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シナリオ詳細

再現性歌舞伎町1980:カチコミデスペラード

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●再現性歌舞伎町
 ここは弾けぬバブルの街。享楽と快楽が永遠に続く街。
 誰もが浮かれシャンパンを垂れ流し、金の腕時計をして札束を空に撒いてはブランドスーツを着潰していく。
 オープンカーを乗り回しアタッシュケースめいた携帯電話を持ち歩くその街は、『再現性歌舞伎町1980地区』と呼ばれていた。
 だが彼らは知らない……いや、知ろうとしていないのだ。この街に溢れる金もブランド品も何もかもが泡沫無限の幻術でしかないことを。
 そしてその幻術を支配する力がこの街に点ざ――

「じゃああっかましいッ!」
 眼帯をつけたテクノカットの男が、いままでナレーションを読み上げていた安全ヘルメットの男を蹴り飛ばした。ホゲェと叫んですっ飛んでいった男が、ビル三階の窓を突き破って夜の街へと落ちていく。
 砕け散るガラスがヒョウ柄のジャケットへとふるが、男はそれを払いのけてからペッとつばをはいた。
「今からオネーチャンたちに景気のイイ話しよーとしとるんやないかい! そーゆー細っかい事はどーでもえーんじゃ!」
「でもコレ説明しないと初見のイレギュラーズさんにはわかんないですよお」
 三階から突き落とされたわりに秒で戻ってきた安全ヘルメット男が事務所の扉をがちゃっとあけて普通に入ってきた。
 そして『台本』とかかれた本のページをめくり始める。
「えー、この街には三つの組織が――」
「フンッ!」
 振り向きざま、テレビの横に立てかけておいたショットガンをカウボーイブーツのつま先で蹴り上げて回転させると器用に柄をキャッチ。一瞬で狙いをつけて安ヘル男の顔面へぶっ放した。グヘェと叫んで部屋の外へ吹き飛んでいく安ヘル男。
「撃つときは撃つっていってくださいよお」
 そして安ヘル男は鼻血をティッシュで拭いながらフツーに戻ってきた。秒だった。
 彼の様子になぜか満足したらしい男……彼の名を、そろそろ紹介せねばなるまい。

 ――九美上興和会 二次団体 鮫島組 組長
 ――鮫島 五浪

 肩にショットガンを担ぐようにして、鮫島はニイッと笑った。
「待たせたなオネーリャン。カチコミやぁ」

●黒鴉会へのカチコミ
 ここ再現性歌舞伎町1980へ流れ込んだ『関西黒鴉会』はウォーカーを中心とする極道組織である。
 彼らは土地売買の激しい再現性歌舞伎町1980の特性を逆手に取り無数の土地を買いあさり、そして抱え込んで自らの城として歌舞伎町ヒルズタワーを建設しようともくろんでいた。
「ワシのシマで、ワシらっちゅう優秀ぅ~な企業――有限会社鮫島組建設があるっちゅうのにナメたマネしおってからに!」
「それにあいつら、家族を人質にとって土地の権利書を奪ったり店にホームレスを居座らせて追い出したりとやりたい放題なんです」
 怪我がすっかり回復している安ヘル男がヘルメットをきゅっきゅとなでながら苦々しい顔をした。
「確かにこの街はマボロシです。シャンパンなんてほんとは水だし、金の腕時計も偽物だ。調子に乗って乱痴気騒ぎをする馬鹿なやつばっかりだけど……皆根は良い奴らなんです。踏みにじっていいわけじゃない」
「おう……せやな」
 急に真面目なことを言い出した安ヘル男へ振り返り、細かく頷く鮫島。
「まあ、そういうことや。
 この街っちゅうんは外から甘ぁい汁を吸いに来る虫がよお出よる。
 そういう連中をぶちのめして追い出したるんがワシらの仕事でもあんねん。
 ――そこでや!」
 鮫島はやっと調子が戻ってきたとばかりに、天井めがけてショットガンをぶっ放した。
「今夜ワシらでぱーっと黒鴉会の全部のビルに一斉にカチコミかけたるっちゅーわけや! 面白くなってきたでぇ!?」
 偶然あたった電灯が粉砕され、残る電灯も明滅を始める。
 割れた窓から吹き込んだ風が鮫島のジャケットを大きくなびかせた。
「ゼファーはん、繰子はん。そっちのチームは任せたでぇ」

 同じく明滅する明かりの中で、呼び出された八人のイレギュラーズの姿が浮かび上がる。
 道頓堀・繰子(p3p006175)。
 ゼファー(p3p007625)。
 そして仲間達の姿が。

GMコメント

●注意事項
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『練達』における名声がマイナスされます。
 又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。

■オーダーとシチュエーション
 皆さんは関西黒鴉会の買収した建物に突撃をかけ、部下すべてをぶちのめした後に黒鴉会幹部である蔵岩という男をぶちのめすことになります。
 鮫島の兄貴や安ヘル男たちは別のビルへの襲撃にあたっているので同行しませんが、代わりにピンク色のダンプカーを貸してくれました。よっしゃあ突っ込め!

■特別ルール:ヒートプレイング補正
 プレイングでかけるアクションが派手であればあるほどステータスのクリティカル値に補正がかかります。
 ガンガン派手に格闘しよう! その辺にあるものを拾って殴ろう! テレビは鈍器にしよう! 時にはあえて素手で突っ込もう! 銃撃を避けながら突っ込もう! そしてたまには仲間とコンビネーションアタックを決めよう! 内装はこの際残らずぶっ壊そう!

■エネミーデータ
 黒鴉会の構成員は大陸からの寄せ集め勢が多く、嫌がらせ要員が大半を占めるため戦闘力がとてもザコいようです。
 が、一部のメンバーはガチめの戦闘力があったり、銃の腕が凄かったり、ドスの使い手だったり、ソファや棚を振り回してきたりします。
 そういう奴こそヒートプレイングでぶちのめしていきましょう!

 建物の最深部には幹部である蔵岩がおり、彼は腕利きの部下達と共にあなたを撃退しようと迫るでしょう。が、いっそ事務所の内装もろともぶち壊してやればきっと降参するはずです。

●再現性東京(アデプト・トーキョー)とは
 練達には、再現性東京(アデプト・トーキョー)と呼ばれる地区がある。
 主に地球、日本地域出身の旅人や、彼らに興味を抱く者たちが作り上げた、練達内に存在する、日本の都市、『東京』を模した特殊地区。
 その内部は複数のエリアに分けられ、例えば古き良き昭和をモチーフとする『1970街』、高度成長とバブルの象徴たる『1980街』、次なる時代への道を模索し続ける『2000街』などが存在している。イレギュラーズは練達首脳からの要請で再現性東京内で起きるトラブル解決を請け負う事になった。

  • 再現性歌舞伎町1980:カチコミデスペラード完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年04月30日 22時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

道頓堀・繰子(p3p006175)
化猫
ステラ・グランディネ(p3p007220)
小夜啼鴴
伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
鵜来巣 冥夜(p3p008218)
無限ライダー2号
橋場・ステラ(p3p008617)
夜を裂く星
えくれあ(p3p009062)
ふわふわ
マリカ・ハウ(p3p009233)
冥府への導き手

リプレイ


「グゥーリコちゃーん! よぉきたのぉ! これから祭りや、愉しんでいきや!」
 素肌に直接ヒョウ柄のジャケットを着るというイカレたファッションの男こと鮫島五郎が両腕を広げてニッコリ笑うと、『化猫』道頓堀・繰子(p3p006175)もまた両腕を広げてサムズアップした。
「鮫島の兄さんの頼みやったら聞かへんわけにいかんよー!
 ほな一丁、建設会社の『作業員』らしく今日も元気に『解体』のお仕事でもしよか!」
「ヒャッハア!」
 一緒になって安全ヘルメットをかぶる繰子と五郎。
 繰子は今日のためにピンクのニッカポッカに黒のタンクトップとヘルメットというかなりイカれたスタイルになっていたが、後ろで似たようなファッションの男達が別のダンプにのってそれぞれのビル目指してブッコミかけていたのであんまり気にならなかった。
 TPOって時にはぶっ壊れるんだなって思わせてくれる風景である。
 そこへ、ある意味キッチリしすぎた格好で現れたのが『ホストクラブ・シャーマナイト店長』鵜来巣 冥夜(p3p008218)・
「鮫島様には負債の返済を待って戴いたご恩がありますし、何より街の方々は家族も同然ですからね」
 紹介を重ねるようだが、この再現性歌舞伎町で『嘘だらけのバブル』に溺れる者が多い中、数少ない『本物』のホストクラブ店を経営する人物である。
 そのオーナーこそが鮫島五郎であった。
 ネクタイにてをかける冥夜に歩み寄り、がしっと肩を組む五郎。
「冥夜チャン、あんたんとこの店はよぉー売れとるやないかい。はじめはダメ元やったけど、見直したわ」
「フッ……先ほども言ったとおりこの町の人々は家族同然。
 そんなファミリーにたかる蝿を、どうして見逃せましょうか」
 冥夜はネクタイを豪快に緩めると、眼鏡の奥で目を光らせた。
「――荒らされっぱなしでたまるかよ。ホストの底意地見せてやらァッ!!」
「その意気やァ!」
「お!? ワル? ワル話!? 練達のワル祭りに俺が参加しねえ訳にはいかねえだろ? はい俺登場! BGMかけてBGM、ファーッて!」
 『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)がバイクから降りてポーズをとる……と、勢揃いした鮫島建設の皆さん(ブッコミモード)を前に固まった。
「……マジのやつじゃん」
「お、なんや気合い入った奴おるやんか」
 肩にポンと手を置いてくる五郎。千尋は斜め下に視線をやった。脳内のオカマバーでニキネキが『ヤーさんとはケンカする時以外正面から目ぇ合わせるんじゃないわよ』と囁いた。
「あ……シャッス。自分『悠久ーUQー』の伊達千尋っす。オナシャス。はい。
 肩パンすんのやめてもらえますか? すんません、はい」

 一方。
「何故鮫島組と事を構えるような真似をしているのやら、直に聞きに行くしかないですね」
 戦闘に向かうための装備を一通り確かめていた『小夜啼鴴』ステラ・グランディネ(p3p007220)が、予め呼び出しておいた白い大型犬めいた精霊ノーデンスをダンプカーに乗せると、自分もまた飛び乗った。
「しかし……ピンクの車両は目立つ事この上ないんですが、趣味なんでしょうか?」
「それがですねえ」
 安全ヘルメットをかぶったオッサンがそこにはいた。
 二度見するステラ。
「鮫島の兄貴(ニーサン)に、ダンプを『ショッキングな色』に塗ってこいと言われたので、そのまま弟分に任せたらですね……まさかの『ショッキングピンク』に塗ってきまして」
「なんと……」
「塗り直す時間もなかったので、みんな死を覚悟して兄貴に報告したんですが」
「それで……」
 うつむいていたオッサンが、笑顔で振り向いた。
「何故かすっごく喜ばれました!」
「なぜ……」
 いつも冷静沈着なステラもこれには流石に困惑したらしい。
 そこへしれっと乗り込んでくる『トリック・アンド・トリート!』マリカ・ハウ(p3p009233)。
 八人だけだと寂しいからつって召喚したスケルトンアンデッド(本人曰く『お友達』)をめっちゃダンプの荷台にのせていった。頭数がめっちゃ増えたので特攻感が増した。
「今日はゲリラライブだよー!」
「ゲリラ的ですがライブではないです」
「みんなー! 愉しんでるー!? それでは聞いてくださいっ、一曲目は――」
『ハァァァァ! ヨッシャイクゾォーー!!』
『タイガー! ファイヤー! サイバー! ファイバー! ダイバー! バイバー! ジャージャー!』
『タ~ノシ~!』『ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!』『オォォォルージュオブラァァァブ!』
 そしてアイドルライブが突然始まった。
 いつも冷静沈着なステラもこれには流石に以下省略。

 出発前の『春疾風』ゼファー(p3p007625)に、コンビニのビニール袋が無言で突き出された。
「え? 何? 何でこんなに栄養ドリンク渡されんの? ねえ?」
 続けてスッと取り出される缶ビール。
「こうみえて私未成年なんだけど……」
 とか言っていると、ヘルメットとニッカポッカでカチコミスタイルになじんだ『ジョーンシトロンの一閃』橋場・ステラ(p3p008617)が現れた。
 再現性東京で持ち歩いてると違和感のすごいバスター砲だが、なんかこの場では特に不自然じゃなく見えるのがすごい。
「なるほど、カチコミですか……拙もお供しましょう! ゼファーさんはこういうの慣れてるんですか?」
 橋場(今回ステラさんが二人いるのでセカンドネームで表記しよう!)がくいってバスター砲を掲げてみせると、ゼファーはため息交じりに首を振った。
「郷に入らば郷に従えってね。悪党のルールってやつ? 寧ろこういうののほうが得意まであるわよ」
「へー、えらーい!」
 ほんわかした声でもちもち歩いてくる『ふわふわ』えくれあ(p3p009062)。
「みんなでカチコミたのしみだね!!
 よふかししてぶーーん! ってクルマはしらせるのたのしいもんね!
 よるのまちはキラキラあかりがついてて宝石みたい!! ところで……」
 運転席に繰子。
 助手席に千尋。
 その間にもきゅっと押し込められるえくれあ(ふわふわモード)。
「カチコミってなぁに?」

●数分後
「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーー!?!?!?!?!?」
 とんでもねー速度でダンプカーがビルに突っ込み、運転席ンとこにはさまれていたえくれあはちょっと普段みせない歪み方をしながらシャッターをぶち破りロビーへとダンプごと突っ込んでいった。
「あーーーーーーーー!?」
「あ゛ーーーーーーー!?」
 そしてフロントガラスをぶち破って頭から飛んでいく千尋とえくれあ。
 運転席でハンドル握っていた繰子が『あ』という声をあげた。
「……え、死んだ? 早くも二人死んだん?」
「とみせかけてジャジャーーーーーーーーン!!! 俺です!!!」「ぼくだよ!」
 突っ込んでった瓦礫(?)の中からY字のポーズで現れる千尋とえくれあ。
 繰子はずれかけた眼鏡を中指でなおすと、運転席をけっとばすように開いてロビーへおりたった。
 ロビーで煙草吸ってた男達が、やっと現実を認識できたらしく立ち上がる。
「な、なんだテメェ!」
「まいど! 鮫島組の臨時バイトですーちょっとカチコミに来ましたー!! よ、っと!」
 足下に落ちたコンクリートブロックを蹴っ飛ばす繰子。まっすぐ男の顔面に飛んでいき。鼻血出しながらぶっ倒れる男にさらなる急接近と跳び蹴りをたたき込んでいく。
「初めましてこんにちわ! そしてさようなら! 食らえ灰皿ビーム!」
 ガラスの灰皿を手に取った千尋。えくれあが『それなぁに? きれー!』て言うので笑顔で頷いてから……。
「きれーだよねー。高いんだよーこれ。でもってね、こう使うのオラァ!」
 フリスビーみたいなフォームで灰皿をぶんなげ、別の男の顔面にヒット。『えらーい』て言ってるえくれあをよしよしすると、抱っこしてロビーの真ん中に立たせてみた。
「きゃーー! 凄い音!! みんな、ぴょんぴょん飛び回ったり、物を綺麗に投げたり……かっこいいね〜〜!!!」
「そーだね! じゃあ次の曲いこっか!」
 この期に及んでまだアイドルライブを貫くつもりのマリカが、引き連れたスケルトンアンデッド(もう半壊してる)をバックにつけて歌い出した。
『ア~キ~ラ~メ~ズ~!』『オォォォォ! ヨッシャァ!』
『ス・タ・ア・ト!』『Go Go! Let's Go! Let's Go Marika!』
『コ・ン・ナ・ン・ジャ!』『ラ~ラ~ララ! ラ~ララララララ!』
 わーいといって踊り出すえくれあと一緒に歌いまくるマリカ。
 橋場は『ここに混じるのかなりカロリー要りますね』と言いながらダンプから降りると、持参していたフィリピン爆竹をぶんなげた。ついでにバスター砲を一点貫通モードで連結するとノールックでぶっ放した。
 とんでもない爆音と煙の中、橋場はバスター砲を分割し二丁持ち状態にするとショットガンとサブマシンガンの乱れ打ちを開始。
 ここまで完全に無言でやったのでロビーの男達はビビることうけあいであった。

 階段を駆け上っていくステラ・グランディネ。
 グランディネは二階へ到達した時点で足を止め、小さく『ノーデンス』と命令を呼びかけた。
 白い大型犬めいた精霊ノーデンスがいち早く二階フロアへ到達し、木刀片手に待ち構えていた男の腕へと食らいつく。
 大きくよろめいた所に飛び出し、グランディネのハイキックが男を蹴り倒す。
「ほ、骨が折れた!」
「折れていませんし、生命活動に支障のある箇所ではないでしょう。子供の注射でもそんな悲鳴はあげませんよ」
 倒れた男を踏みつけ、すぐ近くにあったビール瓶をぶん投げる。
「こう見えても医者ですので。手は商売道具なのであなた方で痛めでもしたら救える命も救えませんからね……とはいえ、狙いは手の方がつけられますし?」
 砕け散るビール瓶。
 と同時に廊下に設置されていたスプリンクラーが一斉に誤作動を起こし水を噴射した。
「な、何だ!?」
 咄嗟に手をかざす男達だが、降り注ぐ水の黒さに顔をしかめた。
 と同時に、ドクンと心臓に衝撃が走り膝を突く。
「やれやれ、良いですか? あなた方のような仁義の通っていないヤクザが街にはびこると、誰もが商売をやりにくくなるんですよ」
 スマホを右手にかざし高速で操作する冥夜が、黒い雨のなか悠然と歩いている。
「ただ周りを脅して金をむしるだけなら、あなた方はテロリストか恐喝犯でしかない」
「うるせえ、この町は誰のモンでもねえ! ぜんぶ偽物だろうが!」
 黒い雨を拭って殴りかかろうとする男だが、冥夜はそれを半身をひねるだけで回避してしまった。
 そして腕を掴み、ひねる上げる。
「あえてその理屈に則ってやろうか。貴様のモノでもなきゃあ貴様だってホンモノじゃねえ。ならどうなるか!?」
 スマホを握りしめ、その拳で男の顔面を潰した。
「こうして最後に立ってたほうが本物で、持ち主だ。シンプルだよなあ?」
「さ、本当のお楽しみは此れからよ。オニーさん達?」
 雨がやみ、通路へゼファーが現れた。
 あえて白いスーツに身を包んだゼファーは、首にかけていたネクタイを解いて赤いシャツのボタンを二つほど外した。
 いつもの槍は、持っていない。だが彼女から溢れる気迫に数人がたじろぎ、そして臆病そうな男が両手で拳銃を構えた。
「し、死ねェ!」
 引き金がひかれる――その瞬間には既にスウェーをかけていたゼファーが弾丸を回避し、猛烈な速度で突っ込みドロップキックで銃もちを蹴り倒す。
 更に周囲でたじろいでいた男達を機敏なピボットターンをかけながら次々に一発ずつなぐりつけ、回し蹴りでまとめて蹴り飛ばすと最初に倒した男の頭を掴んで持ち上げた。
「死ねっていうのはねぇ」
 うっすら目をあけた男の顔面――を壁に思い切り叩きつける。
「本当に殺せる相手に言うモノよ」
 崩れ落ちた男の前で、ポケットから出した栄養ドリンクを飲み干すと、サッカーボールのように蹴りつた。


 大きな窓ガラスから柄の悪い男が飛び出し、回転しながらダンプカーの荷台に激突。そのまま路上へ転げ落ちる。
 その様子を見ていたグランディネが、横髪を指でかきあげながら振り返った。
「よりにもよって何故他人様の土地にちょっかいを? 勝つ見込みでもあったのでしょうか」
「見込み? 当たり前だ。こっちは関西黒鴉会だぞ。再現性関西でどんだけ勢力を伸ばしたと――」
 高級そうな椅子が男の顔面に激突し、男は後ろのスチール棚に突っ込んでいった。
「この期に及んでまだ言いますか……」
 自分が見えていないというのは厄介ですね、とため息をつくグランディネ。
 繰子はヒヒヒと笑うと高級そうな扉を蹴り破り、黒いソファーと代理席のテーブルが並ぶ部屋へと突入した。
 慌てた様子で立ち上がる四人ほどの男達。
 部屋の奥には関西黒鴉会の紋がかかっている。
「まいどー、出前やでぇ? 九美上興和会・二次団体(セカンド)、鮫島組からのやァ!」
 繰子の初速を多くが捕らえられなかった。
 唯一反応できたサングラスの男が蹴りを入れるが、繰子はその下をスライディングで抜け、立ち上がりと同時に相手の足を払うと転倒した男のサングラスごと改造ブーツで踏み抜いた。
「商品は、なんやろなぁ? 死? それともおどれらのママんとこに泣いて帰るための片道切符やろか?」
 ゆっくりと振り向いて、歯を見せて笑う繰子。
 そこへ冥夜がクールに眼鏡を中指で直しながら、マリカ&橋場ステラ&えくれあの三人組と共に現れた。
「さ、始めましょうか」
「ショータイムだよ!」
「わーい!」
 とても見せられないような格好で歌って踊り始めるマリカと、それを褒めまくるえくれあ。
 異常な光景を前に動揺する幹部たちに、橋場はまずはえくれあを掴んでぶん投げた。
「んきゃー!?」
 激突したえくれあによって倒された所へ、橋場は急接近。バスター砲を近接戦闘(ホームラン)モードへ変形させてグリップを握り込んだ。
「はい、二人目!」
 顔面を打ち上げ、転倒したところに更にぼこすか打ち込んでいく橋場。そんな中でうたっとどるヤベーやつことマリカ。
 冥夜はスマホを操作すると、天高く掲げた。
「デリ(バリー)ヘル(プ)――ゼンゾーさん、よろしくお願いします!」
「えっうそやん呼べるん!?」
 繰子がハッとして振り返る……が、誰も来なかった。
 三秒ほどの沈黙の後、冥夜は眼鏡をくいっとやった。
「いえ。来たら良いなと思いま――」
「オラァ!!」
 ターザンスタイルで窓ガラスをぶち破ったゼンゾーが現れ、幹部の一人を蹴り倒した。
「うそやん来たやん!?」
「フッ、たまたま近くを通りかかったもんでな」
 一方で冥夜は倒れた幹部をつかみあげ、ヘッドバッドをたたき込む。
「泡沫のようなこの街でも住む人々の命は現実で、皆の幸せも本物だ。
 それを他人が土足で踏み入って奪おうってのは、筋が通ると思うか?
 答えはノーだッ!!」
 背負い投げる冥夜。膝蹴りを合わせてたたき込むゼンゾー。
 綺麗にぶち込んだあとは『じゃあな』といってそのまま帰って行った。
「うそやん一発ヤッたら帰るん!?」
「イエーイオラオラ!
 今日の俺はワルだぜ?何てったってワルだぜ?
 ワルだからバールも振り回しちまうからな!」
 とはいえ祭りは終わっていない。
 この地域の最高幹部である蔵岩が咄嗟に机の引き出しから拳銃を取り出すので、千尋がとびかかってヘルメットでぶん殴った。
 更に蔵岩の頭にかぶせて目隠しすると、慌てる蔵岩の前で呼吸を整えてからパンチを連打。更にすぐそばにあったゴルブクラブを急所めがけてフルスイングした。
 よろめいて壁によりかかる蔵岩。
 だがゼファーはそんな蔵岩をつかみ、高級そうな壺を掲げて見せた。
「ま、待ってくれソレは」
「なあに。どうせ今日で此処追い出されるんですから。
 金目のものぶっ壊して未練を失くしてやるのが人情ってもんでしょう!」
 豪快に顔面にたたき込む。粉砕される壺。粉砕される鼻。
 ついでにゼファーは蔵岩を突き飛ばすと、窓際のバーカウンターによりかかった所へ猛烈な跳び蹴りをたたき込む。
「小悪党の分際で小洒落たオーセンティックバーみたいなカウンター設置してんじゃないわ!」
 粉砕されるバーカウンターと大量の酒瓶。
 蔵岩は窓を抜け、ビルの下へと転落。
 ダンプにぶつかり、白目を剥いた男と重なって転がった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 再現性歌舞伎町に侵食していた関西黒鴉会は壊滅しました。
 このあと鮫島のニーサンは上機嫌で酒と焼き肉をおごりまくり最後はカラオケでアイドルソングを熱唱したそうです。

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