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シナリオ詳細

ビルフィッシュ・バグ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 『Rapid Origin Online』――練達が作り出した仮想空間。
 混沌とよく似た、しかし異なる世界である『ネクスト』と称されたかの世界は原因不明のバグによりかの国のコントロールを離れつつあった。故にローレットにはその調査の為の依頼が舞い込んできている訳である――
 が、それはそれとして。

「うわー、ここがR.O.Oか! 凄い空間だね!」

 オームス(p3y000016)……現実世界で言う所のギルオス・ホリス(p3n000016)のアバターであるオームスはR.O.Oのリアルさに思わず目を輝かせるものであった。
 練達と言えば混沌の中でも屈指の技術力を持つことは前から知られていた。
 しかしこれほど大規模に。あらゆる感覚をも投影させる技術を生み出すとは……
 風の囁きが遠くから聞こえ、頬を撫でる感覚はまさに本物。
 ――そんな世界の中、オームスを含めたイレギュラーズ達が訪れたのは航海(セイラー)と呼ばれし――現実の混沌世界で言う所の海洋王国地域だ。調査がてら各地を探索している内に航海の浜辺へと辿り着いたのである。
 広がる絶景。青い海と眩しい日差しがイレギュラーズ達を出迎えて。
「おぉう旅人さんかい? どうだい、試しに釣りなんて」
「――釣り? ここで釣りができるのかい?」
「あたぼうよ。へへ、この前なんてでけぇカジキマグロが釣れたんだぜ」
 さすれば更に現れたのは付近の民だろうか。
 陽気に話しかけてくるその様は説明役NPC的な雰囲気をも携えている。この世界はあくまでも作り出されし『ゲーム』の様な場所であれば、このような者がいてもなんら不思議な事ではないか。彼が差し出してくる釣り竿はとても丈夫そうで……
 ちょっと待て。こんな浅瀬でカジキマグロなんて釣れるか?
「……もしかしたらこれもバグかもしれないね。
 ちょうどいい。これも調査の一環だ――皆で試しに釣りでもしてみないか?」
 先述の通りこの世界にはバグがあるという。それが練達のコントロールを離れた原因であるのだが、それがどこに潜んでいる事やら……調査や場合によっては解決するのもイレギュラーズ達に課せられた役目だ。
 そう、だからこれは遊びじゃない。立派な調査、仕事なんだ!
 釣り糸に餌のエビを仕込んで即投擲。遠くに着水すれ――ば。
「ぬぁああああ!?」
 瞬間。オームスの体を猛烈に引っ張るが如く『何か』が掛かった。
 凄まじい力だ――! 海に引きずり込まれんとする程の力。見えた影は、噂のカジキマグロか!?
 ――瞬間。海面を跳ねた影、それは――

「ぎゃあああああデ、デカすぎるッ――!! なにさアレは――!!?」

 ――カジキマグロにはカジキマグロだったが、そのデカさは十倍ぐらいあった。
 もう鯨か? ってレベルである。むしろよく釣り竿支える事が出来たな。或いは図体のわりにそんなに引っ張る力は強くないのか……ともあれ一秒後、着水。
 これまた凄い衝撃が襲ってきて思わずオームスは弾き飛ばされれば。
「うわー! 体が止まらない、助けてくれ――!!」
 球体上の体が仇になったか、どこかに転がっていくオームス。普段の姿と異なっていることもあって動きづらいのだろうか? あ、ヤシの木に当たって止まった。
「あぁ! あいつは主だ! この近くの魚を食い漁るんでさぁ……!」
「ええ……もうあの図体じゃ食い漁るってレベルじゃ……」
「旅人さん、どうか奴をとっちめてくれねぇか! 報酬なら出すからよ!」
 またまた現れた付近の住民……なんだろうかこのタイミング。もしかしてこれゲームで言う所の『クエスト』でも発生したのだろうか……? まぁあれが生じたバグの一つである可能性もあれば放ってはおけまい。
 あのクソバカデカカジキマグロ――さてどうやって攻略したものか。
 手に釣り座を握りしめながら思考を巡らせるのであった。

GMコメント

●依頼達成条件
 クソバカデカ『カジキマグロ』の撃破

●フィールド
 航海(セイラー)の一角である浜辺です。時刻は昼。
 周囲に一般人はいないように見えます。海も穏やか。
 戦うに十分なスペースはあると言えるでしょう。

●敵戦力
・『カジキマグロ』
 めちゃめちゃデカいカジキマグロです。
 なんでもこの辺りの主という話ですが、最近やたら成長したのだとか。いやそもそもこんな浅瀬にカジキマグロが来るのか……? ともあれこのままでは生態系をも乱しそうで退治してほしいそうです。

 海を泳いでいますが、釣りをしていればやがてその餌に引き寄せられてきます。
 タイミングを合わせれば攻撃を叩き込むことは容易いでしょう。尤も、敵がいると思われればその後はめっちゃ攻撃してくるでしょうが……奴自慢の吻には注意してください。一撃で死亡(デスペナ)する危険性もあります。

 その他の攻撃方法としては海から飛んできて着弾→衝撃波とかもあるようです。あと浜辺に上がったらその巨体でじたばたするとか。なお地上にいる間は呼吸ができないのか勝手にHPが減っていくそうです。

●オームス(p3y000016)
 ギルオス・ホリス(p3n000016)のアバターです。丸っこい。
 レベル1のキャラクターです。皆さんをお手伝いします。
 周辺に浮かんでる謎のミニオームスを飛ばす遠距離攻撃を行います。

※重要な備考
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

  • ビルフィッシュ・バグ完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年05月27日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヴァリフィルド(p3x000072)
悪食竜
ドウ(p3x000172)
物語の娘
アイ(p3x000277)
屋上の約束
ルチアナ(p3x000291)
聖女
神様(p3x000808)
R.O.Oの
セルビー(p3x003103)
構造体
イデア(p3x008017)
人形遣い
ネコモ(p3x008783)
ニャンラトテップ

リプレイ


 通常の10倍はあるカジキマグロ――現実ではあり得ぬサイズだ、が。
「流石ゲームと言った所でしょうか。これも創り出された空間が為。
 本来あり得べからざる存在がいても不思議は…………いませんよね?」
 これこそがR.O.Oなのだと『人形遣い』イデア(p3x008017)は実感していた……いやもしかしたら海洋の知られざる秘境とかにこういう奴が本当にいるのだろうか? そういうのがいたからR.O.Oでも発生したのだろうか? 疑問はあるが、さて――
「……ところでそこの丸っこいのは――ギルオス君なのですか?」
「えっ? ああそうさ! ふふ、こういう姿もいいものだろう?」
「成程つまり……マスコット願望がおありという事で?」
「えっ?」
 同時。『Doe』ドウ(p3x000172)が話しかけるのはオームス――つまりギルオスだ。
 彼女の近くで跳ねる様に存在を主張する彼……一体なぜそのようなアバターを。日々に何かストレスでもあるのだろうか? いえ可愛くはありますけれども!
 発生したカジキマグロにもオームスにも色々疑問と興味は湧くものだが――ひとまずは奴を釣り上げるべきかとイレギュラーズ達は準備を進める。あのバカデカいカジキマグロをどうにか寄せねば話にならぬのだ。
 前準備としてドウが展開する結界が如き空間が外界と音を遮断。
 その内側にて存在を気取られぬ様にしながら――『釣り』の準備を始める。
 更にイデアは人差し指の先より糸を垂らして。
「釣りの心得はありませんが。道具たる『糸』の扱いならば話は別ですよ」
 餌を付ける。彼女の指先は糸のほんの微かな揺れも感じ取ろう。
 掛かれば後は絡めるのみと。投じて待つは好機のみ。
「買ってきましたよ餌・エサ・えさ――っ!! 寄せ餌ってヤツですよねこれ!!
 バッチリです、これに引っかからないカジキマグロなんていませんよヤッタ――!!」
「ボクも釣るの手伝うニャ! こーいうのはあれニャ! 数撃ちゃ当たるってやつニャ!」
 更に釣りの一翼を担うのが、機械で出来た尾を盛大に右に左にと振り回す『構造体』セルビー(p3x003103)と、これまたテンション高めな『にゃーん』ネコモ(p3x008783)である。
 近場の店から竿や餌など釣り用品をセルビーは仕入れ、その中でも寄せ餌――撒き餌とも呼ばれる大量の散布用の『餌』をバケツと共に抱いている。これを浅瀬中央付近に撒き散らして奴を待つのだ……!
「そいや――!! カジキマグロや、来いや来い――!! これでもっと近づいて来るはずです! そんなに高い知能はなさそうですしね!」
 同時。セルビーは釣り竿を掲げ、その先端にはオームス型ルアーを……待て、いつの間にそんなモノを……!! あー! オームス君ルアーが彼方に飛んでいく――!!
「成程。供物の身を宿した依り代を放るは善き法であるな」
 その様子を眺めるは――『R.O.Oの』神様(p3x000808)だ。
 かみだよ。かみはいつも見ているよ。そう、愛しき子らの世界をいつも見ているよ。
 けれど――斯様なカジキマグロが現れるなど今まで神が隠れていた為にどうやらこの世の秩序が乱れてしまっていた様だ……
 この責はかみが取らないといけないね、だから。
「献身的提案見事也。其の方の志、永劫に忘れまい」
「はっ? ちょ……待っ、僕はそんな事一言も! 待て放せ神さ……!」
 かみを信仰せし供物と共にマグロを倒すよ。おお……じたばたと暴れて活きの良さも指し示すとは実に献身的な供物である。やられたままでは気が済まないという事か――その意気も良し。
 神はその行いに満足したように笑みを見せながらそっと遠慮なくオームスを投擲した。
 悲鳴と共に彼が、マグロがいるであろう地点へと一直線。
「所で思ったんだけド、サ……カジキマグロだっケ? 食べたら美味しかったりするのかナ……? データ上とはいエ、この世界ニ確かに存在してル、魚なんだヨ――ネ?」
 遠くでオームスが着水した様子を眺めつつ『R.O.O tester?』アイ(p3x000277)はカジキマグロの『味』を想像していた。あれほどの巨体。どこを食べても食べきれぬ程の量があろう――
 あとは旨いかまずいかだ。どうしても過る己が『食欲』に唾液を促されながら。
「とりあえずは引き寄せないとネ。ハハ――どうだろウ、ビーフジャーキーで行けるかナ?」
 彼女が針に付けるのはなんと干し肉だ。
 カジキマグロも狂暴になっていれば純粋たる『肉』に寄せられるかもしれぬ。
 あらゆる趣味に精通する経験を持ちいながら、釣りスポットへと歩を。海では味わえぬ陸の一品――引き寄せられれば良いのだけどネ! と思考しながら、さぁ彼女もいざやクソバカ魚へと挑む一手を。
「私は少し離れた場所で皆の釣りの様子を見守っているわ。
 上手くいくように祈っていて頂戴」
 更に『聖女』ルチアナ(p3x000291)は、皆とは少しポイントをずらしてマグロへと。
 投擲する釣り糸。感じる潮風が鼻を擽れば――思考が過るものだ。
 混沌と同じ空気。しかし、どこか少し違うこの世界の事に。
「……面白い所ね、ここは」
 似て非なる世界で『私が私として動く』事。
 違和感もあるものだが。
 元々今まで……『ルアナの体を借りて』『魔王の前でのみ』姿を現す存在だったから。
 慣れと言うべきか、それが当然であったからと言うべきか――思考のどこかにあるしこりの様な感覚を、しかし頭を軽く振って今は目前に集中。
 今か今かと釣り糸の様子を見据えるのだ。
(……もう少しかしらね?)
 揺れる刹那を。水面が弾ける瞬間を。
 息を潜めながら。

 ――さすれば。

「ほう。ついに出てくる訳であるな――主が」
 勘付いたのは『悪食竜』ヴァリフィルド(p3x000072)であった。
 海の様子が変わる。穏やかに、そして静寂に見えた気配そのものが一変するのだ。
 ――掛かった糸は。その衝撃はアイの手に響いていて。
「オオッ!? 来たネ来たネ――こりゃあ大物だヨ! 皆、いいかイ!?」
「ええ――勿論です!」
「神に任せよ。これより始まるは漁場の安寧……いざ、民草の未来を紡ごう」
 アイの声が飛ぶと同時。ドウや神様も駆け寄り支えとして。
 遂に水面の下に影を捉えるのだ。特に神の目にはその姿が鮮烈に映し出される――
 奴の。カジキマグロの巨体たる影を。
「ご自慢の吻、結構な事だが危なっかしいものであるな――太平の為へし折らせてもらおうか」
 そして引き上げたと同時。空に跳ねた奴の身へとヴァリフィルドは。
 溜めに溜めた一撃を――ぶち込んでやった。


 カジキマグロの身が大きく揺れる。ヴァリフィルドの一撃が芯にまで響いているのか――?
 されど流石と言うべきかその巨体は揺れこそすれ一撃で滅びる事まではない。
 吻も健在に。『敵』を認識したマグロが見据えるは地上で。
「さて。海の中ならともかく、こんな所にまで出てきて――自由にはさせないわよ」
 瞬間。行くはルチアナだ。
 奴がいつ出てきても良い様に備えていた彼女は即座に行動を。
 その横っ面に叩きつけてやるように、撃をねじ込むのだ。
 奴の気を引く様に。奴の怒りを誘うように。
 ……R.O.Oの世界。駆け出しの身であれば十全たる身とは言えぬが。
 彼女はそんな素振りは一切見せない。

 ――だって皆を不安にするでしょう?

 心の中だけで己が決意を携えて。行くは魚の下へ、奴を討伐する為に!
「うひゃ――!! 流石に大きいですね……!! わっ、落ちてきますよ!!」
「陸に誘き寄せましょう――アレをどうこうするのはその後です!」
 さすればマグロが攻撃態勢。吻をこちらに一直線へと舞い降りんとすれば、セルビーは即座に跳躍し奴から一度距離を取るものだ。流石に普通のサイズとは規格が違いすぎる――有利な場面に引きずり込んでからだと、イデアも思考するものだ。
 直後、衝撃。
 マグロが着弾したのだ。ルチアナに引き寄せられるように地上へと。
「んニャ――!! な、なんつーデカさニャ!! 物事には限度ってもんがあるニャ――!!」
 凄まじい『圧』が周囲を薙ぐ――思わずネコモなど吹き飛ばされそうになる勢いだ。
 されど分かっていれば、備えていれば一撃で死んだ者はいない。
「お返しニャ! 倒した後はたーっぷり凍らせて氷属性の大剣でも作って、大儲けさせてもらうニャ――!!」
 やがて衝撃が収まればこちらが攻勢へと転じよう。
 ネコモは体を捻りながら飛び上がり、アッパーカットの形でマグロへと撃を叩き込んでいく。陸に上がればそうそう自由に行動は出来まい――ならば今の内にと思うのはネコモだけではなくて。
「まずはあの吻を砕きましょう。振り回すだけでも十分以上に脅威ですからね」
「うむ――随分と堅い様だが、それでも無敵ではあるまい。ヒビでも入ればそこから仕舞いよ。彼奴を倒せばこの海の安全も確保でき、食糧も入手出来て一石二鳥……逃せぬな」
 イデアは糸を繰り出す。陸へと上がったマグロの身を雁字搦めにする様に。
 さしもの巨体であれば糸を引き千切られそうだが――元より拘束だけで終わる輩ではない事は分かっている。だからこそヴァリフィルドと共に再度吻を狙うのだ。
 暴れる衝撃を躱しながら蹴りを一撃。
 続いてヴァリフィルドの息吹が敵を包もう――
 さすれば毒が、出血がマグロを襲うのだ。その吻を中心に、その吻を折らんとする意志と共に。
「切っ先には気を付けて――可能な限り正面に立つのは避けましょう。
 尤も……正面に立たなければ危険がないとも限りませんが、ね!」
 まるで巨大な丸太が振り回されているかのように。
 こちらを薙ごうとしてくる吻の一撃をドウは、その下をすり抜ける――
 頭の上を掠める一撃は重く、死の匂いすら携えていよう。
 R.O.Oは狂った世界だ。それは膂力にしろ体力にしろ、という意味で……
 まぁ――だからあんなカジキマグロを釣り上げる事も出来た訳であるが。
「全く。体の慣れもまだ浅い内に、難儀な事です」
 善処しましょう、と小さく呟いて。
 ドウはその手に剣を抱く。青く透き通った刀身は、一体『誰』のモノだったのか。
 脳裏に浮かぶはたった一人。
 瞼の裏にも染み付いた忘れがたき顔を――されど今は目前に集中すべく頭を振って。
 踏み込み、己が力の限り一閃した。

『――!!』

 であれば直後に陸上に上がったカジキマグロの身が更に大きく跳ねる。
 じたばたと足掻く――それは海に戻ろうともしているのか。
 あれだけ巨体が上下に横にと動けば、それだけでも十分な威力があり、イレギュラーズ達を襲っていく。させじとヴァリフィルドは海側へと布陣し奴を抑え込まんとして、更にはそこに。
「させぬ。汝に戻るべき場所はなく、朽ちるべくが神の定めよ」
 神様も舞い降りる。
 民を騒がせ海の平穏を乱した罪は断罪されるべきなのだ――
「御覧じよう。コレが神の奇跡だ。万民に施すべき神秘の結晶を外敵に」
 直後。放つは雷撃。
 それは神が世に権限せしめた奇跡が一端。一瞬の閃光にして、しかし敵対者を焼く裁き。
 焼け焦げよ敵よ。神の奇跡の前に――屈するが良い。
「コレでも神なのでね」
「ああ――いつまでも地上にいて無事って訳でもないだろウ。弱ってきてるサ、ネ!
 仕留めるだけなら目を狙うんダ――やっぱり生物はここが脆いみたいだヨ!」
 攻め立てる。
 神が雷撃を放ち、続いてアイも短剣を生み出すのだ――
 掌に顕現せし無数の刃が向かう先は、魚の瞳。
 穿ちて絶たんその命を。弱き点を推察し、向かわせる撃が奴の命を削るのだ。

 であれば奴の身も徐々に、徐々に衰えが見え始める。

 足掻く力が弱まり、ご自慢の吻にもいくらかヒビが。
 ネコモの全力の猫たる拳が、セルビーの一撃が更に加われば奴を弱めて。もののついでに海の方から戻ってきたオームスもミニオームスを飛ばして援護の形を取れば。
「こんがり焼いて差し上げますよ……じたばたするのもこれまでです!」
「このまま放置しておけば息ができずに自滅するのでしょうけれど、待ってらんないわ。
 海に戻ってそのまま逃げないとも限らないしね――殴り倒しておしまいにしましょう?」
 故にマグロを引き付けていたルチアナも殴りに加わるものだ。
 彼女の言う通りマグロは放置してはおけない。自滅するにしても油断は禁物だから。
「ええ――このままあの吻には注意しつつ、息の根を止めて――ッ!?」
 瞬間。青き刃を振るうドウは、見た。
 マグロが力を溜めているのを。
 それ自体は攻撃――ではない。それは、奴が跳躍するための『踏ん張り』だ。
 このままでは真綿で首を絞められるように倒されるだけだと感じた奴は――
「んっ!? 奴が跳ぶヨ――!! 注意するんダ、最後の悪あがきだけど、ヤバイよ――!」
 天へと跳んだのだ。それに気づいたのは、アイか。
 海に戻る――程の力はない。ただ、真上へと跳んで落ちてくるだけの動き。
 だが奴自身の巨体は、その重さは未だ健在。

 ――落ちるだけでも絶する威力があるものだ。

 直後、カジキマグロが再度着弾。
 まるで隕石が落ちたかのような衝撃が再度周囲に――
 吹き飛ばされる者。岩に叩きつけられる者。それぞれ生じる、が。
「その活力は見事。されど汝に生きる道は無し」
 神とイデアが行く。終幕の炎をと神が紡ぎ、そしてイデアは。
「おっと失礼。足癖が悪くて申し訳ありません――まだ駆け出しメイドなもので」
 礼儀の不足は平にご容赦をと。
 吻の根元に全霊の蹴りを一発。
 それは神の炎と共にマグロの身を穿ちて――その命へと到達しよう。

『――!!』

 マグロの身が震える。天を仰ぐかのように不思議と直立し、そして。
 大樹が折れるかの様な激しい音を鳴り響かせて――吻が真っ二つに折れ砕けた。


「……このカジキマグロは……美味しい、のでしょうか? カジキマグロと言えば、こういう浅瀬で獲れる様な個体ではないので、食べたコトがないのですが」
「うニャー……これだけでかいと解体するのも大変そうニャー……切り分けてどうにかこうにか処分するニャ? あっ! そうニャ! 近くの村民さんたちに分けるのも良い手だニャ!」
 そして――再び平穏を取り戻した海の前で。ドウは顎に手を当てマグロの味を想像す。
 海の幸として名前は聞いたことがあったが、さてさて。そもそもR.O.Oでの魚には旨味を感じる事もあるのだろうかと――さすればどうやって解体したものかと思案していたネコモが声を。村民にも協力してもらえばどうにかなるかもしれない。
 もしかすれば放置していればやがてデータの藻屑となっていつの間にか消えているかもしれないが、折角なので味も楽しみたい所だ。
「え、ドロップはしないのコレ? え、うそでしょこんなにあるのニ!!?
 く、くソ――! ならせめてここで胃袋におさないト!! 勿体ないヨ!!」
「まぁいざとなれば我が丸のみにでもするがな――骨だろうが何だろうが我に掛かれば同じよ」
 速攻で火を用意するアイ。
 そして動かなくなったマグロをまじまじと見据えているのはヴァリフィルドだ。
 余らせるぐらいならば頂こう。数多を飲み込む存在であれば易しとばかりに。
「ふふ! このルアーに、ワームを通して……出来ました!
 オームス・ワーム・ルアー! メイド・イン・セルビーです!!」
「ちょっと!! どうして僕を模したモノを最後までルアーに……あぁ! 僕が遠くに――!」
 一方で全てが片付いたからと釣りを楽しんでいるのがセルビーだ。ワーム――つまりミミズなどを模した疑似餌を、いつの間にやら作成していたオームス型ルアーに括り付け。お手製のルアーが出来上がれば試すものである――オームスの抗議? 知らぬ知らぬ~
 全ては魚が寄りやすい事が正義。と、その様子を眺めているのは。
「……ところで最初から疑問だったのですがあの毛玉みたいなのは? 味方だとは分かっておりますが……はっ? ギルオス殿のアバター? あれが? あの毛玉が? あの全身毛むくじゃらが……失礼。少々口調が乱れましたね」
 イデアだ。一体何を思ってマスコットみたいなアバターに……? と。
 まぁ彼にもなんか色々あるのだろうと口は閉ざして。
「このようなマグロが存在してしまったなど、神の設計不手際か……
 漁場を乱してしまった様だな しかし ソレも全てゆるすよ」
 そして――神はマグロを串に差して味を楽しみながら、かの存在を許そう。
 海を荒らすは大罪。しかし死して美味なる存在へと昇華されれば罪はなし……
 この世界には一体このような秩序を乱す輩があとどれ程いる事か。

「――これは、下界平定の第一歩である」

 R.O.Oの世界『ネクスト』
 これより如何なる物語が紡がれることか――神は想起し、安泰の訪れを齎さん事を願うのであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

ルチアナ(p3x000291)[死亡]
聖女
ネコモ(p3x008783)[死亡]
ニャンラトテップ

あとがき

 依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ!

 R.O.Oでの依頼はどうでしたでしょうか。
 海での異変。バグッてるかのような攻撃力……これからもこういった事態はあるのでしょう。

 それではありがとうございました!

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