まれたという噂は本当だったのか」
「この町に安置されていたという『原初の呪面』か……厳重に警備されていたはずだが」
 強い呪いを内包し、身につけた者を媒介にして呪詛を振りまく『原初の呪面』。この町の最重要遺物として保管されていたそれが、何者かによって盗まれた、という噂は前から立っていた。
 その噂が、本当だったのだとしたら。これだけ町民に呪われた者が出ているのも納得ができる。
「とにかく、早いところ『呪面』を何とかしなくては。この町は終わりだ」
「ああ……一刻も早く対策を講じるぞ」
 三人の男たちは改めて相談を始めた。このままでは、この町が滅びるのも時間の問題だ。

●新しい世界が危ないようです
「や、皆。今日もお仕事お疲れ様、ちょっといいかな」
 『雑踏の黒猫又』稲森・千河は本を一冊手にしながら、そう特異運命座標たちに告げた。
 いつも彼女が手にしている、彼女の世界の本……ではない。今まで見たことのない、表紙に仮面の描かれた本だ。
 その本を特異運命座標に見せるようにしながら、千河が話し出す。
「んー、この本、ついこの間この図書館で見つけたんだけどさ……なんか、ちょっとやばいことになってるっぽい雰囲気で。だからちょっと、この本の世界に行って問題を解決してきてもらいたいのよ」
 彼女曰く、この境界図書館で作業をしていた時に、不穏な気配を発しているこの本を見つけたらしい。開いてみたらかなり重篤に滅びが進行している。何とかしなければ、と思ったと言う。
「この世界……便宜上『仮面の世界』って呼ばせてもらうけれど、ここでは皆、誰もが仮面を身に着けて暮らしているのね。仮面を被っていない人は排斥されて、町の中に入れてもらえないくらい。『無貌者』って言うんだって。だから皆には、何かしら仮面を被った状態でこの世界に行ってもらうことになるわ。必要なら、あたしが用意するから」
 そう言いながら、千河は手に持っていたビニール袋からいくつかの仮面を取り出した。顔をすべて覆うものも、目元だけ覆うものも、様々ある。こうしたものを用意して、現地に赴かねばならないだろう。
 特異運命座標が思い思いの仮面を手に取る中で、千河は本の表紙を開く。
「で、何が起こっているかっていうとね……ふぁ。この世界のある町に保管されていた『原初の呪面』っていう仮面が、誰かに盗まれちゃって。盗んだ人がその仮面を被って出歩いて、あちこちに呪いを振りまき、人々の心を狂わせているのよ」
 曰く、その仮面は強い呪いを内包した遺物で、それを被った人は呪いを発生させる体質になってしまうとのこと。これによってこの町では、毎日何人もの呪われた人が出ており、既に手の施しようが無くなってしまった人も出ているそうだ。
 手の施しようが無くなった人々は仮面を剥がされて町の外に放逐される。タイミングを見計らって冒険者に討伐されるだろう、と千河は話すが、難を逃れて別の町に行ってしまわないとも限らない。
「このままだと、町は呪いに飲み込まれるどころか、他の町にも呪いが広がっていっちゃうわ。だから、皆にはまず『原初の呪面』を身に着けて呪いを撒いている人を見つけてほしいの」
 そう話す千河に、特異運命座標は頷いた。このまま、この世界が崩壊していくのを放置しておくわけには行かない。
 だが、しかし。千河は心底から残念そうな表情をした。
「たぶん、仮面を壊すところまでは行かないと思うわ。逃げてっちゃうと思う……でも、今回はそれだけでもいいわ。また見つかったら、あたしから連絡するから」
 少し悔しそうな顔をしながら話す千河に、同様に特異運命座標たちも眉根を寄せた。このタイミングで事態を解決できないのは悔しいことだが、町の危機を救うだけでも、進展はあるはずだ。
 かくして、説明を終えた千河が本のページを捲る。もう一度あくびをしながら、彼女は特異運命座標に向き直った。
「準備はいいかしら? じゃ、よろしく頼むわよ……ふぁぁ」

NMコメント

 特異運命座標の皆様、お久しぶりです。
 屋守保英です。
 久しぶりに新しい世界を見つけたようです。仮面をかぶって暮らす人々の町で、人仕事参りましょう。

●目的
 ・「原初の呪面」を発見する。

●場面
 人々が皆、何かしらの仮面を身に着けて暮らしている世界の、とある町です。
 この町のどこかに保管されていた「原初の呪面」が盗まれ、仮面の力で人々に呪いを振りまいています。
 町の中を探索し、呪いの仮面を被っている人を見つけましょう。

 この世界では仮面を身に着けていない人は「無貌者」と呼ばれ、人々から攻撃され街に入れてもらえないので、かぶりたい仮面を何かしら、プレイングで指定することをおすすめします。

 それでは、皆さんの力の籠もったプレイングをお待ちしております。

  • 【原初の呪面】呪いの仮面は静謐に完了
  • NM名屋守保英
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年07月03日 21時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

鞍馬天狗(p3p006226)
第二十四代目天狗棟梁
豪徳寺・芹奈(p3p008798)
任侠道
シャオ・ハナ・ハカセ(p3p009730)
花吐かせ
シロモ(p3p009917)
シロモ・ヒルシュ

リプレイ

●無貌
 町の正門。くぐる人はみな、それぞれ何かしらの「仮面」をつけている。
「……仮面の町か」
 その人々を眺めつつ、塀のそばの茂みに隠れるようにしながら『第二十四代目天狗棟梁』鞍馬天狗(p3p006226)は呟いた。
 普段から天狗面を身に着けている彼はともかく、他の三人と一緒にいるところを見られては何を言われるかしれない。その為特異運命座標は、隠れながら様子を伺っていた。
「フム、仮面の世界で呪いを振りまく仮面を見つけろと……これは難儀な依頼だな」
 『任侠道』豪徳寺・芹奈(p3p008798)も額の第三の瞳を小さく輝かせながら言う。木を隠すなら森の中、仮面を隠すなら仮面の中。狙ってやったことではないにせよ、探すのが難しいのは確かだ。
「『おかしなもの』が排除されるのはどこの世界でも同じようですね」
 『花吐かせ』シャオ・ハナ・ハカセ(p3p009730)もため息をつきながら話す。仮面をつけない自分たちも、この世界の人々からしたら「おかしなもの」だろう。
 そういう常識の世界で、仮面を剥がされた人がどのように扱われ、どのように思うのか。それは察するに余りあるというものだ。
 『シロモ・ヒルシュ』シロモ(p3p009917)も長い尻尾を揺らしながら胸に手を当てる。
「仮面を探せ。それがあなたの依頼なのですね。株式会社シロモの社員として組織の名に恥じない仕事をこなしてみせます」
 静かに、しかしはっきりと言うシロモに、芹奈は頷きながら言った。
「ああ。ところで、仮面は皆準備はできているかい?」
 この世界で活動するのに必要な仮面。鞍馬天狗は何をか言わんや、と自分の手を天狗面に持ってくる。
「我は常から身につけている」
 鞍馬天狗に頷きつつ、芹奈も着物の懐から鬼面を取り出して顔につけた。
「拙も用意できている」
 シャオも鞄から仮面を取り出した。垂れ耳のシュナウザーを模した仮面だ。
「私も用意できています。どうでしょう、似合いますでしょうか」
 その仮面を装着するシャオの隣で、シロモも鞄から大事そうに仮面を取り出す。鹿の頭骨を模した形状の仮面を、黒い顔に被った。
「以前先輩冒険者の方が、私の角に合わせて特注でプレゼントをいただいたんですよね。こういう場で使うことになるとは思いませんでした」
 過去に冒険者から貰った仮面、確かにシロモの枝分かれした角とよくマッチする。
 全員、準備万端だ。それを確認して芹奈が立ち上がる。
「よし、行こうか」
 そう言って、四人は茂みから外に歩き出した。

●美貌
 仮面を装着した四人は、旅人として町の中に踏み入った。門番は怪しむこともなく四人を迎え入れる。
 町に立ち入るまでは問題なし。あとは呪いの仮面の方だ。
「呪いの仮面とは言うが、一見して分かるものなのでしょうか?」
「どうだろう。町の人たちはそれと分かっているような感じだったけれど……」
 シャオが首を傾げると、芹奈も小さく口元を尖らせた。確かに、町の中では常識だとしても、四人には仮面の特徴すら分からない。
 その言葉に頷いたシロモが、さっと手を前に伸ばした。
「となれば、聞き込みが最優先かと私は思います。酒場に向かうのが最善でございましょう」
 シロモの言葉に三人とも頷く。確かに情報収集が大事だろう。
「そうですね、まずは情報を集めるのが大事です。酒場に行くのも賛成です」
「そうだな、集めるだけ集めてみよう」
 シャオと芹奈も同意して、四人は町の酒場に向かう。酒場の中でも客は全員仮面を身に付け、エールを煽っていた。どうやらこの世界の一般的な仮面は、口元が空いた形状らしい。
 店内に入ってきた四人を見て、猫の面を被った店主が口元に笑みを浮かべる。
「やあ、いらっしゃい」
「店主か? とりあえず一杯、酒をなにか貰おうか」
 そちらに歩み寄って、芹奈が何枚かの金貨をカウンターに置く。先に支払う意志を見せれば、店も嫌とは言えないだろう。
 エールをジョッキに注いで出してくる店主に、シャオが笑みを浮かべながら問いかけた。
「店主さん。この町には『原初の呪面』なる仮面が安置されていると聞いたのですが、本当ですか?」
「っ……」
 その問いかけに、店主の酒を注ぐ手が止まる。表情が苦々しくなったのも見えた。戸惑った様子で店主がこちらを見る。
「お客さん、それは」
「ああ、大丈夫。この町で『面倒な事件』が起こっている話までしか知らないですよ」
 それに対し、ひらりと手を振りながらシャオが答えた。嘘はついていない。だが、この町で事件が起こっている、ということを知っていると分かれば、街の人々の対応も変わるだろう。
 シロモが丁寧に頭を下げながら、店主に声をかけていく。
「はい。この町の人々に異常が発生していることは、先程拝見させていただきました。株式会社シロモ、その事件に対処するために参った次第です」
 対処するために、その言葉を聞いた店主が仮面の向こうで目を見開いた。エールを呷った芹奈も、力強く言葉を重ねていく。
「人々が狂っている原因に、『原初の呪面』が関与している可能性は高いんだろう。その呪面についての情報を教えてほしい」
 その畳み掛けるような言葉に、店主も観念したのかうなだれた。そのまま、嗚咽を漏らすように情報を吐き出していく。
「あの呪面は……恐ろしい仮面なんだ。黒く、目が赤く、長い角のある仮面で……非常に強い力を持っている。人を狂わせる力を持っているんだ。だから町の神殿に安置されていたのに……」
 顔を覆って呻く店主に、四人は顔を見合わせた。そしてシロモが小さく呟く。
「町の神殿、ですか」
「その神殿も調べないとならないでしょうか」
 シャオも小さく首を傾げながら言う。そうして四人は顔を見合わせると、提供されたエールを全員でぐいと飲み干した。
「そうだな、そちらも調べてみよう。店主、ありがとう」
 芹奈がもう少し、カウンターに置いた金貨に額を足す。そして四人は、颯爽と酒場から出ていった。

●顔貌
 店主の話した「神殿」は、街を往く人々に聞いたらすぐに分かった。その場所に行くと確かに、古めかしい石造りで荘厳な雰囲気のある建造物が建っている。
「ここが、その神殿か?」
「見た感じ、町によくある礼拝所にも見えますが……」
 芹奈が言えば、シャオも頷きつつその建物を見た。確かに見た感じは礼拝所とも見れる、町によくある造りの建物だ。しかし雰囲気がどうにも重苦しい。
「破壊されたりした様子は無いな。だが、最近人が出入りしたような形跡もある」
 芹奈が石畳に膝をつきながら確認する。確かに砂埃が積もった地面には足跡がついていた。最近誰かが立ち入ったことは間違いない。神殿の管理者か、あるいは呪面盗難の確認に来た警察か。
 そして、四人で神殿の周りを調べよう、と動き出したところで。シロモがある一点を見つめて動きを止めた。
「むっ」
「シロモ殿?」
 芹奈がシロモに声をかけると、シロモは街路を行く町民の一人を指差した。
「あちらの方」
 その指さされた先を歩いているのは、中年の男性らしき人物だ。顔には黒く、長い角の生えた仮面を被っている。そして何より、その男性を街の人々は明らかに避けていた。
「あの仮面……!」
「話に聞いた仮面の特徴と一致しますね」
 芹奈が言えば、シャオも口をキュッと結んだ。すぐさま芹奈に視線を返す。
「どうします?」
「囲んでみよう。何かしらの反応があるかもしれない」
 芹奈の言葉に逆らうものはいない。すぐにその男性の方へと、四人で駆けていく。
 その男性はこちらに気付く様子もない。周囲に人がいないこともあり、接近は容易だった。しかしてシロモが男性の肩を叩く。
「もし、そこの方」
「え?」
 突然肩を叩かれ、男性がこちらを振り向いた。その仮面の瞳は、赤い。
「怪しいものではありません、しばし――」
 シロモが声をかけている間に、残りの三人で男性を取り囲む。だが、次の瞬間だ。男性が顔を抑えて苦しみだした。
「う、あ、あ……!」
「な!?」
 その行動に目を見張ったシロモが、すぐに飛び退く。男性の仮面から黒い靄のようなものが放たれ始めたのだ。
 男性は四人に向かってめちゃくちゃに手を振り回している。まるで何かを遠ざけようとしているかのようだ。
「あぁ、く、くる、な、くるな!」
「お、落ち着いて下さい!?」
 シャオが慌てて声をかけるが、男性は収まらない。その間も靄はどんどん出てくるが、四人を避けるようにして、しかし間を抜けることも出来ずに男性の周囲に留まっている。
 そして。
「あ――!!」
 男性が叫ぶと同時に、再び靄が仮面に吸収された。程なくして仮面がひとりでに剥がれ、空高く飛んでいく。
 あまりの事態に言葉を失っていた鞍馬天狗が、ぽつりと呟いた。
「飛んでいった……?」
「あれが『原初の呪面』……」
 シャオも呆気にとられ、空を見上げていた。
 確かに境界案内人は「この場では捕らえられないだろう」と話してはいたが、この逃げ方は予想外だ。
 ぽかんとする一行。その四人に取り囲まれて、顔が顕になっていた中年男性は、はっと顔を押さえると駆け出した。
「う、うわっ」
 そのまま町の外へ向かって駆け出していく。それを見た町の人々が、その男性をすぐさま追いかけ始めた。
 きっとあの男性は、町の人々に捕まって「無貌者」として扱われるのだろう。その様子を見ていたシロモが、ゆっくり呟く。
「あの方は……どうなるのでしょうか」
「分からない……だが、この町の呪いは、これで収まるだろう」
 芹奈もやりきれないように頭を振った。「原初の呪面」を取り巻くこの事件、確かに一筋縄では行かなそうだ。

成否

成功

状態異常

なし

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