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シナリオ詳細

<Liar Break>お前たちを信じている
<Liar Break>お前たちを信じている

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●貴族邸にて
 セバスは慌てていた。
「た……たっ……」
 セバスは、慌てている。
「たたたた……」
 セバスは、とても、慌てている。
「大変にございますぅぅううう!!!!!」

 バーン!

 此処は貴族邸、執務室。館の主である貴族が、日々の雑務をこなす重要な場所であり、屋敷の中核ともいえる場所でもある。
 ノックも無しに入室など到底許されることのない部屋であるはず、なのだが。
「どうした、セバス。お前がそのように慌てふためく姿など見たのはいつ以来だ?」
 扉が吹き飛ぶかという勢いでダイナミックに入室した自身の執事、セバスを主人は咎めない。
 主が寛大なのか、それとも二人の関係はそれほどまでに深いものなのか。
「た、大変でございますッ! 宝物庫に盗賊が!!」
「……ふむ。被害を申してみよ」
 執務に使う金を取りに宝物庫へと入ったセバスは、目の前に広がる光景に愕然としたのだという。
 気絶した数人の衛兵。
 棚は無造作に全てが開けられ、宝物箱はもちろん空。
 金など一片も残っているはずはなかった。盗賊とは、そういうものである。
「何、いいではないか。金なら他にもある。今は、幻想の包囲網が優先だ。そうだろう?」
「し、しかし……」
 主の言うことは最もではある。
 今は幻想全体が一丸となってサーカスへの包囲網を形成している。そちらへの力をこちらに回すわけにはいかないのだ。
 だが、だが。
 しかし、しかし。
「しかし、主様。一つお伝えしたいことがございます」
「よい。他ならぬお前からのものだ、気にせず申してみよ」
「……おふとぅんまでもが、盗み出されたのでございます」
「…………」

 ヒヤリ

 執務室の空気が一変した。
 気温が数度下がったかのようだ。先程まで穏やかだった空気は、まるで針のようにちくりちくりと肌を刺す。氷のように冷たい部屋。
 ああ、主様は、怒っていらっしゃる。

「セバスよ、兵を集めよ。総出だ。私自ら取り返してくれる」
「!? お、お待ちください、主よ!! なにとぞ、何卒ッ!!!!!!」
 セバスは椅子を蹴倒し、破壊して部屋を出ようとする主を体を張って止めるのだった。

●ギルド・ローレットにて
『という次第にございます。どうか、どうか皆さまのお力をお貸しください。
 今まで数度お世話になった仕事ぶり、忘れてはおりません。
 主様にも「奴らに頼むのなら、それでよい。私は包囲に集中しよう」とおっしゃっていただきました……どうか、どうか。
 何卒、よろしくお願い申し上げます。薄汚い盗賊めから、我々の宝物を取り返してくださいませ。

 セバス』

 それはいっそ悲壮感さえも感じさせる依頼書だった。
 イレギュラーズたちはこくりと頷く。財政力を失った貴族など、その先やっていけるわけがない。
 周囲の貴族たちにいいようにあしらわれて、終わりだ。
 幻想全体が一致団結して包囲を強めている現状、そちらに割く余力は極力少なくしなければならない。つまり必要なのは、事態を一刻も早く収束させることだ。

 そして、その依頼書。セバスの名の後に書かれた一筆。

『お前たちを信じている』

 律儀なセバスの文字とは違い、どこか力強さを感じる達筆な文字。これは、おそらく貴族直筆のものだ。
 応えねばならない。
 今回の件の最大の功労者であるギルド・ローレットを信じている、と。
 貴族は家の、その先の。
 
 自身の全ての未来を託したのだから。

GMコメント

 こんばんは、鉈です。
 逃げる盗賊を追い、宝物を奪還しましょう。

●成功条件
 速やかに、盗賊「砂蠍」が盗み出した貴族の財産を奪還すること

●補足
 盗賊はアジトへ向けて移動中。
 居場所はおおよそ特定済み、人数は不明。
 しかし、宝物庫の大きさや盗まれた金品の量から、それなりの数がいると思われます。
 倒されていた衛兵も、一瞬で気絶させられた為に「武器を持っているのは確かだ」ということくらいしか覚えていないようです。

 よい冒険を、ご縁がありましたらよろしくお願いします。

  • <Liar Break>お前たちを信じている完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年07月02日 21時15分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ジョゼ・マルドゥ(p3p000624)
ノベルギャザラー
リノ・ガルシア(p3p000675)
宵歩
江野 樹里(p3p000692)
ジュリエット
ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)
暗躍する義賊さん
ミア・レイフィールド(p3p001321)
しまっちゃう猫ちゃん
コゼット(p3p002755)
跳兎
ティアブラス(p3p004950)
自称天使
村昌 美弥妃(p3p005148)
不運な幸運

リプレイ

●盗まれた宝を追いかけて
 さんさんと降り注ぐ太陽の元。日照りでひび割れた地面を踏み締め砂埃を立てながら走るのは、8頭の動物たち。
 馬の蹄の音に混じって聞こえる少し変わった足音は、数頭混じるパカダクラのものだ。
「サーカスのどさくさに紛れてロマンがねぇことしやがるなぁ!」
 『ノベルギャザラー』ジョゼ・マルドゥ(p3p000624)は、馬の上で青と黄の瞳を細める。
 どうせやるならもっとロマンのあることをしてほしいものだ。それが誇大妄想であっても。
 世界をこの手に! とか。
 しかし、起こった事件は窃盗というごくごくありふれたもの。
 ローレットの努力によってやっと完成させた幻想の檻。サーカスに鉄槌を下すそれを崩さない為に尽力しているというのに、どさくさに紛れて邪魔するなどとは。
「それなら、炎と煙に巻かれる覚悟は決めてるだろ!」
「はぁ……あのおふとぅん、作るのに随分苦労したのよねぇ。だから、煙と炎は勘弁して頂戴」
 憤るジョゼに気怠げな声を返すのは『撃墜王(エース)』リノ・ガルシア(p3p000675)。
 彼女がこの依頼に参加したのは他でもない。今回盗まれた貴族の財産。その中に、彼女が依頼で作った”おふとぅん”が混じっているのだ。
 皆で協力し、森の鳥を集め。慣れない仕事もして散々苦労して作り上げた一品。
「それなのに横合いから掻っ攫われるなんて……お仕置きされたって文句言えないわ」
 昼で眠いはずの彼女の眼光は、いつになく鋭い。獲物を追いかけて刈り取る捕食者の目だ。
「世界に一つ、自分だけのもの……実に心が躍る…の」
 『しまっちゃう猫ちゃん』ミア・レイフィールド(p3p001321)は、耳をぴくりとさせながらおふとぅんへと想いを馳せる。
(特注品…一点物…レア…)
 ミアはレア物が大好きなのだ。しかもそれが、世界で一つしかないもの、ともなれば。
 その価値はどれだけのものか!
 依頼を受けた1イレギュラーズとして。そして、配達員として。何としてもレアおふとぅんを送り届けてみせる。
 そう決意したミアの鼻が、足跡の先に微かな匂いを捉えた。今通っている道は、使われなくなった街道。本来であれば誰も通らない道だ。間違いなく、盗賊のものだろう。
 それを皆へと共有すると、急いで馬を進める。
 そうして見えてきた盗賊たちの馬車ににこりと、彼女は屈託のない笑みを浮かべた。
「レアおふとぅんのお届け…お待ちください…なの!」


●追跡者
「これだけあれば、当分は大丈夫だな!」
「へっへっへ、違いねぇ」
 揺れる馬車の中。盗賊たちは、想像以上の稼ぎに邪悪な笑みを浮かべる。
 国をあげての一大事とやらのどさくさに紛れ、これ幸いと貴族の宝物庫に押し入ったのだが。まさか、ここまで財宝が眠っているとは。
 今日の貴族には珍しく無駄遣いはしないタイプだったのかもしれない。
「おい手前ェら、アジトに着くまでは油断するんじゃねェぞ」
「おう! お頭」
 宝物を満載したいくつもの荷馬車。先頭の積み荷部分に乗っている一人の盗賊は、身を乗り出して浮かれる仲間を制する。
 「お頭」と呼ばれたその男は、スキンヘッドに傷のある顔。そして山のような体躯を持っていた。
 その佇まいは、この中の誰よりも彼が強いことを想像させるには容易である。
 しかし――
「あ?」
 
 ガクンッ。

 今まで安定して盗賊と積み荷を運んでいた荷馬車の床が、突然強い衝撃と共に傾いた。流石の頭も揺れにたたらを踏む。
「なンだ、重さにイカれちまったか? 降りろ、邪魔だどけ」
 盗賊の頭は部下たちを押しのけ、真っ先に地上へと降りる。それに続くように急停止した荷馬車から次々に降りる盗賊たち。
 しかしそこで彼等が目にしたのは、破壊された馬車の車輪に、脚をくじいたのか動けなくなっている数頭の馬。
 ――そして、微かではあるが規則的な地面の揺れ。まるで、そう。馬が走るかのような……それも、背後からだ。
「くそっ。敵襲だ! 備えろ、武器を持て! さっさとしねェと飯のタネと一緒にタマまで取られちまうぞ!」
「「「おう!」」」
 頭は周囲を見回すと、苛立ちも露わに小さく舌を打つ。
「ちっ、数人持ってかれたか……」
 質より量。数は力。見えてきた追手の数より盗賊の人数は多いものの、頭数が減ったのは単純に戦力が減ったことを意味する。
(せっかく手引きして貰ったってのによォ)
 内心歯噛みする頭の周囲で次々に武器を手に身構える男たち。その間にも、地面の揺れはどんどん大きく。そして追跡者たちの姿もはっきりと見える距離まで近づいてきていた。
 もう逃げられない。それなら、決死の覚悟で立ち向かうしかない……そう決意した盗賊の頭のすぐ真横を、一筋の閃光が音もなく穿った。



 ミアの構えたレールガンから放たれた閃光は、数瞬遅れで轟音と共に盗賊たちを吹き飛ばす。綺麗に荷の積まれた馬車を避けているのは「せっかく取り戻す宝を傷つけないように」という彼女なりの配慮だ。
(お布団は破かないよう…注意しないと…にゃ)
 おふとぅんはデリケートであり、尚且つ一点物。傷付けでもしたら一大事である。

 そして同時に、馬車を引いていた馬や馬車本体の車輪が次々に破壊され。数人の盗賊が『不運な幸運』村昌 美弥妃(p3p005148)の放った遠術によってダウンする。盗賊たちは頭数を削られただけに留まらず、移動手段を完膚なきまでに破壊された形だ。
 ちなみに全ての攻撃は綺麗に積み荷を避けている。幾度の戦場を潜り抜けたイレギュラーズたちの実力は本物である。
 
(人質や物質は動かせるからこそ意味があるのです。動けなくなればそれは単なるお荷物にすぎません…)
 『ジュリエット』江野 樹里(p3p000692)は盗み出した積み荷を置いて逃げることのできない盗賊たちを見て、自分たちの考えが正しかったことを確信した。
 逃げるにしても、積み荷は持って逃げなければ意味が無いのだ。無論、少なければ問題は無いのだが……今回の宝は大量。これを置いて逃走することなどできるはずがないのだった。


「怖ぁいイレギュラーズが悪い子を捕まえにきたわよ」
 イレギュラーズたちは遂に盗賊に追いついた。
 リノは馬を降りると威嚇するように彼等を見つめる。いい加減、おふとぅんを盗まれた上に追跡に時間をかけられてやきもきしていたのだ。
 敵の数は20人程。武器は刃物がほとんど、数名が遠距離武器を持っている……。
「逃がさないのです」
 そんな彼女から逃げようと体を反転させた数人の盗賊がいたのだが。既に背後に回り込んでいた『悪い人を狩る狐』ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)が逃がすまいと立ち塞がった。
 リノよりは幾分小さいものの。彼女の視線に込められた迫力に、盗賊は思わず足を止めてしまう。
 
 盗みを働くのは、民を虐げることを是とするような者に対して行われるべきであり、
 ――そして、今回の依頼主はそれに含まれない。
(自身の財産よりも、幻想の檻を優先してくれる……そんな良い貴族さんから宝物を盗んだ盗賊は、懲らしめないといけませんね)
 白と黒。対になる銃を両手に携え、彼女は臨戦態勢をとった。

 完全に包囲された盗賊たちに、もう逃げる道は残されていない。
 盗賊とはいえ自ら死にたい者もいないのだろう。手にした武器を震えながらも握り締める。
 大人しく積み荷を手渡すつもりは毛頭ないらしい。

 じりじりとした間。交差する視線。
 聞こえるのは盗賊たちの荒い息遣いと、怪我をした馬の嘶く声のみ。

 まさに一触即発。その睨み合いを終わらせたのは――
「さァ、景気よくブッ殺されてェヤツは前に出なァ!!」
 ジョゼはギリギリまで引き絞った弓のように緊迫した空気を破り、勢いよく地を蹴った。
 それが戦闘開始の狼煙になったのだ。

●宝物を取り戻せ
「うおおお!」
「ぐっ」
 キィン!
 金属と金属がぶつかり合う甲高い音。その一撃で、盗賊の持つ剣にぴきりとヒビが入る。
 魔力撃。ジョゼが得意とする、剣に魔力を纏わせて斬撃を繰り出す技。
 呻き声も勿論、盗賊の物だ。受け止めきれずに腕を炒めたのだろう。
(敵の数は20人、この調子だと援軍は無いみたいだな!)
 盗賊たちの顔には恐怖と焦りがありありと浮かんでいる。余裕がないことの現れである。

 そうして鍔迫り合いになったジョゼ。そんな彼に両側や背後から剣を振りかざして攻撃を加えようとした盗賊たちが、数度見た閃光といくつかの遠術によって地面へと倒れ伏す。
「さんきゅな!」
「お互い様…にゃ!」
 剣を合わせた盗賊を蹴り飛ばすと、ジョゼは次に向かってくる盗賊へと向き直り剣に魔力を纏わせる。
(数が多いな、どこかで一網打尽にできりゃいいんだけど)

「ぐはっ」
「あら、どこを見てるのかしら?」
 リノの【誘惑】に耐えかねた盗賊が、彼女の背後からの一撃にふらりとよろめく。
 盗賊は男ばかりで女は含まれていない。そんな状態で誘惑などされようものなら、戦闘中とはいえ視線を逸らしてしまうのは仕方のないことなのだ。
 だって男の子だもの。

 膝をついた盗賊は、どこからともなく風のように現れた『孤兎』コゼット(p3p002755)が肉薄し、オーラソードの一撃でトドメを刺す。
「こ、このっ!」
 仲間をやられた盗賊が彼女に斬りかかるのだが、そこには既にコゼットはいない。今、確かにそこに居たはずなのに。
 ――忍者とは、忍ぶもの。不意打ち闇討ちはお手の物。
 そんな彼女を目で追えないのは、当然といえば当然なのだろう。


 盗賊たちの背後側でも、また別の戦いが繰り広げられている。
「なるほど、それですね!」
「クソッ」
 盗賊の隠し持っていた黒色のナイフが宙に弧を描き、遠くへと飛んでいく。
 ルルリアは、貴族の雇っている衛兵が一瞬で気絶させられたと聞いた時から、何かしらの武器か術なのではないかと警戒していたのだ。
 そして、ドンピシャ。盗賊の一人が持っていた怪しげな刃物は、使った相手を即座に気絶させるアーティファクトの一品。
 頼みの武器を奪われた盗賊が最後に見たのは、空に展開する大量の魔法陣。そして、そこから撃ちだされる無数の魔弾だった。

 ちょっぴり離れた場所。戦場から命からがら逃げだそうとした盗賊は、シスター服を身に纏った女性と鉢合わせた。
「た、たす! 助けてくれ!」
 溺れる者は藁をもつかむ。盗賊も神頼みをすることがあるのだ。シスター……樹里はそんな男に、にこりと微笑みかける。
 彼女がこっそりと隠れていた彼に気づいたのは他でもない。『自称天使』ティアブラス(p3p004950)が、回復ついでに樹里に教えてくれたのだ。
 あなたはあの男を頼みます、と。
 ふふ、運が悪いですね。
「今日はとってもいいお天気ですね…♪」
 唐突な、支離滅裂な言動。そんなシスターに盗賊は微かな疑問を覚えるが、もう遅い。
「何を……う、うわぁぁあああ!!?」
 至近距離からの魔力放出。彼が見たのは自愛の笑みか、はたまた奈落の底か。
 少なくとも、対価として戦闘不能になったのはいうまでもない。
「お腹が空いてきましたね…」
 ぐー、と腹の虫を鳴らしながら。彼女は弱った盗賊へと手心無く攻撃を加えるのだ。


「っはぁ……くそっ」
 盗賊の頭は、肩で息をしながら周囲を見渡した。20人以上いた仲間は既に半分。それ以外は地面に倒れてしまっている。
 手にした武器も所々が欠け、疲労困憊。とてもではないが、このまま宝を持ち換えられる状況ではない。
「財宝を無傷で渡せば命は保証しましょう。その逆もまた然りですが」
 それでも油断無く武器を構えたルルリアは、彼等へとそう持ち掛けた。
 別に「盗賊を殲滅する」ことが依頼ではないのだ。盗んだものさえ返ってくるのなら、特に彼らに用は無い。

 しかし盗賊たちも、そう大人しく引き渡す訳が無い。苦労して盗んだものだ。それも、莫大な金を。
「…………」
 黙りこくる盗賊たち。恐怖に負けて逃げ出す者は、とっくの昔に気絶させられている。
「仕方ない、よね」
 何も言わないと埒が明かない。それを悟ったコゼットは、打ち合わせ通り。
 リノに足を折られて動けなくなっている盗賊をひょいっと持ち上げると、ティアブラスの前に放り投げる。
 どさっと地面に放り出された盗賊が、微かな呻き声をあげた。

●生より死よりも怖いモノ
「感謝します……と、皮剥きって知ってますか?」
 ティアブラスはコゼットとリノに礼を言うと、続けて盗賊たちに聞こえるようにそう問いかける。
「か、皮むきだと?」
「そう、お野菜や動物の皮を剥ぐアレです」
 理解が早くて助かります、と。彼女は笑みさえ浮かべて見せた。
 しかしその笑みは優しいものではなく。それは、その奥にあるものを取り繕う仮面のような。
「そ、それが何だってンだ」
 盗賊の言葉をまるっと無視して、彼女は鞘に包まれた何かを取り出す。
「交渉ですよ。盗んだものを返して頂けませんか?」
「……嫌だ、と言ったら?」
 盗賊が答えた瞬間。倒れて動けなくなった盗賊仲間に突き付けられたのは、錆びたナイフだ。
 一瞬、息を呑んだ頭も、そのナイフを見て小馬鹿にした笑みを浮かべる。
 そんな刃物じゃ殺せないだろ? と。
 すわ拷問でも始まるのかと、張りつめた空気が少しずつ霧散していく。
 が、しかし……
「……そうですね、人間皮剥きといきましょう」
 そんな何気ない一言と共に、盗賊の適当な箇所にあてがわれるナイフ。緩んだ空気がまたひやりと凍り付く。
「お、お前、まさか――」
「ああ、でもこのナイフだと『上手く剥けない』かもしれませんね。苦しまないようにして差し上げたかったのですが」
 彼女が浮かべる表情は、神々しい天使の微笑み。優し気なそれが包み隠すのは、果たしてどんな中身(モノ)なのか。

 実は周囲もちょっと引いていたりするのだが。彼女は気づいているだろうか。
 ……いや、ちょっぴり引いているのはジョゼだけかもしれない。
 美弥妃などは反撃が無いか警戒をしつつも、にこにこといい笑顔をしている。

「ひっ! た、助けてくれ!」
「安心して下さい、殺しは致しません」
 にこり。薄く笑って発した天使の言葉は、盗賊を震え上がらせるには十分だった。
 嗚呼、天使の何と慈悲深いことか。涙が出ますよ、本当。
「や、やめ――!」
 彼女の『交渉』は、コゼットの「生かしといても、いいことない、よね」という冷淡な言葉と。
 それに続いて武器を投げ捨て、盗賊たちが並んで綺麗に土下座をするまで続くことになるのだ。


 その後は、取り返したおふとぅんのふわもふ感が、ミアを筆頭に大好評だったり。何故かコゼットが頭だけを生け捕りにして持って帰ったりといろいろあったのだが。
 ――それはまた、別のお話。

●後日談
「前回に引き続き、今回もお世話になりました」
 依頼主である貴族の執事、セバスは、8人のイレギュラーズに頭を下げる。
 おふとぅんも財宝も、一つも傷つくことなく欠けることなく、手元に返ってきたのだ。
 これが感謝せずにいられようか。
「今度は、奪われないようにしてくださいな」
 リノは少し苦笑気味にそう返す。自らが作ったおふとぅんの為とはいえ、少しはりきりすぎてしまったかもしれない。
 各面々も「依頼だから、にゃ」とか「お腹が空きました」とか。元気そうで問題は無い。
「ありがとうございました。報酬は後ほど必ず……」
「少し、まって」
「何でございましょう?」
 報酬の話に入ろうとしたセバスをコゼットは引き止める。
 彼女には、セバスに……どちらかといえば、貴族に伝えなければならない重要な案件があった。
「耳を」
「……は」

 ごにょごにょ、ごにょごにょ。
 衛兵のGは、盗賊を屋敷に手引きした、内通者。

「な、なな……なんですとおぉぉぉぉおおおおっ!!!?」

 セバスのここ数日で二回めの叫び声が、屋敷中に響き渡るのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 GMの鉈です。シナリオ返却、大変お待たせして申し訳ありませんでした。
 お待ちいただいていた皆様には最大限の謝罪を。そして、参加していただいてありがとうございました!

 依頼の主目的を見誤ることなく、しかも密かに考えていた内通者の伏線まで回収されてしまうとは思いませんでした。ちょっと続くはずだったのにどうしてくれようか(くわ

 兎にも角にもお見事でした。
 また機会があればよろしくお願い致します。

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