PandoraPartyProject

シナリオ詳細

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●Everyone doesn't remember you.
 ――ある少女の嘆き。

 異変は突然始まった。
 誰も私を覚えていない。嘘みたいだけど本当だ。
 私はアイドルをしている。誰もが名を知るアイドルグループ、そのセンター。自分で言うのもなんだけど、国民的センターだったと思う。
 コマーシャルにも引っ張りだこ。テレビのオファーも絶えないし、お仕事もライブも、ドラマの主演だってしていた。
 顔立ちも悪くはなかったし、正直人気なアイドルの一人ではあったはずだ。
 けど。
 ある日突然、世界は変わってしまった。
 朝起きて、マネージャーさんとの打ち合わせにいくために会社に行ったのだ。
 受け付けにカードを翳した。

『登録されていないカードです』

 無慈悲な電子音は、私の持つカードが未使用の新品だとでも言いたげに、エラーばかりを呟いた。
 降りてきたマネージャーさんの名前を呼ぶ。此処を通して欲しいと。けれど。返ってきた返事は、ただひとつ。

「……部外者は立ち入り禁止ですが」

 怪訝そうに眉を潜め。彼は呟いた。
 デビュー前からの付き合いだった。仏頂面の彼と打ち解けるのは時間がかかったが、その時間の分よき相棒として働いていた。

 なみだがこぼれた。
 嗚呼。何が起きているのだろう。
 ドッキリなら、どれほどよかったか。

 けれど。ドッキリでは、済みそうになかった。

●忘却
「貴方は誰ですか」

「なんて、言われたこと無いよね」
「うん! 言われたら悲しくなる」
「だね。記憶喪失ならともかく、あまり言われる機会がないと嬉しい言葉だ」
 カストルとポルックスは目配せして。ロストアイドルと名付けられたその本を二人で覗き込んでいた。
 彼等曰く、記憶から消えてしまう物語なのだと言う。
 友達、先生、同僚、先輩後輩、恋人、家族ですら。
 誰も彼もが名前も、存在も、繋がりですらも忘れてしまうと言うのだ。
「カストルのことは忘れない自信があるわ!」
「僕だって、ポルックスのことは忘れやしないよ」
「……って言っても、この本の中じゃ忘れちゃうの。嫌ねえ」
 ぷう、とポルックスは頬を膨らませ。青い瞳に不満の色を滲ませる。
「でも、そんな世界でなら、何をしたって誰にも迷惑はかからないんだ。それはそれで面白いんじゃないかな?」
「たとえば?」
「おやつのつまみぐいがし放題!」
「! 素敵!」
「……とまあ、こんな風に考え方次第。何を楽しむかも、何を思うかも君次第さ」
 貴方だけが失われる世界。
 その果てに貴方は、何を望むだろう?

NMコメント

 染です。何だかよく会いますね(すっとぼけ)
 ラノベ頑張るぞ月間。張り切ってます。
 それでは今回の依頼の説明に入りましょう。

●依頼内容
 他者から自分への記憶が失われた世界で、一日を過ごす。

 嘆きの少女には会うことはできません。

●ロケーション
 混沌風世界。
 貴方は見慣れた風景の中で、自分だけが異物だと気付きました。
 人々の記憶に貴方は存在していなかった。そういう風な世界です。
 詳細な場所(ギルドや自宅、国家など)の名前は出せますが、相手(恋人さんやご家族さん、友人さんなど)のお名前は濁して書く形になります。(プレイングには出してもらって構いません。)

 あなたは何を思い何を感じますか。
 また、何をしてみますか。

 思い出すことは、あるのでしょうか。

●プレイングについて
 文字数はある程度埋めて頂いたほうが、齟齬無くスムーズにリプレイが作成できるかと思います。
 アドリブはある程度入ります。
 アドリブは控えめが良い!という方は、その旨を明記してください。

●サンプルプレイング
 ……ねえ、どうして。おかあさん、わたしだよ?
 あなたの娘! あなたがお腹を痛めて産んだ子でしょ!?
 ねえ、なんで……ふ、不法侵入なんかじゃない。お母さん!お母さんってば!!

 以上となります。
 ご参加、お待ちしております。

  • 完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年05月09日 22時02分
  • 参加人数4/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ソフィラ=シェランテーレ(p3p000645)
盲目の花少女
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女
白夜 希(p3p009099)
死生の魔女
ハク(p3p009806)
魔眼王

リプレイ

●Don't forget me.
 『盲目の花少女』ソフィラ=シェランテーレ(p3p000645)いつものように、散歩(まいご)をして。
 少し遠回りにはなってしまったけれど。彼女の目的地であるローレットの扉を、その手(ひとみ)が撫ぜて気付いた。だから、散歩(まいご)は終わったのだと。安堵して、扉を開けた、つもりだった。
「こんにちは。今日は、新しい依頼は、入っている?」
「? ええと……依頼人の方ですか?」
「あら……あら。ごめんなさい、入るところを間違えてしまったみたい」
 騒がしい声。聞きなれた声。軋む床。その、総てが、『間違いではない』と示すように。それは聴きなれていた声であり、音であり。
 だから。少しだけ、戸惑ってしまった、なんて。

 ローレットを後にする。きっと入る場所を間違えただけなのだ。この近くにローレットはあるはずだ。
(いつもの散歩と一緒、よ)
 皆の邪魔にならないように。皆の様子を伺いながら。
(そもそも私は元々この世界にいなかった存在だもの。私のことを知らないのが本来の世界の姿よ。それに、)

(皆が幸せならそれで、十分)
 皆の幸せを願うことが私の役目なのだ。だから耳で聞いて、皆が平和に過ごしているのだと伝わってくるたびに、心がほっとして。
「……どこに、行こうかしら」
 暗闇に取り残されたような、心地。
(皆が幸せならそれで……良いの。良かったの。そうでしょう? 良かった、はずなのに、)
 壁を伝う手が、落ちる。
 ぽっかりと胸の中に開いた穴が、ずきずきと疼きだす。

 平等に愛さなければいけない
 特別を作ってはいけない
 そう思うことで心を守っていたのかもしれない。傷つくことを恐れていたのかもしれない。
 只。混沌に落ちることで、その心は変化を受け入れ始めていた。
(いっそ、私からも消し去ったくれたなら)

(皆が忘れた思い出は私の中にある。そこに在った想いも。それを自分しか知らないのは、あまりにも苦しい)

 ソフィラをこんなふうにさせた『あの人』だって、きっと覚えていない。確認するなんて、できない。
 覚えのある匂い、音。それら全てから逃げるように、人込みを掻き分けて走り出す。見えないことが救いだった。きっと、知り合いの顔が見えてしまったなら、さらに苦しくなってしまうから。

 願わくば、最初から誰も、私を知らない場所へ。

(情を湧かせてはならない、なんて……手遅れね。物語の中で自覚するとは、思わなかったけれど)

 嗚呼。こんな気持ち、知りたくなかった。

●諦念の中で
(今まで積み重ねてきた名声がパーか……。 でも悪名もチャラになるし、これで良かったのかもしれないわね)
 『汚い魔法少女』メリー・フローラ・アベル(p3p007440)は首を傾げる。『お嬢ちゃん、お家にお帰り』とあしらわれて終わってしまったローレットの依頼。もともとはメリーが入っていた筈なのに、どういうわけか別人が宛がわれていた。わけがわからない。
 とはいえ、それでなりたつのならばそれが結果というもの。
(どう頑張っても、この世界の主人公にはなれそうもないし、かえって諦めがつくってものよ)
 仕方ないので、掌にのせられた飴玉でも舐めながら散歩をすることにした。
(客観的に見て自分が主人公の器だとも思えない。
 能力はイレギュラーズの中では特別優れているわけじゃない。
 人格は論外、改善できないしする気も無い。それに、)
 がり、と飴玉を、噛む。
(忘れられたくないほど親しい相手も居ない)

 人を沢山殺した。
 誰かの為に戦ったこともあった。
 その報いが、あるいは答えがこれであるというのならば。それを受け入れるまでだ、とメリーは俯いて。
(わたしは、昔特別な能力を持っていただけの、ちっぽけな人間)
 それで十分だ、と。今は思う。
 一度目の生はくだらない警官に胸を撃たれて死んだ。
 二度目の生は此処で必死に生きた。そして、メリーに関する記憶だけが、世界から抜け落ちた。
(……災難ね。ほんとうに)
 がり。
 飴玉は口の中で砕けて、とけて、消えた。
 けれど。此処の中の蟠りは、簡単に消えそうになかった。

●ワスレナグサ
「ここは本当に本の世界?」
 『メサイア・ダブルクロス』白夜 希(p3p009099)はそこに広がるローレットの世界に瞬きふたつ。つい、混沌では常にしていた『いつも通り』を行ってしまう。
 ドン
 けれど。今日はなんだか。
 ドン
 やけに。
 ドン
(今日はよく人がぶつかってくる……ってももう慣れた。どうせギフトのせいでしょ、いい加減なれた)
 ドン
 鳩尾に肘が入る。流石にそれは痛い。イラっとして振り向いた希だが、肘撃ちしてきたイレギュラーズは仲間と談笑しながら去って行った。わけがわからない。
(……わざと?)
 他の人間と見分けがつかない、問いただすのは気が引ける。
 いや、違う。
(問題は……わざとでも、偶然でも、私自身に肘撃ちされる理由があったということ)
 なら問いただすことに意味はない。はぐらかされるか、軽く謝られておしまい。時間の無駄だし、気にしないほうがいいだろうか。
(もう少し服を派手にする? 白は目立つと思うけど……黒よりは)
 仕方ないと割り切れることではないが、小柄な希が見えなかった、と言われてしまったらどうしようもない。
 溜息混じりに依頼書を一つ持ってカウンターへ赴く。
「あ……」
(ああ、うん。ギルド員のこの顔……数回しか会ってなかったり、しばらく会わなかったらこう。まぁ4月は休んでたし、仕方ないか)
「白夜希」
「いえ、あの……どちらさまですか?」
「!」
(そっか。ここは忘れられる本の中……? …………本当に? だって現実と何も変わら……)
 握った依頼書はくしゃくしゃになった。すみません、と呟いたのが聞こえたのかすらわからない。ただ、其処に居るのはやけに吐き気がして、胸に言い表しがたい感情が充満して、其処にいることを本能が拒絶して。依頼書を置き去りに、希はローレットを飛び足した。

 夜。
 行く当てもなくローレットの屋上へと至った希は、街灯りをぼんやりと眺める。
(他の参加者にとってはドッキリ。でも私にとっては現実と大差ない。
 感覚が麻痺してた。この世界に、私の居場所なんてとっくになかったのかも知れない)
 遠くに馴染みの顔が見える。
 あのカチューシャは。大剣は。嗚呼。
 妬ましい。
 誰からも忘れられることはないだろうと、空に独り輝く満月を憎々し気に睨んだ希は、吐き捨てる。
「もうこんな世界、壊れていい。私をここから出せ。壊してあげようか?」
 誰もお前を見やしない。
 月あかりすら希に触れていないような気がして、希は路地裏へと走った。

 こんなにも苦しい夜は、いつぶりだろうか。


 幻想の東部、バルツァーレク派のバロール子爵領の一角に、『魔女見習い』ハク(p3p009806)は師匠『時操の魔女』であるアガレスと一緒に生活をしているのだと言う。
 彼女は子爵家の顧問魔女、相談役のような地位の方だから大変な立場なのである。元気の出る朝食を作ろうと、ハクはエプロンを身に纏った。
(最初の頃は失敗ばかりだったですが、最近は美味しく作れる様になってきたです! 今日もお師様に「美味しい」と言わせてみせるです!)
 もう朝食は出来た。さあ、扉を開けてお師様を起こそう。
 扉を開く。
 拘束を軸とする体術が、ハクを襲った。
「ど、どうして攻撃するですか、お師様! ハクはお師様の弟子のハクです!」
 まるで知らない人を見る目でハクを見つめ。攻撃してくる彼女に思わず麻痺の魔眼を使って逃げ、離れる。敵にでも襲われたのだろうか、あるいは憑き物? どれも疑いたくはないが、寝込みを襲われたならあり得ることだ。だが、彼女は至って正気に見える。
「どういうことなのです? ハクの魔眼の事を教えてくれたのはお師様なのに」
 まるで怨敵を見るかのように睨み付けてくる彼女に、ハクは震えが止まらない。
(どうして? そんな目で見るのです。貴女がハクを助けてくれたのに…あの魔女が作った蠱毒地獄から救い出してくれたのに…そんな目で見ないで…ハクは…)

 違う。

(…『私』は何も悪くない。悪いのは…この世界だ)

 ぐちゃり。

 赤い。赤い。
 そこに広がったのは、肉片と赤い水たまり。
 その中央に、ハクはいた。
『お師様だったモノが転がってて…悪ぶってるけど優しい子爵様に優しくしてくれる街の人達だったモノも転がってて…またやっちゃった…でも仕方ないよね、『私』を拒絶するこの世界が悪いんだから…)
 ぴちゃ。ぴちゃ。
 赤い水たまりを見るのももう慣れた。
 心は痛まない。拒絶してきたのはそちらなのだから。
 この力だって使いたくなかったのに、使わせたのはそちらだろう?

 嗚呼。ずきずきと。魔眼が、疼く。

成否

成功

状態異常

なし

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