PandoraPartyProject

シナリオ詳細

そのゴブリン、チート級にて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●囚われの冒険者達
 暗い洞窟の檻の中で、六人の冒険者達が絶望の表情で項垂れていた。
「このクエスト、初心者向けじゃなかったのかよ……」
 そのうちの戦士の男が、苦虫を噛み潰したような表情でぼやく。一行は冒険初心者向けのクエストと聞いて、この洞窟に住むゴブリン達を退治に来ていたのだ。
「あのゴブリン共、初心者向けって強さじゃなかったよなぁ。おまけに、ホブまでいやがったし」
「ああ。それに、ヘッドショット決めても生きてやがる見張りとかもうチートだろ」
 だが、この洞窟に棲むゴブリン達の強さはとても冒険初心者が相手出来るようなものではなかった。もう一人の戦士の男が悔しげに言うようにホブゴブリンがいたのもそうであるが、ゴブリン自体も普通のゴブリンとは思えないほど強く、あまつさえ狩人の男が見張りの頭を撃ち抜いても生きて仲間達に警報を発したほどだ。
 警告に応じてホブゴブリンを含む巣穴全体のゴブリンが出てきたとなれば、初心者向けクエストを選ぶようなパーティーが勝てるはずもない。瞬く間に叩きのめされ、こうして囚われてしまった。
「……これから、私達どうなるんだろう?」
「ずっとここに閉じ込めて、何もしないのが不気味よね……」
 僧侶の女が不安そうにつぶやけば、魔術師の女が腕で自分の身体を抱えるようにして身震いする。ゴブリンと言えば、男はすぐに殺し女は犯してから殺すものと相場が決まっているのだが、この洞窟のゴブリン達はパーティーを檻に閉じ込めるだけで一向に何かをする様子がなかった。それがかえって、魔術師の女の言うように不気味である。
 しかしそのはずで、このゴブリン達は戦闘能力は通常のゴブリンに比べて高くなっているが、殺すだとか犯すだとか言う残虐性は逆に欠落していた。ただ、捕えて檻に放り込み、放置するだけである。
「俺ら、何時帰れるんだろうなぁ……」
 野伏の男が、深く溜息をついた。本来ならこのような状況に到ったのならログアウトすれば事足りるはずなのだが、何故かそのログアウトが不可能になっていたのだ。

●いろいろとバグが酷い
 混沌から元の世界に帰還することを目的として構築された、混沌をモチーフとした仮想環境『Rapid Origin Online』は、予期せぬエラーによって暴走していた。暴走した『Rapid Origin Online』は練達三塔主の手すら離れVRMMOの様相を呈し、ログインした者達を内部に閉じ込めてしまった。
 その中に、三塔主の一人佐伯操の『佐伯研究室』に属する希望ヶ浜学園の学生達もいた。テスターとして『Rapid Origin Online』にログインし、ゲーム世界の中にもゴブリンの檻の中にも閉じ込められてしまったのである。
 そして、『Rapid Origin Online』にログインしてその彼らを救出して欲しいと言う依頼が、ローレットに飛んだ。

「皆さん、ログイン出来たようですね」
 『緑の騎士』ウィルヘルム(p3y000126)は、目の前にいるイレギュラーズ達の人数を数えて、依頼を受けた全員が『Rapid Origin Online』にログインしたことを確認した。次いでウィルヘルムは、状況の説明に入っていく。
 冒険者パーティー救出の障害となるのははゴブリンマジシャン、ホブゴブリンを含むゴブリン三十体。ただし、『Rapid Origin Online』のバグによって著しく能力が強化されている。しかも頭を射貫かれても、生命力が尽きない限り動き続けると言う。
「見張りは二体。ですが、仮にこれを一撃で倒しても、必ず皆さんが来たことは中に伝わります。
 また、中のゴブリンが全部出てくるまで互いにダメージは与えられません」
 いわゆる強制イベントと言うやつでしょうか、とウィルヘルムが苦笑する。
 他、ゴブリン達を全滅させない限り檻を破壊出来ずにパーティーを救出出来ないことも合わせて告げると、ウィルヘルムはイレギュラーズ達に向けて深々と頭を下げた。
「それでは、私はここで皆さんをお待ちしています。どうか、よろしくお願いします」

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。GMとして最初に運営したシナリオがゴブリン退治だったように、ROO最初のシナリオも実質ゴブリン退治から運営していきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
 ただしこのゴブリン達、混沌のものに比べてバグのせいかえらくタチが悪くなっているようで……。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

●成功条件
 囚われたパーティー達の救出(事実上、ゴブリン(ホブ、マジシャン含む)30体の討伐)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 ゴブリンの住処になっている洞窟の前。巣穴の前は広い平地ですが、巣穴から左右に40メートル弱離れたところに、姿を隠せる茂みがあります。
 時間は昼、天候は晴天です。環境による戦闘へのペナルティーはありません。

 イレギュラーズが到着した時点では見張りが2体いるだけですが、OPでも記述されているように見張りを音もなく一撃で倒したとしても、イレギュラーズ達の襲撃は中にいるゴブリン達に必ず察知されます。

●戦闘初期配置
 ゴブリン達は巣穴の周辺に密集しています。
 イレギュラーズの配置は自由です(至近距離に位置する場合は、ゴブリン達が出てくる間に距離を詰めたと言う扱いになります)。
 なお謎のバグによって、ゴブリン達の配置が完了するまでは一切の攻撃、状態異常が通りません(逆に、それまではゴブリン達もイレギュラーズ達を攻撃しません)。

●ゴブリン達 ✕30
 ファンタジーでお馴染みのゴブリンですが、ROOで発生したバグによりそのレベルではない強さを持ちます。
 全体的に通常のものより大幅に能力が強化されていますが、特に攻撃力と生命力の強化が顕著です。
 あと、OPでヘッドショットを決められても生きていたように、HPを削りきらない限り普通に見れば死んでいるような傷を受けても生きて行動し続けます。

・ゴブリン ✕24
 武器は毒の塗られた短剣や手斧で、ストックがあれば投擲してくることもあります。

・ホブゴブリン ✕5
 武器は棍棒。投擲したり毒が塗られてたりはしませんが、その分一撃の威力が大きくなっています。

・ゴブリンマジシャン ✕1
 ボス格です。様々な攻撃魔法をぶっ放してきます。魔法の種類は不明。
 生命力が他より低い代わりに、特殊抵抗が高くなっています。
 
●冒険者 ✕6
 今回の救出対象です。ゴブリン達の巣穴になっている、洞窟の中の檻に囚われています。
 ゴブリン達を全滅させて洞窟の中に入り檻の前に行けば、無事救出することができます(そうでない限り、檻が破壊出来ず救出できません)。

 それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。

  • そのゴブリン、チート級にて完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年05月13日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

花糸撫子(p3x000645)
霞草
パルフェタムール(p3x000736)
聖餐の天使
ハウメア(p3x001981)
恋焔
セフィーロ(p3x007625)
Fascinator
イデア(p3x008017)
人形遣い
ひめにゃこ(p3x008456)
勧善懲悪超絶美少女姫天使
アカリ(p3x008467)
新米P-Tuber
武野ミカ(p3x008658)
かみなりさま見習い

リプレイ

●初めてのログイン、初めての依頼
「電脳空間って、不思議なところね……」
 現実とあまり変わらない、長い黒髪をポニーテールで結っている少女の姿をした『霞草』花糸撫子(p3x000645)は、不思議そうに辺りを見回しながら思わずつぶやいた。仮想環境の中であるのに、何もかもが現実の様に思える。本来は機能しないはずの視覚が機能し、周囲の景色が見えることが、撫子にとって唯一現実との違いであった。
「けれど、この世界に囚われている人々がいるのだから、手放しで素敵な世界って喜んでもいられないかしら?
 まずは、救いを求める人を助けましょう!」
「そうですね。この世界で初めての仕事……失敗するわけにはいきませんね。少々敵は多いですが、張り切って参りましょう」
 撫子の意気込みに、如何にもクラシカルなメイドと言った出で立ちの『人形遣い』イデア(p3x008017)が深く頷いた。やはり、最初の仕事となれば成功で終えたいものである。だが、その仕事には厄介な点があった。

「ゴブリン退治に人質救出! こいつぁいかにも駆け出しっぽいクエストだな! 神様見習いの武野だ、よろしくな!」
 情報屋のアバターから依頼についての詳細を聞き終えると、金髪紅眼の小柄な少女『かみなりさま見習い』武野ミカ(p3x008658)が仲間達に向けて元気よく挨拶した。
「にしても、バグ? っていうのか、これ。敵が全員集まらないと攻撃もなんも通らないって、ある意味すげーな」
「ねー、R.O.Oでの戦闘頑張るぞー! って思ったらバグとかちょっとちょっとー! バランスなってないよ練達ぅー!」
 ミカがゴブリン達にまつわるバグについて言及すると、撫子ほど長くはないものの黒髪をポニーテールにまとめている少女、『新米P-Tuber』アカリ(p3x008467)が『Rapid Origin Online』を創り出した練達に抗議する様な声をあげる。だが、練達の名誉のために言っておくとするならば、これはあくまでバグによるものであり、仕様ではない。
 ともかく、そうとばかりも言ってはいられない。この世界に、そしてゴブリン達に囚われた希望ヶ浜学園の学生達を救出するために。
「まずは、伝統と信頼のゴブリン退治だね! 解法は単純、バグにはバグをぶつけるんだよ!」
 何やら策があるようで、アカリは自信満々といった笑みを浮かべた。
「敵が全て配置につくまで攻撃が無効な上に、全滅するまで救助も出来ないのは面倒過ぎませんか?
 これが現実なら巣穴に油を撒いて火を放り込んだり、出てきた所を順番に仕留めるなど有効な手段が取れるのですが……。
 ……はぁ、面倒ですが真正面から殲滅するしかないですね」
 一方、四枚の翼と天輪を持つ白金の戦乙女ハウメア(p3x001981)はぼやき、溜息をついた。現実なら、ハウメアの言う様にいろいろとやりようがある。だが、それらがバグによって全て封じられて、真正面から戦うしかないとなれば、こうしてぼやきたくもなるだろう。
「とりあえず、敵が集まるまでに罠とか小細工しようぜ! いくらアレでも数が数だしな」
 そんなハウメアを元気づけるかの様にミカが提案すると、イレギュラーズ達は頷いて賛意を示した。

(さて、この世界で始めての依頼……いや、ここはクエストと言おうか。
 ゴブリン退治というのは分かりやすくて実に結構。既にバグの気配はあるけれど、まずは動いてみない事には始まらない)
 短く白い髪の、ボーイッシュな天使の姿をしている『聖餐の天使』パルフェタムール(p3x000736)は、この依頼を機会として『Rapid Origin Online』についていろいろと――例えば、痛覚やその他の感覚は現実と同じように働くのか、敵や味方が倒れた場合、その身体はどうなるのかなど――試してみる心算だった。
(ゴブリンは……可愛くないですねー……。でも、数が多いから引き連れるにはいいかもですね!)
 数多くの囲いを引き連れ、『Rapid Origin Online』に帝国を築き上げるつもりの――今のところ、それは上手く行っていない様だが――ピンクの髪に豊かな肢体を持つファンシーな少女『勧善懲悪超絶美少女姫天使』ひめにゃこ(p3x008456)は、どうやらゴブリン達を囲いとして引き連れるつもりの様だ。ゴブリン達は冒険者達救出の障害であり、事実上の討伐対象であるのだが、今のひめにゃこにそれを指摘するのは野暮なようにも思われた。

(然し、慣れないわね……こいつは自分の身体なんだか、そうでないんだか)
 現実の自身の身体とは全く違う姿でありながら現実そのものと言った感覚を伝えてくる、金髪蒼眼で長身にグラマラスな女性の姿のアバターに、『Fascinator』セフィーロ(p3x007625)は困惑していた。この辺りは、慣れの問題であろうか。
(……まあ、やることは変わらないか)
 だが、アバターに慣れようと慣れまいと、セフィーロが思った様にやるべき事は変わらない。現実であれ『Rapid Origin Online』であれ、敵と戦い、依頼を達成するまでだ。

●細工は様々
 救出対象である希望ヶ浜学園の学生達、そのアバターが囚われている洞窟の前に、イレギュラーズ達はたどり着いた。
(静かに見張りを倒しても襲撃がバレるとはいえ、手早く倒せばそれだけ此方の準備の時間も長くなるはずです)
 洞窟の前にいる見張りのゴブリン二体に、ハウメアは氷の矢の雨を降り注がせる。無数の氷の矢はゴブリン二体を空から襲い、その身体に深々と突き刺さっていく。それは頭も例外ではなく、普通のゴブリンならこれで即死だと思われたが、見張りのゴブリンは倒れることなくギャッギャッと叫びを上げて洞窟にいる仲間達に敵襲を知らせた。その見張り達は、再度降り注いだ氷の矢によってようやく息絶える。
 見張りの叫びを受けて、洞窟からいくつもの唸り声が響き、ゴブリン達が洞窟から姿を現そうとしてきた。
「バグでダメージがなくても、こうやって仲間がトラップを張るまでの時間稼ぎハメが――」
 アカリはそのゴブリンを衝撃で弾き飛ばして、洞窟の中に押し戻そうとする。だが、アカリの考えている様にはいかなかった。最初は確かにゴブリン達を中に押し戻せたのだが、ゴブリン達が入口付近に集結するにつれて、ゴブリンの肉体がみっちりと詰まっているいわば肉の壁が出来ている状態になり、弾き飛ばしたゴブリンはすぐに後ろにいるゴブリンに支えられる形になってしまったからだ。それ故に、多少の時間は稼げたかも知れないが、いわゆる「ハメ」にまでは至らなかった。
「イベントシーンの読み込み? とでも云うか、本当に律儀に出揃うまで待っているのね」
 既にわらわらと洞窟から出てきたゴブリン達は、イレギュラーズ達がすぐそこにいるにもかかわらず、ギャッギャッと騒ぎこそすれ何ら攻撃をする様子を見せない。セフィーロはならばと、油性マジックでゴブリンの額に落書きをした。
「――こいつは回、こいつは鍋、こいつは肉」
 もっとも、セフィーロはただ遊んでいるだけではない。落とし穴、まではさすがに無理であったものの、パルフェタムールやひめにゃこと協力し、最前衛のゴブリン達の周囲にいくつかの窪みを掘った。
(「敵を知る」は戦闘の基本だから、戦闘前にゆっくりと時間をくれるのは悪くないね)
 パルフェタムールはセフィーロを手伝いながら、出てきたゴブリン達を観察する。だが、少なくとも見た目は混沌のゴブリンとは変わらなかった。急所も変わりなさそうに見えたが、ヘッドショットを受けても倒れることがないと聞かされ、実際にハウメアの氷の矢を頭に受けても生き続けた以上、急所狙いはあまり有効そうには思われなかった。
(こうやってひめのブロマイドをバラ撒いておけば、拾うのに必死になって隙ができるかも!?)
 ひととおり窪みを掘り終えたひめにゃこは、自身のブロマイドを地面に撒いた。さすがにゴブリン達がブロマイドを必死になって拾う様なことは、なかったのであるが。
 
 イデアは糸を洞窟の入口の周囲に可能な限り張り巡らせ、即席のワイヤートラップを構築する。ゴブリン達は次々と出てくるためにあまり時間は取れなかったが、それでもいくつかのワイヤートラップがゴブリン達の足下に仕掛けられた。
「これも、メイドの嗜みというやつです」
 ワイヤートラップを仕掛けるのがメイドの嗜みかはさておき、イデアは誇らしげな表情でそう言った。
「ちったぁ痺れて動きが鈍ったりすれば御の字、ってな」
 自身の使う雷がよく通るようにと、ミカはホブゴブリンを中心に、別の狙いを持つハウメアと共に持ち込んだ水をかけていく。ホブゴブリン全てと、ゴブリンの三分の一ほどが、何の抵抗もすることなく水に濡らされていった。
 そうこうしているうちに、ゴブリンもほぼ全てが出そろった様で、最後に杖を持ち他の個体と比べれば小柄な、ゴブリンマジシャンが姿を見せる。
(絶対に、誰も倒させたりしないわ)
 撫子はゴブリン達の直前に立ちつつ、自らの守りを固める。そして、緊張にゴクリと唾を飲みこみながらも、身を張って仲間の盾となる意を改めて決した。

●ゴブリンマジシャン、ほぼ瞬殺
 ゴブリンマジシャンが洞窟の奥から姿を見せる頃には、イレギュラーズ達は各々自らが最適とする位置に付いた。そして、ゴブリン達の最奥に位置したゴブリンマジシャンの号令を出す様な叫びが、開戦の狼煙となった。
「頭(ボス)もろとも、凍てついてしまいなさい」
 最初に動いたのは、ハウメアだ。ゴブリンマジシャンをその範囲に収めて、ゴブリン達に氷の矢を次々と降り注がせる。、ゴブリン達は多数の氷の矢によって傷を負い、予め水をかけられていたこともあって身体を凍てつかされるも、さすがにまだまだ生命力は十分と言った様子だ。
「戦闘は攻撃だけじゃないからね! 吹っ飛べー!」
 洞窟にいるゴブリン達にしたように、アカリは敵の最前衛にいるゴブリン達に衝撃を叩き付けて弾き飛ばそうとした。衝撃を受けたゴブリン達は後方へと飛ばされていくが、やはりその後ろにいるゴブリンが壁となって受け止めるために、飛ばされた距離はさほど大きくはならない。だが、ゴブリン達の隊列は乱れた。その隙に、イレギュラーズ達は乗じていく。
「ひめの魅力を、たっぷり解らせて差し上げましょう!」
 潜んでいた茂みから飛び出したひめにゃこは、手にした魔術用の杖からゴブリンマジシャンを狙い、ピンク色のハート様の魔術を放つ。ひめにゃこの魔術はゴブリンマジシャンに命中し、ゴブリンマジシャンはひめにゃこに見とれた様子で視線を向け、惚けた。
「さぁ、薙ぎ払いなさい」
 イデアは指先から伸びる糸で等身大の黒騎士の人形を操り、ゴブリンマジシャンへと斬り込ませていく。ザシュッ! 黒騎士の剣が、ひめにゃこの魔術によって隙だらけとなっているゴブリンマジシャンを、肩から斜めに深く斬り裂いた。ギィエー! と、ゴブリンマジシャンは苦悶の叫びを上げ、その場に倒れ伏した。
 ゴブリン達のボスであり、かつ魔法を使ってくる厄介な敵であるゴブリンマジシャンを早々に倒したことで、イレギュラーズ達の意気は上がっていった。次の狙いは、強敵であるホブゴブリンだ。
(少しは感覚は違う……けど。充分に動くなら、私の知る全てを活かせる筈)
 やや違和感こそあるものの、現実の身体とほぼ変わらない動きをするアバターで、セフィーロは動揺を示したホブゴブリンのうちの一体との距離を詰めていった。手にした『ブラッドカタール』の刃が、強靱な肉体を持つはずのホブゴブリンの胸板に深く突き刺さる。そのまま、セフィーロは思い切り『ブラッドカタール』を横に薙いだ。ホブゴブリンの胸に、横一文字に紅い傷が刻まれ、そこからダラダラと血が流れ落ちていく。
「銃弾の雨を、受けてもらおう」
 そのホブゴブリンに重機関銃『ヘッジホッグ』の砲口を向けると、パルフェタムールは射撃を開始した。ダララララ……と『ヘッジホッグ』の銃身が回転し、雨あられの様に弾丸を吐き出していく。無数の弾丸がホブゴブリンの胸板に突き刺さり、セフィーロの付けた傷の周辺を蜂の巣にした。普通なら、死んでいてもおかしくはないだろう。だが、ホブゴブリンは弱った様子は見せつつも未だに動き続け、戦闘を続けようとする。
 だが、それも無駄な足掻きに終わった。
「かみなり様の、お仕置きだぜえ! こいつで、終わりだあっ!」
 ミカが無数の傷を負い弱り切ったホブゴブリンに止めを刺すべく、セフィーロが『ブラッドカタール』で貫いた傷を狙い、雷を纏わせた『破斬鋼刃』の刀身を突き立てたのだ。『破斬鋼刃』の刀身はホブゴブリンの巨躯を深々と貫き、血に染まった剣先を背中から覗かせた。『破斬鋼刃』がホブゴブリンの身体から引き抜かれると、ホブゴブリンは口からゴポッと血を吐き、グラリと倒れる様にその場に崩れ落ちた。
「さぁ、こっちへいらっしゃい!」
 撫子はゴブリン達の真ん中へと飛び込んでいくと、周囲のゴブリン達の敵意を煽り、ホブゴブリンを含むゴブリン達の攻撃を自身へと引き付けにかかる。
 ゴブリン達は撫子を寄ってたかって血祭りに上げんとするが、ホブゴブリン二体を始め数体のゴブリンがイデアの仕掛けたワイヤートラップに足を取られ、また別の数体は凍結した地面――ミカとハウメアがゴブリン達に水をぶっかけた際に、滴り落ちた水がハウメアの氷の矢によって凍ったものだ――によって脚を滑らせたため、思う様には撫子に傷を負わせることは出来なかった。
 撫子によって敵意を煽られなかったゴブリン達は、ボスの敵とばかりにイデアに殺到しようとしたが、セフィーロ達によって掘られた窪みに脚をとられて転んだため、実際にイデアに攻撃したのはその三分の二に留まった。
 撫子もイデアも守りに長けており、圧倒的なタフネスを有する。如何にゴブリン達が現実の混沌の個体より強大であったとしても、罠によって少なからぬ個体が行動を阻害されてしまっては、撫子やイデアにとっては掠り傷程度の傷しか負わせることは出来なかった。

●『Rapid Origin Online』初の冒険を振り返り
 その後、多少時間は要したものの、イレギュラーズ達は強敵たるホブゴブリンから先に仕留めていき、ゴブリン達の殲滅に成功した。撫子もイデアもさらに傷は受けたものの、死亡したとしてその場からログアウトを強いられるほどのものではなかった。
 イレギュラーズ達はそのまま洞窟の中に入っていき、檻に囚われていた冒険者達を救出する。冒険者達は、イレギュラーズ達による救出を泣いて喜んだ。これで『Rapid Origin Online』から脱出して元の世界に帰れるのだ、再び元の様に学園生活を送れるのだ、と。

「ふぅ、第一話にして十八歳未満視聴禁止な絵面になって、パンドラ☆フィルターが発動する事態は避けられたね!」
 冒険者達と共にサクラメントに戻るまでの道すがら、アカリは、笑顔で今回の冒険を振り返った。パンドラ☆フィルターとはアカリのアクセスファンタズムで、視覚的に見えては拙いものに直面したときに、対象にモザイクがかかって見える様になると言うものだ。
「……それにしても、頭が抉れたりしても迫って来るだなんて、もはやアンデッドと変わりないですね」
「確かに、あれで生きてるんだもんなぁ」
 疲れ切った様子でハウメアが嘆息すると、ミカが相槌を打った。『Rapid Origin Online』を蝕むバグ、その酷さの一端を思い知らされた気分だ。
(相手の攻撃は痛くて、まるで現実のようだったけれど……)
 それでも、現実とは違っていくら傷ついても死亡することなく、ただこの世界からのログアウトを強いられるだけなら、やはり今回のように味方の盾として身を張る戦い方でいいのだろう、と撫子は思った。
(――いずれ、この身体にも慣れるのかしらね)
 その時は、戦闘中に感じた違和感もなくなるのだろうか。セフィーロは、自らの身体を見つめながらぼんやりとそんなことを考える。
「それにしても、洞窟に入る前は残っていたゴブリン達の死体が、彼らを助け出したら綺麗さっぱり消え失せているとはね」
「そうですね。あと、条件を達成しなければ助けられない、と言うのも不思議でした。
 ちょっと、楽しくなってきた……きましたね」
 クエスト達成と同時になのであろう、ゴブリン達の死体が綺麗に消え去っていたのをパルフェタムールが不思議そうに振り返れば、イデアはゴブリン全滅と言う条件を満たさないと助けられないと言う点について触れた。
 この世界がMMORPGと言うゲームの世界の様だと誰かが言っていたが、それはこういうことなのかと思うと、イデアは楽しくなってつい中の自分の口調を出してしまう。
「――こほん。誰かになりきる、というのはもう少し精進が必要そうです」
 それを誤魔化すかの様に、一つ咳払いをするイデアだった。

「元の世界に帰れて、感謝感激でしょう!? ひめのファンになってもいいですよ!」
 ひめにゃこは最後に冒険者達にそう告げたが、この冒険者達がひめにゃこのファンになったかどうかについては――ご想像に、お任せしたい。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。イレギュラーズ達の活躍によってゴブリン達は殲滅され、この世界に、そしてゴブリン達に囚われた希望ヶ浜学園の学生達は、無事に救出されました。

 それでは、お疲れ様でした!

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