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シナリオ詳細

<Liar Break>閉じた世界の陽炎ライムライト

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 マリーの涙は宝石のよう。
 マリーが泣けばなくほど、宝石箱が満たされていく。
 この世界はまるで宝石箱。マリアの涙を詰めるための、宝石箱。
 だから、世界をマリーの宝石で埋めるためにかわいそうでいっぱいにならないとだめなの。
 かわいそう、かわいそう、かわいそう、かわいそう。
 ひとはね。わたしのマリーを輝かせるためにあるの。ねえ、かわいそう。かわいそう。
 ひとってほんとうに、かわいそう。
 ねえ、マリー。
 もっと、もっと不幸になって。かわいそうになって。
 ねぇね、嘘つきマントゥール。そのためならわたしはなんでもするわ。

 幻想楽団『シルク・ド・マントゥール』の公演以後の、動乱から転じたのは『ノーブル・レバレッジ』と呼ばれた作戦だった。
 国王フォルデルマン三世はサーカスの庇護を取り消し、貴族たちの協力の元でサーカスの討伐指令が奔っている。各地での検問、サーカスを捉える檻は徐々に狭まるが……サーカスはそこで終わりではない。
 決死の作戦へと転じたのだ。団長ジャコビニをはじめ、『魔種』と呼ばれる彼らは狂気を伝播させていく。狂気が広がれば各地に混乱が起き、パンデミックを発生させた隙を付いてサーカスが逃亡する。
「サーカスはそろそろ終わりなのです。楽しいものはいつか終わりになるのです。……このサーカスが楽しいものとはもう言えないですが」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は愛用のメモを両手で持ちながら貴方達にそう切り出した。
「マリオネットとアルルカンがまた現れたのです」
 その名前を聞いたことがあるものはいるだろう。
 幻想楽団『シルク・ド・マントゥール』に所属する道化師『アルルカン』。白い髪に赤い目の神秘的な少女。
 神秘という言葉には語弊があるかもしれない。なぜなら彼女は魔種であるのだから。
「彼女らについては、コルクボードあたりをみてください。軽く情報収拾はできるのです」
 さて、本題だ。
 彼女らは新しい『ごっこ遊び』を思いついたらしい。サーカス団員とは言え、彼女らはどうにもジャコビニの下で働いているというつもりもなく、今回の『遊び』もただ、このタイミングであっただけの話なのである。
 とは言え放置はできないのも実情だ。
 彼女らは貴族の屋敷の西と東に分かれて、狂気を伝播させる『ごっこ遊び』をしている。
 マリオネットが今日もまた悲しみに暮れた。故に遊んであげてかわいそうを伝播して癒やしてあげる。結果更にマリオネットがかわいそうになっても、構わない。
 不幸にもその気まぐれに巻き込まれてしまった貴族とその子供がいた。

 彼女らは双子の貴族の嫡男を人質としており、父親や母親は屋敷には入れない状態となっている。
 少年たちは両親に溺愛されていたという事もあり、その身に危害が及ぶ事なきようにと貴族からは再三言い渡されているとの事だ。
「マリオネットは西から、アルルカンは東から順番にゆっくりと使用人に狂気を届け手駒を増やしているのです」
 二人はその西と東の部屋から中央の出入り口のホールに向かって行進している。目的はお互いの担当する兄弟が兄弟同士で殺害させあうこと。
 どちらが『わたし』を殺せるかしら? とはアルルカンの言。
 まるで自分たちのような双子を殺し合わせることで『かわいそう』を演出するのだろう。
「アルルカンもマリオネットと同じようにシンパをつれていて、彼女を護るように動くのです。本人をやっつけるのは相当の手間がかかるでしょうし、そのシンパたちを何人も殺さないといけないと思います……シンパたちもまだ戻ってこれる人たちなのです……今回の作戦に使用人たちの生死は問われません。それでも……」
 彼女ら二人は自らに危険が及ぶと逃げる傾向をみせる。それは極論サーカスがどうなろうと構わないということだ。
 今回の目的はあくまでも双子の奪取である。拘泥しすぎるのも危険だろう。
 なにせアルルカンの魔種としての能力はなにもわかっていない。
 『なにが起こるかも定かではない』のだ。
「アルルカンの『呼び声』に感染している弟はみんなが、呼びかけて、なおかつアルルカンがその場からいなくなれば元に戻れると思うのです。まだ間に合うとおもいます! 使用人さんと双子を救ってほしいのです!」
 そういってユリーカはぺこりと頭をさげた。


 ねえ、ねえ、どうしてあなたは弟だからって、兄より愛されなかったのかしら? 知ってる? あなたはもうおかあさんからもおとうさんからも見放されたの。
 おにいちゃんだって貴方のことを疎ましくおもってるわ。いつだってあなたはおにいちゃんのつぎ。この領地だって、継ぐのはおにいちゃん。そんなに広くはないけど綺麗でいいところ。なのに、なのになのに。
 あなたにはなにもない。かわいそうかわいそう。ただあとに生まれた。それだけで、おにいちゃんはこの領地をてにいれれるのに、あなたにはなにもない。
 あなたは大きくなってもなにもない。かわいそう。とてもかわいそう。だからね――。
 おにいちゃんをころしちゃいましょう! だったらぜんぶあなたのものになる。両親の愛も、領地も、なにもかも。
 もうおにいちゃんにたからものを奪われるのは、いやでしょう?
 
「うん、そうだね、おねえちゃん」

 おにいちゃんはあなたのことが大嫌いよ。だってあなたはおにいちゃんよりも足が遅いし、おにいちゃんよりもふがいないわ。おにいちゃんになにもかてない。かわいそう。
 だからね、おにいちゃんがいなくなれば、くらべられることもないわ。

 うふふ、マリーはわたしと同じなのに、呼び声は上手じゃないのね。かわいそう。どうしてかしらね?
 かわいそうなマリー。わたしみたいに上手にできたら――――だったのに。
 ええ、幸せよ。私はしあわせ。
 マリー、あなたもしあわせに、なりましょう?

 たいせつなたいせつなわたしのマリー。この世界はわたしとマリーのもの。
 それ以外は、マリーを輝かせるための道具にすぎないわ。

GMコメント

鉄瓶ぬめぬめです。やめ(菖蒲)GMとの連動依頼です。
 やめGMのところのお兄ちゃんをるんるん気分で殺しにいくのでとめてあげてください。

 ●成功条件
 人質の解放。
 そのほか使用人の生死に関しては問いません。

 ●ある貴族の屋敷
 領地は小さめですが皆、仲良く暮らしている貴族&領民となります。
 屋敷は横長で西側と東側にそれぞれ少し大きめの部屋が用意されていました。
 スタート地点は西の大きな部屋。中央の出入り口までおよそ40m。
 中央出入り口に到達しアルルカンとマリオネットが出会った場合人質を殺し遺骸を両親へと投げ渡して狂気を伝播させます。
  
 ●アルルカン
 通称はアルル。白い髪に赤い瞳の儚げな美少女です。どこか、マリオネットと似ています。魔種。
 白い綺麗なワンピースを纏い、世界をかわいそうと煽ります。
 大切なものはマリオネット。マリーがかわいそうになる世界を求めています。
 戦闘力は高く、耐久性はマリオネットほどではありませんが、それなりに。危険が及べば攻撃もしますが、その単体攻撃は並の防御力であれば一撃で戦闘不能になる火力です。
 周囲で誰かが死ねば、その分力は増していきます。一人死ぬたびに、攻撃範囲が広くなっていきます。(つまり一人殺せば単体攻撃で攻撃できる人数が1人増えていきます)
 基本的には攻撃されない限りは反撃はしません。

 ●アルルの呼び声
 人の妬み、嫉みを増幅し力にします。何らかの鬱屈した思いがそこにあれば、アルル呼び声に感染します。
 感染したものはかわいそうでなくなるために常に笑顔でわらっています。なにがあっても笑っています。笑顔の狂気。
 マリアにダメージが入れば、その分笑顔の狂気は深くなっていきます。シャーデンフロイデ。ひとの不幸は蜜の味。
 特異運命座標→マリアにダメージが入った量で、こちらのイレギュラーズもまた1Tごとに特異運命座標のFB値を上昇させていきます(マリアにダメージが蓄積していない場合は効果は出ません)

 ●『幸せ』なシンパ×10
 ニコニコ笑っています。彼らはアルルを守ります。
 戦闘能力はそれなりですが、殺さずを貫けばまだ呼び声から戻ってくる可能性はあります。5人「殺せば」アルルカンにもダメージが入るようになります。

 ●使用人たち(3mごとに5名追加)
 ぞろぞろと歩きます。特異運命座標が到着時点では10名の使用人を呼び声の効果に陥れています。
 戦闘能力はそれほどありませんが、皆、狂気に侵されて言葉が通じる段階ではありません。

 ●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 ●
 弟はお兄ちゃんと中距離範囲まで近づけば(10m)お兄ちゃんを殺すためにお兄ちゃんを攻撃するでしょう。
 弟はお兄ちゃんを妬んではいますが、殺したいとまで思ってしまったのは呼び声のせいです。


 アルルカンにはひとつだけNGワードがあります。そのワードを使うとどうなるかわかりません。

 面倒ではありますがどうぞ、宜しくお願いします。

  • <Liar Break>閉じた世界の陽炎ライムライト完了
  • GM名鉄瓶ぬめぬめ
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2018年06月28日 22時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (10人)

アルペストゥス(p3p000029)
煌雷竜
シルヴィア・テスタメント(p3p000058)
Jaeger Maid
春津見・小梢(p3p000084)
グローバルカレーメイド
オーカー・C・ウォーカー(p3p000125)
ナンセンス
暁蕾(p3p000647)
超弩級お節介
ジョー・バーンズ(p3p001499)
クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)
受付嬢
九条 侠(p3p001935)
無道の剣
黒鉄 豪真(p3p004439)
ゴロツキ
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ

リプレイ


 マリー、マリー愛しいマリー。
 あなたにかわいそうをあげる。イレギュラーたちが邪魔をするのでしょう? 為す術もなく死んでいく、死の小箱がこのお屋敷。
そんな死をみて、少年たちは心に傷がつく。傷ついて、傷ついてそのまま死んでしまう。
 ねえ、マリー、マリー、可愛そうでしょ? それでも貴方のほうがもっと可愛そう。だからね。だから。だから。
 泣いて。マリー。今から貴方みたいなお兄ちゃんを殺してあげる。
 そうしたら、マリー。マリー。貴方はそのかわいい瞳から涙をこぼすのね。受け止めましょう。世界で。世界はマリーのための宝石箱なのだから。


「使用人の生存も、アルルカンも撃破も、私には知ったことでありませんが。……請け負った人質救出だけは、完遂せねば……」
 『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)は眼鏡の向こうの目を細め、誰よりも早く入り口を抜けると悪趣味な行進に向かって走り出した。
「――信用に関わりますな」
 その言葉に魔力は宿り、使用人たちを引き付ける。
 彼我の距離は一気に縮む。アルルカンが進んだのは距離にして10mに満たない。しかし15人の使用人が増えている。
 アルルカンのシンパが寛治の動きを阻む。
「そう簡単にターゲットを抑えることは難しいということですかな」
(やはり取り逃したのは痛いな。今回も打倒は難しいだろう。……歯がゆいな)
(アルルカンに運命を操られてまたこんなことが……同じことは繰り返したくない……だめね。拘りすぎはいけないわ。それこそアルルカンに利用されてしまう)
 ジョー・バーンズ(p3p001499)と『彷徨のナクシャトラ』暁蕾(p3p000647)は作戦内容に焦燥感と歯がゆさを感じる。無理もない。相手は世界に毒する魔種だ。彼女らのやり方は……人間をまるでおもちゃのように扱うその手腕を見て、そして見逃したばかりなのだ。
「アルルカン、貴方はマリオネットを本当に愛しているの?」
「ええ、ええ、愛してる。私のマリー。とてもかわいい子。また私達の『あそび』を邪魔しに来たの? 知ってる顔ね。そのふたり」
 その言葉を受けアルルカンは花のような笑顔で微笑んで、かたわらの弟を抱きしめる。
「ひどいわね。貴方がお兄さんを殺すのを邪魔しに来たのだって。にくいにくいおにいちゃんを殺す邪魔をするなんて……あなたはほんとにかわいそう」
「そんなの聞いちゃだめ! ねえ、本当に殺したいとまで思ってるのかな?お兄ちゃんのことを」
 『カレーメイド』春津見・小梢(p3p000084)はディフェンドオーダーを展開しながら、弟少年に声をかける。
「あ、お兄ちゃん、お兄ちゃんは……僕を、僕は……」
 弟が反応を見せる。しかし彼らの手段(オーダー)は弟の無力化だ。説得ではない。
「ははっ、往々にしてさ、世界ってのは笑い話で滅びるもんだ。かわいそうかわいそうって、こんなバカバカしい笑い話で滅びる方の世界の身にもなってみろっての!」
 『Jaeger Maid』シルヴィア・テスタメント(p3p000058)は千分の一(サウザンドワン)の銃口から硝煙を立ち上らせながら、使用人を撃ち抜く。
「……」
 『煌雷竜』アルペストゥス(p3p000029)は思う。ヒトの形をした魔種を見て。なんとも美しいカタチではある。輝く白い髪に宝石のような赤玉の瞳。なのにどこか歪だ。
 その歪は狂気。アルペストゥスにはわからない。が、その狂気という概念は、ヒトの持つその美しさを損なってしまっていると思う。
 ――彼女は、なにが楽しいのだろう。
 乳白の羽をはためかせ宙に浮き、魔砲を放つ。砲撃の直線状にいた使用人達は焚かれていく。
「邪魔するんじゃねぇよ! 聞こえちゃいないんだろうがな!」
 作戦は彼らの死も厭わない。それだったはずだ。しかし『ナンセンス』オーカー・C・ウォーカー(p3p000125)は不殺を貫く。群がり来るシンパたちをその鍛え上げられた鋼の拳で殴り倒す。殺さねばもしかすると彼らはまたアルルカンの呼び声で起きるかもしれない。わかっている。でも、彼は命の奪い合いを弟の前で見せたくはなかったのだ。自己満足であるのかもしれない。それでも彼は己の信念に従う。
「それにしても、なんつーか、胸糞悪いシチュばっかりよくおもいつくよねー、おーい、いっちゃうよー」
 『名探偵』クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)は眠そうなぼんやりとした双眸でアルルカンを見つめながらつぶやき、その己の奥に渦巻く悪意をカタチにしたかのような花を咲かせる。
 ロベリアの花。目のさめるような藍色の可憐なその花の花言葉は貞淑と――悪意。
 使用人たちは為す術もなくその濁流に飲み込まれる。なんとか弟とアルルを巻き込むことはなかったが、有効範囲は広く、この回廊の広さを超える。前衛が数人巻き込まれてしまうのは仕方ないだろう。事前に声を掛けていたので多少は仲間たちも対応はできてはいるが、ダメージは否めない。幸いだったのは使用人たちの攻撃力がそれほど高くないというくらいだ。
 彼らはその悪意に飲み込まれ確実に動きを悪くさせている。しかし呼び声の魔力によってその苦しみは幸せに変換されていく。使用人と、シンパの笑みが深まっていく。
「あーいう、精神を汚染する様な相手との交戦記録は爺さん達の戦闘記録に残ってたが……目の当たりにすると、胸糞悪いもんだな」
 助ける命を選ぶ。それは今まで何度もやってきたことだ。慣れている。
 しかし、その業腹とする気持ちにこころは軋む。それが『無道の剣』九条 侠(p3p001935)という少年だ。慣れていたとしても確実にその毒は心を蝕んでいく。その毒を受入れるには少年はまだ年若い。
 ――なあ、爺さん……俺は強くなっていっている。なのに足りない。俺らはどれだけ強くなったら、満足出来るんだろうな。
 彼の言う強さは「心」か「技術」か。
「……リベリスタ、九条 侠。推して参る」
 彼の世界での名乗りを彼はこの世界でも使う。それは彼が元の世界に還りたいと望む挟持であるから。
 少年は死の乱舞でもって彼ら、使用人に飛び込んだ。笑顔、笑顔、笑顔のまま使用人は死んでいく。なんと、なんと幸せそうであるのか。
 相手の意志を捻じ曲げ、狂気を齎し、拡散していく。それが『ゴロツキ』黒鉄 豪真(p3p004439)には我慢ならなかった。
 人間は人形ではない。ニンゲンだ。狂気なんていう甘美なそれを他人に齎されるだっテ? 馬鹿言うナ。
「狂気ってのは自分で生み出しテ、そこにてめぇで飛び込んで、そんで、凶行に及ぶもんダ」
 誰かに与えられるものなんかでは、決してない。
 正直この人形劇がどう転ぼうが彼には関係ない。兄弟喧嘩? んなもん知るか。俺は俺であるために、邪魔をするだけだ。

 彼らの初動はおおよそにおいて問題はなかった。人数が多いのは理解していた。相手が動き、陣形が浸透される前に、切り込む。範囲攻撃が味方を巻き込むのもコラテラル・ダメージとして認識していた。
 しかしターゲットであるアルルカンと弟を巻き込まないように攻撃するには、敵集団にたいして浅くしか攻撃を浸透できないのだ。使用人たちは二人を取り巻く壁である。範囲攻撃によって前衛が喪われても後衛から前衛に補充され、イレギュラーに相対する。
 シンパたちは簡単に彼らイレギュラーズをターゲットの至近距離には行かせない。逆にブロックをされてしまうのだ。
 そうする間に、アルルカンは嬲るようにゆっくりと、ゆっくりと前に進み、感染者を増やし失った手駒を補充する。しかしその人的材料は無限ではない。アルルカンは敢えてイレギュラーズに近づき範囲攻撃を撃ちにくくさせた。
 しかしそれはいうなれば好機。彼らはなし崩しに、二人をブロックすることができるチャンスを得、行軍は止まる。兄との彼我の距離はおおよそ15メートル。余裕はある。だが予断を許さない距離とも言える。しかし使用人たちが足や腕にすがりつき邪魔をするのは厄介である。
「ねえ、またひとり、ひとり死んだわ。かわいそう。ねえ、あなた。あなたの所為よ。あなたがお兄ちゃんを殺したいから、人が死ぬの。かわいそう」
 アルルカンは嘯く。もっともっと呼び声を深めていくために。
「ふざけないで!」
 暁蕾がグリモワールを掲げ声を荒げマギシュートを放つ。笑顔のシンパはまるで神に赦されたかのような笑顔で、アルルカンに向けられた凶弾を受け止め絶命した。残りのシンパは5人。アルルカンに攻撃が通る頃合いだ。
 できることならこのまま魔弾で撃ち抜いて、アルルカンを殺してやりたい。だがそれはできない。
「貴方は、愛されなかったわけじゃないわ」
 心のささくれを抑え、暁蕾は言葉を続ける。届かなくてもいい。それを言うことに意味があるから。
「人にはそれぞれの役割がある。貴方には貴方の役割が。お兄さんと違うからって悲観しなくてもいい。兄弟はそれぞれに違う観点と立場から互いを助け合う。そうなってほしいとご両親はおもっているはずよ。だって、貴方のご両親は兄弟揃って無事に取り戻してくれって私達に頼んだもの」
「それはどうかしら? 体裁というものはあるでしょう? かわいそうにあなたはお兄ちゃんの、ついでよ」
「全く手こずらせてくれる、アルルカン」
 味方の回復に手をとられているジョーはそれでも不敵に笑う。
「一番哀れなのは貴様だろうにアルルカン。幸せになりたくともなれず、幸せにすることも出来ない道化め」
「哀れ? 私が幸せになりたいと思ってると思うの? 幸せにしてあげたいと思っているとおもうの? 面白いわ。面白い冗談ね。私はね、みんなみんなかわいそうになってほしいの。かわいそう、かわいそうって言えるでしょ? そうしたらマリーも同じようにかわいそうになっていくの、傑作でしょ? ねえ、私を何だとおもっているの? 人? そうね、姿は人。勘違いしないで、下等動物。私は、魔種よ?」 
 話の通じなさに寒気がする。これが魔種の考え方か。魔種はヒトとはその感覚が大きくずれている。
人の倫理として間違えていることでも、彼女らにとっては間違た倫理ではないのだ。死は、苦しみは、そして、嫌悪は、悪徳は彼らにとって世界を穢す崇高なこと。
 ジョーはそれでも状況を冷静に判断し、退路の準備をアルペストゥスに目で合図する。話は通じない、しかし興味は引けた。気を引き続けていればあとは仲間がなんとかしてくれるだろう。
 最も二人に近い場所にいる寛治は無言で頷いた。豪真と小梢、侠とも目配せし、弟を無力化するタイミングを図る。オーカーはさり気なく移動して回り込み、衝術の準備を整える。
 それを受けたシルヴィアは声を張り上げアルルカンの意識を自分に向けさせるように言う。
「不幸を嘆くのはいい、取る手段にしたって人それぞれだ、それだけで全否定はしないさ。だがなぁ、もう少しマジメにやれよ」
「真面目?」
「こんなもんは手慰みだって、分かってるんだろう?」
 シルヴィアがニヤリと笑む。本気なんて出していないんだろう? お前はこの遊びが成功してもしなくても構わないと思っている。だから詰めが甘いのだとそう言外に込めて。
「アルルカン、貴方はマリオネットを本当に愛しているの?」
 暁蕾が問いかけた。
「ええ、ええ、愛してるわ。愛しているの。かわいいかわいい私のマリー」
 恍惚した笑顔になった瞬間、オーカーが衝術で、弟を味方のいる方向に吹き飛ばした。
「新田! 頼んだ!」
「えっ?」
 アルルカンが、彼らの目論見に気づいたときには遅い。
「おまかせあれ、少々痛いでしょうが、それはそれとして、先に謝っておきますね」
 寛治に群がる使用人を豪真の精密な射撃と侠の双剣が排除する。その瞬間を待ち、寛治は弟のみぞおちに拳を放つ。年端もない少年はその一撃で意識をなくす。
「終わったらカレーおごってよね。いい仕事するんだから!」
 その瞬間。梢がタックルをするように弟を奪うと窓に向かって駆けて行く。
「……グラァァァウ!」
 大きく呼気を吸い込んだアルペストゥスがその喉奥に光を灯す。その魔光は口の中で膨張し広がり、まっすぐに進行上の使用人ごと壁を焼き尽くし壁に大穴を開けた。
「かわいそう、かわいそうって本当はマリーに憬れて妬ましいからかわいそうになって貰わないと困るんでしょうー」
 ぴきり。小梢を逃がすためにクロジンデが気を引こうと『それ』を口にした瞬間空気が変わる。
「そこのちいさいの、あなた今なんて言ったの?」
「マリーに憧れて羨ましいんだろー」
 踏んだ。アルルカンにとって最も許せない、その一言を。
「私以外がマリーをマリーって呼んでいいとおもってんの? ふざけるな! このニンゲン風情が!! ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな」
 アルルカンの白い髪を巻き上げるように朱い旋風がふきあげる。
 この状況で、マリオネット側もこちら側も相当数の使用人とシンパを殺している。
 もし、その言葉を弟と、そして兄を両方退避させたあとに紡いでいたのなら問題はなかった。だがクロジンデは運び出す援護として気をひくために、その地雷を踏み抜いてしまったのだ。
「みんな死ね! 死ね! 死ね! 死ね!!!!」
 その怒りの波動は、アルルカンを中心に広がっていく。何人殺したか。10人、20人ではない。その効果は兄側のイレギュラー達にも広がっていく。無慈悲に、人を殺した分だけ、そのフィールド全体に広がっていく。
「危ない!」
 庇えば、自分は倒れてしまうだろう。そんなことは関係なかった。ジョーは、小梢ごと少年を庇う。最低限。最低限の手段だ。
 
 その嵐の後、立っているイレギュラーズはいない。のこっていたシンパも、軒並み死んでしまった。立っているものはもういない。
 
「うそ、どうして?」
 アルルカンが呆然と呟く。その朱い瞳の向かう先には兄を庇った、マリオネットがいた。
「どうして? そんなちっぽけなニンゲンを庇って、マリーが傷つくの? 意味がわからない」
 その背中を、満身創痍の侠の双剣が切り裂く。
 倒れたはずのイレギュラー達は、いつの間にか全員立ち上がっている。己が運命。己がパンドラに祈り、一度はアルルカンの凶刃に倒れたが立ち上がったのだ。それは執念、そういったものだろう。
「もう暫く付き合って貰うぜ」
 もう一度同じ刃を向けられたら、自分たちは再度倒れるだろう。それは侠も理解している。自分は今からこの少女のの形をした魔種に挑まなくてもいい戦いを挑み負けるのだ。しかしそれは無駄ではない。次に繋げるその前哨戦。
 視界の端でアルペストゥスとオーカー、ジョーと小梢が弟を確保し、大穴から抜けていくのが見えた。時間を稼げているのならそれで構わない。
「我ながら、とんでもない地雷をふみぬいちゃったぜー」
 クロジンデはそれでも諦めない。
「しってるかー? 他人を下げても自分は1mmも上がらないのにねー」
「お前は、お前は殺してやる! 殺してやる!」
 アルルカンの爪が伸びクロジンデの中心を貫く。
「かはっ…ッ」
 口元から血を吐きクロジンデは動かなくなる。
「クロジンデ! おい! しっかりしろ!」
「チッ、しょうがねぇなァ、無茶しヤがっテ!」
 シルヴィアはこれ以上の攻撃をさせるまいと威嚇攻撃をアルルカンにしかけ、時間を稼げばその体を、豪真が横から掻っ攫い、避難させる。
 アルルカンは興味なさげに一瞥するとマリオネットのいる場所に歩き始めた。
「待ちなさい」
 暁蕾がボロボロの姿で両手を広げて立つ。足止めしてどうするかは考えてはいなかった。だけれど、彼女の魔手にかかったものを思えば、そうせざるを得なかったのだ。
 きっと何もできないだろう、それでも彼女は魔力を放出してアルルカンの動きを阻害する。
 その魔力の本流にアルルカンは片腕を吹き飛ばした。彼女は何事もなく自分の腕を拾うと暁蕾の横を通り過ぎマリオネットに向かう。
「やめて、やめてよ、マリー。どうしてそんなくだらないものを抱きしめているの? あなたの手はそんなものをだきしめていいわけがないのよ」
 その姿をみて、暁蕾は二度目の攻撃をためらう。
 まるで泣きじゃくる少女に見えたからだ。
 その背中に寛治は告げる。
「もっともっと、と不幸を求める。その欲望は無限だ。言い換えれば、求めても求めても貴女は満たされない。満たされないアルルの、なんと不幸な事か!」
 アルルカンはピクリと肩を震わすと振り向く。
「そうよ、私はね。私達は。『強欲』なのだから」
 そういって、アルルカンは笑って、マリオネットを抱き上げると、いとおしげにマリオネットに頬ずりすると、その場からかき消えた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736) [重傷]
受付嬢

あとがき

参加ありがとうございます。
NGワードはマリオネットをアルルカンの前で「マリー」と呼称することでしたそれ以外の煽りはアルルにとって何の意味もありません。アルルカンは誰よりも何よりもマリーを愛しています。それだけは嘘付きマントゥールの彼女の中での唯一の真実になります。その愛が歪んだ形になっているのは魔種故です。

また、このような形でNGワードを設定する場合はNGワードそのものでない限りは「NGワードを利用する」という書き方では発動いたしません。脳内当てのようになって恐縮ではありますがその場合のヒントはOP上に散りばめてあります。
使用することでどうなるかわからないと言っている場合は大体において幸運な状況になることはありませんのでご注意くださいませ。

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