PandoraPartyProject

シナリオ詳細

白兎を追って

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●パーティ跡地
 白いウサギ耳の生えたパーカーの少年と何でもアリなんて破天荒なパーティをしたあの日。
 依頼と言えど、楽しんで別れを告げた皆のことを思い起こしてふと、『ネクストアイドル』三月うさぎてゃん(p3x008551)はパーティ会場の跡地へ赴いていた。
「……あれ?」
 そこには一匹の白いウサギが、草を食んでいた。
 何の変哲もない、ただのウサギ。だが、この場所にはモンスターどころか動物さえもスポーンしないようなところだったはず。
 うさぎてゃんは屈んで、そっと白いウサギに触れてみる。
 ふわふわとした毛並みの感触とぬくもりが手のひらから伝わり、うさぎてゃんの目がキラキラと輝いた。
「あなたはどこから来たの?」
 その問いに答えようとしたのか、ウサギは草を食むのを止めてどこかへ走り飛ぶ。
 後を追いかければ、ある一店でウサギは止まる。そこは、パーティをした時の会場のテーブルが置いていた辺り。
 もしかして――と、少しの期待を込めてうさぎてゃんはあの時と同じように今はないステージで、パフォーマンスをする。
 たった一人の観客に見てもらうために。


「……と言うわけで、練習をいつも見に来てくれる白ウサギがいないの! 一緒に探してほしいんだ」
「こほん、改めて君たちにお願いするのは白ウサギの捜索という依頼だよ」
 『黒猫の』ショウ(p3n000005)が、依頼の内容を説明するために仕切り直す。
「場所は以前、別件の依頼であった、モンスターもポップしないような草原なんだけれどね。そこに白いウサギが出現したらしくて……その白いウサギが突然、姿を現さなくなったらしい」
 R.O.Oというバーチャル世界である以上、自然や動物などの寿命などは恐らく設定されていないだろう。
 ということは恐らくどこかへ行ってしまったと考えることが可能性として一番高いだろう。
「いつもパーティ……えっと、その草原辺りにいたから、すぐ見つかるかと思ったんだけれど、なかなか見つからなくて……。もしかしたら、もっと遠くへ行ってしまったのかもしれないの」
 お願い! と、うさぎてゃんは真剣な表情で集まったメンバーを見る。
「白いウサギの痕跡も、何かしら見つかると思うから、根気よく探して欲しい。モンスターもでない平和な草原だからゆっくり探してみるといいよ」
 そう言って、ショウはイレギュラーズ達とうさぎてゃんを送り出す。
 果たして白ウサギはどこへ行ったのだろうか――


(ここはどこだろう)
 ふと気が付けば、見知らぬ草原にいた。
 それは、自らが動物だという事以外は何も覚えていなかった。
 ただ漠然と、どこかへ行かなければと思うが、何処へ行けばよいのかすらわからない。
 周りに見えるのは、木々が生い茂った森。自分は元々ここにいたような気もするが、どこか行きたいところがある。
 誰かの声を、聴いていた気がする。だから、そこへ向かわないと。
 白いウサギはあてもなく森を駆け出した。
 

GMコメント

まずはオープニングを見ていただきありがとうございます。
きみどりあんずと申します。
今回はR.O.O世界のご案内になります。こちらは心情メインのシナリオです。

関連シナリオ『バーチャルなパーティを始めましょう』
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/5863
こちらのアフターアクションシナリオです。初めてアフターアクションをいただきましたので、精一杯シナリオを考えさせていただきました。

●成功条件
 いなくなった白いウサギを探して見つけ出すこと

●場所
 伝承の辺境。モンスターも出ない草原です。良く見渡すと、遠くに森のような場所があります。

●スタート地点
 かつてパーティが開催されていた草原。

●敵
 モンスターがいない場所なので、敵になり得るものはいないでしょう。
 いるとすれば、森の中の野生動物を刺激してしまうと、襲い掛かられるかもしれません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

※重要な備考
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません

  • 白兎を追ってLv:1以上完了
  • GM名きみどりあんず
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2021年06月26日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

わー(p3x000042)
ほむほむと一緒
イルー(p3x004460)
瑞心
九重ツルギ(p3x007105)
殉教者
ヤーヤー(p3x007913)
そらとぶ烏
ユイ(p3x008114)
甘露寺 結衣のアバター
三月うさぎてゃん(p3x008551)
友に捧げた護曲
イズル(p3x008599)
夜告鳥の幻影
Sakura(p3x009861)

リプレイ

●草原にて
 『ネクストアイドル』三月うさぎてゃん(p3x008551)の案内で、いつも白うさぎと会っていた草原へ辿り着いた。『そらとぶ烏』ヤーヤー(p3x007913)にも記憶にある場所。
 かつてやりたい放題のパーティをして、楽しく終わったあの日。白うさぎのパーカーを着た青年と別れたあの場所。
 うさぎてゃんにとって、あの白うさぎは彼の面影を感じて――そして、一ファンとして見ていた。薄々ヤーヤーも依頼の話を聞いて、白うさぎはあの時の依頼人なのではないかと感じていた。
「とりあえず、いつもここで歌を聞いてくれていたんだけど……何か見つかるかもしれないから、一緒に探してくれると嬉しいな!」
 うさぎてゃんは集まったイレギュラーズ達へ声を掛ける。
「この草原には三月うさぎてゃんさんと白いうさぎさんの思い出の場所があるのですね?」
 『宣告の翼』九重ツルギ(p3x007105)がその声を聞いてうさぎてゃんへ問いかける。ステージに残る残留思念を読み取れるかもしれないと、ツルギは伝え、かつてステージがあった場所へ案内してもらい、地面に右手を置く。
 思念は触れるほど時間が長ければ読み取る年月も長くなる。しかし、そう時間も経たない内に、ツルギの脳裏に浮かぶ、動物の目線の思念が見える。
『オレは、ヴァン・デ・ルーダ。そう名乗っていた、今はただの兎』
 かつてパーティが行われていたであろう草原を見つめながら、もう喋れない言葉でヴァンという兎は語る。
『兎に戻ってから、たまにうさぎてゃんが来ては歌って踊ってくれる。でも、それも段々と薄れていく。ただの、ヴァンでもない兎になってしまうのだろうか? オレはそれが不安で仕方がない』
 そう思考しながらも、視線は森の方へと進んでいく。自我があることがバグであったこの白うさぎは、本来のNPCへ戻るために――思考に忘れたくない、嫌だ。と、悲しげな声を交えて森へ消えたところまで見て、ツルギは右手を地面から離した。
「――……皆さん、聞いていただけますか?」
 白うさぎが消えたと思われる森へ、調査へ向かうための情報と、白うさぎ――ヴァンのことを伝える。
「なるほど……じゃあ森を探せばいいんでしょうか?」
「お名前、を……呼んで、探せばみつかる、でしょうか……」
 『兎のおみみ』わー(p3x000042)と『初心者』イルー(p3x004460)は、当てもなく探すよりも探す方向がわかったことにより、早速と言わんばかりに森の方へと向かっていく。
「うさぎさん、触らせてくれるでしょうか……」
 『甘露寺 結衣のアバター』ユイ(p3x008114)も、小さな妖精の身体を揺らしながらわーとイルーの後をついていく。
「なるほどね、森か……。うさぎは耳がいい。興味を惹かれる『音』があれば姿を表すかもしれないね」
 『夜告鳥の幻影』イズル(p3x008599)は友人であるツルギへどう探そうか、と会話をしながら共に森へ向かっていく。
「ま、変に刺激しなけりゃ森の動物も襲ってこねぇだろ。うさぎ、俺はお前と一緒に行くぜ」
 Sakura(p3x009861)も万が一のことがあってはいけないとうさぎてゃんと共に森へ向かう。その背を見ながら、ヤーヤーは草原を振り返り、かつてのパーティを思い出す。
「ヴァンさん……また、パーティをしようって、約束したんだ。必ず見つけるからね」
 決意を新たに、ヤーヤーも黒い翼を広げて森へ向かった。

●森の中にて
 鬱蒼と茂る草木と、木漏れ日。
 澄んだ空気は、バーチャル世界とは思えない程に美しく、心地よいと感じる空間だ。
 多くの野生動物がのびのびと走り回る中、うさぎてゃんが探す白うさぎはなかなか見つからない。もちろん、野生の白うさぎは見つかるのだが、その多くはただの兎。うさぎてゃんやヤーヤーの言うヴァンという白うさぎはなかなか見つからない。
「もう、いないなんて、そんなことはない……よね?」
 時間にして二時間ほど。これだけ探し回っても見つからないとなると、最悪の事態も予想されたが――
「それなら、歌を……踊りも踊ってみてはいかがでしょう? 私は神楽しか舞えませんが……」
 ユイが小さな手をぱん、と叩いて提案する。確かに、あの兎は歌や踊りを聞いていた。それならばうさぎてゃんの歌を皆で歌ったり、自由に踊ってみるのはどうだろうかと。
「うんうん、いいんじゃないかな。私は弦楽器などは触ったことはあるけれど……歌は、どうかな……ツルギさんはどうかな?」
「いいと思います。折角ですから、開けた場所もありますし、うさぎてゃんさんとヤーヤーさんが行ったというパーティを再現してみるのは如何でしょう?」
 その提案に、皆こくりと頷いた。
 あの時の様にステージも、ご馳走も、何もないが――楽しむ気持ちだけは同じように。
「じゃあみんな、少しだけ私に付き合って、歌ってくれるかな?」
「もちろんですっ! 私に出来る事であればなんでもっ!」
「はい……う、歌は……口ずさむ程度、でも……よけ、れば……」
 笑顔で応えてくれるわーに、少し恥じらいながらもうさぎてゃんの歌に耳を傾け、フレーズを覚える。その様子を森の動物たちも不思議そうに眺めているが、皆襲い掛かるわけでもなく、楽しんで歌を聞いている様だった。
 皆、ひととおり曲を覚えたところで、日が良く当たる場所をメインステージに見立てて、うさぎてゃんを中心に皆で歌い踊る。
 まるで童話の様だった。イレギュラーズ達が踊り、歌い、笑えば動物たちも楽しそうに踊り、歌い、笑っていた。
 そうして、一匹の白い兎がふらりとステージに躍り出る。
 その瞳は、うさぎてゃんとヤーヤーをじっと見て――
「白うさぎくん……?」
「ヴァン、さん?」
 その呼びかけに、兎は目を細めて答える。
「もしかして、この兎が探していた白うさぎなのか?」
 Sakuraは驚いたように目を見張って白うさぎを見ていた。
 ぽたりぽたりと、白うさぎの瞳から零れ落ちる雫。――兎は、泣いていた。理由は兎にもわからない。わからないけれど瞳が熱くなって、目の奥から雫が溢れ出て止まらない。
 全くわからないけれど、兎はくるりと周囲を見渡して、うさぎてゃんとヤーヤー以外の、初めて見る者の周りをくるくると回る。
 触ってもいいぜ、と語っているかのようなその動作に、うさぎてゃんは言う。
「みんなで――歌って踊る楽しいパーティを始めましょう!」
 その声を皮切りに、動物も人も関係なく――なんでもアリのパーティが始まった。
「わわっ! うさぎさんもふもふですっ!」
「の、乗せてくださるのですか……? ふふっ、ありがとうございます」
 白うさぎと目一杯戯れて見たり。
「こ、こんなに……熊さんが、近く、に……!」
「すげぇな! でも、熊と踊るなんてなかなか体験できないぜ!」
 野生動物と踊る者もいたり。
「はは、くすぐったいな。小鳥の囀りも、また一種の歌だね」
「ええ、そうですね。歌を捨てた俺には少し眩しいですが――こうして目にするもの、耳にするものは美しいものです」
 小鳥の歌を聞きながら、自然を堪能したり。
「――ええ、そうよ。私はアイドル。みんなを笑わせることが、うさてゃんなんだから!」
 メインステージは独占と言わんばかりに歌って踊るアイドルを囲んで、声を張り上げながらステージを楽しむ。
 日が暮れてきてしまいそうな時頃。
 動物たちもたっぷり楽しんだのか、皆住処へと帰っていく中で、一匹の動物だけぽつりと残っていた。
「ヴァンさん」
 ヤーヤーが声を掛ける。
「ずっと伝えたかったんだ。もう一度パーティ……の、約束は今果たせたから、えっと。俺と、改めて友達になろう」
「あっ、ズルい! 白うさぎくんは私の一番のファンなんだから! うさてゃんとも、もちろんお友達だよね?」
 目をぱちぱちと瞬かせて返事をするように目を細める白うさぎ。
 その様子を、他の面々も微笑ましそうに見つめながら、目的も達成したことだしと帰還の準備をしている時だった。
「――……」
 何かを伝えようと白うさぎははくはくと口を動かしているが、出てくるのはきゅうきゅうという鳴き声のみ。
「うさぎさん? どうかしたのですか?」
 白うさぎの上に乗ったままのユイが首を傾げて訊ねると、白うさぎは草むらへ向かって走り出す。
「ど、どこへ行くのですか!?」
 ユイの戸惑う声に、皆声の聞こえる方へ顔を向ける。何処へ行ってしまったのかとユイの声を頼りに全員が走り出し、後を追う。
 辿り着いた先は、パーティ会場であった草原。
 ステージがあった場所に、白うさぎとユイはいた。
「どう、したの……ですか?」
 恐る恐るイルーが訊ねると、白うさぎはきゅいきゅいと鳴く。それは、うさぎてゃんの歌を口ずさむようにゆらりゆらりと体を揺らす。
「白うさぎくん……」
 日が暮れ始め、夕焼けに沈んでいく太陽と、赤く照らされる白うさぎ。楽しそうに、ほんの少し寂しそうに響く歌声は、別れを示唆していた。
「もう、会えない、の……です、か?」
「寂しそうにそんな声出すなよ……また会えるだろ? そうだよな?」
 白うさぎはそうはいかないと言うように、きゅう、と一つ声を上げて伝える。
 ――元を辿れば、彼はバグによって自我を得た、本来はあり得ない存在である兎。イレギュラーズ達はこのバグを直すために、あるいは純粋に遊ぶために、このR.O.Oの世界へ来ている。
 つまり、彼が自我を完全に失うということは、バグが消去されるという事――もう二度と、うさぎてゃんとヤーヤーの知る『彼』と出会うことはできないのだと、その背中は語っていた。
 物悲し気な姿に、ユイも白うさぎから離れ、皆と同じ位置から白うさぎの歌を聞いていた。
「……っ、パーティの最後がこんなに悲しくっちゃいけないでしょう! ね、みんな!」
「――! ええ、そうですね。最後まで楽しく終わりましょう。それが、うさぎてゃんさんと白うさぎさんの願い、ですよね」
 ツルギも同意しながら、どこからか自らの持ち物である一人用ソファを取り出して腰掛ける。
「うん。最後まで、楽しもうじゃないか」
 感傷に徹するツルギに、イズルも同じように同意して、観客として合いの手を入れる。
 日が暮れていく中で、同じように薄れていく白うさぎの自我。瞳に映るイレギュラーズ達の笑顔に、白うさぎは最後に少しだけ、欲が出てしまった。
 ――もっと、みんなと一緒に笑いたい。もっと話したかった、と。
「ヴァンさん」
 ヤーヤーが、もう自我の消えかけている白うさぎの偽りの名を呼ぶ。その名前が本当になるように、消えないように、忘れないように。
「また、遊ぼう。何度でも、俺はヴァンさんに会いに来るよ。うさぎてゃんさんや、他のみんなも連れて」
 白うさぎは、その言葉に目を細めて――嬉しそうに笑った。
「そうだよ! 白うさぎくんは、私の一番のファンだよ。絶対に、また会える」
 白うさぎの目線に合わせて、その柔らかな毛皮を一撫でしてうさぎてゃんは立ち上がる。また、歌う。悲しい歌は、今ここで歌うべきじゃない。お別れじゃないのだから――
「残留思念から、あなたの思いは聞いていました。勝手ながら申し訳ありません。ですが――あなたが願っていたこと、あなたの本当の気持ち。きっと、届くでしょう」
 ツルギも、また声を掛ける。彼のアクセスファンタズムがあったからこそ、この白うさぎの行方が分かったこともあり、白うさぎは不思議そうにしながらも、瞳をゆっくり閉じて礼を言うように頭を下げる。
 日が落ちて、暗闇に包まれる前に、白うさぎは森へと走っていく。
 ここは自分のいる場所ではないと言うように。なぜここに人間がいるのかと驚くように、走り去る。
「――またね、白うさぎくん」
「絶対、また遊ぼう! またね!」
 ふたりの声が届いたのか、白うさぎは一度ぴたりと立ち止まり――
「またな」
 青年のような声と兎のきゅい、という鳴き声が同時に聞こえた。

●それから
「みんな、改めて白うさぎくんの捜索に付き合ってくれてありがとう!」
 ギルドへ戻ってきたイレギュラーズ達は、『黒猫の』ショウ(p3n000005)への報告も兼ねて話し合っていた。
 無事、うさぎてゃんの探していたうさぎは見つかったものの、彼とまた会えるのだろうか? という疑問が皆の頭に浮かんでいた。
 だが、その不安を掻き消すように、ショウがイレギュラーズ達へ声を掛ける。
「みんな、お疲れ様。楽しくも少し悲しそうな顔をしていたから、嬉しいニュースを持ってきたよ」
 入ってきて、とショウの後に続いて入ってきたのは白い兎の耳が付いたフードパーカーを着た青年。
「初めましてもいるよな。オレはヴァン。ヴァン・デ・ルーダだ! 訳あってここで少し世話になることにしたんだ。よろしくな!」
 目をまん丸くして驚くうさぎてゃんと、ヤーヤー。他のイレギュラーズ達はもちろん、初対面であるから思い思いに自己紹介をしているが――ふたりだけは違う。
「へへっ、『また』会えたな!」
 あのパーティの時と変わらない、無邪気な笑顔でヴァンは笑う。
 彼は兎に戻ったのではなかったのか? もう、人の姿として出会うことはなくなったのではないか? と、たくさんの疑問点が上がったであろうが、それはショウから説明があった。
 ショウ曰く、R.O.Oのバグとして生まれてしまった元白うさぎのヴァンは、本来であればその自我を失くし、ただの兎になるはずだった。
 それを、うさぎてゃんがあの思い出の詰まった場所で歌い続けたことで、消えるだけだった自我が分離し、また別のNPCとして分けられたという事だった。
 R.O.OがシステムとしてこのNPCを思考のない兎ではなく、一プレイヤーとして判別したのだと。
「じゃあ、白うさぎくんは……」
「前のオレでもあるけど、オレじゃあない。……って感じかな。しばらくはこうしてローレットの手伝いとして、ここにいるつもりだから、いつでも会えるぜ」
 以前の彼であって、彼ではない。つまり、彼を動かす誰かが存在する、ということなのだろう。けれど、言動も何もかも、以前の彼そのままで――
「うん。友達といつでも会えるのは嬉しいね」
「ふふっ、いつでも練習に付き合ってもらえるのは助かるかも! うさてゃんは運がいいんだから!」
 笑い合いながら、今度はこのメンバーで、またいつかおかしなパーティを開こうと約束するのだった。

 ただの白うさぎと、白うさぎだった青年は、別々の存在になった。
 動物に戻った彼と、青年を一プレイヤーとして確立させた一人のプレイヤー。そのおかげで、友人を失わずに済んだ者。一番のファンを失わずに済んだ者。
 新しく友を得たもの、楽しいパーティと、もふもふの兎に触れられて満足した者など――様々なイレギュラーズ達がいる。
 皆それぞれ、またR.O.O内のクエストや、純粋に遊びに出かける者。操作に慣れるための依頼を探しに行くものなどいつものようにローレットは賑やかで、慌ただしい。
 その中に、白うさぎは混じる。
 今度はもう、忘れない。
 あの楽しかった日々も、今回の歌も、踊りも笑顔も全て――彼のログに、ずっと残っている。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

素敵なプレイング、ありがとうございました。
今回は白うさぎを探すとても簡単な依頼でしたが、ある意味難しくもありました。
野生動物である兎がわちゃわちゃといる中でただひとりを探し出す途方もないことも、みんなで力を合わせればできるのだと、そういうシナリオを心掛けました。

皆様の心にも残るシナリオであれば幸いです。

PAGETOPPAGEBOTTOM