シナリオ詳細
八咫烏はそこにいる
オープニング
●苧号外零七二『八咫烏はそこにいたのか』
苧号外零七二はミーム災害です。情報を閲覧するには対抗ミーム摂取を必要とします。
――対抗ミームの投与を開始。
――完了。
――クリアランスを照合します。
――照合しました。
――ようこそ、超日本帝国特別公安所属苧号部隊第十三番頬紅雲類鷲様。
苧号外零七二は練達中央島付近に存在する無人島ロミネク島及びその地点にまつわる噂話です。
苧号外零七二に関する一定以上の情報を取得した対象(以下『暴露者』)はロミネク島に八咫烏なる存在があり、それを狩猟することで大金を得られると認識、吹聴するようになります。
暴露者から八咫烏に関する話を一定以上聞いた人間、または日記や音声記録を一定以上認識した対象も新たな暴露者となり、ロミネク島をめざし移動を始めます。
ロミネク島に到着した暴露者は存在しない八咫烏を探索し続けます。これは飢餓や怪我など本来なら探索を断念する事態に陥った場合でも継続され、多くの場合餓死や他の暴露者によって殺害されます。
別の暴露者に出会った場合これを殺害することで排除しようと考えるようになります。
島へ同行した人間は味方としてとらえますが、長期間島に滞在した場合同行者でも殺害しなければならないという考えに支配されるようになります。
多くの場合、最後の一人になるまで殺し合い、そして最後の一人が餓死する形で終了します。
【破壊報告】
当オブジェクトは破壊されました。対抗ミームをもった外注スタッフによって島内の人間をすべて抹殺し、この情報を正確に島外へと伝播させました。
これによって『八咫烏で一攫千金』というミームを上書きし、同時に日記等関連するミーム源の破壊を行うことで『八咫烏はいない』というミームの完全書き換えに成功。
異常性をもつミーム災害は消滅しました。
●八咫烏はそこにいる
「――という資料をお渡ししたはずですが」
船の上。吹き抜ける風と潮の香り。木製の甲板からかおる湿ったにおいと揺れ。
ここまでのリアルはしかし、仮想のものである。
練達セフィロトにて作成された電脳仮想世界『ネクスト』。
混沌世界の法則研究のために作られたもうひとつの混沌とも言うべき電脳世界には何人もの研究員がアバターを作ってログインしていたが、原因不明のバグによって多くの研究員がその姿を変えられ、ネクスト内に囚われてしまったという。
「その中にィ、うちの生徒も含まれている。佐伯に貸していたMMO研究会やゲーム部……まとめて『希望ヶ浜分隊』といったか……」
もったりとした話し口調の男、『希望ヶ浜学園校長』無名偲・無意式は、椅子に腰掛けワインの瓶をあけていた。
一方で赤いロングコートに赤い傘をさし続ける奇人、頬紅・雲類鷲(ほおべに・うるわし)はめまいがするような句読点なき口調でまくし立てている。
その口調をあえてとめることなく、無名偲校長は顎肘を突いた。
「うちの生徒が、『航海』……つまり混沌世界の海洋に相当する国で発見された。
『ロミネク島の八咫烏』として、だ」
「…………」
ネクストは混沌と似て非なる電脳世界。本来百年以上の隔たりがあるイザベラ女王とエリザベス王女が同時期に存在しているくらいにおかしな世界だ。
存在しないはずのものが存在していても不思議ではないが……。
「手前超日本帝国特別公安所属苧号部隊第十三番頬紅雲類鷲に資料をご請求成された旨には無論意味が御座いますね?」
「そう、意味がある。ネクスト内で『ロミネク島の八咫烏』について聞いたNPCたちがこぞって島へ集まり、八咫烏を獲得しようと動いている。これを手に入れれば億万長者だ、などと述べてな」
破壊したはずの災害が、形を変えて電脳世界に生まれている。これに暴露すればROO攻略どころではなくなるやもしれない。早急な再破壊が必要だった。
「であれば優秀なミーム破壊エージェントに心当たりが御座います」
「奇遇だな。俺にもある。どうだ、同時にせーので言ってみるか」
せーので述べた、その名は――。
●マニエラ(リアナル)・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
「違う名を述べたから別人かと思ったが、なんだ、お前、当時は偽名を使っていたのか」
「まあそんなところだ」
マニエラは、というかROO内にて作ったアバター『リアナル』の姿で手をかざした。
「で、今回は何をすれば良い? 前みたいに島に入った密猟者連中を殺せばいいのか?」
そう語るリアナルに、アバターの姿をとった校長は少しばかり難しい顔をした。
「まあ、説明しよう。ROO内に囚われた研究員は姿を変え世界に点在している。
特定のフラグを回収することで研究員を救出することができるが、今回のケースでは『八咫烏を手に入れること』がそれにあたる」
「…………ほう」
居もしない八咫烏を探し続ける密猟者たちを牽制し、姿を変え意識も乗っ取られたでろう『八咫烏となった研究員』を捕まえる。
あまり簡単なことには聞こえないが……。
「わかった。いいだろう」
船はやがて島へと到着する。
- 八咫烏はそこにいる完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年05月18日 22時20分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●船着き場より
遠ざかるボート。クエストの完了を確認してから回収にくるという通達と八人のイレギュラーズアバターを残し、希望が浜分隊のボートは去っていく。
「優秀なミーム破壊エージェント? うん、まぁ、そう言う評価をしてもらえると嬉しいけど……」
そういうアレじゃないんだけどなあ、と『マニエラ・マギサ・メーヴィンのアバター』リアナル(p3x002906)は人差し指と親指のつめをこすりあわせながら苦笑した。
淡く桜色だった髪がすぅっと銀色に染まり、体力の充填を確認するときびすを返した。
「ま、今回のことはよくわかってねぇんだけど、やれることからやっていくかね」
頬紅もそうあまり軽率に他人を信用するタイプにはみえないので、自分をわざわざ指名したことには一定の理由があるのだろうが……信頼の保証を求めるより実績で応えるほうがずっと建設的だ。建設的なことはすすめるべきだ。
「記念スべきお仕事1発目なわけだが、いやはや……かわいい子が多くて目の保養になるね。
どうやら似たような案件が前にもあったようで?そっちに関わった子がいるみたいだから頼りにしていこうかね」
『不明な接続エラーが発生しました』譛晏?芽!動(p3x007193)は潮の香りがする風に長い髪をなびかせながらも、腰に手を当て胸を張る。
「できることは少ないけど、できることはがんばろう。まずは密猟者との戦闘かな」
ふられた手になんとなくこたえ、『まちのころしやさん』Что(p3x008495)はリング状の追従オブジェクトから刀を抜き取った。
南の島へバカンスに訪れたような格好は、奇しくも(?)今回の依頼のロケーションには合っている。実際南の島だし、海辺だし。遭遇したら殺しにかかってくる人間がいるということを覗いては楽しいバカンスにできる要素は満載だった。
よもや練達の塔の中の、換気扇ごしの空気しか入らないような密閉された収容室のなかでこんな開放的な気分になれようとは。
「ところで、今回のクエスト内容って『八咫烏を手に入れる』ことだったよね?
なんか、さも知ってる前提で提示されたんだけどそもそも八咫烏ってなに?」
「八咫烏って鳥ッスか? 食べられるッスか?」
ちびっこい『神の仔竜』リュート(p3x000684)が両手をばたばたさせながら飛び上がり、『食べられるならたべたいッス! 焼き鳥、蒸し鶏、スープもいい!』とかいいながらバタバタホバリングを始める。
「落ち着いてください、まだ鳥と決まったわけでは……というか鶏でもないのにすぐ食べようとしたらだめです。おなかこわします」
『魔法人形使い』ハルツフィーネ(p3x001701)は巨大なクマのぬいぐるみをよいしょといって地面に下ろすと、表面をブラシで丁寧にすいていった。
とれた毛玉(?)をこねこねしておにぎりみたいに握るとポンと音を立てて小さなティディベアが出来上がる。一方で巨大なくまさんは翼をはやして浮き上がり、ふよふよとホバリングを開始した。
「八咫烏になった研究員さんは、意識があるのでしょうか?
それならきっと心細い、はずですね。早く見つけてあげないと。それにしても姿くらいは教えてくれてもよかったのに……」
「どんな姿かは分からないけど、捕まえればクエスト完了になるんならそれっぽいものを片っ端から捕まえればいいんじゃない?」
「ふむ……」
『マルク・シリングのアバター』マーク(p3x001309)が開いていた本をパタンととじ、指を立てると空中にマップウィンドウが開いた。いま立っている岩場あたりのマップしか表示されていないが、あるきまわれば地図は埋まっていくだろう。
「ミーム災害にミーム汚染。
電脳世界にまで広がろうとしているのはちょっと笑えないね。
これもネクストがバグによって変になってるからか、
混沌を模した事でこうなっちゃったのか何とも言えないトコだけど……」
『ご安全に!プリンセス』現場・ネイコ(p3x008689)はマジカルステッキを鞄から取り出すと、うろ覚えの変身コールでキラキラと魔法の光に包まれる。
すると女の子のラフなお出かけファッションから一転、魔法少女プリティ★プリンセス……ぽい衣装やメイクに変化した。
「で、八咫烏ってどんな姿なの?」
「前に似た依頼に参加したし、知ってるよね?」
注目が、自分の爪をいじっていたリアナルへ集中した。
ハッとして二度見するリアナル。
「え、知らないけど? ていうか、八咫烏なんて存在しないけど?」
一瞬沈黙。
「「えっ……」」
その瞬間、全員の頭上に大きなはてなマークが浮かんだ。
●
ぶんわかぶんわか浮遊するくまさんの上にまたがって、ゆっくりと島を進むハルツフィーネ。
「変ですね……高位の精霊らしき存在が全然感じられません」
ハルツフィーネがこれまで見た限り、ROO内でも五歳児程度に話が通じそうな精霊は力の濃い場所にはちょいちょい見かけていた。ファルカウの霊樹などひときわ濃い場所なら大人程度に賢い高位精霊がいるかもしれない。そのあたりはリアルな混沌とあまり変わらないはずだった。
「この島が特別なんでしょうか」
「まあ、その線はある……かも」
少々歯切れの悪い答え方をするリアナル。
ハルツフィーネは小首をかしげ、くまさんの頭をぽんぽんと叩いて高度をさげた。
木々が生い茂り視界がとおりずらかったが、じきに雑木林を抜けそうだったからだ。
あとについてきたリアナルとネイコがあたりを見回すと、半壊した木造の廃墟をみつけた。
まずはあそこから探索しよう。と、ハンドサインを出すネイコ。
歩を進めながら、リアナルはこれまでの内容を整理するように話し始めた。
「今回のケースは、研究員救出に必要な『クエスト達成条件』に『ロミネク島の八咫烏』のミーム汚染がかかった形なんだろう。
報告書にもあったが、『ロミネク島の八咫烏』は認識災害をおこすミームオブジェクトだ。知った人間はありもしない八咫烏を探すことになる。前回はあらかじめ対抗ミームを摂取したから巻き込まれなかったが……」
「…………」
譛晏?芽!動は彼女たちのあとに黙って続いていた。探索は専門外なので戦闘局面に集中しようという考えだ。怪しいものがあれば探索はするつもりだが、本格的な探索はネイコやハルツフィーネに任せたほうがよいと考えたらしい。
「でもさ、それって変じゃない?」
廃墟の中を慎重にクリアランスしながら、ネイコはリアナルのほうを見た。
「居もしない八咫烏を探し続ける密猟者たちを牽制して、八咫烏となった研究員さんを捕まえるんだよね? そもそも『いもしないもの』をどうやって捕まえるの?」
その発言に、リアナルはハッと手を止めた。
捕まえる。
という単語からつい、暴れる鴉を両手だか虫取り網だかで押さえつけるさまを想像したが、頬紅はそもそもミーム災害の専門家。捕まえる(収容する)手段を物理的対象にのみ限定してはいないのだ。
そして前回とった、『八咫烏を破壊する』前段階としてとった手段、つまり『八咫烏の収容』方法は……。
「なるほど、それもまた手段のひとつ……か」
●
「おっきい大木さん、八咫烏って知らないッスか?
知ってたら教えてほしいッス! あ、変な人間でもいいッスよ!
変な人間が探し回ってるモノッス!」
島にはえている木に向かって呼びかけるリュート。
木はどうも沈黙しているようで、呼びかけに応えてくれた木も人間と虫の区別がつかないのでわからないみたいなケースが大半だった。
「情報は集まった?」
マップを確認しながら慎重に移動を続けるマーク。彼が振り返ると、リュートは空中で腕をぱたぱたとやってこたえた。
「そこそこ……ッス。たくさん踏みつけられて怯えてる草がこの辺たくさんいたから、多分人間がよく通るところだと思うッス」
「なるほど……」
獣が定期的に通るルートは草木が潰れやすく、それをよく『獣道』と呼ぶ。リュートはそのなりかけを発見したということだろう。かなり多くの草花にインタビューを行ったと見える。
「このあたりを探索してれば密猟者たちに出会いやすいってことかな?」
ふりふりのドレスの裾をふりながら、ブラワーが可愛らしく振り返った。
人間は迷うと同じ行動を繰り返しがちといわれる。いもしない『八咫烏』を捜索するなら、同じルートを何日もいったり来たりするという動き方はある意味自然だろう。
リュートの集めてきた情報にも一致する。
「僕としてはもうひと押し……密猟者たちの活動拠点を見つけたいな。何日もこの場所に居座って探索を続けてるなら、廃墟や何かを拠点にしてそうだけど……」
「テントごと持ち込んで毎日野営してるかもよ?」
ブラワーは一度そう言ってみたが、自分が廃墟があちこちにある無人島にきたらまっさきに廃墟を寝床にするだろうとも思った。虫とかいそうで嫌だなー、とも。
ぱちんと手を合わせるЧто。
「賛成。あ、けど密猟者の日記とかメモとか見つけても読みたくはないなあ。厄い感じする。かゆうまとか書いてそう」
「粥?」
小首をかしげるブラワー。
「馬?」
同じく小首どころか体ごと傾けるリュート。
そうしている間に、マークとリュートたちの案内によって四人は一軒の小屋を発見した。
人が住まなくなって長そうだが、かといって崩れているということもない。
雨風をしのぎたくなったら入り込みそうな見た目をしている。
ブラワーとЧтоが同時に刀と指輪型マイクを構えた。
彼女たちの物音を聞いたためか、別の反応が小屋の中から伝わってくる。リュートがエネミーサーチによって受信したむき出しの敵意だ。
「……」
ハンドサインによって『中に敵がいる』と示すリュート。
だが向こうから飛び出してこない。待ち構えているのだろう。マークやЧтоが動き出そうとしたそのさきを、ブラワーは腕をかざすことで止めた。
「ボクが」
ブラワーは両腕を無防備にさげ、うっすら笑みをたたえ、どこまでも可愛らしい少女のような振る舞いで小屋へと歩いていく。
そしてごく当たり前に引き戸をあけ、中へ入り――戸口の影に隠れていた密猟者の銃口が向いたその瞬間。
発砲音――がしたときにはブラワーはすでに身をかがめてそれを回避し、密猟者の腕をとっていた。
至近距離でパチンとウィンク。飛び出したかわいい星型のエフェクトが密猟者をしびれさせ、腕をとっての背負投げが密猟者を野外へと放り出させた。
起き上がって反撃――する隙は与えない。Чтоが素早く駆け寄り、密猟者の首を即座に跳ね飛ばした。
●
マークたちが密猟者の初撃破に成功していた頃、リアナルたちも密猟者との戦闘に入っていた。
「戦闘……はこちらの世界では前線に立たないといけないからな、あまりやりたく無いんだが、仕方ない」
猟銃によって集中攻撃を仕掛けてくる密猟者たちに対して、あえてまっすぐ突っ込んでいくリアナル。被弾するたびに頭髪が毛先から順に桃色に染まり、その半分以上が染まった頃に――。
「裏コード発動」
突如として桃色の残像をひいて銃弾を次々に回避。更に刀によって密猟者の腕を切り落としていく。
「返すぞ、受けた痛みを……倍でな」
「約束通り荒事を任されるとしよう。ま、なるようになるさ」
そこへ譛晏?芽!動がネイビーアームズを行使して次々にミニチュア大砲を打ち込んでいく。
密猟者を蜂の巣に変えた頃、残るひとりの密猟者はライフルを抱えたまま逃げ出した。
「逃しません」
ハルツフィーネはぴょんと飛行くまさんから飛び降りると、逃げ出す密猟者へと指差した。
「『クマさんビーム』」
両腕を突き出して飛ぶくまさんが目からビームを発射。これによって足を打たれた密猟者は転倒し、そこへ飛び乗ったくまさんがシャキンと魔法の爪を発生させた。
「こ、殺さないでくれ! 頼む!」
そういうことなら……と攻撃の手を緩めた、その瞬間。
銃を捨てて降伏した密猟者の頭がはじけた。
「――ッ!」
ネイコがプリンセスバリアを展開。続いて放たれたハルツフィーネへの銃撃を防御した。
「戦闘音を聞きつけたのかなー? 別の集団とかち合っちゃったみたい」
ネイコはマジカルステッキをくるくると回し。チェーンソーモードを起動。銃弾を次々に撃ち落としながらダッシュし――。
「プリンセスストライク!」
飛行能力によって流星のごとく突っ込み、密猟者を胴体から真っ二つに切り裂いていく。
一方その頃、密猟者たちの探索ルートを見つけ出していたリュートたちは別集団と遭遇。
「えーいっ」
リュートの体当たりによって密猟者を突き飛ばすと、口から放った光弾で破壊していった。
そんな彼らに密猟者たちは集中砲火をあびせるが……。
「みんな、ボクの歌で元気になれー!」
ブラワーが歌って踊って電撃のようなエフェクト花火をあげると、打ち込まれた銃弾が傷ごと消滅して無傷のアバターへと巻き戻っていく。
「今だよ、Чтоさん!」
ビッと指をさすブラワー。Чтоは空を駆けると、密猟者の腕や首を次々に切り裂いていく。
「痛みも本物なのか……前衛って大変だ。尊敬するよ」
恐れをなして逃げ出そうとするも、回り込んだマークが鞘から刀を抜刀。とっさに打ち込まれた銃弾を体にうけるも痛みを無視し、密猟者を切り捨てた。
そして、ちらりと振り返る。
メガネをかけ白衣を着た人間が、両手をあげて首を振っていた。
「た、たのむ。殺さないでくれ! 俺はちがう! 俺は八咫烏なんかじゃない!」
「……知ってるよ」
●八咫烏はそこにいる
マークは刀を収め、通信用にもたされていたミニくまさんを通してハルツフィーネたちとの合流を行った。
説明を求めるブラワーやЧтоたちに、まずは説明をすべきだろうか。
マークは白衣の男を立たせてやると、その肩にポンと手をおいて振り返った。
「混沌側と違って八咫烏が存在するのに、なぜ未だに八咫烏を密猟者たちが捕まえていないのか。
僕はまず3つの仮説を立てた。
a.まだ密猟者が辿り着いていない地点にいる
b.八咫烏は移動しており、密猟者を避けている
c.八咫烏の戦闘力が強く、密猟者が返り討ちにあっている」
「ふうん……?」
腕組みするブラワーたち。
「仮説aについては、密猟者たちが同じルートをいつまでも往復してることで潰れた。リュートさんのお手柄だね。
そうなる前段階として、行ける場所すべてを散策するという段階をふむからだ。
次に仮説cも潰れた。僕らが散策するなかで密猟者の死体は見つかったけど、どれも人為的な殺害をうけていた。獣に食い荒らされるような跡はもちろんあったけど、それは殺されたあとのことだ。もしくは餓死だね。
仮説bはこの場合残るけど……」
「ただ避け続けているだけの対象なら、依頼主はその形状や状況について伝えるはずだ」
声がした。リアナルのものだ。
どうやら偶然近くまで来ていたらしく、空から探索してくれたハルツフィーネとネイコがそれぞれ着陸。リュートがぴこぴこと手をふると、譛晏?芽!動もそれにこたえて手を降った。
「そっちが先に見つけてたか」
リアナルは白衣の男性を見て、ネイコに向けて『ほらな』というジェスチャーをした。
「依頼主……それもミーム災害のエキスパートである頬紅が私らに『八咫烏の実態』を伝えなかった。それは『八咫烏がいる』という事実を伝えないに等しい。
ネイコが一時不思議がっていたように、私らは『存在しないと知っている八咫烏を探索する』という自己矛盾を抱えなければならなかった。
そうしなければ……」
ちらりと、刀で切り捨てられた密猟者の死体を見下ろす。
「こいつらのように、『八咫烏はいる』と信じ込んで互いに殺し合いをするようミーム災害を受けていただろうよ。実際、密猟者を無意識に『殺さなきゃ』と考えがちだったしな」
そこまでの話を聞いて、白衣の男……もはや補足するまでもないが囚われていた研究員はため息を付いた。
「それで、か。連中……僕を捕まえては『八咫烏はどこだ』『お前は八咫烏か』って狂ったように聞いてくるんだ」
「そうだろうな。君は八咫烏という生物に呑まれたんじゃない。八咫烏という伝説に呑まれたんだ。だが今こうして確保した以上、クエストは完了だ」
こんな場所からはさっさと退散しよう。
そういって、リアナルたちは研究者(厳密にはそのアバター)を連れて島を脱出したのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
クエスト完了
研究者は意識を取り戻しました
GMコメント
※重要な備考
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
詳しくは特設ページをご覧ください。
https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline
●オーダー
成功条件:八咫烏を手に入れる
オプション:密猟者を始末する
島へと上陸し、八咫烏を探索し獲得します。
同じように八咫烏を探しまわっている密猟者達に先んじられると厄介なので、彼らを牽制しつつ探索することになるでしょう。
また、密猟者グループと遭遇した場合殺し合いになるので、戦闘の用意は必ずしておいてください。
密猟者の戦闘能力はやや高いと見られており、戦闘する場合死亡のリスクがあります。
また、八咫烏がどういった状態で存在しているのか今のところ不明です。
手に入れるにあたって戦闘が必要になる可能性があるので注意してください。
島は無人島ですが、廃墟化した数軒の民家や土むき出しながらやや舗装された道などがあり、人間が暮らしていたっぽい形跡があります。
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