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シナリオ詳細

風を渡る鳥の如く

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●風を渡る鳥の如く
 ネオ・フロンティア海洋王国。
 数多の島と、広大な海が広がる開放的な海域には人々が集い、各島独自の特産品にて交易が行われている。
 勿論海上路においては船が頻繁に往来し、島々を渡り歩く通商船等も多数。
 しかしそんな海域を渡る通商船において影響をおよぼす、様々な脅威。
 一つは通商船の資材を根こそぎ奪う、海賊船。
 一つは船をまるごと沈めてしまう、海魔や海獣の群れ。
 そして……船を海の藻屑としてしまう、荒天。
 しかしそんな脅威はあれど、休むわけには行かない。
『しかし困ったなぁ……』
『ああ。この荷を届けるには早急に出航必要があるのにこの荒天じゃ……なぁ……』
 と、アルフィナ島に寄港していた通商船団は、天を仰ぐ。
 島に寄港し、次の島へと向かおうとした所に、突如吹きすさぶ雨と風……所謂台風。
 荒れ狂う波へこのまま出港すれば、海の藻屑となるのは間違いないだろうし……数日の間、台風は離れない、と予想されている。
 ……それに預かった品は、早急にリッツパークに棲まう貴族の一人に届けなければならないもの。
 遅れれば、商人としての信頼を失うどころか……この海域でやっていけなくなるかもしれない。
『さて、どうするべかぁ……』
 晴れない空を憂う商人……そこに。
『なぁ……こういう時こそ、イレギュラーズに頼めないかねぇ?』
 考えた商人達は……一抹の望みと共に、伝書鳥に手紙を託すのであった。


「ん……ああ、イレギュラーズの皆、ちょっといいか?」
 と、『黒猫の』ショウ(p3n000005)は、イレギュラーズの皆を呼び止める。
「ちょっとばかし真偽は不明瞭なんだが……伝書鳥がこんな手紙を運んできたんだ」
 とイレギュラーズに手紙を見せる。
 その手紙の中にはネオ・フロンティア海洋王国のある島に記しが付けられていると共に、自分達はリッツパークに棲まう貴族の命により、アルフィナ島にいるという事。
 しかし今アルフィナ島においては荒天が続いており、島から出ることが出来ず困っている……という旨が綴られていた。
「一応、その貴族の名前を調べた限りは正しいようだ。更にこの島の周域には暴風雨を伴う天候になっているのが数日続いているのも確かな様だ」
「この通商船の船員からは、報酬はしっかり払うと言っている。ま、恐らく島もそんな暴風雨に数日晒されているとなると、食料なども底を突きつつある可能性がある。なんで、皆には島に食材を運んで貰い、ついでに商船を護衛し、リッツパークに帰ってきて欲しい、って訳だ」
「人助けをして、ついでに海洋王国の貴族にも恩が売れる……とまぁ、一粒で二粒美味しいって感じだろう。荒天の海を進む必要があるが、しっかりと準備していけば問題無い筈だ。という訳でよろしく頼むぜ?」
 と、ショウは軽く皆の肩を叩いて送り出すのであった。

GMコメント

 皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)です。
 海洋王国にとって荒天は大変ですよね……そんな荒天に晒されて困っている通商船の船団守護の依頼となります。

 ●成功条件
   無事に『アルフィナ島』に行き着く事、そしてアルフィナ島から商船団を護り、リッツパークに戻ってくる事です。

 ●情報精度
   このシナリオの情報精度はBです。
   依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 ●周りの状況
   『アルフィナ島』の周りは強風と雨が降り続いており、かなりの荒天です。
   そんな海域を進むためには、ある程度の大きな船と、しっかりとした操舵能力が必要となりますので、その準備は怠らないようにして下さい。
   又商船団ですが、船の数は3艘で、中規模の船となっています。
   彼らの船が荒れた海域に無防備に晒されれば、程なく転覆してしまうのは間違いないので、船を内側に護る、など荒れた海を護りながら進んで行く必要があります。
   尚、商船団達の操舵能力はある程度のものなので、荒れた波飛沫を抑えれば護られながら航海する位は可能です。
   ただ、荒れた海が静まった後には餌が豊富にあるようで……それを狙う海獣がいますが、戦闘能力はそこまで高くありません。
   寧ろ荒天の対処をどうするか、が今回のポイントとなります。(荒天に飲まれたら島にも辿り着けませんので……)


 ●討伐目標
   静まった海に現れる海獣は、イカが巨大化したクラーケンが4匹です。
   巨大化しているとは言え狂王種化まではしておらず、船に絡みついて鎮める……とかまでは不可能です。
   ただ波に乗って船に乗り込んできて、イカの腕を絡みつかせて拘束したり、そのイカ腕に電流を流して痺れ効果を付与したり、と強くはないけれど厄介な能力を持っています。
   ただ戦闘能力はそこまで高くないので、プレイングにそこまで裂かずとも問題ありません。

   それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • 風を渡る鳥の如く完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年05月02日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
海音寺 潮(p3p001498)
揺蕩う老魚
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
玖珂・深白(p3p009715)
キリングガール

リプレイ

●荒天満帆
 ネオ・フロンティア海洋王国。
 数多の島々と、広大な海が広がり、各々の島の特産品が交易の為の重要な品物の一つとなる訳で……その間を取り持つのが、特産品を島々に売り歩く通商船。
 そんな通商船……いや、海の上に浮かぶ船を目の当たりにした『キリングガール』玖珂・深白(p3p009715)が。
「おお、海よ!! あははは、初めて見たわ! これが海なのね。どこまでも広がる青、青、青! 素敵だわ、こんなに美しい風景が世界にはあったのね!!」
 服から水を滴らせながら、大きな身振りで、心の底から感動している様に振る舞う深白。
 そんな深白に『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)が。
「ん……おまえさん、もしかして海を見た事が無かったのか?」
 と問いかけると、全力で頷き。
「うん。アタシの居た世界じゃ『海』ってゆーのは一面に広がる潮の風景を差す言葉だったのよね……なんでも百年前の戦争で干上がったとか。ま、そんな話はどーでもいいの。とにかくアタシはこの海が気に入ったわ!」
「そうかい……ま、海を気に入ってくれるなら、それでいい」
 縁は深白の言葉にニヤリと笑う……だが、次に深白から出て来た言葉は。
「それで、この海ってどうやって移動するのかしら? 歩けないのはさっき試してきた所よ」
「……おまえさん、船って知らないのか? 普通、こういう海は水の上に浮かぶ船を使って移動するんだぜ?」
「船……? 水の上に浮かぶ……? あなた大丈夫? 人間が沈むのにあんな大きい物が浮かぶわけ……」
 ないじゃない……と言おうとしたが、縁が指指した先には堂々と浮かぶ大小様々な船の姿。
「……浮かぶ……浮かんでるわ。ぷかぷか浮かんでるわ。あれも魔法ってやつなの?」
「魔法じゃないさ。浮力ってので浮かんでるのさ」
「フリョク……? ……何を言ってるのか全くわからないわ……解らないけど、とにかく凄いって事だけは解ったわ……」
 船が浮かぶ、という事に軽いカルチャーショックを受けている深白。
 ともあれ船、いや、通商船としては、海洋貴族らから珍しい品を持ち帰ってくるのも一つの仕事な訳で。
 そんな貴族の命を受けた通商船が、荒天により島から出れないで居る、という渡り鳥からの書簡が今回の依頼な訳で。
「ふむ……お天気は気まぐれな分、こういう事も起きてしまうのが困りものじゃな」
 顎に手を当てながら肩を竦めるは、『揺蕩う老魚』海音寺 潮(p3p001498)。
 海洋に住む者達からすれば、穏やかな時もあれば、今回の様に荒れ狂う時もある。
 海の男はその天候の変化を肌身で感じながら、いかに安全に海路を進むかを判断するもの。
 本来であれば、嵐が収まるまで待つのが定石では在るが……今回は時間的猶予は残されて居なかった。
「このような荒天でも、貴族は待ってなどくれないからな。話のわかる者もいるが……どうだった?」
「うむ……依頼主の貴族に聞いては見たが、そんなの知るか、期限は期限じゃ、守らねば通商船としては失格、と言い切られたわい」
「そうか……今回はそういう手合いではなかったか」
 『絶海武闘』ジョージ・キングマン(p3p007332)の問いかけに対し、実際にその貴族に協力を依頼に向かった潮は深く溜息を吐く。
 そして『Meteora Barista』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)と『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は。
「確かに商売人にとって信用は大事だが……悪天候は仕方ないんじゃないかなぁ? 命有っての商売だろうに……まぁ、我々がそれを言うのか、というツッコミには反論出来んが」
「そうだな。荒天が続け場海はやはり厳しいよな……でも、何とか出来るように頑張りたい所だね」
「ああ。請け負った仕事は全力で頑張るしかないな」
 そんな仲間達の会話に『若木』秋宮・史之(p3p002233)が。
「そうだね。女王陛下の臣民が困っているんだ。渡ってやろうじゃないか、この海をさ! 今迄に海龍とだって戦ってきたんだ。荒れた海には馴れているさ。勿論、自然の驚異には万が一が付きものだから油断は出来ないけどな」
 と言うと、それに『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)と潮が。
「そうね。我々の持つ小型船じゃあっという間に沈んでしまうでしょうし……何処かから大型船を、しかも荒天に耐え得るようなものを借りないといけませんね」
「うむ。先ずはわしらが操舵する船を手配せんとな」
 そんな仲間達の言葉に、縁が。
「そうだな。荒れた海を進む方法、か……」
 と一言を零した後、海を眺めながら。
「……あの日、一人の女の命を奪って得たのが、誰かの命を救うモンになるとはな……とんだ皮肉だと思わねぇかい? ……なぁ、リーデル」
 勿論ここに、リーデルという名の者は居ない。
 ただ、彼にとって大事な人、であるのはその口ぶりからは間違い無いだろう。
「……何だか色々思う所はあるみたいだが、兎に角船を手配しようか。通商船の危機だからこそ、所属する港湾組合とかなら話を聞いてくれるんじゃないか? これをちらつかせば、多少の便宜は図ってくれるだろうさ」
 史之は手元の『舵輪のカフリンクス』をさり気なく見せると、それにウィズィと縁も。
「そうね。私も少しは海洋に名が売れてるだろうし、それにこの勲章もある。去年の大戦で海洋国をまもった騎兵隊のウィズィと言えば知らない碑とは居ない……ってのは言い過ぎかもしれないけど、海の仕事をしているなら聞いた事は有るはずだわ」
「ああ。んじゃ、取りあえず史之、案内して貰っていいか?」
「解った」
 と、海洋に名の通った縁、潮、史之、ジョージ、ウィズィ、モカの六人は港湾組合へと向かう。
 一方でイズマは。
「俺は操舵や航海が得意な訳じゃないから、準備とかそっちの方をするか。深白さんも手伝って貰っていいかな? 荒天に数日見舞われているアルフィナ島には食べ物とかも不足しているだろうから、その辺りも一緒に補給してあげたいからね」
「ん、いいわよ!」
 快諾し、イレギュラーズ達は二手に分かれて動き始めた。

 そして港湾組合にて縁が開口一番。
「ちっとばかりアルフィナ島に用があってな。あの波風に絶えられるような、タフな船を探してるんだが……貸してくれる奴はいるかい?」
『タフな船……って、あの荒天の中を進む気か? 馬鹿いえ、並大抵の船じゃ波に揉まれて海の藻屑だぞ!?』
「ええ。荒天なのは承知の上です。ですが、魔種やあのリヴァイアサンと嵐の中で戦った私達です。十夜さんや秋宮さん達、万全のメンバーで挑みますから……どうか、船を貸して頂けませんか?」
「確かに並大抵の船と、並大抵の船員じゃそうなるだろう……だが、ここにいるのは、絶望の青を生き延びた大号令の立役者達だぜ? そいつらを乗せたとなりゃあ、その船にも箔が付くと思うんだがねぇ……?」
「そうじゃ。それに何か宣伝して欲しい事柄があるのなら、注目されるこの機会に一緒にやっても良いのじゃよ?」
 ウィズィ、潮が説得に交渉……そして譲歩を織り交ぜていく。
 各々が今迄に築いた海洋の名声をフルに活用し、港湾組合に大型船の貸し出しを強く依頼する。
 流石に港湾組合の者達も、ただ単純に首を縦に振る様な者達ではない……沈没すれば、かなりの損失になるのは間違い無いだろう
 ただ、貸す側からすれば『箔が付く』『宣伝にもなる』『誰もが躊躇するような荒天でも、乗り切ったという事実』という船を持っているという事は、金では買えない大きな魅力にもなる。
 だから、すぐに結論がでない、と一端保留にしようとする港湾組合の者達。
 そこに念を押す様に。
「解った……私の店が保証人となろう。ほら、これが私の名刺だ」
「それでも不安なら、ちょっと造船所の人を紹介して欲しいわ。荒天でも船が沈まないよう、簡単だけど効果はある船の補強やスタビライザーを取り付けさせてもらうから……勿論それはそのままお返しするわ」
「そうだな。その辺りの費用はこちらで持たせて貰う」
 とモカとウィズィが言葉を加える。
 工事費用も負担してくれるなら……と揺らぐ心。
『……解りました。大型船、3隻貸し出しましょう』
 そう彼らも覚悟を決め、船3隻の貸し出しを決める。
 その船へ縁、潮、ジョージが分乗し、イズマと深白が用意した食料と、バラストを船倉に摘んで安定する様にバランス調整。
 そして。
「良し。それじゃわしも久しぶりに船の操舵をやろうかのう。安全の為、特に用の無いものは甲板には出てはいかんよ」
「解った、後は信号弾と灯火信号を決めておこう。荒天では、互いの声など届かんからな」
 と潮の号令と、ジョージの船間の通信方法を取り決めると共に、イレギュラーズ達の借りた三隻はアルフィナ島へと針路を取るのであった。

●荒天の先に
 そしてイレギュラーズ達はアルフィナ島に接近。
 次第に空は暗くなり……強い波が船を襲う。
「これは凄い波だな……」
「ああ。しっかりと掴まるんだ! 振り落されないように注意しな!」
 イズマにモカが発破を掛ける。
 そして大きく揺れる船……これが小型船だったら、高波に攫われ、あっという間に波に呑まれていただろう。
 ただ、今回調達出来たのは大型船なので、高波も船を飲み込む迄の高さには到達しない。
 更にはハッチなどをしっかりと締めて、船体に水が入り込まないようにした結果、浮力を失う様な結果にもならない。
 そんなイレギュラーズ達の事前準備のお陰で、揺れに揺れたものの、何とかアルフィナ島へと三隻辿り着く。
『……でっけぇ船だ……これ、もしかして……』
 入構してきた船を見上げた男が呟く。
 船を接岸し、イレギュラーズ達は一端下船すると共に。
「この手紙、送った人はいるか?」
 と史之が男に尋ねると。
『……ほ、本当に来てくれたのか!? す、凄え……!! お、俺達がその手紙を出した商船団です!』
 感動し、頭を下げる商船の船員達。
「そうなのね。うんうん、大丈夫。アタシ達が来たからには、大船にのったつもりでいていいわよ!」
「そうだな……貴族の積み荷を至急運ばなければならないんだよな?」
 深白にジョージが問いかけると。
『は、はい! でも私達の船ではこの嵐は乗り越えられず、途方に暮れていました……猶予もあまりありません。来るなりすぐで申し訳ないのですが、リッツパークへ護送して頂けませんか!?』
「勿論、その為にこの島に来たんだ。それじゃ、イズマ、持ってきた食べ物をさっさと降ろして、リッツパークに帰るよ」
「そうだね。島の人達も通商船が止って苦しかっただろうし……後もう少しすればきっと天気も良くなるはず。それまでの間、頑張って耐えて欲しい」
 モカにイズマが頷き、そしてイレギュラーズと通商船の船員達総出で、船倉の食料、飲料を島に運び出す。
 勿論その分、船のバランスが変わるので、バラストを、荒海でも安定する様に配置し直し……準備完了。
「それじゃ、俺達の三隻の船で、通商船を囲む様な陣で行くよ。大丈夫……ここに集まっているのは海が得意なイレギュラーズたちばかりだから、信頼してくれていいよ」
 と史之が胸を叩く。
 そしてジョージやウィズィが通商船に積み込まれた積み荷の固定に問題無い事を確認し……全ての準備が整うとすぐに、アルフィナ島を発つ。
 とは言え港を出ればすぐに、荒れ狂う波が左から、右からと次々襲いかかる。
『ひ、ひええ……ほ、本当に大丈夫かよぉ……』
 少なくとも波が直撃すれば、ひとたまりもないだろうというのは誰でも解る。
 でも、両脇及び針路前方には、イレギュラーズ達の操舵する大型船。
 鏃の外側にイレギュラーズ、内側に通商船という陣形を取る。
 ……更には縁が針路先陣を進み、周囲の波の具合を常にチェック。
 両脇には潮とモカが操舵する船で航行し、波を受ける時は、船の舵を左へ、右へととることで、船の角度を調整し、波の勢いを弱めつつ、更に内側の商船団への揺れを最小限にする様にする。
 更に追い波が来た場合は、波の昇り斜面に船を張り付かせるようにしてやり過ごし、下り斜面は速度を落としてブローチングに巻き込まないように注意。
 そんな縁の航行を、他の仲間達、さらには通商船の船員達もしっかりと習い、荒波を一つずつ、確実に越えていく。
 ……そんなイレギュラーズ達の航行に、通商船船員達は。
『すげぇ……イレギュラーズって、こんな事も出来るのかよ……』
 と驚愕するが、それにウィズィが。
「勿論上手い人、下手な人も居るわよ。でも今日来た私達は歴戦の猛者達なんだから、絶対に大丈夫です!」
 と彼らに『自分達がいれば大丈夫』と思わせるように、笑顔で声掛け。
『……あ、ああ。本当、助かるよ!』
 それに目を煌めかせながら、頷く通商船の船員達。
 勿論、スピードは通商船がついていける位のスピードで全速前進。
 通商船の船員達が疲労したらば、ウィズィ、史之、ジョージが操舵を変わり、昼夜を問わずして荒れた海域を進んでいく。
 一晩を超えて……周りが明るくなりはじめた刻。
 空からは燦々と輝く陽射しが差し込み……一昼夜荒れ続けていた波も、ささやかなさざ波位の大きさに。
『……こ、超えたのか……あの、嵐を……!?』
「ん……そうみたいね! ふふ、流石はアタシ達ね!」
 深白が胸を張り、通商船船員達に頷く。
 ……だが、一息着けるのも僅か。
 通商船に向けて海中から忍び寄る、四匹の影。
「今度は巨大イカか!」
「ああ……来るぞ!」
 イズマとその影を察知した史之が信号弾を放ち、周りの船に合図。
 それにすぐ、縁、潮、モカが急ぎ、通商船へと飛び移る。
 だが飛び移ってきたイレギュラーズには大して注意を向けず、巨大イカ、いや、クラーケン達は通商船に脚を伸ばし、乗り込んでくる。
 そんなクラーケンに対しジョージが。
「よし、行こう。心配することはない。絶望の青よりは、容易い道行きだ」
 と早速名乗り口上を上げて、クラーケン達の怒りを買う。
 更に縁がイカの陣に攻撃し、こちらも怒りを惹きつけていく。
 そんなイレギュラーズ達をターゲットに脚をビタンビタンと叩きつけ、船体に傷付けようとする。
 勿論船体に穴が空いたら、沈没してしまうだろう……だから。
「ええい退けぇ! こっちゃ疲れてんだ!!」
 と、ジャナフからラカラビを放ち、船に取りつこうとしているクラーケンをそのまま海へと吹き飛ばす。
 海に落ちただけで死ぬような真似にはならないが……船への被害は取りあえず防御出来る。
 だが、まだ取り憑いているクラーケンには、先陣を切ってモカの胡蜂乱舞脚に、イズマの黒顎魔王、史之のギガクラッシュ、そして潮のサメ手刀を同じクラーケンに立て続けに放つ。
 対しクラーケンのイカ腕を絡みつける攻撃や、電流を流しての痺れ攻撃を仕掛けてくるが……どれも致命傷には至らない。
 そんな手練れなイレギュラーズ達の猛攻が確実にクラーケン達の体力を削り去り……クラーケン達は数刻の内に、全て動かず干上がっていく。
 そして。
「ふぅ……クラーケンか。生憎と俺は食えねぇが、この倒したやつらも港に持って帰りゃあ、そこそこいい手土産になるんじゃねぇかね?」
「イカかぁ……うーん、食べられるかな?」
「……進んで食べたくはねぇな」
 縁に肩を竦めるイズマ。
 ともあれ、クラーケンを倒したイレギュラーズ達。
 約束の時間までは残り後少し……再度それぞれの船へと乗り込み、リッツパークへと急ぐのであった。

●晴れの狭間
『ふぅ……本当にギリギリだったけど、どうにか無事に届けられたよ。本当、イレギュラーズの皆さんには感謝しても仕切れねえ……ありがとうよ!!』
 そしてリッツパークに着いたイレギュラーズと通商船。
 貴族の申しつけの品を、急ぎ貴族の館へと運び、出て来た船員達は……目を見開き、興奮しながらも、イレギュラーズ達に深く頭を下げる。
「ふふふ。そうね、もーっと感謝してもいいのよ!! ほら、ほーら!」
 と深白が目一杯胸を張ると、それに船員達は煽てに煽てて……更に気を良くする深白。
 ……そんなやりとりを眺めながらイズマが。
「しかし……本当は、嵐が収まるまで待ちたかったよな。でも急ぎだとか信用だとかも解るし……取りあえず今回は仕方なかったのかな?」
 と言うと、モカとジョージが。
「そうだな。商売人にとっては、信用は大事だ。信用は金で買えるようなものでもないしな」
「ああ……築き上げるのに長い時間を必要とするのに、失うのは一瞬……まぁ悪天候でももってこいという貴族もどうかとは思うけどな」
「そうだね……いつか恨みを買って、暗殺とかされるかもな」
 肩を竦めるモカ、そしてウィズィが。
「とにかく無事に荷物も届けたわけだし……船にも応急処置しておいたから、後は船の返却ね」
 と言うと、史之が。
「ああ、それじゃ行こうか」
 と、一抹の不安を感じているであろう港湾組合へと赴くのであった。

成否

成功

MVP

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍

状態異常

なし

あとがき

通商船守護依頼、参加頂きありがとうございました。
今回は戦闘より準備が大事という依頼でしたが、海洋の名声トップランカーの皆様が参加されていたので、無条件ではないですが大型船も貸さざるを得ないだろう……と判断させて頂きました。
とは言えこんな無茶な要求する貴族さんにも、考え直して欲しいところですね……。

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