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シナリオ詳細

再現性東京2010:桜の夜妖と、お花見と

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●五月に咲く桜
 希望ヶ浜の東側、高奏園と言うこの大きな公園には、遅咲きの桜が五月中頃まで満開となっており、暖かな中、この時期の連休に合わせた花見が楽しめるとの事で、この時期は連日連夜人でにぎわっている場所となっている。
 そう言うわけだから、今日も多くの人でにぎわっている。あたりには食べ物と飲み物の匂いが漂い、浮かれた酔客たちが高らかに歌い、花見を謳歌していた。
 ……が。突然、どこかで悲鳴が上がった。
「なんだ?」
 花見客たちが、やじ馬根性であたりを見回ます。何処かで喧嘩でも起きたのか――そう気楽に考えていた花見客たちであったが、騒動の原因を見つけた客たちは、その現場に悲鳴をあげることになる。
「ひっ、なんだこれ?」
「血か?」
「桜の根っこから、血が溢れてくる……!」
 見てみれば、この公園でもひときわ大きい人気の大桜、その根元から、ぶくぶく、ぶくぶくと、血があふれ出してきているではないか! ぶくぶく、ぶくぶく、吹き出す血はあたりを真っ赤に染めた。
 見事に咲いた桜の下には、人の死体が埋まっている。人の血を吸って、桜は見事な花を咲かせるのだ。
 それは、昔の物語を元とする言い伝えであったか。しかしこの光景には、皆その言葉を思い出さざるを得ない。
 誰もが絶句する中、しかし、さらなる悲鳴が上がった!
「ひ、な、中から何かが!」
 ずぶり、と地面が沈んだ。ぶくぶくと血が流れる中、その中から這い上がる様に出てきたのは、血まみれの女の姿だった。
 ここにきて、人々は限界を迎えた。各々悲鳴を上げて、大慌てで逃げ出す。やがて無人となった公園を、吹き出す血で赤く染めて、血まみれの女が這い上がり、くすくすと笑うのである――。

●休暇中の事件
「と言うわけで、事件なのだが――」
 希望ヶ浜のローレット出張所である、カフェ・ローレット。そこは閑散としていて、人はほとんどいない。 『練達の科学者』クロエ=クローズ(p3n000162)は、むぅ、と唸ると、腕を組んで顔をしかめた。
「どうしたんっすか、クロエさん」
 そう声をかけたのは、この日、カフェ・ローレットに残っていた、数少ないイレギュラーズである暁 無黒 (p3p009772)だった。
「ああ、キミか。いや、急ぎの案件なのだが、今日は休日と言う事もあってな。中々みんなつかまらないのだ……」
「お、お仕事っすか! いいっすよ! 俺が聞くっす!」
「そうか? 助かるよ。実はだな……」
 クロエが言うには、希望ヶ浜の東、花見の名所でもある高奏園と言う公園に、白昼堂々と夜妖が現れたのだという。現在は、学園関係者が裏から手を回して、貸し切り状態と言う事にして閉鎖されているのだが、この夜妖が、何時公園から外に抜け出すかもわからない。
「と言うわけで、速やかに退治してもらいたいのだが……」
「ん? 高奏園って、あのおっきー桜がある公園デス?」
 と、飲んでいたジュースのストローをかみかみしつつ、声をあげたのはわんこ (p3p008288)だ。
「あそこ、凄いデスよね! 人が! なんか夜中からあの桜の下にビニールシーを持って行って場所とりしてて! 大人気!」
「そうなんですか?! じゃあ、今は人がいないから、今行ったら独占し放題じゃないですか! なーんて」
 と、天閖 紫紡 (p3p009821)が言うのへ、声をあげたのはコルネリア=フライフォーゲル (p3p009315)だ。
「なーるほど。それはいい考えなんじゃない?」
「と、言いますと?!」
「その、独占し放題って奴よぉ。今から行って、サクッと夜妖を倒せば、ダーレもいない桜の下で、お花見し放題じゃない!」
「キヒヒ! それはいいデスね!」
 わんこが声をあげる。
「どーデス? クロエサマ! そのくらいのゆーずーは利かせてくれても、いいデスよね!?」
「え?」
 クロエが目を丸くしてから、うーん、と唸る。
「まぁ、確かに、夜妖を倒してすぐに公園が解放できるかと言えばNOだ。だから、まぁ、それ位ならいいかな……」
「そうと決まれば、話は早いっす!」
 無黒がぽん、と手を叩く。
「早速行って、やっつけるっすよ! そしたらお花見! カフェの人に食事をデリバリーしてもらって!」
「いいわねぇ! これはいい仕事にありつけたわぁ!」
 コルネリアはにっこりと笑うと、
「そっちのふたりははじめましてよね? アタシはコルネリア。こっちのちっこいのがわんこ。よろしくねぇ?」
「キヒヒ、よろしくデス!」
「俺は無黒っすよ!」
「わ、私は紫紡ですっ! よろしくお願いしますっ!」
「よし、じゃあ早速相談はじめましょ! 戦い方は適当に、それから食べたい御飯のセレクト!」
「いいっすねぇ、楽しみになってきたっす!」
 と、わいわいと相談を始めるメンバーを見ながら、クロエはううん、と苦笑すると、
「まぁ、確かに夜妖も強力なものではない……とはいえ、油断はしないでくれよ?」
 と言うクロエの言葉も届いたのやら。仲間達は賑やかに相談を続けるのであった。

GMコメント

 ご指名ありがとうございます。洗井落雲です。
 希望ヶ浜に現れた夜妖、これを撃退しましょう。

●成功条件
 夜妖を倒して、花見を満喫する。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況
 花見の名所に突如現れた、『桜の下の死体』をモチーフにしたような夜妖。
 これを除かなければ、公園で花見を行う事は出来ません。
 折しもカフェ・ローレットでたまたま顔を合わせた四人組である皆さんは、この夜妖を倒し、貸し切り状態で花見をしよう! と思い立ちます。
 そう言うわけですので、夜妖を倒して花見をしましょう!
 作戦開始事項は午前中。周囲は明るく、周りは広いので、特にペナルティなどは発生しません。
 敵を倒せば、ちょうどいい感じにお昼になるでしょう。お花見を楽しんでください。

●エネミーデータ
 桜の下の夜妖 ×1
  桜の下に埋まっている死体、をモチーフにしたような夜妖で、公園の大桜の根元から、大量の血と共に這い上がって現れます。
  基本的には、血を操って神秘属性の攻撃を行ってきます。単体攻撃をメインに行いますが、範囲攻撃もきちんと持っているようです。
  出血系統のBS攻撃も行ってきますので、注意してください。

●フィールドデータ
 大きな公園の一角です。遅咲きの桜が咲き乱れる、今は静かな公園です。
 今は閉鎖中のため屋台などはありませんが、食べ物はカフェ・ローレットがデリバリーしてくれますし、近くにコンビニとかあります。

 以上となります。
 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。

  • 再現性東京2010:桜の夜妖と、お花見と完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年06月02日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

わんこ(p3p008288)
雷と焔の猛犬
コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)
慈悪の天秤
暁 無黒(p3p009772)
No.696
天閖 紫紡(p3p009821)
要黙美舞姫(黙ってれば美人)

リプレイ

●さくら、さくら
 希望ヶ浜の東側、『高奏園』と名付けられたこの広い公園は、早咲きから遅咲きの数種類の桜が咲き、花見客で満杯になる名所の一つとなっている。
 しかし今は、どこぞの金持ちが『貸し切り』と言う事で閉鎖されていて、一般人は入る事は出来ない。
 ……しかし。今はここにて、まことしやかに、人々の間にこんな噂がささやかれている。
 『高奏園』の遅咲きの大桜の下に、幽霊が出たのだという。
 目撃者は多数いて、大パニックとなった。今はその幽霊の対処のために封鎖されているのだ、と。
 誰もが聞いて笑うだろう。そんな非科学的なことが起こるわけがない、と。
 事実、ローレットのイレギュラーズ達が街を歩いている時にも、そんな噂を語る人々の声が聞こえて、すぐに、あり得ないさ、と否定する声が聞こえていた。
「まぁ事実なんデスけどね! キャヒヒ!」
 と、『高奏園』の入り口で笑うのは、『ハマガクの狂犬』わんこ(p3p008288)である。ポッケに手を突っ込んで、閉鎖状態の入り口から中を覗き見るわんこ。『高奏園』の入り口は締め切られていて、簡易な南京錠で鍵をかけられている。
「こっからだと中はみえねーデスね! この公園の奥の方に、大桜があるんデスよ。其れは其れは見事なサクラだそーで、一度その下で花見をやってみたかったんデス! まー、わんこは花より団子、トントロと唐揚げデスけどね!」
「まさに役得よねぇ、休日にカフェ・ローレットで駄弁ってみるものだわぁ」
 と、わんこの横でうんうんと頷くのは『慈悪の天秤』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)だ。懐から貸与された鍵を取り出して、南京錠のロックを外す。
「おかげで貸し切りでお花見だものねぇ。自分たち以外居ないって言う特別感? 優越感? そう言うのがお酒をさらにおいしくさせるのよぉ」
 と、二人ともすでにお花見気分である。と言うのも、今回は夜妖(ヨル)の討伐後、時間があれば貸し切りで花見をしてもよい、と言う事になっている。と言うか、全員、この花見を目当てに仕事を受けたようなものだ。といっても油断しているわけではない。それはそれ、である。
「しかし、世間はお休みだっているのに、迷惑な夜妖もいたもんっすねぇ」
 と、『No.696』暁 無黒(p3p009772)は言う。がしゃん、と入り口のゲートを開けて、全員が中に入ったのを確認し、内側から再び南京錠をかける。噂のせいか、近寄る者はいないが、しかし万が一と言う事もあるので、しっかりと鍵をかけておく必要があるだろう。
「……ん? 夜妖って迷惑なのが基本っすから、つまりこれも平常運転って事っすかね?」
 と、苦笑しつつ無黒。わんこは笑った。
「まー、でもその迷惑のおかげで花見ができるのは、まさにラッキーデスね! 棚から牡丹餅ってやつデスか?」
「それが正しい使い方なのかはわからないけどぉ、ラッキーなのは確かよねぇ」
「そうっすね! お仕事半分、お遊び半分。あ、でも、ちゃんと全力で敵とは戦うっすよ! それは基本! ローレットのハイ・ルールは破らないっす!」
「うう、でもちょっと緊張しますね……っ! こういった戦闘依頼、初めてなんですっ!」
 『要黙美舞姫(黙ってれば美人)』天閖 紫紡(p3p009821)が言う。どうやら、まだまだ戦闘経験は少ないようだ。
「なるほど、そうなんっすね! 困った事が有ったら俺に任せてほしいっす……と言っても、俺も先輩二人に比べたらまだまだっすけど」
 無黒が頭を掻いた。わんこが笑う。
「いえいえ、無黒サマも立派なイレギュラーズ! と言うわけで、紫紡サマ。見ているだけでいい……とは言わねーデスけど、不慣れならわんこと姉御の後にづづくと良いデスよ!」
「は、はいっ! 頑張りますっ!」
 がばり、と頭を下げる紫紡。さて、一行はそのまま、件の大桜の下へと向かう。道中に特に異変はなかったが、しかし漂う空気は、
「な、なんか寒いですね……っ!」
 と、紫紡がいうように、五月のそれとは思えぬほどに、どこかひんやりとしていた。
「これも夜妖の影響なんっすかね?」
「そうなんですかっ!? うう、なんかドキドキしてきました……っ!」
「まぁ、そう緊張することはないわよぉ。クロエも、さほど強力な敵じゃない、って言ってたしねぇ……さてさて、そろそろ到着よぉ」
 コルネリアの言葉に、一同は足を止めた。
 公園の奥側にある、大桜である。五月のこのころまで咲き誇る遅咲きのものながら、大きく、立派な桜色の花を無数に咲かせている。
「よぉし。わんこ、始めるわよ。無黒も紫紡も、準備なさい」
「合点、姉御!」
 コルネリアがにぃ、と口元を釣り上げるのへ、わんこが手をあげた。
「え、え? もう出てくるんですかっ!?」
 わたわたと準備する紫紡を庇うように、無黒が構える。
「……なぁるほど。夜妖とは何度か戦ったっすけど、確かに。いるっすね」
「そういうこと。さ、さっさと出てきなさい。お楽しみの為にパパっと消し炭にしてやるのだわ!」
 コルネリアがガトリングガンを突きつける。とたん、ごぼ、ごぼ、という音があたりに響いて、大桜の根のあたりから、赤い液体がしみ出した。
「ち、血……っ!? 情報通りなら、これが……っ!」
 紫紡が声をあげるや、その足元にまで、しみ出した血のような赤い液体が流れ始めた。ぼごぼごと音を立てて湧き出す血、大桜の下から、まるで水の中から這い上がるみたいに、一人の女の姿が見えた。
 やせ細った、うらぶれた白い着物を着た女である。肌の色は青白く、落ちくぼんだ眼は死人を思い起こさせる。
「ア・ア・ア・ア・ア・ァ!」
 掠れたような、がらがらとしたうめき声。女が声をあげるたびに、辺りに染み出た血が、沸騰したみたいにごぼごぼと泡をたてた。
「おやおやー、THE・幽霊って感じデスね! ちったぁ個性ってもんを持てぇ?」
 わんこが挑発するように言うのへ、
「雑魚には高尚すぎる注文だわ。無黒、アンタはアタシたちよ素早いと思うけど、いったん引っ込めて。わんこが敵を引き付けるわ。それに合わせて攻撃。二人とも、いい?」
「了解っす!」
「私も大丈夫ですっ!」
 コルネリアの言葉に、無黒と紫紡は頷く。紫紡の髪の毛の色が、白から黒へと一瞬のうちに変わった。戦闘状態に入ったことの合図だった。
「よーし、まずはお花見前のお掃除デスよ、ヤロー共!」
 わんこの言葉に合わせるように、全員が己の武器を構えた。
 夜妖が吠える。それを合図にしたように、双方は一斉に動き出した。

●討伐、桜の下の夜妖
「かかって来いよ、テメェはこの"ハマガクの狂犬"が引き受けたァ!」
 わんこが叫び、飛び掛かる。拳を握り締めた、鋭い右ストレート。が、ばしゃり、と噴き上がった血が、それを受け止めた。
「おおっとぉ?」
 わんこが慌てて飛びずさる。それを追うように、吹き出た血が刃物のようになって、わんこに襲い掛かる。わんこは気合の声をあげつつ跳躍、地より迫る血の刃を回避。
「キャヒヒ! こっちデスよ、ざぁーこ!」
 ぐるり、と身体をひねって着地したわんこが、すぐさまダッシュ。その後を追うように迫る、地からの刃。
「やるじゃないわんこ! その鬱陶しい血液ごと纏めて燃やしてやらぁな!」
 コルネリアが叫び、ガトリングガンに増設された火炎放射器のトリガを引いた。爆発するみたいな音と共に、吹き出す爆炎が血液の刃を一気に蒸発させる。そのままの勢いで、夜妖に火炎が迫る。火炎に包まれた夜妖がうめき声をあげた。着物の端が燃えるのを、忌々し気に夜妖はにらんだ。
「あらごめん、一張羅だった? 趣味悪いわね! ま、これからもっと見るも無残にしてやるけどさぁ!」
 引き続きガトリングガンのトリガを引く。放たれた弾丸が、夜妖の身体を貫く。アアア、と夜妖が悲鳴をあげるのへ、
「さぁ、一気に決めるわよ! 続きなさい!」
「了解っす! 紫紡さん、遠術でサポート、お願いっす!」
「分かりましたっ!」
 紫紡が緩やかに鉄扇を掲げた。ばっ、と広げ、泳がせるように扇を振るう。途端、その先端から打ち出された術式が弾丸となって、夜妖の脚を打ち据えた! ぎぃ、と悲鳴を上げて夜妖が呻く。同時、一息に接近し、間合いに飛び込んだ!
「叩き! 込む! っすよ!」
 速度を乗せた音速の斬撃が、夜妖へと叩き込まれる。切り裂かれた身体からこそ血は吹き出なかったが、痛みと怒りに震えるように、周囲の血が泡を吹かせる。
「皆! 攻撃が来ますよ!」
 わんこが吠える。同時、地面に湧き出ていた血が、間欠泉のごとく吹きだした! 足元から迫る圧力の一撃が、イレギュラーズ達の身体を強かに打ち据える。
「ちっ……無黒! 紫紡! 怪我は無い? やられたら言いなさいね!」
「無事っす!」
「こちらも、まだまだっ!」
 二人はあちこちに傷を負いつつも、しかし倒れることなく一撃をしのいで見せる。
「上等ね! わんこ、もっかいアイツの足を止めなさい! 次の攻撃で仕留めるわ!」
「合点、姉御!」
 わんこが叫び、鋭い蹴りの一撃を放つ。ブーツに仕込まれた毒の刃が鋭い傷を夜妖に負わせて、毒が内部から夜妖を痛めつける。
「紫紡! ぶっ放すわよ!」
「はいっ! 舞い、踊り、振るえ……っ!」
 舞踊のように緩やかに振られる、鉄扇と、紫紡の背中の蝶の羽。巻き起こる魔力が、再び術式の弾丸を生み出し、コルネリアの放ったガトリングの弾丸と共に、夜妖の身体に突き刺さる。無数の弾丸に打ち据えられた夜妖の身体が、ぐらり、と揺れた。
「こいつで! トドメっす!」
 無黒が跳躍。上空から落下の速度も載せた必殺の速撃が、夜妖の身体を大上段から切り裂いた。
「い゛い゛い゛い゛っ゛!!」
 夜妖が吠える! 途端、その身体が爆発するようにはせて、辺りの血もまた、ぼう、と噴き上がった。夜妖の断末魔のようなその現象は、ほんの数舜で途絶える。後には、まるで最初から何もなかったかのように、静かな公園の景色が広がっていて、先ほどまで自分たちの服についていたはずの夜妖の血の跡も、まるで幻のように消え去っていた。
「キャヒヒ! 任務完了デス!」
 わんこが笑った。いえーい、と声をあげて、コルネリアとハイタッチしてみせる。
「うん、なかなかいい連携だったわよぉ」
 コルネリアが笑うのへ、無黒は笑って手を振った。
「いやいや、先輩に合わせてもらった感じっすよ」
「謙遜ねぇ。でも、ほんとによく動けてたわぁ……紫紡、大丈夫?」
 コルネリアが尋ねるのへ、紫紡は慌てて頭を振った。
「あ、は、はいっ! あはは、まだなんか、手が震えてて……でも」
 その手を、ぐっ、と握って。
「やり切った! やり切ったんだ……! あはは!」
 そう言って嬉しそうに笑うのを、皆は笑顔で見つめていた。

●お花見の始まり
「ちーす、らっしゃーせー」
 と、よくいるやる気のないコンビニ店員の来店の挨拶を背に、わんこと無黒はコンビニに入店して、カゴを手に取った。
「無黒サマ、注文、復唱!」
「はいっ! 水、グレープフルーツジュース、割り剤! コーラ、日本酒!」
「つまみは鮭とば、貝ひも、唐揚げにミックスナッツ!」
「おつけものと総菜沢山!」
「漬物は何にしますデス!? わんこはたくあんとピリ辛のきゅうりの奴が素敵! それから、トントロは外せねぇなぁ……!」
 ぽいぽいとかごに商品を詰め込んでいく二人。次から次へと放り込まれる商品が、まるで山のようになっていく。
「先輩! 唐揚げは、コンビニのホットスナックの奴と、冷凍をここでチンするの、どっちにするっすか!?」
「両方!」
「ですよね!」
 結局大量につまみとお酒とジュースを買い込んだ二人は、
「ぇありあすみっすー」
 会計を済ませ、やる気のない店員の礼の声を背に、コンビニを出る。
 『高奏園』ちかくのコンビニに食材を買いに出た二人は、そのままゆっくりと、道を進んで、再び公園の中へと入る。今は暖かで穏やかな風が、辺りを包んでいた。
「しかし……さっきの戦いも、流石先輩って感じっした。状況判断も的確で……息もあってて、戦いも、普段の中の良さも、羨ましいって言うか、なんか見てて笑顔になるっす」
「おいおい褒めるなよ、照れるぜ……?」
 わんこが笑った。
「姉御は……わんこにも優しくしてくれる人デス。もし仲良さそうに見えたなら、それは姉御のおかげデスよ」
 わんこが言うのへ、無黒は微笑んだ。
「確かに、コルネリアさんも不思議な魅力があるっすね……でも、わんこさんもすごくいい人っすよ!」
「よせよせ、照れるぜ……?」
 わんこがくすぐったそうに苦笑するのを、無黒は笑ってみていた。
「あ、コルネリアさんっ! 二人とも帰ってきましたよっ!」
 大桜の下に敷かれたビニールシート、根っこを上手く避けて敷かれたその上で、コルネリアと紫紡が座って、手を振っている。
「おかえりぃ。買い出し有難うねぇ。こっちは紫紡と仲良くやってたわよぉ」
 冗談めかして笑うコルネリア。
「一緒に準備してましたっ! と言っても、シートを調達してきて敷いただけですけど……」
「役割分担っすよ。さっそく始めましょう!」
 と、無黒はわんこと一緒に、手にしたコンビニの袋を見せてみせた。沢山の飲み物と食べ物に、コルネリアと紫紡の瞳が輝く。
 それから数分の間に、シートの上に色々な食べ物と、飲み物が並んだ。紙コップにジュースやアルコールの類を継いで、
『せーの、かんぱーい!』
 と、紙コップを掲げて、お楽しみの花見が始まる。
「腹に酒溜まる前にグレープフルーツジュース飲んどきなさい、アルコールの分解助けてくれるから」


「うぃーす、姉御!」
「はぁぁ……エールが美味しい……!」
 ぐいっ、とビールを飲み干してから、紫紡は日本酒にシフトする。きり、とした飲み口が、戦いに火照った身体に心地よい。
「はぁぁぁ……! こんなおいしいお酒、久しぶりかもです……っ!」
「運動した後っすからねぇ。労働の後のお酒は本当おいしいっす」
「お、無黒サマ、お酌するデスよ?」
「ありがとうっす!」
 わんこにお酌された飲み物を飲んで、無黒は笑った。
「しかし、なんというか。確かにこれは特別感あるっすねぇ」
「そうねぇ。なんかアタシも結構心地よく感じるわぁ」
 日本酒をちびりと口に含みつつ、コルネリアが言う。
 人気のない公園は、静かさと温かな風だけが吹いている。
 ゆったりと舞い散り桜。そんな光景を肴に酒を飲めるのは、確かに極上かもしれない。
「さて、じゃぁ、酒の肴に色々聞かせてもらうかしらぁ? アンタ達、なんか話なさぁい。アタシは飲んでるから」
 と、コルネリアの言葉を合図に、雑談に花が咲く。それは、ローレットでの冒険の話や、日常生活のあれやこれや迄。
 他愛のない雑談は、しかし確実に飲み物とつまみの消費量を増やし、和やかな雰囲気の酒宴を後押ししていた。
 酒に火照るからだを、桜の下の風が冷やしてくれる。
 先ほどであったばかりとしても、命を共に戦った戦友だ。打ち解けるのなんて速い。
「えーっと、天閖 紫紡っ! 舞いますっ!」
 と、唐突に、紫紡はそう言って立ち上がった。
「舞うって言うと?」
 コルネリアが尋ねるのへ、
「はい! 私、日舞……故郷の世界で舞を習っていたんですっ。
 今日、皆さんと、この依頼にご一緒できて本当に良かったです!
 この綺麗な桜の下で舞いたくなったので、どうぞ御付き合いの程宜しくお願い致します!」
 頭を下げる紫紡へ、三人からの拍手が上がった。紫紡はゆっくりと鉄扇を広げると、緩やかに舞を披露する。
 舞い散る桜に合わせるように、流れるように。風を纏うように、穏やかに。
 翻る扇、背中の蝶の羽。しなやかなその動きは、音楽はなくとも、見るものに感動を与えるものだった。
「おお、すごいデスね!」
 感嘆の声をあげるわんこ。合わせるように、紫紡はくるり、と回った――刹那。アルコールの良いが、それに合わせるように沸き起こって、くるり、と視界を回した。
「わ、あわわ!」
 足をもつれさせた紫紡が、体勢を崩す。慌てたようにそれを抱き留めたのは、コルネリアだった。コルネリアの胸の中へと倒れ込む紫紡。
「わわ、や、やわらかい……っ!」
「や、やわらかい、じゃないわよ! いや、触るな! もむな! とりあえず自分で立ちなさいーっ!」
 そんな声が、辺りに響いた。

「うう、すみませんでしたっ……!」
 土下座してみせる紫紡に、コルネリアは頭を掻いている。
「まぁ、いいけどぉ……お水飲んどきなさい。悪酔いはしないようにねぇ?」
 紫紡がこくこくと水を飲んでいる。多少落ち着いたらしく、すぐに穏やかな酒宴が再開された。
「あ、そうだ、記念写真撮りません?」
 と、わんこがaPhoneを片手にそう言うのへ、
「おお、いいっすね!」
 無黒が頷いた。
「わわ、良いんですか……っ!?」
 紫紡が声をあげるのへ、
「ん、いいんじゃなぁい? 記念にねぇ」
 コルネリアが笑う。
「じゃ、皆様、ほら、寄ってください寄ってください!」
 わんこの声に頷いて、四人は肩を寄せ合わせる。わんこが掲げたaPhoneで、四人の自撮りをとる形でフォーカスを合わせる。
「いいデスか、皆様? せーの、チーズ!」
 その言葉と共に、シャッター音が鳴った。
 その写真は、今日の思い出と共に、皆が共有したのだという。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした、皆様。
 お花見は楽しめましたでしょうか。
 今日の休息を糧に、今後の活躍を期待しています。

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