PandoraPartyProject

シナリオ詳細

体が点滅してるの! 助けて!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 咲き誇る花々は馨しく。並んだ薔薇の棘に触れれば指先から赤い雫が伝い往く。
 鼻腔を擽る香りさえリアルと余り変わりない。鬱蒼と茂った葉の陰に姿を隠した動物の愛らしさ。
 R.O.Oは仮想世界だと言われても――本当に? と疑いたくなるような没入感。リアルさえ忘れるような、美しさ。

 ビジュアルは自分自身でくみ上げた最高傑作。桃色のツインテールに薔薇を添えてふわりと揺れるドレスは乙女の嗜み。
 杖をぎゅうと握りしめ、リズミカルに歩を進めるのは翡翠と呼ばれた国の中。
 現実世界ならば深緑と、そう呼ばれた場所は閉鎖的でありながら随分とその扉を開いていた。
 だが、R.O.Oのこの国は危険な方向に舵を取り取り扱いも注意なのである。

「ふふー、翡翠は緑が多いし花も咲き誇っていて美少女にうってつけ、なのよね♪」
 先行プレイヤーとして調査に訪れていた『春の魔術士』スノウローズ (p3y000024)にとって慣れたフィールドであるのは確かだ。
 クエスト掲示板で適当に得た翡翠の片田舎の酒場でのクエストを選択して此の地までわざわざ遣ってきた。
 サクラメントを利用して最寄りの地点まで訪れる。
 目的の酒場をマップで確認して――それから、スノウローズはぴたりと止った。

「はへ」
 唇から盛れたのは間抜けな声だった。
 酒場が、光っている。
「はへ……?」
 ぴかぴかと輝いている。それも12色で366通りに、だ。
 スノウローズは目が疲れたのかしら、と呟いた。ううんと目頭を押さえてから「最近、ログアウトしてなかったっけか」とぼやく。
 リアリティのあるグラフィックは燦々と注ぐ陽光に木造建築の間から漏れ出る奇妙な光以外はR.O.Oの美しい世界が体験できている。
「バグ……?」
 それがどうして存在するのか。スノウローズは何度も首を捻って目を疑った。
 そろそろと近寄れば酒場の中で点滅している赤ん坊アバターが存在して居た。

「あ、あのう……」
 そう声を掛けるが早いか、赤ちゃんアバターから突然の強制的な会話イベントが発生する。
「体が点滅してるの! 助けて!」

 > はい
   いいえ

「……ひえ……」
 ひゅっと息を飲んだスノウローズはじりじりと後退した。それでも、会話イベントからは逃れられない。
(可笑しい、可笑しい可笑しい。た、たしか、このクエストって『悪の魔剣士』を討伐するって聞いた……魔剣士……?)
 そろそろと視線を送れば会話ウィンドウには『魔剣士』の文字が躍っている。
 あの赤ん坊が討伐対象なのだろうが。そして、そのクエストを受けているから強制的な会話イベントが……?
「あ、悪って事はァ、悪堕ちさせなかったら勝ちなのでは~?」
『はい』を選んだ瞬間にスノウローズの体に奇妙な感覚が走った。眩い。周囲を見るのも困ってしまうほどの鮮やかさだ。
 12色366通りに体が点滅し始めたことに気付く。
 魔剣士と名乗った相手は「たけしの呪いで赤子の姿に変えられたんだ! ありがとう! 仲間になるよ!」

 ――仲間になるって、相手を輝かすんじゃなくってですね~? ってか、たけし誰!!!!!

 魔剣士と名乗った赤ん坊を倒せない。酒場を荒らすのも気が引けた。
 スノウローズは直ぐにその赤ん坊を掴み外の花畑へと誘ってから叫んだ。

「体が点滅してるの! 助けて―――――!!!!」

 其処に通りかかったのは、同じく『酒場のクエスト』を受けて遣ってきたイレギュラーズなのだった……。

GMコメント

日下部あやめと申します。宜しくお願い致します。
pipiSDにこのシナリオを書ければ天才になって優勝できるとアドバイスいただきました。頑張ります。

●目標
 『魔剣士』を撃破する

●ロケーション
 翡翠の迷宮森林。周囲には美しい花畑が存在します。とっても綺麗です。
 その中央に12色で366通りの輝きを放つ魔剣士と何故か点滅しているスノウローズちゃんが泣いています。

●『魔剣士』
 グラフィックだけを見れば赤ちゃんです。何故か点滅しています。
 突然話しかけてきます。ランダムで強制的に会話イベントが発生し、選択肢が出ます。

 「体が点滅してるの! 助けて!
 >はい    ありがとう!仲間になるよ!と言いながら相手の体を12色366通りに点滅させます。
 >いいえ   どうして!と憤りながら更に輝きを放ちます」

 彼曰く『たけしの呪いで赤子の姿に変えられた』そうです。
 BS『画面が眩しくて腹立つ』が付与されます。何だか凄い腹が立つだけです。
 突然宙に浮き上がって大ダメージを与えるメガフレアが得意技です。
 
 ……因みに酒場のクエストは『ぴかぴかと眩しい物質をどうにかしてくれ』でした。魔剣士のことですね。

●同行NPC
『春の魔術士』スノウローズ (p3y000024)
 桃色の髪の可愛らしい女の子。「皆さんの先輩、だよ♪」
 ヒーラーです。中の人は山田君ですがそれを言うと「やだ~!乙女の秘密!」と拗ねてきます。
 点滅しながら泣いています。お役にあまり立ちません。

※重要な備考
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

  • 体が点滅してるの! 助けて!完了
  • GM名日下部あやめ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年05月30日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

パンジー(p3x000236)
今日はしたたかに
神谷マリア(p3x001254)
夢見リカ家
ああああ(p3x006541)
hxjileksma;idjl
陽炎(p3x007949)
影絵舞台
カノン(p3x008357)
仮想世界の冒険者
槍一来主(p3x008441)
宿木ノ蛇
アマト(p3x009185)
うさぎははねる
Isaac(p3x009200)
ぴかぴか

サポートNPC一覧(1人)

スノウローズ(p3y000024)
春の魔術士

リプレイ


 翡翠(エメラルド)と呼ばれたその場所には、歓びの芽吹きが待っている。風にそよいだ草木のざわめきはまるで誰かの囁きのように。
 進み往く体に感じられる陽の暖かさに若葉の青青とした香りは現実世界と変わりない。そんな美しきその場所で――

「はいギルティ……」
『hxjileksma;idjl』ああああ(p3x006541)は激しい苛立ちを隠せずに居た。目にも眩しい12色366通りに点滅するその様は練達でも流行の兆しを見せる『ゲーミング』商品のようで。余りに眩しい。ああああは酷く重たい頭痛を感じたような心持で「……ギルティ」ともう一度低く呟いた。
「ピカピカと眩しい何かを何とかしてくれと聞いておりましたので何があるのかと思っていたのございますが」
 その『ピカピカ』をどうにかするのが今回のクエストだと把握していた。把握はしていながらも 『No.01』陽炎(p3x007949)には戸惑いを隠せずに居た。
「まさか光り輝く赤子だとは思いもしませんでした」
 ――そう、光輝いているのは赤ん坊である。小さな手足をうごうごと動かして勢いよく点滅し続けている。
「こんなきれいなお花畑があるのに。なぜ……」
 風が吹けば花が揺れる。馨しい花々の中で蹲って啜り泣いている桃色の――いや、点滅している少女。その姿はこの世界のオリエンテーションでも見た事のあるような。故に、『うさぎははねる』アマト(p3x009185)は問い掛けたくて仕方が無かった。
「なぜ……スノウローズ様は点滅しているのでしょう?」
「わ、わかんないよぉ! 皆、助けてぇ! ひ、光ってる!」
 ぴかぴか。光っている。『アイザックのアバター』Isaac(p3x009200)はその様子を双眸へと移し込んでからうんと首を捻った。
「光るのって困るのかい? ……ああ、強すぎる光は目に悪いんだっけ、ならどうにかしないと」
 彼自身、現実世界でもピカピカしている。四角のプリズムの異形頭はR.O.Oでも変わりなく。都市伝説は最初から話(じょうほう)だけで出来ているのだから変化するわけがないとでもいうような。
「……それに泣いてる子を放置するのは、良い子とは言えないさ」
 良心的なその言葉に点滅を続けるスノウローズは「ありがとう」と泣きはらした赤い瞳でIsaacへと縋った。
(……この体、ホント慣れねェな。視線の高さが全然低いのに体がクソ軽ィ。これが……の視線か)
 まだまだアバターには慣れない『宿木ノ蛇』槍一来主(p3x008441)は仲間達に「アタシのことはクルスでいいよ。サクっと依頼、成功させに行こうか」と名乗っていた。勝気な柘榴の色に灯した好奇心は『点滅するスノウローズを見た』時から困惑に染まっている。
「それにしても、スノウローズ。どうしたらそんな変な……」
「ええ。私達は魔剣士を撃破するというクエストを受けてきたのです。情報過多過ぎます。
 ……クエストの目標としてはとてもシンプルですよね。『魔剣士』を撃破する。ですが……あかちゃん? 倒しにくいんですけど……?」
 しかも点滅しているし、スノウローズまでも点滅して泣いているし。『白雪』パンジー(p3x000236)は何だろうこの地獄絵図と花畑の真ん中で点滅する赤ん坊と涙ながらに助けを求めるスノウローズをまじまじと見詰めていた。
「魔剣士……魔剣士にゃ……? どうみてもハイハイしてる赤ちゃんにしか見えないにゃ。え、これに殺されるのにゃ? そんなのいやにゃ……」
 殺すのも罪悪感が浮かんでしまうと『怪盗見習い』神谷マリア(p3x001254)は眦を下げた。笑ってしまいそうな程に状況はパンジーの言うとおりの「地獄絵図にゃ……」なのだ。
「こ、混沌世界でもこんなに混沌な状況は見た事がないですよ……。
 姿か、名前か、状況か、言動か――それらがぐっちゃぐちゃですよね!?
 ヒントが少なすぎて正解も分かりません。分からない事だらけです。それなら……『クエスト』を頼りに動くしかありません!」
『仮想世界の冒険者』カノン(p3x008357)は一先ず冷静になろうと息を吐いてから、そう言った。
 大きな目標はクエスト内容『魔剣士の撃破』である。そして小さな目標は可能な限り点滅している理由とスノウローズを落ち着かせる事だ。

「体が点滅してるの! 助けて!」

「赤ちゃんが何か言ったにゃ……」
 マリアが如何すると伺うように仲間を振り向いた。反射的に「いいえ」を選択したパンジーは小さく呻き声を出した。
「……あっ更に眩しくなった。なんだっていうんですかね、この状況」


「あの赤ちゃんが『魔剣士』で、撃破?しなきゃいけないのですね?」
 突然、『会話イベント』が発生しては困るとアマトは出来る限りの距離を取っていた。ぐずぐずと泣いていたスノウローズはIsaacの傍らで泣き腫らした目を押さえて「一体、どうして光るの……」と茫然としている。
「スノウローズ様、泣かないでください。今すぐに助けますので、一緒に、ええと、なんとかしましょう!」
 ふんわりとしたその言葉にこくりと頷くスノウローズは不安げで。仕方ないかと槍一来主は槍を構え真っ先に飛び込もうとし――

「体が点滅してるの! 助けて!」

 強制的な会話イベントを発生させていた。其れで怯む『女』ではないと彼女は赤ん坊のかたちをした討伐対象を睨め付ける。
 選択肢は勿論「いいえ」だ。
「当ッたり前だろォ!? ネオンサインみたいにベッカベカ光られても困るだけじゃないのさ! 赤ん坊だからって容赦しないよ! さっさと片付けちまおうか!」
「どうして!!」
「――眩しいッ!」
 目へと刺激を与える其の光に僅かな苛立ちが募った。誾千代は非力な乙女の戦いカタ。振り回し、巻き上げ、叩き潰す。
 地を蹴り飛び込み気穴を衝く。槍一来主の背後で光をしっかりと目視して思考を巡らせていたカノンは「スノウローズさん!」と呼び掛ける。
 手にしたワンドオブダークネスが纏う『ヤミ』の気配を漂わせ、星の輝きに沿う星々の先読みが彼女に確かな『天啓』を与えた、気がした。
「この光は(多分)一時的な物です。(恐らく)クエストを進めれば(きっと)自ずと解決する筈です(クエストフラグ的に考えて)(解決したらいいなぁ)」
「カノンちゃん、スノウローズ、カノンちゃんの言葉に『多分』とか『恐らく』とか『きっと』が見えた気がするなあ」
「気のせいですよ!」
 スノウローズと、そして己に言い聞かせて、選択肢が出ないようにと願い距離を取って放ったのは『魔弾C』
 クラス魔術士の基本スキルを自分用にカスタムしたそれはカノンの魔力によく馴染む。異世界魔導は知識を活かし、無数の魔力弾を放った。
「体が点滅してるの! 助けて!」
「……某は『いいえ』で。忍を模した戦闘アンドロイドが鮮やかに光り輝く訳には参りませんので。
 それで憤り余計に光を放ち電力(?)を消耗するなら尚良しでございます。それに、某は遊戯用の戦闘人形(アンドロイド)、赤子の見た目であれども区別は致しません」
 ゲームを開始しますとアンドロイドの起動を告げて、陽炎は歩きやすい場所を探しするりと魔剣士へと近付いた。
「どうして!!」と声を荒げてより輝いた魔剣士に怯むことなく忍び足で地価より放つは影より生み出した漆黒の球体。苦痛を内包したそれは人形に葉存在せず恩赦も慈悲も感じさせることはない。
「――見ても、観ても、視ても、躱せません」
 魔剣士の放つ点滅を眺めながらああああは溜息を吐いた。どうしてと叫んで怒り狂って光っては居るが、どう考えても怒りたいのは此方側だ。
「……てかそもそも怒ってんのはあたいらなんだけどさぁ……勝手に光らせようとして逆ギレとかナシよりのナシだよねぇ……」
 ああああはギルティ過ぎると呟いた。グリップの両端の刃が撓る。巨大なそれを振り上げて、『エンバグ』は食い込むように魔剣士へと飛び込んだ。
「……しかも「魔剣士」とか名前までキラキラだしさぁ……なんか馴れ馴れしくトークかけてくるしさぁ……。
 こんな将来有望な安眠インターセプト系陽キャは現実でもゲームでも許さないし許されないんだよねぇ……。
 もうエラーまみれにしてプロセスキルの刑だよぉ……覚悟………」
 ――少し、自分の都合が入り続けているけれど。それでもああああにとって許せない者は許せない。一瞬のラグにかくかくと体の動きが遅れるが、魔剣士の『問い掛け』をキャンセル出来たようである。
「そ、それでキャンセルできるのにゃ……?」
 驚いたマリア。ぐすぐすと泣いていたスノウローズは「そんな、キャンセル出来るなんて」とぴかぴかと輝いている。
「オタクはかわいそうだけど無視にゃ、一人で太陽光パネルでも持って発電してろにゃ」
「わ、私で発電できるかしら? マリアちゃん、もしも発電できたらスノウローズ産の電気、大事にしてね……?」
「にゃ……」
 押しつけがましいオタクだにゃ、と言いかけたマリアにも飛び込んできた『会話イベント』。魔剣士の期待を孕んだその眸にマリアは断ると首を振り鉤爪を振り上げる。
「……ぴっかぴか光ろうが訪ねてこようが答えはNOにゃ、なんでYESといわれると思ったのにゃ! お前は一度光ったら1週間くらい光っぱなしになった経験がないからそうやってのんきなのにゃ!!」
(……そんな経験、普通の人はないと思うのですが……)
 マリアの苛立った渾身の切り裂きを眺めてからパンジーは慄いた。普通の人間は光りたくなくて、この会話イベントをキャンセルするが――そもそも、スノウローズが『イエスと答えた』と識らなければ助けてしまうかもしれない。彼女の犠牲は貴いのだとロザリオをぎゅっと握り込んだ。
「スノウローズさん、貴女の犠牲は無駄にはしません。私達は光らずに済んでいます。
 ……オタク、さんなのかは識りませんが、クエストクリアのために、一緒に頑張りましょう。泣いていても眩しいのは消えませんし」
「……! う、うん。私、頑張るわね! ヒーラーは任せて!」
 中の人に気付いているマリアと、中の人には気付いていないパンジー。スノウローズは『本当に自分が誰かしらない』ならば可愛い女の子で居ようと徹底したRPを続けているのだろう。
 ふわりと花開くように微笑んで杖を握った彼女に「厳禁にゃ……」とマリアは肩を竦める。一人、ヒーラーが増えたのならばそれは喜ばしい事である。
「それでは、往きます! えーい!」
 ロザリオを握り祈った――と思いきやパンジーは思い切り殴った。
 魔剣士が「ぎゃふん」と泣いた小さな声を聞きながら自分が選んだスキルが間違っていた気がして彼女の心に浮かんだのは淡い悲哀。
「あ、あの。私元の世界? では修道女なんです。あまりにも絵面が悪すぎませんか? どうにかなりませんか? なりませんか……。悲しいです」
「い、今は無理だけど、ほ、ほら、……ス、スキルの取り直しとか……あるかも、だし……」
 慌てて彼女を励ますスノウローズははっとしたように魔剣士を見て、Isaacの袖をぎゅっと握った。
「どうかしたのかい?」
「な、なんだか魔剣士が変な動きをして居るわ!」
 確かに、とIsaacは首を傾ぐ。自身へと飛んできた選択肢で『はい』を選んでいた都市伝説はスノウローズと同じくぴかぴかと輝いている。
 ……光を纏った二人が固まって、より眩い空間が広がっているがアマトはそちらには視線を向けない儘、「う、浮き上がりました!」と叫んだ。
 イースターエッグへと口づけて。スキルを放ったアマトは其の儘、全員から距離を取る。パンジーに言わせれば『散開』ギミックだ。
「メガフレアです。前から推測するに広範囲に影響を及ぼす技かと。スノウローズさんは安置へ!」
 こくりと頷いて最も距離を取ったスノウローズ。全員が散開すれば、魔剣士から放たれたのは目映い光の奔流であった。


「こ、これが……メガフレア……」
 ごくり、と息を飲んだアマト。メガフレアに僅かに掠めたああああはギルティと小さく呟く。バケツでも被せてやれば良いかと思ったが、そうする暇も与えぬ速さで攻撃が放たれた。
 陽の光を放つようなその剛速球。ちり、と掠めた肌が痛みを感じる。気が遠のきながらもエンバグを駆使して最後の一撃を放ったああああは小さく呻いた。
「ワンチャン地面に潜ってやり過ごしてやりたかったけどさ……こんなの無理じゃん……。
 ていうか、ギルティすぎるでしょ……光ってるだけでもウザいのにさ……は?」
 くた、と倒れたああああの体を乗り越えて、陽炎は「無理でしたか」と呟いた。漆黒の雨が降注ぐが、それでは彼を叩き落とすことは無理だったか。
 機械人形の体を動かして、魔剣士を出来る限りその内部から破壊する。光輝きすぎて消耗が見えている魔剣士は蓄積する痛みに苦しんでいるか。
「体が点滅してるの! 助けて!」
「ええと……『はい』」
 カノンは不憫に思って取り敢えず選択してみた――が、自分が眩く光り始めたことに驚愕してスノウローズを振り仰いだ。光を授けられてしまった。
「優しいのね……私も、同じようにはいってしたの」
「そ、そうですか……仕様がないとは思いますが仲間だって言うなら説明くらいちゃんとしてください――!?」
 魔剣士の楽しげな「ありがとう! 仲間になるよ!」のポップアップに叫ばずには居られなかった。自身へと授けた痛みを反射する力。カノンは光輝きながら魔弾を放ち最短での撃破を目指す。
 ……これ以上、光っては居たくはないから。
「光が弱まってきたねえ、そろそろ打ち止めかい? なら大人しく倒されて欲しいねェ!」
 槍一来主はその脚に力を込めて一気に飛び込んだ。死を怖れる様な女ではない。故に、己の流した血を辿り、地面を駆ける。
 度し難き負けず嫌いは此処で発揮するべきだ。ちょっとやそっとの怪我で倒れることはない。メガフレアの激しさにHPが底を突きそうだがスノウローズの支えで少しは動き回れる――だが、接近は危険だ。
「あー……目痛った。超チカチカする。ホントなんか風景が白飛びしてるんだけど。
 ここで終いさ! で、たけしって誰? 呪いって何? 冥土の土産においてきなよ。そいつもシバいとくから」
 そう叫んだ槍一来主の鋭き衝きが魔剣士の体を花畑へと叩き付ける。反撃する目映い光が彼女の体を同じように地へと転がした。
 もう一度、魔剣士が浮かび上がる。最後の最後は攻撃を連打しようというのだろうか。
「わ、わ……メガフレア……す、すごい威力なのです。此の儘じゃダメなのです」
 光が収縮してゆく。広範囲に飛び込んでくる強襲。ドラゴンの息吹の如き、鋭さ。Isaacは「詠唱時間中に叩き込もうか」と提案した。
 最初に動いたのはアマト。イースターエッグに口付けひとつ。ふわりと想いが光を帯びて魔剣士を包み込む。
 スノウローズは倒れたああああと槍一来主を庇い、「無茶しやがって」と言っていた。――言いたかった。
 そんな彼女たちが安全地帯に居る事を確認し、カノンは「フラグ、立って下さい!」と叫んだ。
 光だって、どこかに言ってしまうし、『たけしの呪い』も関係なくなるし。光りすぎて家に帰れなくて雑草むしゃむしゃおいしいなんて叫ばないで済むように。
「未知に挑むのが冒険者の生業ですがバグ取りは全くの専門外ですよ――!!」
 苦しみ放たれた魔弾を追いかけて陽炎は影から生み出した触手で魔剣士の体を押さえ込む。
「泣いても、鳴いても、啼いても離しません。――考ても、抗ても、乞ても、赦しません。それが、戦闘用機械人形なのですから」
 静かな声音で告げる陽炎は『主人の為』にこのクエストをクリアするべく淡々と攻撃を重ねていた。」
 マリアの中には黒き翼を持つ龍が浮かんでいた。千夜一夜物語にも登場する中東の巨大な魚の幻獣が放ちそうな、そんな攻撃。
 そもそも、光るのも『付与』じゃないのが腹が立つのだ。怪しげな瞳で惑わせて全てを拭い去ってやりたかったのに。苛立ちを一斉放射。
 ここで畳み掛ける。
「何が魔剣士にゃ! おみゃーが持つのに持ってるのにふさわしいのはガラガラがせいぜいにゃ、これでもくらえにゃ!」
 放つ、両腕の鉤爪からの百発百中。怪盗は狙った獲物は逃さない。
 光輝くその光景を眺め、パンジーは「来ます!」と鋭く叫んだ。殴るのは少し困ってしまうけれど、愛猫なら――屹度、マリアのように『ぱんち』をするはずだ。
「ね、ねこぱんち!」
 真っ白なふわふわの愛猫がじゃれるように、魔剣士目掛けて全力投球。
 光が、爆裂する。叫んだマリアは目映さに転がり――光が収ったときにスノウローズやカノンが纏っていた光は何処かへと消え去っていた。
「たけし様? の呪い? 呪いを解くならお姫様のキスとか、アマトは聞いたことがあるのですけど。
 赤ちゃんじゃなくなったら、このぴかぴかもおさまるのでしょうか? アマトはお姫様じゃないので、助けになれなくてごめんなさい」
 困ったように肩を竦めたアマトに「優しいのねえ」とスノウローズは兎の頭を撫でて微笑んだ。
 光ることに忌避感の無かったIsaacは「これで倒して終いだね」と花畑の中で倒れた魔剣士を見下ろした。
 プリズムの淡い光は、何時だって輝きを讃えて――魔剣士なんかより、よっぽど美しかった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

神谷マリア(p3x001254)[死亡]
夢見リカ家
ああああ(p3x006541)[死亡]
hxjileksma;idjl
槍一来主(p3x008441)[死亡]
宿木ノ蛇

あとがき

 この度はとってもぴかぴか有難う御座いました。
 たけしさんは何方かとpipiSDに確認したのですが、幼少期のご学友だそうです。

 またご縁がございましたら。どうぞ、宜しくお願い致します。

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