PandoraPartyProject

シナリオ詳細

沈黙の赤、雪原の白

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●鋼鉄の動乱
 『ネクスト』内における鉄帝――ならぬ『鋼鉄』(スチーラー)は現在、混乱の只中にある。
 皇帝の突然の死、それに乗じた各種勢力の蠢動。実力者とあれば擁立しようとする者達が、本人の依らぬところで『派閥』を名乗るのも珍しいことではない。
 本人臨むと望まざるとは関係なく、だ。
「で、どうします“隊長”? 状況確認だけして『こうでした』ってだけで済まされる件じゃないでしょう、あれ?」
「そうなんだがよォ、じゃあお前あの状況説明できるか? アホだって思われるぜ俺達」
 鋼鉄北部の山の中。白黒ブチの兎の獣種は、純白の毛並みをした『隊長』に対して呆れ気味に問いかけた。
 彼等は鋼鉄の軍人であり、そして部隊の構成員である。今回の任務は調査、麓の村の者達の様子がおかしいので原因を調べるという、ただそれだけの任務のはずだった。
 ……のだが、彼等が村に訪れた時にはもう人々の姿はなく、呆れるほどにあふれかえる酒気に顔をしかめたものだ。
 それが山に、というか山から伝う川から漂ってきたとなればいよいよもって疑わしい。
「でも証人の一人くらいは連れて帰らないとまずいでしょうアレ。多分滝の上にいる『なんか』が原因でしょうけど、絶対デカいですもんあれ。倒せると思います?」
「射って当たらねえ距離じゃねえ。けど、暴れられて村人に犠牲があっても困るだろ……」
 『隊長』とブチ柄とは、背後に控える隊員達を前にああでもないこうでもないと議論を重ねていた。隊員の命を預かる隊長としては慎重に動きたい。が、部下としては早々に決着を付け、部隊の優位性を満天下にしらしめたい。隊長に皇帝の器は荷が勝ちすぎるが、彼が皇帝候補を――例えば南部戦線のザーバ・ザンザなんかを――を担ぐのなら悪くない。
 そんな意図を知ってか知らずか、隊長は煮え切らない態度を示している。
 だってぶっちゃけこの状況、山の奥にある滝、その上に鎮座する魔獣のせいで川がアルコールに変わり、村の人々が酩酊状態になっている、としか表現しようがないのだ。それで村人が凍死されても困る。かといって横からかっさらってあの魔獣は怒らないか。
 だが、彼等が喧々諤々やっている間に、ふと振り返ると……隊員が半分ほどに減っている。
 見れば、酒盛りをする村人たちに混じってしまっているではないか……彼等はどうやら、ガスマスクをつけていなかったらしい。
「……ホント、どうしましょうね」
「取り敢えず酒の川はなんとかしてえな」
 イレギュラーズ達のアバターが、新たなサクラメントの開放を求めてその山に訪れ、そして彼等と遭遇したのはそんな時であった。

●鋼鉄部隊『白兎』
「私はアダムス・バーベナー。副隊長を努めています。そしてこの方が」
「……ヴァイス・ブランデホト」
 十数分後。
 一同は突撃するか否かで躊躇していた『白兎』の面々とこうして話すべく色々あって、結果としてこうして友誼を交わすに至る。目の前の兎たちと同様に、あなた達もこの山の異変をクエストとして受注したのである。あと、問題の滝の裏の洞窟が、新たなサクラメントの位置であるというのも。
「状況は理解して貰ってると思いますが、私達はあの魔獣を滝から遠ざけたい。あれが川の上流や滝から離れさえすれば、村の人達がこれ以上どうにかなることは避けられるはずで」
「どいて貰った後に、酒になった水もどうにかしねえとだがな」
「隊長、それは今話す内容じゃ……」
「お前ら、イケるクチか?」
「……隊長?」
 説明を重ねるアダムスの傍ら、ヴァイスは一同にむけて、出し抜けにそう問いかけた。
「あの魔獣、見た感じ自分が何をしてるのかもわかってねえ、滝の上で尻尾垂らして動かねえだけだ。あいつが暴れまわるのか、具合悪くて動けねえかもわからねえ。あいつのこと知ってるなら、まあ……退けてくれりゃ助かるし、そのうえで酒になっちまった川の『処分』と村人の保護を頼みてえわけでよ。あっちに行った連中も残ってる連中も、俺もこいつも下戸だから解決策として下策なんだわ……」
 嗚呼、そういう話か、と一同は理解した。
 そして、魔獣に関しては――全然オッケーだったのだ。

 なにしろ彼等のもうひとつの目的は、魔獣として動けなくなっているそのR.O.Oユーザーの保護であったのだから。

GMコメント

 そんなわけで、ヴィーザル地方を長らく動かしていない間にスチーラーで属国軍人になったヴァイス君(GM所有NPC)の話です。

●達成条件
・魔獣の捕獲(保護)。不殺による撃破
・酒と化した川を全て除去する
・村人・『白兎』酩酊隊員の保護

●滝の魔獣
 滝の上で、水面に尻尾を漬けてぼーっとしている魔獣です。
 尻尾が触れた水をアルコールに変える特性を持っています。尻尾を振ることで、周囲の残雪を酒のシャーベットみたいにしたりもしてきます。攻撃力は控えめですがBS特化型で、混乱系列や抵抗ダウン、スリップダメージ入る感じのBSとかを主体とします。
 あと、口からブレスも吐きます。かなり広範囲をカバーします。
 実は希望ヶ浜の研究員で、魔獣の姿も当人のアバターです。ただ、酩酊効果とかはバグの産物。

●『白兎』ヴァイス
 混沌ではヴィーザル地方で『白兎』を率いて鉄帝と敵対しています。『ネクスト』では鉄帝軍人。
 指示があれば戦闘に参加しますが、そうでなければ基本的には村人の保護に回ります。
 アダムス以下、部隊員も同様です。

●川
 こっちが本題です。
 滅茶苦茶沢山の川の水です。
 魔獣の能力でアルコール化しており、酒種はさまざま。
 アルコール度数も様々。なんかもう酒盛りしてって言ってるような感じです。
 戦闘が長引くと量も増えます。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 沈黙の赤、雪原の白完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年06月06日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

史之(p3x002233)
エスタシオン
Ignat(p3x002377)
アンジャネーヤ
エイル・サカヅキ(p3x004400)
???のアバター
吹雪(p3x004727)
氷神
九重ツルギ(p3x007105)
殉教者
名も無き泥の詩人(p3x008376)
■■■
リラグレーテ(p3x008418)
憧憬の聲
ユアン(p3x009175)
放浪人

リプレイ


「……嗚呼、まるで匂いだけで酔っちゃいそう」
 『虚花』リラグレーテ(p3x008418)はあたり一面に立ち込める酒気に、わずかに身を傾いでため息を吐いた。確かに、川全体が酒と化しているとは聞いた。村人達がこぞって酒盛りをしているとも聞いた。が、聞くと見るとは大違いだ。『未成年のアバター』であることも一因なのだろうか?
「なんて素敵な村なのかし……じゃなくてマジパないおったまげな村~!」
 『???のアバター』エイル・サカヅキ(p3x004400)は一瞬素が出かけたが、即座にギャル語とともに口元に手を当てた。傍目に見れば、まあギャルが驚いて口を押さえた程度にしか見えまい。本当の口調に気づくなどそんなそんな。
 ……そこで『カニ』Ignat(p3x002377)の赤い単眼がじっとエイルを見つめているような気がするが気のせいだろう。気の所為だってば。
「最近はこの蟹戦車の姿にも慣れて来たや。皆もこっちの世界には馴染んでる? ……と言っても史之が史乃だろうってことくらいしか分からないけどね」
「俺も他の人のことはわからないや。依頼達成には問題ないよね?」
「そーそー、難しい話はぽいちょでおけまる!」
 Ignatに話を振られた『エスタシオン』史之(p3x002233)もまた、誰が誰だか分からなくてもいいや、というスタンス。多分、リアルを掘ってくるメンバーはこの中にはおるまい。演じていない者、期せずして演じている者、様々なのだから。エイルは内心大汗をかきながら、胸をなでおろした。
「尻尾が触れた液体が酒になる魔獣……いや、倒さないとダメかのう……」
「少し楽しむ分には構いませんが、過剰になると毒ですからね……依頼を遂行しましょう」
 『放浪人』ユアン(p3x009175)の残念そうな口ぶりに、『生存カウンター4』九重ツルギ(p3x007105)は穏やかに窘めた。無論、お互い依頼の達成に異論あるわけではあるまい。残念だという感情を発露しないと、どうにもこうにもなのである。
「お酒飲み放題じゃぞ? そこのギャル系酔っ払いをはじめとする酒飲みとか大喜びじゃろ? なんならひと商売出来る話じゃぞ?」
「アタシ的には魔獣放置でも問題ナッシングなんだけど、クエストだしね」
「……酩酊とは己を認識できなくなる状況。ある種の臨死状況に近いものと置き換えることも可能かもしれん」
「そうなると、バグってる研究員は」
「どうだろうな。終わったあとに話を聞いてみたいところだ」
 『■■■』名も無き泥の詩人(p3x008376)は『臨死』と口にしたところで僅かに口角を上げた。リラグレーテは何か思うところがあったか、彼の言葉のあとを引き継ぎつつ思案した。アバターである研究員が何をば思っているのかは定かではない。だが、多少なり苦労はするだろう、という認識は共通のもの。
「バグ……だかなんだか知らねえが話は纏まったのか?」
「ええ、ヴァイスさん方は私達と住民の救助を優先いたしましょう」
「言い方は悪いが、足手まといが増える可能性は排除したい。魔獣への対処は俺たちに任せてもらおう」
 何が何やら、という調子で問いかけたヴァイスに、ツルギは紳士的な笑みを向け、応じてみせた。続けざまに放たれた泥の詩人の言葉には流石にたじろいだ様子だったが、逡巡した後、アダムスに引っ張られる形で村人達のもとへ向かっていく。
「邪魔なんならどいてもらうしかないよね。どうやってどいてもらうかって、そりゃ……殴るよ!」
「そうだね! オレもトバしていくよ!」
 史之もIgnatもこうなっては完全に『ヤる気』満々。彼等の思考にはいい感じにその後のことに対する期待しかなかったのである。
 ……多分、成人済みアバター全員だと思うんだが。


「最初から全力でいくわよ、巻き込まれないように気を付けてちょうだい!」
「巻き込まれないようにね! FIRE IN THE HOLE!!!」
 吹雪とIgnatは異口同音に仲間たちに警句を飛ばすと、各々の能力を全開で叩きつける。吹雪の全てを凍らせんとする術式、そしてIgnatの炎は入り交じることで強烈な怖気の果てに凄まじい熱勘を与えることに成功する。皮膚を焦がすかのような冷気は、魔物が素早く尻尾を振ることを選択させる……が、凍って動かない。
「今週のビックリドッキリ武装<メイクアップ>! ロゼッタネビュラ!」
 リラグレーテの掛け声とともにその姿は変化……今回は魔法少女というよりマフィア街の女ボスみたいな格好になっていた。多分寒いからファーとか出たのだ。多分。
 いきおい、激しく凍った背中に炎が突き刺さるが、温まるどころかその背に受けた熱感を助長する結果となった。
「やっばw我等飲酒一生不滅www」
「……誰がどう見ても酒瓶っつーかジョッキで殴っとるんじゃよなアレ」
 いつの間に酒を回収したのか、エイルのステータスには燦然と『酩酊-酔拳出力上昇』のサイン。どう考えても酔っ払っている。アバターが。中の人がどんな状態なのかは見えないが、そんな設計になっている事実にユアンは軽く引いた。
「でも、動きが止まったならこのままなにもさせないで勝ちに行きたいけど……」
「シャアアアアアッ!!」
「そうもいかないよね」
 史之はここぞとばかりに攻撃を畳み掛けるが、魔獣もバグの産物だけあって協力で、素早く立て直すやブレスを吐き出した。
「とりま皆、水の上で動けると思うけどフブっちが凍らせてるから大丈夫っしょ!」
「……まあいいわ、相手も傷ついているけどそれなりにまだ戦えるようだし、関節を狙うとかして動きをどんどん止めていきましょう。死ななきゃログアウトさせればチャラなはず」
 吹雪は一瞬だけ広義の視線をエイルに送ったが、諦めたように攻撃にもどる。すかさず魔獣は反撃に移ろうとするが、その攻撃の対象は――誰でもなく、泥の旅人へ向けて。
「酔いどれ気分は恍惚かい」
 推奨で生み出された防壁がブレスを撫で付けるようにそらすと、彼は反撃とばかりに前に出る。くらりと身を傾いだ魔獣に叩き込まれるのは、史之の一撃であり、Ignatの激しい熱であり、リラグレーテの弾幕だ。
「ここまでくれば、あとは殺さないように……!」
「酔い醒ましといけばいいがのう」
 リラグレーテとユアンの声がユニゾンし、それにあわせるように強烈な一撃が魔獣を見舞った。

「派手だな、お前の仲間たちは」
「……みたいですね」
 その頃、ツルギと『白兎』の無事な面々は村人を川から引き剥がしつつ、調理できそうな食材の回収に奔走していた。彼の口八丁により、地産食材の料理でひと財産儲けられますよ、酒なんてやめておきましょう、とまあそういうアレが奏効したわけである。ダメになってる『白兎』の連中も強引に引き剥がしたことで、あとはジビエと山菜料理の準備というわけだ。……酒のアテがないと悪酔いするから、しかたないね。


「酒盛りウェーイ! つるっぴの映えツマミウェーイ!」
「つるっぴ……ま、まあ準備は出来ていますよ、オードブルがこちらに」
「兎に角いっぱい飲もうね! タダ酒を文字通り浴びるくらい飲めるよ! ひゃっはー!」
 エイルは正気に戻った職員のアバターに移動を促すと、自らも川辺へと向かう。「つるっぴ」呼ば有りされたツルギはやや狼狽えたが、しかしすぐさまごくごく当然のように料理を出してみせた。手が早い。
 そしてIgnatもまた、飲み放題なのをいいことに乾杯の音頭を待たずして口に運んでいた。
「皆、思う存分飲むと良い! ……まぁお酒飲んで飲み過ぎて死ぬ人間もおらんじゃろ?」
「いえ、その…………」
「ウン……」
「……おらんじゃろ!?」
 ユアンのノリノリな問いかけに、しかしそれまでノり気だった吹雪とIgnatが口ごもった。何事かと焦りを覚えたユアンだったが、多分彼はそう時間をかけずに知ることだろう。
「酒飲み放題と聞いたら持ち帰らないと失礼ってモンだよね? 違う?」
「川の酒の処理やはり飲むのが一番の手っ取り早いそうだ。勝利の美酒に酔いしれるというのも乙なものだ……持ち帰っていいのかまでは知らんが」
 史之は酒を樽にガンガンにつめて持ち帰る気満々だった。これはいいのか悪いのか。悪いとは誰からも説明を受けていないので大丈夫だろう。泥の詩人がどこか遠い目をしつつ入水自殺宜しく酒の川に身を投じる様はもはや様式美めかしたギャグセンスを感じるが。
「私、ちょっと楽しくなる程度であんまり見てて面白くはないと思うんですけどね」
「チョー見たい! でもでも外見年齢とはいえ17歳? に飲ませるのもMT5(マジで捕まる5秒前)だからやめとく? ってカンジ」
「ちぇー……」
 リラグレーテはここぞとばかりに川の水に手を伸ばしそうになったが、そこはエイルが思案顔で応じる。多分大丈夫かもしれないが、絵面的な意味でギリギリなんだろう多分。
「まあまあ、リラグレーテさんはこちらでも食べて気持ちを落ち着けて頂けますと」
「……いただきます」
「こっちに山菜の天ぷらも作ったから食べなよ」
 あからさまに落胆したリラグレーテに、ツルギと史之はそれぞれ食事を差し出した。彼女はややあってそれらに手を付けると、次の瞬間には目を輝かせて頬張り始める。
「地元で採れたもの、地元の酒。合わないわけがないよね。これが地産地消かな」
「違う気もしますが、よしとしましょう……」
 文之が上手いこと言った感じで腕を組んだのを見て、ツルギは突っ込みつつも既に手元に酒を持っていた。なんだかんだで皆好きなのである。
「ともあれ、この世界で少し酩酊したくらいどうってこともないだろう。皆、お疲れ様……乾杯!!」
 泥の旅人は全員(成人済み)に酒が行き渡ったのを見ると満足げに盃をかかげた。なぜか川の中で。
「そういえば、こっちの世界でもお酒を飲んだら普通に酔っぱらってしまうのかしら。ワイン一杯では酔わなかった気がするのだけれど」
「お? 気になる、気になる? ならアタシとのみ勝負でもいっとく? サクラメントから職員帰しちゃったからさげぽよでー、ホースかなんか突っ込んで流し込んでほしかったのにみたいな?」
(ものすごく酒に貪欲だけど、これ誰なのかしら……)
 吹雪は過去のクエストで酔わなかったのをいいことに、ここぞとばかりに限界に挑戦しようとしていた。エイルは最初からアクセルベタ踏みみたいなノリになっており、飲兵衛組と歩調が合いすぎている。本当に彼女は何者なんだろうか(棒)?
「それにしても、ご飯もこのへんの空気も美味しい……♪」
「環境がいいのでしょうね。悪酔いしている感じの人間がおりませんので、土地柄だけでは片付きますまい」
 リラグレーテが食事に手を伸ばし、満足げにつぶやくとアダムスがそこに現れ、雪上に腰掛けてしずかに頷く。
「説得、終わったんだ?」
「お陰様で。隊長は一段落したのを機に酔っ払い共に連れて行かれましたが」
「大変なんだな。隊長サンも苦労人らしい」
 アダムスの言葉に応じたのはツルギだ。だが、先程までの慇懃な態度はどこへやら、今はややフランクだ。
「あれ、雰囲気が違」
「俺の話はいいんだ。ふたりとも飲(や)ってるか? いや、リラグレーテサンは控えてるんだったか、ははは」
「……そうですね」
 酔うと地が出るのか、はたまた「こちら」向けの演技なのかはわからない。が、リラグレーテは深く問わないことにした。
「ぷひゃあ! しょれにしちぇもおいしぃねぇ、こにょおしゃけぇ! にゃんだきゃたのしくにゃってきちぇったぁ!」
「うむ、美味い酒だな。君も中々いける口というやつだな、良い飲みっぷりじゃあないか」
「イイね、キモチヨくなってきた!」
 その頃、吹雪はもう完全にキマっていたし、アバターにひっぱられてか、Ignatも完全に酔っ払いモードだった。世界には酔っ払いエビというものがあるらしいが、カニはどうなのだろうか?
「フハハハハハ、もっとだ、もっと飲もう!!」
「こんにゃことにゃら、もうちょっとあにょままにしちぇおいれもよかったかみょぬぇ! ほりゃ! みんにゃももっとにょんで! こんにゃおいしぃおしゃけしょうしょうのめにゃいよぉ!」
「……まじやべー」
 吹雪のあまりのキマりっぷり、そして泥の旅人の人を乗せる才覚に、さしものエイルもやや引き気味だ。多分こういう場面で率先して酒に飲まれていくであろう彼女が普通の言葉しかでてこないのは相当である。
(しかしこう……酒好きと聞くと『向こう側』でそんな人いたな……でもここまで皆潰れてると候補が多すぎるな……)
 ユアンはさけをちびりちびりと口にしながら、仲間たちの狂乱の宴に目を細めた。酒盛りが好きで、人にそれを押し付けるようなイレギュラーズはそこそこいる。特徴を遺してR.O.Oに降り立ったものもまた、沢山いるだろう。だが、この状況は想定と全然違った。吹雪の壊れっぷりは、『混沌』のそういう連中と遜色ない。
「彼女、普段は飲まないんだろうね。酔っ払い慣れてないというか……俺は誰が誰だかわかんないけど、それはなんとなく分かった」
 ユアンに視線を送りつつ、史之はそんなことを。多分、誰がどう、彼がこう、と考えていたユアンの思考がなんとなく掴めたのだろう。
「この調子なら一晩越せば酒の部分は全部除去できそうだね」
 彼の言葉を背景に、酒盛りの夜は更ける。

 そして翌朝、吹雪と泥の旅人とIgnatは二日酔いが祟って気付いたらデスペナルティシンボルが浮いていたので、皆がサクラメントに放り込んで事なきを得た。めでたしめでたくもなし。

成否

成功

MVP

九重ツルギ(p3x007105)
殉教者

状態異常

Ignat(p3x002377)[死亡]
アンジャネーヤ
吹雪(p3x004727)[死亡]
氷神
名も無き泥の詩人(p3x008376)[死亡]
■■■

あとがき

 悪酔いと現実とのすり合わせ的なデスペナ。ひどい話だ。

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