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シナリオ詳細

<Genius Game Next>G-Ride Next

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●紅の札より現れし者達
「さぁて、次は何処に行く?」
「そうだなぁ……この『ルアト』ってとこなんか、如何だ?」
「うーん、そこはあまり美味そうじゃねなぁ。それより、こっちの方が……」
「しかしよお、その『ルアト』を放っておくのも、まずくはねえか?
 もしそこから出てきた連中に挟み撃ちにされでもしたら……」
 襲撃によって灰燼に帰した街の中で、盗賊とほぼ変わらない風体の傭兵達が頭を付き合わせて次の行き先、即ち略奪先を思案している。
 伝承南部に侵入した砂嵐の傭兵団のうち、『大鴉盗賊団』麾下の一団だ。砂嵐の傭兵団自体がそもそも盗賊団の様なものであるが、その中でもわざわざ盗賊団を名乗る団の麾下にいるのだから、傭兵達が盗賊とほぼ変わらない風体であるのも無理からぬ事であった。
 傭兵達は次の行き先を思案する中で、ルアトは不味そうで敬遠したいが、しかしルアトから戦力を出されて挟撃されては面倒だと言う空気になる。
 そこに、ローブを着た術士風の男が割り込んできた。
「それなら、ルアトとやらはこいつらに任せればいいだろ?」
 そう言うと術士風の男は、懐から紅いカードを取り出してあれやこれやと呪文を唱える。すると、通常よりも大きな体躯の、狼とその上に乗ったゴブリンがカードの中から次々と飛び出してきた。ゴブリン狼騎兵だ。
 十五体のゴブリン狼騎兵がカードから飛び出すと、術士風の男はゴブリン狼騎兵達にルアト領に入り、ルアト村とルアトの街の人間を皆殺しにする様に命じる。
「ギィエー、ギャッギャ!」
 ゴブリン達は、術士風の男の指示を理解した風に頷くと、まとまってルアトの方へと狼を走らせた。
「なら、ルアトとやらは奴らに任せていればいいな。俺達は、もっと美味そうな所に行くぞ!」
 その様子を見た傭兵団の頭領らしき男は、ルアトとは別の方に団を進軍させていった。

●ルアト村を守れ
 『Rapid Origin Online』にて、大規模イベント<Genius Game Next>が開催されるという告知が出された。内容は砂嵐が伝承西部バルツァーレク領、南部フィッツバルディ領を襲撃すると言うものであり、ルアト近辺の街を灰燼に帰した『大鴉盗賊団』麾下の一団はその一部だった。
 イレギュラーズ達はこのイベントにおいて、砂嵐の傭兵団を迎撃し、伝承の被害を防いでいかねばならない。
 『Rapid Origin Online』はまた、『このイベントはネクストの歴史を変え得る重要なイベントです。特別クリア報奨も用意されていますので奮ってご参加下さいませ!』と言う告知も出している。
 特別クリア報奨の正体は不明であるが、これまでの件から考えるに『トロフィー』の大量獲得、情報取得、何らかのアップデートが予想された。
 ならばこのイベントに参加しない手はないとして、一組のパーティーが<Genius Game Next>のクエストをクリアするべく、『Rapid Origin Online』の世界に降り立った。

「今回のクエストは、ルアト村に侵攻しようとするゴブリン狼騎兵の退治です」
 ルアト村の外れに設置されているサクラメントで、イレギュラーズのアバターを前にして情報屋のアバターである『緑の騎士』ウィルヘルム(p3y000126)が告げた。
「ゴブリン狼騎兵のルアト襲撃事件は、過去に『無辜なる混沌』の方でも発生しています。
 ただ、その時と今回とでは色々と違うようです」
 一番の大きな違いは、混沌の方ではイレギュラーズ達が駆けつける前に滅びたルアト村が、『Rapid Origin Online』ではまだ存在していると言うことだ。故に、イレギュラーズ達はゴブリン狼騎兵をルアト村に行かせない様に戦わねばならない。
 さらにウィルヘルムは、ゴブリン狼騎兵が色宝によって召喚されたものであること、ゴブリンと狼が事実上まとめて一体の魔物となっていることなどに触れていく。
「『Rapid Origin Online』のバグのせいか、ゴブリン狼騎兵達はどうやら混沌に出現したものよりも厄介になっています。
 しかし、このゴブリン狼騎兵を倒さないことには、ルアト村の人々は無惨に殺され、クエストも失敗となることでしょう。
 ですから、皆さんの力でゴブリン狼騎兵を退治し、何としてもクエストを成功させて下さい。どうか、よろしくお願いします」
 そこまで言うとウィルヘルムは深々と頭を下げて、ルアト平原へと向かうイレギュラーズ達を見送った。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。今回も<Genius Game Next>のうちの1本をお送りします。
 PPP最初のシナリオで村を襲ったゴブリン狼騎兵を倒すシナリオを出したのですが、<Genius Game Next>の1クエストとしてそのシチュエーションが『Rapid Origin Online』で再現されることとなりました。
 とは言え、混沌の時とは違う点もいろいろとあります。基本的に、バグでかなり厄介になっているというか……。
 ともあれ、ルアトの村、そしてルアトの街の人々を殺戮しようとするゴブリン狼騎兵を撃破し、ルアト領の人々を脅威から守って下さい。

●成功条件
 ゴブリン狼騎兵の全滅

●失敗条件
 ゴブリン狼騎兵のルアト村侵入

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 ルアト平原。時間は昼間、天候は晴天。
 地形は平坦な平地がずっと続いています。
 環境による戦闘へのペナルティーはありません。

●初期配置
 イレギュラーズは基本的に一カ所にまとまっているものとしますが、ゴブリン狼騎兵達から距離を取る方向であれば味方から離れても構いません。
 ゴブリン狼騎兵は互いにそれなりに距離を取りつつも、集団としてまとまって行動しています。
 イレギュラーズの最前衛とゴブリン狼騎兵達の最前衛は、最低40メートル以上離れているものとします。

●ゴブリン狼騎兵 ✕15
 紅いカードの色宝によって召喚された、狼に乗ったゴブリン騎兵です。
 『Rapid Origin Online』のバグによって、まとめて1体のモンスターとして扱われます。そのため、ゴブリン部分だけ、狼部分だけを叩き潰すことや、ゴブリン部分だけを【飛】などで狼から叩き落とすようなことは出来ません。
 通常の個体より体躯が大きく強靱なゴブリンと狼の、実質2体分の生命力を併せ持っているため1体としては極めてタフです。また、攻撃力もそこそこ高い上に、ゴブリン部分と狼部分でそれぞれ1回ずつ行動を行ってきます(下記攻撃手段の、手斧がゴブリン部分によるもので、牙、爪、突進が狼部分によるものです)。
 反応、機動力、命中が高めになっています。回避、特殊抵抗はそこそこで、防御技術は低めです。
 戦況が有利なうちは意気盛んに攻撃してきますが、不利になってくると逃亡を図る可能性があります。

・攻撃手段など
 手斧(白兵) 物至単 【邪道】【鬼道】【毒】【猛毒】【致死毒】【廃滅】【出血】【流血】【失血】
 手斧(投擲) 物遠単 【邪道】【鬼道】【毒】【猛毒】【致死毒】【廃滅】【出血】【流血】
 狼の牙 物至単 【弱点】【出血】【流血】【失血】
 狼の爪 物至単 【多重影】【出血】【流血】
 突進 物超単 【移】【弱点】【崩落】
 2回行動(ゴブリン部分と狼部分で各1回ずつ。移動は狼部分の1回のみ)
 防御結界:紅
  【火炎】属性BS付きの攻撃、あるいはフレーバーで火属性と判断される攻撃は、最終ダメージが半減されます。また、【火炎】属性BSは無効となります。
 【怒り】耐性(負)
  【怒り】への特殊抵抗判定にはペナルティーが入ります。
 
●術士風の男
 紅いカードの色宝によって、ゴブリン狼騎兵を召喚した術士です。
 傭兵団本体と共に行動しているため、シナリオ内で遭遇することはありません。

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
 『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

※重要な備考『情勢変化』
 <Genius Game Next>の結果に応じて『ネクスト』の情勢が激変する可能性があります。
 又、詳細は知れませんが結果次第によりR.O.Oより特別報奨が与えられると告知されています。

 それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。

  • <Genius Game Next>G-Ride Next完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年06月20日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シャドウウォーカー(p3x000366)
不可視の狩人
リュート(p3x000684)
竜は誓約を違えず
ホワイトローズ(p3x000921)
白薔薇
マーク(p3x001309)
データの旅人
ユリコ(p3x001385)
電子美少女
コーダ(p3x009240)
狐の尾
エール(p3x009380)
ネプチューンライト
VIVI・IX(p3x009772)
明時に流麗なる

リプレイ

●ルアトを守れ
(手下の魔物を放って村を襲わせ、自分たちは素通り……なんて奴らだ!)
 獲物として美味しくないからとルアトに魔物を放つだけ放って素通りし、他の獲物を探しに向かう砂嵐の傭兵団に、『マルク・シリングのアバター』マーク(p3x001309)は激しい憤りを感じていた。
「この先の村には絶対入れさせない。一騎たりとも、僕の後ろへは通さない!」
 そのためなら例えどんなに傷つこうとも、何度でも立ち上がり、何度でも食い止めてみせる。その意志も固く、マークは決然と言い放った。
(護る戦いなら慣れたもんさ。退くことの許されない戦場はこれまでに何度も経験してきたからな)
 迫り来るゴブリン狼騎兵との戦いでマークと共に盾役を務める予定の『狐の尾』コーダ(p3x009240)が、マークの決意を聞きながら前方を見やる。『Rapid Origin Online』世界には慣れていないコーダだったが、やることは現実の世界である『無辜なる混沌』と変わらない。ならば、しっかりと『仕事』をするまでだった。
「へー、ルアト村……混沌にそんな場所あったんだ、知らなかった」
 物珍しそうに言うのは、『不可視の狩人』シャドウウォーカー(p3x000366)だ。実際にはシャドウウォーカーの「中の人」は、現実でもルアトの村を襲撃したゴブリン狼騎兵の討伐に参加している。それなのにこのように言うのは、おそらくロールプレイの一環なのだろう。
「シンプルにそこを守れって事なら、話は早くて済むね」
「そうね、内容は突き詰めれば単純戦闘だし……」
 クエスト自体は単純で話が早いとシャドウウォーカーがつぶやけば、『白薔薇』ホワイトローズ(p3x000921)が相槌を打つ。
「問題は敵だよ、仕様が中々ゲームらしいと言えばらしいよね……めんどくさそうなのには変わりないし、きっちり倒しちゃおう」
「ええ、取りこぼしが無いようにしましょう。人が襲われるのは嫌だものね」
 今回の敵であるゴブリン狼騎兵は、『Rapid Origin Online』を蝕むバグによって、ゴブリンと狼のコンビではなく『ゴブリン狼騎兵』と言う一体の魔物となっている。そのため、一体で二体分の生命力を持っていたり、ゴブリンの部分と狼の部分で確実に二回攻撃をしてきたりと、「ゲーム的」な特徴を持っていた。
 シャドウウォーカーとホワイトローズは、その理由こそやや異なるものの、ゴブリン狼騎兵達を全滅させると言う点では意志を同じくした。
(ゲームとかリアルとか、NPCだとかアバターだとか……誰も死ぬ所なんて見たくないっすよ)
 仮想環境である『Rapid Origin Online』に生きる者は、極論すればただのデジタルなデータに過ぎない。だが、『明時に流麗なる』VIVI・IX(p3x009772)からすれば、そんなことは知ったことではない。ここにいる仲間達は、そしてVIVIらの後方にいるルアトの人達は、間違いなくこの世界で生きる「命」なのだ。故に――。
(ウチの手がそこに届くのなら! ウチは全力でこの手を伸ばすだけっす!)
 内心で、VIVIは熱く意気込んでみせるのだった。
「幻想……いや、こっちだと伝承か。こうまで大規模に領地に侵攻して来るなんて、イベントとやらも随分と大事だね」
 他の仲間達よりもよく言えば冷静、悪く言えば冷淡に見えるのは、『ネプチューンライト』エール(p3x009380)だ。砂嵐による侵攻をそう評しながら、伝承が負けたら現実世界の歴史とどんな差異が出るのか、見物だとさえ考えている。だが。
「……ゴブリン狼騎兵、なんてのに好き勝手されるのはムカつくね。仕方ない、こっちの世界を楽しむためにも、少しばかり頑張ろうか」
 そう言うと、エールはやれやれ、と肩をすくめたのだった。

●遭遇~開戦
 ルアトの村の外れからルアト平原に出たイレギュラーズ達は、ルアトの村に向かおうと疾駆するゴブリン狼騎兵を確認した。ゴブリンも狼も、いずれも通常の個体よりは一段と大きなものになっている。
「ゴブリンいっぱいっす! 踏み潰されないように注意ッス!?」
 その様に、六十センチほどの大きさの仔竜である『神の仔竜』リュート(p3x000684)は驚きながら叫んだ。
「ほー……流石ゲーム、こういう事もあるのか」
 『電子美少女』ユリコ(p3x001385)からすれば、今回のクエストは複数の事件が混ざった様で、変な感じを受ける。だが、あれこれ考えるのはゴブリン狼騎兵達を全滅させ、クエストを達成してからだ。
「白百合清楚殺戮拳の冴え、刮目してみるがよい!」
 殺意を隠そうともせずに迫り来るゴブリン狼騎兵達に向かって、ユリコは高らかに咆えた。

「さて、早く終わるよう頑張りましょう」
 先手を取り最初に仕掛けたのは、ホワイトローズだった。ホワイトローズが身体に刻まれた紋に魔力を流し込みながら掌を前に突き出すと、闇の塊が生成される。闇の塊がゴブリン狼騎兵達に向けて撃ち放たれると、先頭のゴブリン狼騎兵に命中してその身体を闇で覆い、視界を塞いだ。
「さあ、星の光に迷いなよ」
 エールは己の魔力を集中させ、天空の凶星を輝かせる。昼間であるにもかかわらず陽光に負けずに輝く凶星の光は、誘う様にゴブリン狼騎兵の先頭集団の顔を見上げさせ、そのうちの半分ほどの正気を蝕んでいく。
(星を見上げてる間に、銃弾を叩き込んであげる)
 その隙にと、シャドウウォーカーはライトハンドガンで先頭のゴブリン狼騎兵を狙い撃った。ダダダダ……とマガジン一つを空にするほどの銃弾の嵐が、次々とゴブリン狼騎兵の身体に突き刺さる。
「ギャッ、グアッ!」
「ギイーッ! ギイエッ!」
 イレギュラーズ達からの攻撃を受けたゴブリン狼騎兵達が、反撃に出た。三体ほどはエールが輝かせた凶星の光によって正気を失っていたため自分で自分を攻撃したが、残る十二体は一気に距離を詰めると、ゴブリンの部分の持つ手斧と狼の部分の爪や牙で攻撃を仕掛けてくる。最前にいるホワイトローズには六体が、そこから後方にいるシャドウウォーカー、エールにはそれぞれ三体ずつが迫り、それぞれに傷を負わせて毒で蝕んでいった。
「超遠距離だろうが、ウチの一撃は効くっすよ~♪」
 エールに仕掛けた、つまり、最もルアトの村に近いゴブリン狼騎兵を狙い、VIVIは後方離れた位置からガンタイプに変形させた『マギタリーレギオン』を撃った。両手で抱えなければ持てない様な無骨で大きな砲身から放たれた光線が、狙いを過たずゴブリン狼騎兵に命中する。光線の衝撃は、ゴブリン狼騎兵にダメージを与えるだけでなく、その動きを鈍らせた。
「それ以上はさせぬぞ。吾(わ)の拳、受けるがよい!」
 ユリコはエールの方に駆け寄っていくと、VIVIの『マギタリーレギオン』に撃たれたのとは別のゴブリン狼騎兵を移動させない様に遮りながら、現実と同じように白百合清楚殺戮拳の技によってゴブリン狼騎兵を拳で打ちのめしていく。ユリコの技は、殴打されたゴブリンの身体を痺れさせ、自由に動けなくさせた。
「さぁ、来いよ。俺が、相手してやるぜ」
 エールの側にいるゴブリン狼騎兵達がVIVIとユリコによって攻撃され、その動きが鈍ったのを確認したコーダは、その奥のシャドウウォーカーの方へと駆け寄っていく。そして、周囲にいるゴブリン狼騎兵達に向けて掌を上にして真っ直ぐ腕を伸ばすと、くい、くいと指先を自分の方へと曲げて挑発した。
 ゴブリン狼騎兵達はその意味を理解したのか、憤激した様子で、コーダに対して敵意を露わにする。
「さあ来い、狼騎兵! この騎士の護りを、抜けるものなら抜いてみろ!」
 マークはさらにその奥、ホワイトローズの側へと駆け寄ると、騎士として絶対にこの先にあるルアトの村には行かせない、そしてこれ以上は仲間達も攻撃させないと言う固い誓いを込め、周囲のゴブリン狼騎兵に高らかに言い放った。やはりその言葉が、あるいはその意図がわかるのか、ホワイトローズに集っていたゴブリン狼騎兵達は、一斉にマークに敵意の眼差しを向けた。
「うう~、やっぱり遊ぶッス!」
 既に味方によってゴブリン狼騎兵達の足が止まったのを見たリュートは、我慢出来ないとばかりにエールの側へと飛んだ。そして、VIVIとユリコに攻撃されていないゴブリン狼騎兵の狼の部分に向けて、遊んで欲しいとばかりに全力でじゃれついていく。仔竜であるリュートにとっては「遊ぶ」でしかないじゃれつきは、ゴブリン狼騎兵にとっては命を危うくする攻撃であり、事実じゃれつかれたゴブリン狼騎兵は強かに傷を負った。

●斃れゆくゴブリン狼騎兵達
 ゴブリン狼騎兵達の意識は、挑発によって敵意を煽られたためにコーダとマークに釘付けにされた。時折我に返るゴブリン狼騎兵もいたが、その都度コーダかマークどちらかの挑発によって敵意を煽られ、意識を釘付けにされていく。
 当然、コーダもマークもゴブリン狼騎兵達に集中攻撃されることになった。だが、盾役を買って出るだけあって二人とも防御の技量やタフネスに長けており、相応に傷つきはしたものの死亡判定までは受けることなく、ゴブリン狼騎兵達の攻撃を耐え続けた。
 ゴブリンの手斧に塗られていく毒も、高い抵抗力を有するコーダとマークにはまともに効かず、意味を成さない。
 そうしてコーダやマークを相手に手数を無駄にしているうちに、残るイレギュラーズによってゴブリン狼騎兵はその数を次々と減らされていった。

「全く……もうすぐ終わりなんだから、あまり暴れないで頂戴」
「そうだね。ボク達は逃がす気は無いんだから、大人しく殺されてくれるとありがたいな」
 コーダの前にいる最後のゴブリン狼騎兵を仕留めようと、ホワイトローズは掌に生み出した闇の塊を、エールは掌に凝縮させた魔力の塊を、それぞれ放って叩き付けた。立て続けに二つの塊を叩き付けられて弱り切ったゴブリン狼騎兵は、さすがにもう勝てないと判断したのか戦意を喪失して逃亡を図る。
 だが、このゴブリン狼騎兵が生き存えることは出来なかった。いつの間にかその背後に出現したシャドウウォーカーが、ゴブリンの首を深く斬り裂いたからだ。ゴブリンは鮮血を首から噴き出しながら、狼と共に倒れていく。
「ゴブリンの喉笛切り裂いたら、狼まで倒れる……えぇ……?」
「……やはり、慣れぬよな」
 ゴブリンの部分、狼の部分、どちらに致命傷を与えるにせよ、残るもう片方も死ぬのはこれまでに何度も見てきた。だがやはり、何度見ても違和感を感じる光景にシャドウウォーカーは困惑を禁じ得ない。そんなシャドウウォーカーに、ユリコは困惑する気持ちはわかると苦笑いしながら、声をかけた。
 ユリコ自身もVRゲームを作った事があるため、一体の魔物であるゴブリン狼騎兵がゴブリンの部分と狼の部分で生命力を共有しているのは理解出来る。だが、そのゲームと違って『Rapid Origin Online』は遥かに現実と近いため、片方を倒せばもう片方もとなるのは奇妙だとしか感じられなかった。
 ともあれ、これで残りのゴブリン狼騎兵はマークの前にいる二体のみとなる。
 その二体のうち、一体はマークに向けて敵意を露わにしながらゴブリンの手斧で斬りつけ、狼の牙で噛みつこうとする。
「あと少し――絶対に、耐えきってみせる!」
 マークはゴブリンの手斧を手にしている刀で受け、狼の牙は全身鎧の守りに任せて耐えることにした。結果、手斧も牙もマークにまともなダメージを与えることは出来なかった。
 残る一体は我に返ったか、脱兎の如くその場から逃れようとする。しかし、ユリコに回り込まれてしまった。
「知らんのか? 美少女からは逃げられない!」
 何処かの魔王の様に傲然と言い放ちつつ、ユリコは逃げようとしたゴブリン狼騎兵の行く手を遮る。そして、拳の連打を幾度も叩き付けていった。雨あられと降り注ぐ殴打によってグロッキーとなったところに、横からVIVIがとどめを刺すべく『マギタリーレギオン』で狙いを付ける。
「これで……決めるっす!」
 両手で抱えられるようにして構えられた砲身から、太い光線が迸る。その光線を脇腹に直撃されたゴブリン狼騎兵は、横倒しに大きく吹き飛ばされた。それっきり、ゴブリン狼騎兵はゴブリンの部分も狼の部分もピクリとも動かなくなった。
「テメェで最後だ、逃がす気はねぇよ。仲間と一緒に、ここで死んでいけ」
 目の前のゴブリン狼騎兵がいなくなってフリーになったコーダは、最後のゴブリン狼騎兵に向けてやや距離を詰めると、首のスカーフをシュルリと外した。コーダがスカーフをぶんぶんと振ると、十メートル近く離れているはずのゴブリン狼騎兵に次々と肌が裂けた様な傷が刻まれていく。コーダのスカーフは、視認が困難な単分子ワイヤーが仕込まれている暗器だったのだ。
「最後に、思いっきり遊んで欲しいッス! ていやー!」
 単分子ワイヤーに斬り刻まれた姿に、ゴブリン狼騎兵と遊べるのもこれで最後だと感じたか、リュートは思い切り勢いを付けてゴブリン狼騎兵の狼の頭の部分に全力で体当たりを仕掛けた。その痛烈な勢いに、狼だけでなくゴブリンも朦朧とした様子で、意識を取り戻そうと二つの頭をぶんぶんと同時に振る。だが、意識をはっきりと取り戻したその時が、ゴブリン狼騎兵の最後の時だった。
「これで最後だ! 狼騎兵!」
 マークは剣を真っ直ぐに立てて構えると、斜め下へと斬り下げた。剣術の基本、フォム・ダッハだ。基本に忠実に沿って放たれた一撃は、それだけに強烈で、ゴブリン狼騎兵のゴブリンの部分の右肩から左脇腹にかけてを深々と斬り裂いていく。ドバッと傷口から血を噴き出したゴブリン狼騎兵は、自らが創り出した血溜りの中で、すぐに息絶えた。

 十五体のゴブリン狼騎兵全てを無事に討伐したイレギュラーズ達は、ルアトの村をはじめとしてルアト領の人々が守られたことを喜び、意気揚々とサクラメントまで引き上げてきた。そして次々と、ログアウトしていく。
(さて、これで一応、あっちの世界とは違う歴史になったわけだね、この村は。
 これが今後どう影響してくるか、じっくり観察させてもらおうかな)
 エールはログアウトの前に、ルアトの村の方を振り返る。そして現実とは歴史が変わったこの村が、『Rapid Origin Online』世界にどんな影響を与えるのか。それが楽しみで仕方ないと、微かに唇を吊り上げるのだった。

成否

成功

MVP

マーク(p3x001309)
データの旅人

状態異常

なし

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。皆さんの活躍によってゴブリン狼騎兵は残らず討伐され、ルアトの村をはじめとするルアト領の人々は守られました。
 MVPは、格好良いスキルでゴブリン狼騎兵達の攻撃を自身に誘引し、味方を守ったマークさんにお送りします。

 それでは、お疲れ様でした!

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