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シナリオ詳細

<Genius Game Next>やさしいまほうは一度だけ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●影さす者に光あれ
「今こそ光の下に出るときなのです。私たちの魔術は民草の幸福がため。安寧と信仰の手が届かぬ者へ手を伸ばすため。そう――」
 魔術結社『ミスティリオン』の指導者にして、伝承大司教イレーヌと共に伝承王国の信仰を支える、力を持つ司教アリシス・シーアルジア。
 魔術師と司教という、ある意味正反対の顔を併せ持った彼女が、仮面を手に扉を開く。
 内側にびっしりと魔術式の書かれた扉は、それをごく一般的な教会に見せかけるための偽装魔術であるが、今このときよりその偽装は解かれた。
 大聖堂で交わしたイレーヌ・アルエ伝承大司教との会話を思い出す。
 彼女も彼女で、この緊急事態に動かせる駒を動かしている筈だ。
 だから、自分もまた動かせる駒を動かす時なのだ。
「民のために、その魔術を振るうのです」

●Genius Game Next
 仮想混沌を作成し世界法則解明を目指すProjectIDEA。それは不明なバグによって歪み、仮想世界ネクストを生み出した。
 バグ発生時にログインしていた研究者の多くは意識ごとデータ内に閉じ込められ、今も意識は戻っていない。その復旧と解明のために依頼されたローレット・イレギュラーズはアバターを通してROO内のネクストへとログイン。
 数々の『クエスト』をこなすことで研究者らの意識を救出していった。
 そんな中突如発表された『イベント』は、砂嵐の大規模盗賊団が伝承各地に襲撃を仕掛けるというものであった。
 これを何らかのメッセージと受け取ったローレットは大規模イベントの攻略に挑む。
 このクエストは……そんな大規模イベントのなかの一つである。

「もう一つの世界の、私……ですか」
 情報屋から依頼を受けたイレギュラーズたちの中に、アリシス・シーアルジア(p3p000397)の姿があった。
 彼女もまた同様の姿をもったアバターを使ってROOにログインするひとりである。
 情報屋はネクスト世界での『アリシス』について語った。
「そう、『司教アリシス』。正しく誠実な司教様だったけど……あるときから救済の限界を悟り魔術への傾倒をはじめた。
 彼女は伝承正教会の方針からはずれた魔術結社を自ら作り出し、地下に潜った魔術師達を統合、組織していった。
 もちろんこれにイレーヌ大司教が気付かなかったわけじゃないけど……彼女も伝承の政治ゲームを勝ち進める女傑だからね。理由と人柄を察して黙認しているようだ。意見自体は対立したままだけどね」
「それで」
 尋ねるでも、応えるでもないトーン。
 先を促すように囁くアリシスに、情報屋は頷いた。
「砂嵐の襲撃に対して、伝承貴族たちは動いているけど、どうしたって端っこの民は犠牲になる。特にスラム街あたりはね。
 アリシス司教はこの世界で魔術結社長として活動するための偽名『ミスティリオン』を名乗って、率いた魔術結社と共に盗賊団の迎撃にあたるようだ。
 今回のクエスト内容は、この結社に味方して盗賊団を撃退すること……なんだけど。成功条件とは別にオプションがいくつか割り振られている」
 情報屋は目を細め。
 そして、ネクスト世界のアリシス司教とあまりにもよく似たアリシスを見て、言った。
「『ミスティリオン』の死を偽装せよ、というのがあるんだ」

GMコメント

●クエスト
・成功条件:スラム街へ侵攻した砂嵐盗賊団を排除する
・オプションA:スラム街での住民死亡者を80%まで押さえる
・オプションB:スラム街での住民死亡者を50%まで押さえる
・オプションC:スラム街での住民死亡者を10%まで押さえる
・オプションD:魔術結社のリーダー『ミスティリオン』の死を偽装する

●フィールド
 伝承王国のスラム街です。
 自衛能力のある者は殆ど出払っており、力の弱い老人や子供ばかりが取り残されています。
 地下魔術結社ミスティリオンの戦闘魔術師部隊が数ダース単位で出撃し、彼らの救助や砂嵐盗賊団の撃退を行っている模様です。
 とはいえ彼らの戦闘力はログインした皆さんのアバター体と比べるとだいぶ劣るようです。

●エネミー
・砂嵐盗賊団
 砂嵐(サンドストーム)にすまう盗賊の混合部隊です。
 スラム街への襲撃は本命の目的ではないため、戦闘力のやや低い連中のかき集め部隊が投入されています。
 彼らの目的は『目に見えた虐殺』です。
 なので、広い通りに出てきた市民を捕まえて殺したり、逆に屋内に閉じこもった市民を屋外へ引っ張り出してから殺したりといったちょっと遠回しで目立つ方法をとります。
 それゆえ見つけやすく、そして倒しやすいのです。

・ネームド盗賊たち
 かき集めとはいえやや実力のある連中も混ざっています。
 彼らと対峙した際は場合によってはこちらの命も危ういかもしれません。

●魔術結社ミスティリオン
 ネクスト世界の司教アリシスが秘密裏に結成した魔術結社です。
 多くの魔術師を抱えていますが、中でも戦闘に優れた者を選抜して今回の作戦に投入している模様。
 リーダーはもちろんアリシスなのですが、司教がそのまま名乗っているとたいへんよろしくないので『ミスティリオン』という偽名を使い、専用の仮面を装着しています。

 オプションにある『死の偽装』ですが、これは達成できてもできなくてもOKです。
 ただ、スラム街界隈や盗賊団界隈に『結社長ミスティリオンが死んだ』という情報が広く伝わることで今後の何かが大きく変わるかもしれません。し、変わらないかも知れません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

※重要な備考『情勢変化』
<Genius Game Next>の結果に応じて『ネクスト』の情勢が激変する可能性があります。
又、詳細は知れませんが結果次第によりR.O.Oより特別報奨が与えられると告知されています。

  • <Genius Game Next>やさしいまほうは一度だけ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年06月21日 23時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ムー(p3x000209)
ねこ
シャスティア(p3x000397)
暴きかけた獣
マーク(p3x001309)
データの旅人
アウラ(p3x005065)
Reisender
タント(p3x006204)
きらめくおねえさん
ディリ(p3x006761)
アカネ(p3x007217)
エンバーミング・ドール
現場・ネイコ(p3x008689)
ご安全に!プリンセス

リプレイ


 光の蝶が飛んでいる。
 薄暗いスラム街を抜け、空に向けて羽ばたいたそれは、まるでそれが許されないかのように砕けて消えた。
 散って舞い落ちる光の粒子に手をかざし、シャスティア(p3x000397)は目を細めた。
「どうやら……私とは違って司教様は真っ当な人間にして聖職者であらせられる様子。
 『私』が司教とは、中々面白いものを見せてくれる世界です」
 この世界では背教者も司教になれるのか。それとも、この世界の自分だからこそやれたのか。
 どのみち、『アリシス』の抱える自己矛盾を、この世界のアリシスもまた抱えているのだろう。
 そんな彼女が、民に助けの手を差し伸べ、そして偽りの死を望むという。
 それが達成されたなら、一体どんなことがおこるのだろう。
「本当に、興味深い」
 おちた粒子を握り、そして人差し指から順にゆっくりと開く。
 再びできあがった光の蝶が、彼女のまわりを踊るように飛んだ。

「ほっ!」
 『ご安全に!プリンセス』現場・ネイコ(p3x008689)の膝蹴りでうずくまった盗賊の男に、マジカルステッキを勢いよくたたき込む。
 後頭部に固いものを叩きつけられた人間は大抵の場合その場に倒れ込むが、ネイコの力は相当なものだったらしい。
「あ、血がついちゃった。まだ変身もしてないのに」
 ネイコは『うええ』といいながら布でそれをぬぐい、『プリンセスチャージ』のポーズと詠唱を終えるとキラキラとフリフリに包まれたプリティ★プリンセスへと変身した。
「ここが仮初の世界だったとしても、私の為すべき事は変わらない。
 私の手の届く先に居る人だけは守ってみせるよ!」
 その横を、別の盗賊がくの字になって飛んでいく。壁に激突し崩れ落ちさまを確認すると、畳んだ傘で突きの姿勢をとっていた『傘の天使』アカネ(p3x007217)がその傘を開いて天にかざした。
「その通り。ゲームでも人死は少ないにこした事は無いですね♪
 でも死を偽装するのは好みではないですね……死体は死体であるから良いのであって」
「なんて?」
「いえいえなんでも」
 にここりと天使のように笑うアカネ。
「それにしても、民を虐殺だなんて。悪辣な連中ねぇ」
 親指の付け根に、僅かに歯の跡をのこして口を離す。
 ハァとついたため息が彼女の――『きらめくおねえさん』タント(p3x006204)の親指をしめらせた。
 彼女の魔術をうけた盗賊が胸を押さえ、膝から崩れ落ちていく。その横をすたすたと歩いて抜けながら、召喚した手鏡を覗き込んで前髪を整えた。
「ゲーム内とはいえ、救いたいこの気持ちは本物だから。本気で行くわよぉ!」

(宗教にシスターに魔術結社……ねえ? 一気に胡散臭くなったね?
 元は昔からある名の知れた宗教なんだろうけど、一気に胡散臭くなっちゃった。
 だって、ねえ? 宗教、神様とやらに魔術が結びついちゃったんだから。その正体見たり、な気分なんだけど。
 まあ実際は全然違うんだろうけどね? それに私、宗教とか興味ないし、むしろ否定的なんだよね。
 それはそれとして、今回は少し面倒なオーダーもついてるようだし、さっさと終わらせようか)
 闇に紛れるかのように足音を消して歩く『Reisender』アウラ(p3x005065)。
 彼女が配置についたことを確認すると、『マルク・シリングのアバター』マーク(p3x001309)はスラム街のマップをあらためて確認した。
「たとえ仮想空間だとしても、命が理不尽に奪われていくのを見過ごすことは、僕にはできない」
 マップに特徴的な印をつけ、赤く×印を描く。
「それが、嘘に手を染める結果を伴うとしても」
「魔術結社を信用していいものか悩みどころではある気もするが……まあ、そうだな。主導者がまともな司教であるのなら、ここは一つ共同戦線だ」
 『君の手を引いて』ディリ(p3x006761)が横からマップをのぞき見て、『ねこ』ムー(p3x000209)も同じようにマップを覗き込んだ。
「その盗賊というのを、できる限り倒していきましょうか。人を襲う連中は何であれ好きになれませんしね」
「盗賊はわざわざ『広い通り』で住民を殺そうとしている。通りに出ている盗賊が多い地域から掃討しよう。僕らは空から回り込む。そっちは……」
「ああ、俺たちは地上班だな。スラム街の被害は出来る限り抑える方向で動けるか」
 マップは複雑に入り組んでいて、建物内を通り抜けるように移動するタイミングも多そうだ。スラム街なりのごちゃごちゃ感だが、その複雑さは盗賊団にとって不利に、スラム民にとって強く有利に働く。目につく通りを進み盗賊と戦って回るだけでも、かなりスラム民の生存率をあげられるだろう。
「俺たちはこの一番大きい通りを守るのが妥当だな。相手も無視できまい」
 ムーたちに手招きをすると、ディリは早速歩き出した。アカネは翼を、現場とタントは煌めく魔法の翼を広げて飛び上がり、『じゃあ後でねぇ』と手を振った。
 長い髪をはらい、振り返るシャスティア。
「それでは……見せて頂くとしましょう、司祭様。『最初で最後のお披露目』を」


 スラム街のあちこちでは、既に魔術結社ミスティリオンと砂嵐盗賊団による戦闘が勃発していた。
 魔術で作り出した氷の杭を次々と打ち出す魔術師や、建物を壁にして角から飛び出しコピー品の小銃を乱射する盗賊。肉体を狂獣化し飛びかかる魔術師や、片手剣ほどあるグルカナイフで斬りかかる盗賊。
 特にスラム街がスラム街になる前からあったとされる表通りの戦闘は激しく、民間人の多くは魔術師の足止めにまもられる形で退避していた。
 が、バグの影響だろうか。相当な規模をもつはずの魔術結社ミスティリオンは砂嵐盗賊団の戦力に押されつつあった。
 そこへ駆けつけたのが――。
「恋の身体は、脆い代わりに動きやすいですね――にゃーっ」
 白い尻尾をひき手を地に着けて走るムー。跳躍と宙返りから繰り出したホワイトキャットキックが盗賊を派手に突き飛ばし、その辺に転がっていた煉瓦を投擲することで建物の裏へ隠れようとした盗賊の後頭部をうった。
 さらなる煉瓦を拾って投擲したところで、大柄な男がぬっと建物より現れそれをキャッチ。握力で握りつぶした。
 もう一方の手には隠れていたであろう民間人女性の長い髪が握られており、今にも表に放り出して虐殺を始める風体であった。方には古代文字でアイガと彫られている。
「なんだぁ? 少しはホネのあるやつがいるじゃねえか。おいシマ、ガルテ!」
 呼びかけたことで現れた大柄な二人。アイガ同様方に名らしきものが古代文字で彫られていた。
「よくわかりませんが、強そうですね……此処で倒れて行ってもらいますよ」
「あぁ? できんのかぁ? テメェに!」
 アイガは常人の身長ほどはある大きな剣を抜き、ギラリと歯を見せて笑う。
 存在感を希薄化して移動していたアウラが実質的に姿を現し、後方から銃撃。
 三人の中心へとやまなりに飛んでいったグレネードが炸裂――したが、それをシマと呼ばれる男が握りつぶすことで押さえ込んでしまった。
「その辺りの雑魚とは違うようだ……けど、外さないよ」
 すぐさま放たれた第二の銃弾がシマへと命中。
 シマは直撃をうけつつも、手にしたライフルでアウラへの射撃を開始した。
「こりゃあ強敵だ。俺はこいつをやるぜ!」
 民家へ飛び込み壁を盾にしつつも撃ち合い状態となったシマとアウラ。
 ディリはそんな状態を察知すると、ナイフを抜いてシマを側面から斬り付け――ようとした矢先、バズーカ砲を棍棒のように持ったガルテがその斬撃をうけとめた。眼帯越しの目が見開かれる。
「こいつ……」
「おいおいこっちにもいたぞ。スラム街の雑魚狩りかと思ったらとんだごちそうだぜ! おい、相手しろよ『おじょーちゃん』!」
 ディリの線の細さを指摘した挑発なのだろうが、ディリはそれに激高することも冷静さを欠くこともなかった。ただまっすぐに見据え、大きく飛び退くとドローン・ライフルを起動。ガルテめがけて激しい連射を開始した。
 そして逆に、相手を挑発するような仕草をしてみせる。
「こいつらは俺が相手をする! 今のうちに逃げろ!」
 ディリの呼びかけは、つい先ほどアイガに掴まれていた女性にむけたものだった。同時にドローンライフルが反転、アイガの腕を撃ち、手を離させる。
「救援に来た! 他にも危険を感じている者がいるなら声を出せ! 逃げる時間は稼いでやる!」

 三人が戦うその一方、やや裏へと入り込んだ暗い道のなかで、二人の女が出会っていた。
 シャスティアと、ROO世界におけるアリシス。
 二人はばったりと道ばたで遭遇したその次の瞬間、アリシスは手にした槍を魔術によって浮かせ、シャスティアもまた魔術によって同型の槍を生成して手の上へと浮かせた。
 踏み込み、念じ、投げつける動作を圧縮した魔術儀式とし、双方――の肩越しに見えた盗賊たちの顔面へと打ち込んだ。
 声もあげられず顔面をはかいされ崩れ落ちる盗賊たち。
 シャスティアは、そしてアリシスは互いの顔をまじまじと見つめた後、ただほんのりと笑った。
「詮索は無用」
「必要なのは結果」
 全く同じ考え方をするようだ。
 それがおかしかったのか、アリシスは笑って仮面を外し、シャスティアへと投げる。
「ミスティリオンはその設立にあたり多くの接触を重ねてきました。縁は力ですが、束縛でもある。影響力を食い込ませ自らの利にしようとする貴族たちも少なくありませんでした」
「それゆえの、『自死』」
 死して亡霊となれば、もう一層深い地下へと潜ることが出来る。
「『タダ』で表にでることはないと思っておりましたが……わかりました、お手伝いしましょう司教様。いいえ……」
 シャスティアは仮面をつけ、美しく笑った。
「ミスティリオン様」

 目に見える虐殺と言う目的をもっているとはいえ、表通りで腕組みをして待っていてもスラム民が自らやってくることはない。
 入り組んだスラムの奥深くへ隠れた人々を見つけ出して引きずり、表へと運ぶ役目が必要だった。
「おとなしくしろ、ぶっ殺すぞ!」
 暴れる子供を殴りつけ、足を掴んで引きずる男。それでも暴れる子供に舌打ちをし、『ここでやっちまうか?』とナイフに手をかけた――その時。
 キュン、と光が男の肩を貫いた。
 更に無数の光が男の腹や腕、足や頬を貫き、ろくに声もだせぬまま穴だらけになった男はその場に崩れ落ちる。
「観念なさい! 蛮行を止めないなら容赦しないわよぉ!」
 自らの周囲に無数の手鏡を浮かせ激しく発光するタントが、呆然と見上げる子供の頭上、スラム街の入り組んだ屋根屋根の間より現れた。
「目立つ場所に出てきやがって、カモ撃ちだ」
 同じく回収に出ていた盗賊たちがライフルを手にタントへと一斉砲撃。
 が、翼を広げ回り込み、赤い傘を広げたアカネがそれを受け止めた。
 広げた傘の表面にはられた障壁や、回した傘によって更にく展開した渦状の障壁が銃弾を弾いてあちこちへと散らしていく。
「浮いてるからって無防備だと考えるのはちょっと浅はかではないですか?」
 アカネは傘の裏から薄く笑うと、急降下アンブレラバッシュで狙撃者の一人を殴り倒した。
 そこへ次々に降り立つマークとネイコ。
 ライフルをかざしていた盗賊達をマークの剣が、ネイコのステッキスマッシュがそれぞれ打ち倒していく。
「これ以上はやらせない!かかってこい、僕が相手になる!」
「チィ――!」
 盗賊の中でもリーダー格にあたるであろう男がライフルの狙いをマークへつける――が、マークは望むところだとばかりに剣をかざした。
 銃撃――が、マークの剣によって弾かれる。一瞬の火花。一瞬の隙。
 その隙を駆け抜けたのは、魔法の翼をスラスターのほうに放射し加速するネイコだった。
 二十メートルほどの距離をいっきにつめ、魔法の力を宿したステッキを振りかざす。
「プリンセス――ストライクぅ!」
 振り抜く動きと加速をあわせ、盗賊の顔面をうつ。
 盗賊は派手に回転し、そして地面に頭をぶつけて大の字に倒れた。
 マークはその様子を確認すると、剣をわざと下ろしてみせる。
 盗賊達のぎょっとした様子に肩をすくめ。
「この作戦に乗ったのが、運の尽きだね」
 その瞬間タントの起こした魔法の雷が盗賊達へと降り注いだ。
 もはや逃れるすべもなし。次々と倒れる盗賊達をよそに、傘を畳んだアカネはaPhoneーalterをポケットから取り出した。
「こちらはオッケーです。『凶刃』を向かわせます。『仮面』の準備は?」


 盗賊達は無事に撃退できた。貴族達もノーマークなエリアだったことから、差し向けた軍勢も強力なものではなかったようだ。
 表通りで戦っていたネームドたちも、ムーやアウラたちの活躍によって無事に倒すことができた。
 これらの功績は、あえて魔術結社ミスティリオンへと移されることになった。というのも、ディリたちが自分の所属を語らなかったことでミスティリオンの一部とみなされたためである。
「皆さん。ご無事ですか?」
 仮面の下で優しく笑う結社長ミスティリオン。
 感謝を述べるスラムの人々と、それを見守るタントやネイコたち。
 魔術結社というものは、司教がやっていれば外聞が悪いというだけで、その存在自体は広く受け入れられるものである。魔法使い自体はポピュラーな存在であり、銃器同様それをどうつかうかの問題でしかないのだ。
 そして、表に現れたと同時にスラム街を救った魔術結社ミスティリオンは、少なくとも民に対して善良であるという見方がされるのである。
 こうして人々にミスティリオンが受け入れられる――と思われたその時。
「人心を惑わす魔女ミスティリオンめ……ここで会ったが百年目、天誅を受けろ!」
 突如現れたマークがその剣をミスティリオンの背に突き刺した。胸元よりつきでた剣の先は血に濡れ、ミスティリオンもまた血を吐き出す。
「ミスティリオン様!」
「……そ、そんな!」
 ディリやタント、アカネたちがかけより、剣をとりおとしたマークもまたアウラの銃撃によって倒れた。
「……駄目ですね。助かりません」
 倒れたミスティリオンの様子を確かめたムーが首を振り、ネイコやタントが泣き崩れるようにして顔を覆った。
「そんな……」
 自分たちを救った存在が突如として死んでしまったという事実に、スラム民たちは呆然としていた。
 そして魔術結社に所属する魔術師たちは結社長であるミスティリオンの周りへと集まり、数秒遺体の姿が隠れたかと思った後、遺体を包んだとおぼしき袋を担いでその場を立ち去っていった。

 魔術結社ミスティリオンの登場と、崩壊。そのニュースは瞬く間に伝承中へと広まった。
 結社の名そのものを関する結社長の死は、組織の崩壊を意味する。
 それを裏付けるように魔術結社ミスティリオンの姿を見るものはなく、本当に消えてしまったのだと噂された。

 こうして世間から存在を消した魔術結社ミスティリオンは、より深き地下へと潜っていくこととなる。

成否

成功

MVP

シャスティア(p3x000397)
暴きかけた獣

状態異常

シャスティア(p3x000397)[死亡]
暴きかけた獣
マーク(p3x001309)[死亡]
データの旅人

あとがき

 ――クエスト成功
 ――意識を囚われていた研究員たちを救出しました

 ――魔術結社ミスティリオンは壊滅したと報じられ、結社長共々その存在は深く地下へと潜りました。

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