PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ミッドナイト・ブルーは眠らない。

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●午前一時、ぼくはきみと冒険に出る
 陽が落ちた。
 当たり前に繰り返す毎日の中で、今日も夜はやってくる。
 街も人も寝静まって、まるで世界の終わりみたいな。そんな静かな夜に降り立った。
 風に揺れるブランコ、点滅を繰り返す街灯、優しく照らす月明り。
 みんなみんな、ひみつめいて瞬いて、ひっそり夜の闇に溶けていく。

「ねぇ、今夜少しだけ、わるいことをしようよ」

 少年――「水無瀬 夕」が囁いた。
 現代日本にも似たその世界では毎日は変わらず平和に過ぎていく。
 世界を脅かすような魔物もいなければ、誰も不思議な力なんて持っていない。
 変わらない毎日、繰り返す時間、ただの大勢の内のひとりな自分。
 だけど心躍らせるような冒険譚はなくたって、午前一時の夜空はいつだって特別なはずだから。

 今夜、深夜の冒険に出掛けよう。ふかふかのベッドを抜け出して。
 わるい子かな、たまにはいいかも。
「だけどひとりきりじゃ寂しいから、いっしょにきてくれないかな」
 照れたように笑ったきみが人差し指を唇に当てる。
 それはちいさな子供の悪戯のような。そんなとある夜の秘めごと。


●変わらない「特別」があるとするなら
「夜の散歩ってなんだか特別な感じがするよね」
 カストルがふいに呟く。
 その声に視線をやれば、彼は一冊の本をこちらに差し出していた。
「この物語の世界はいたく平和なんだよ。世界の危機も、ましてや剣と魔法の大冒険なんてのもない世界だ」
 つまり現代の日本によく似た世界であるらしい。
 剣や魔法に慣れ親しんだ者であれば、少し慣れなく感じる部分もあるかもしれないけれど。
 そんな世界にも変わらないものはあるのさと、カストルはそっと本の背を撫でた。
 そう、夜の街を歩く特別感は、あの時間は……きっとどの世界だって変わらないものであるに違いない。

「君たちには此度とある少年と夜の散歩に出かけてほしい。もちろんひとりでも構わないよ」
 そういって柔らかく微笑んだ彼は「いってらっしゃい」と手を振るだろう。
 タイムリミット(ぼうけんのおわり)は夜が明けるまで。
 静かな気配を引き連れて、今日も夜がやってくる。

NMコメント

 はじめまして、お久しぶりです。
 凍雨と申します。
 夜の街を歩くのってなんだかそわそわしますよね。

●世界説明
 現代日本によく似た世界です。
 コンビニとか、公園とか、学校とか。シチュエーションは自由に決めて下さって構いません。
 ただいまの時間は午前1時くらい。とても静かな夜です。

●目標
 夜の街を自由に歩く。

●NPC
 水無瀬 夕(みなせ ゆう)
 物腰の柔らかな少年です。夜の散歩にワクワクしています。
 あなたが夜の時間を共有する相手であり、一緒に散歩をして頂きます。
 もちろんおひとりで行動して頂いても構いません。

●備考
 あなたがこの世界にいられるのは、夜が明けるまで、です。

●サンプルプレイング
 夜の散歩かぁ、なにしようかな!
 とりあえずコンビニ行こう! アイス食べた―いっ

 以上になります。
 それではどうか、良い夜を。

  • ミッドナイト・ブルーは眠らない。完了
  • NM名凍雨
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年06月21日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

リア・クォーツ(p3p004937)
願いの先
眞田(p3p008414)
輝く赤き星
橋場・ステラ(p3p008617)
夜を裂く星
オニキス・ハート(p3p008639)
八十八式重火砲型機動魔法少女

リプレイ


 この世に罪は数あれど。深夜の”わるいこ”にしかできない罪はそう多くはないだろう。
 夜中に食べるカップラーメン。
 甘い甘いホットチョコ。
 いけないとわかっていて手を伸ばす甘い誘惑。
「深夜に食べるごはんは罪の味、って聞いたことがある」
 『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート(p3p008639)もそんな誘惑に手を伸ばす者のひとりだ。
 「罪……いったいどれほどのものなのか……気になる」
 そうまで謳われる罪ならば、試さないわけにはいくまい。
 赴く興味のままに、オニキスは深夜のコンビニに足を運ぶのだった。

 寝静まり返った夜にコンビニの灯りだけがこうこうと照っている。
 自動ドアを抜けた先で辺りを見渡したオニキスが眼を留めたのは、レジ横に並べられている揚げ物コーナーだ。
 てくてくとレジの前まで行くと、ぴしっとケースを指さして、言う。
「全種、ください」

 片手には膨れたレジ袋。もう片手には熱々チキン。
 齧りついたチキンが思ったよりも熱くて。はふ、と熱を逃がすべく息を吐けば夜の空気に交じる。
 夜道を歩くのはオニキスだけでとても静かだ。
 肌に感じる風は酷く優しくて。こうやって歩くのも悪くはないな、とオニキスはまたチキンを一口齧った。


 一方そのころ。
 駅近くを歩きながら『花盾』橋場・ステラ(p3p008617)はほう、と息をついた。
(現代日本に似た世界……此処は、平和なのですね)
 この世界の人はみな明日が来ることを疑っていない。
 毎日夜には家へと帰り、眠り、目覚めるのだろう。
 当たり前にやってくる明日を生きる為に。
 ステラは「平和」という言葉の意味を知っている。ここはステラのいた異世界の日本とは違う場所。
 未だ暗い空に手を伸ばした。安らぐ闇は、ただ静かに広がっている。
 それがなんだか不思議で、少しだけ心地よかった。

 そのままステラの足は繁華街に向けて歩き出す。
 せっかくなのでしばらくこの世界を堪能してみなくては。
 繁華街であれば駅前よりも人が多いだろうし、開いている店もあるだろう。
 そうして辿り着いたステラを待っていたのは色とりどりのネオン街だ。
 蛍光色に煌めく看板と、ぺかぺかと点滅する文字列。
「うわぁ……!」
 夜闇を押し上げるように輝く街並みにステラは思わず声を零した。
 混沌にも夜でも賑やかな場所はあった。だがこの光は、ここでしか見られない。
 人の間をすり抜けてステラは歩く。
 心が浮足立つ。
 もう少し、この街並みを見ていたい。


 オニキスの持つレジ袋がぺしゃんこになる頃。
 そしてステラのお腹が鳴る頃。
 ふたりは深夜のファミレスにいた。
 オニキスとステラの向かいに座った水無瀬 夕はワクワクしているのが見て取れる。
 さて、深夜、空腹、目の前にはファミレス。
 となると、することは決まっているだろう!
「勿論、深夜のファミレスで豪遊ですとも!」
「なるほど……それはいいな。せっかくだし、夕も何か食べたいものがあったら頼むと良いよ」
 すでにメニューに目を通し始めているオニキスの言葉にステラは大きく頷く。
「水瀬さんはお代は心配しないで下さいね? お誘いしたのは拙ですので」
「は、はい! ありがとうございます」

「ふふ、一度来てみたかったんです。深夜のファミレス」
「僕もです。深夜のファミレスわくわくします」
 そういって微笑む夕。
 オニキスはさっそく店員さんに注文を始める。
「チーズたっぷりのドリア。ピザも食べたいな。それとラム肉のステーキも」
「そんなに食べるんですか!?」
 大丈夫。なんたってオニキスは太らない。ロボだから。
「三人いれば分けていろいろ楽しめていいよね」
「はい。流石にメニューを制覇! は無理ですけれど。あ、私はとりあえずドリンクバーと……そうですね、拙はお肉にしましょう。ハンバーグをお願いします」
「僕はオムライスをお願いします!」
 店員さんが繰り返しながら書きとっていき、最後に顔を上げて尋ねた。
 デザートはどうされますか? と。
 メニューを広げたままステラはきりっとして答える。
「あ、すみません、デザートは食後にお願いします、此処から此処まで、はい、全部で!」
「私も全部で」
「デザートも食べるんですか!?」
 夕にむかってふたりは頷く。当たり前だというように。
「……別腹、って言うじゃないですか?」
「大丈夫。別腹だから」

 そうして夜は更けていく。
 ご飯を分けながらのお喋り。時折窓の外を通る車道を眺めては他愛もない言葉を交わして。
 深夜のご飯は罪の味。
 はてさて、罪の味がどういうものなのか。よくわからなかったけれど。
 共に過ごした時間が、共有した味と思い出が。
(そういうのが、ごはんをおいしくするのかな)
 そう、オニキスは思ったのだ。


 水無瀬 夕と名乗った少年に『Re'drum'er』眞田(p3p008414)は柔和な笑みを浮かべた。
「君が水無瀬君? ナイス提案! こういうのって俺までワクワクするよ」
 人好きする様子に夕はこくこくと頷いて返す。
「僕、ずっと夜に出歩いてみたくて」
「楽しいよね、文字通りの自由時間ってやつ。俺もいけるとこまで付き合うよ!」
 眞田にとっては馴染みのある街並みだが地理には明るくない。彼を引っ張るように夕は色んな場所を眞田に案内していく。
 どこも人気はなく閉まっていたけれど、それも深夜の醍醐味だ。
 耳を澄ましても聴こえるのはふたりの足音だけ。リズムを刻むように足音を踏み鳴らして眞田は笑う。
「俺は結構こんな静かなのも好きなんだ。ほら、この通りとか」
 車なんて一台も通りそうにない横断歩道。信号は赤のまま。
 タタッと横断歩道を渡ってから、眞田は振り返る。
「俺、こういう時はスルーしちゃうんだけど水無瀬君はどう?」
 くる? と眞田が夕に向かって手を伸ばした。
 少し迷ってから踏み出す一歩。
 渡り切ってからも、やっぱり車は一台も通らなかったけれど。
 ちょっとどきどきしました。夕ははにかむように眞田に笑いかけた。

 少し疲れた頃にコンビニ寄っては、スナック類と唐揚げを買ってまた歩き出す。
「歩きながら食べるんですね!」
「へへ、そう。食べ歩き! 水無瀬君は他に何処か行きたいところある?」
「河川敷に行きたいです。夜に橋がライトアップされるらしくて」
「いいねライトアップ。夜しか見れないし」
 その足で向かった河川敷では、川の水が橋から洩れる光を反射してキラキラと輝いて。
 草の上に座ってふたりでお菓子を食べた。
 買い食いをして散歩をして。いつでもできるのに、この時間が無性に特別に感じるのは何故だろう。
「普段うるさく言われたりしてると、この時間が割と救いになったりするんだよね〜。皆寝ちゃってるからさ!」
 食べ終わり寝転がっていた眞田が急に体を起こす。
 そうして自身にも懐かしいことを問いかけた。
「水瀬君の普段ってどういう風に過ごしてるの? もうあと何時間もしたらまた学校……て感じかな?」
「そうですね。明日からも普通に」
 そっか、と眞田が言葉を零す。
 夜は永遠に続くようでいて一瞬で。
 それでもこの時間は紛れもなく楽しかった。
「一緒に遊んでくれてありがとう。俺も昔よく抜け出してほっつき歩いてたから懐かしくて!」
 だいぶはしゃいだかも、と照れ臭そうに零す眞田に、夕はお揃いですねと笑みを返す。
「僕も楽しかったです。また一緒に遊んでくださいね」
「もちろん」
 夜明けへと近づいていく時間の中で、指切りを交わした。


 夜明けより少し前。
 『願いの先』リア・クォーツ(p3p004937)は水無瀬 夕と共に夜の街を歩いていた。
 時折漏れる明かりが街に息づいてどこか心地いい。
 歩いて歩いて、たどり着いたのは小さな公園だった。
「ねぇ、あたしと夜明けまでちょっとお話ししない?」
「僕で良ければ、喜んで」
 微笑んだ夕と共に公園のベンチに腰掛ける。
 街の灯りは遠く、街灯の少なさからか星が見えた。
「あたし達の居る世界でも、あなた達の世界でも、夜空ってのは同じものなのね」
 リアが見上げて呟く。
 夜闇の中に煌めく星々。いつだって変わらない。きっとどんな世界でも。

「夕、あなたは夜空は好きかしら?」
「特別好きというわけではないですが、綺麗だなと思います」
「そう。あたしはね、夜空って好きよ」
 ”魂は天へと昇り、星となって遍く我らを見守り給う”。
 死者の魂はいずれ夜空に浮かぶ星となって、大切な人達をずっと見守り続ける。
「そして、役目を終えた星々は一際輝き燃え尽きて、新しい生命となって世界に降り注ぐの。あたしこれでも聖職者でね」
「そうだったんですか。星はそこに在るだけじゃなくて、いつでも僕らを見守ってくれているんですね」
 夜は日ごとにやってきて、世界は静寂に包まれる。
 暗闇の中では人は独りぼっちで、世界から取り残されたように感じるかもしれない。
 でもそうじゃないのだ。
 暗闇に迷っても、見上げればいつもそこに在る。
 数多の星々が見守ってくれている。
「夜が明け、新しい朝が訪れるまで、あたし達を独りにしないよう、ずっと」
 だから、人は決してひとりになんてならない。
 語り終えてリアは夕に笑顔を向けた。
「ま、別にこれを頭っから信じている訳じゃないけど……でも、そうであるといいなって願ってはいるわ」
 その方がロマンチックじゃない? そういって見上げた。遥か天上に煌めく星々を。
 
 ゆっくり遠くの空が白んでゆく。
「お別れの時間かしら」
「もう会えないんですか?」
 寂しそうに言葉を零す夕に、リアは悪戯めいて笑いかける。
「世界に星が浮かぶ限り、あたし達はいつでも繋がっているわ」
 ――また、何処かで会いましょうね。
 その言葉を最後にして。
 星の遣いか、誰だったのか。
 わからないままだけれどそれでも。今日も朝はやってくる。
 当たり前のように平和な毎日を繰り返して。

成否

成功

状態異常

なし

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