PandoraPartyProject

シナリオ詳細

おいでよ! シスターの森!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 天義の北部にベーリングという森がある。
 そこは普段は静かな場所だ――しかし今は違う。
「先日からとある魔物が出る様になりまして、旅の者などが襲われる事件が相次いでいるのです――皆さんはその魔物をどうか打倒して頂きたく」
 その森の一歩手前でイレギュラーズ達に言葉を紡ぐのは近隣の司教だ。
 なんでもその魔物は森のあちこちに大量の幻覚を放っており、それらは近くを通り掛かる者を次々と襲い掛かるのだとか。幻覚とは言え魔力を放出して攻撃を成すぐらいは出来るらしく……その数も相まって只人ではとても御しきれない。
 そういう訳でイレギュラーズ達にお鉢が回ってきた訳だ――が。

「…………で、なんでこの依頼って『シスター必須』なの?」

 ジェック・アーロン (p3p004755)は紡ぐ。
 魔物を退治する依頼と言うだけならまぁよくある依頼だ。しかしこの依頼の備考欄には確かに存在していた――『シスター求む』と。念のため言っておくと姉妹と言う意味では無くて修道女という意味である……!
「ええ。実はそこがこの依頼の肝なのですが……
 実はこの魔物『シスタースキー』は、シスターに纏わり付いてくる個体でして。
 奴をおびき出す為にもシスターが必須なのです……!!」
「なにその安直な名前!? 誰が名付けたの正気ッ!?」
 説明しよう。シスタースキーはシスター好きの魔物だ!
 修道服を身に纏い神に仕える清い人達を好んでいるらしく、ついちょっかいを出したくなってしまうらしい。今までにも何人ものシスターに纏わりついてきた迷惑な奴なのだとか……が、幸いと言うべきかシスターに対しては危害を加えない事が確認されている。
 しかしシスターがいないと特に興味がないのか本体は逃げてしまうそうなのだ。
 幻覚たちは攻撃してくるとは言え個体の能力は左程高くはないらしいものの逃げに徹されれば厄介。その為シスターとして振舞える人物が欲しいとの事でイレギュラーズにも話が伝わっていて――
「成程ね。だからアタシが此処に呼ばれていた訳だ」
 そしてそのシスター枠の一人として召集されていたのがコルネリア=フライフォーゲル (p3p009315)だ。
「でもさ、シスターってのはどういう判定をする訳? 服着てればOKなの?」
「ああ、ええ……服もそうなんですが、重要なのは実は『心』らしくてですね」
「――『心』?」
「はい。どういう原理か、こう。本当にその人物がシスターの心を持っているかある程度察知する様で……以前にシスター服を着てこの森を通り抜けようとした悪しき山賊団は偽物だと見破られて壊滅したとかいう噂があります」
「そもそもその連中はどういう思考してればシスター服を着るという結論に?」
 気が狂ってたんでしょう、という司教の言。
 しかし、なんだと? まさか精神の方向性をある程度見破る性質を持っているというのか? それだとまずい……些かの不安がコルネリアにある。彼女は確かにシスターにはシスターなのだが……
「何それまずいわね……
 アタシは一応シスターだけど、そんな善性は持ってないし……見破られるかも」
 顎に手を当て思い悩むコルネリア。
 シスターとは神に仕える修道女。清く、穏やかで、邪ではない存在。
 己は『そう』ではないと思考して――

「えっ?」
「えっ?」

 瞬間。何故か周囲から『えっ?』と疑問が呈された。
「ははは、まぁシスターの気持ち判定は、邪一色の悪心を抱いてる方でもない限り大丈夫かと思われます。重要なのは敬虔な信徒である事……心穏やかで、清純たる心があればきっと大丈夫です」
「いやだからアタシは引っ掛かるかもと……」
「えっ?」
「えっ?」
 またコルネリアさんが何か言ってます、かわいいね。
 とにかくシスターを狙ってくるはた迷惑な魔物シスタースキーを放置していてはやがて怪我人が出ないとも限らないのだ――だから往こう。
 シスターの服と。
 シスターの気持ちで!!
「ああそうそう、シスターの方が多い程シスタースキーの幻覚操作能力は著しく落ちていくと推察されています。ので、もし希望される方はこちらでシスターの服も用意しておりますから着用されても大丈夫ですよ」
「なんでそんなに準備がいいのさ」
「ここは神と信仰の国――天義ですから!」
 司教が良い笑顔でサムズアップしている背後をジェックが見れば、そこには大量のシスター服があった。サイズが色々あるので体格の良い人物でも大丈夫そうだ…………それこそ男が着ても大丈夫そうな……
 ともかくシスターの気持ちを抱いている人物が何人いるかで討伐の難度も変わろう。
 さてさてどのようにシスター判定される事か――まぁ少なくとも本職シスターの人達は余裕ですよね。ね!

 全国の『心穏やかで清く正しい敬虔な』シスターさん達ッ!! ねっ!

GMコメント

 シスターならシスター判定を掻い潜るなんて余裕ですよね!
 リクエストありがとうございます、それでは依頼です!

●依頼達成条件
 魔物『シスタースキー』の撃滅!!

●フィールド
 天義北部の森『ベーリング』
 時刻は夜ですが、月明かりがありますので特に問題ないでしょう。
 森の中には小さな街道があり、そこを歩いていればやがて件の幻覚たちが現れます。恐らく近くにシスタースキーもいますので、発見して撃滅してください。

●幻覚達×??
 めっっっっっちゃ大量に存在する人影の幻覚達。
 半透明な、まるで幽霊の様な姿をしています。
 全体的な戦闘能力はあまり高くありませんが、魔力を飛ばして攻撃してくる性能があるようです。……が、こいつらは『シスターの心』を持つ者には攻撃してきません。攻撃も妨害もせず素通しします、攻撃されても反撃しません。

 なんでも、目の前の人物が清らかな心を抱いているのか、悪心を抱いているのかなんとなく判別する能力を宿しているそうです。あくまで幻覚らの基準での話ですし、おおまかな方向性の話です。
 なおシスターなのかシスターじゃないのか微妙だと悩ましい場合は周囲の幻覚達が一か所に集まって【審議中】タイムが発生するようです。

 とりあえずシスター服は依頼人の司教さんが貸し出してくれるらしいので、希望される方は服だけでもシスターになってもOKです。でも心は自前でお願いします。

●シスタースキー×1
 この森に現れた魔物です。布を全身に纏った人型の魔物で、傍目からはなんだか真面目な魔物に見えますがその本性は清らかなるシスターが大好きな変t……珍しい魔物です。

 シスターとして健全なる心を抱いていると判定されると涙と共に拝まれます。
 逆にシスター服着込んでても心がシスターじゃなかったり色物シスターだと判定(魔物基準)されると鼻で笑われます。ぷーくすくす。いずれにせよシスター服着込んでるだけじゃだめみたいです。
 全国の現職シスターさん達はシスター判定に余裕で通りますよね、ねっ!

 ちなみに大量の幻覚シスターを放出する能力に全振りしている為か、ほとんど自身の戦闘能力はありません。むしろシスターから攻撃を受けると恍惚な表示を浮かべて散っていきます。
(『清らかなシスター』が攻撃する際には、ダメージ判定の前にシスタースキーに必ず『恍惚』が勝手に付与されます)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。シスター万歳。

  • おいでよ! シスターの森!完了
  • GM名茶零四
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年04月30日 22時00分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

江野 樹里(p3p000692)
ジュリエット
ジェック・アーロン(p3p004755)
冠位狙撃者
※参加確定済み※
リア・クォーツ(p3p004937)
願いの先
ンクルス・クー(p3p007660)
山吹の孫娘
ジュリエット・フォーサイス(p3p008823)
翠迅の守護
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)
慈悪の天秤
※参加確定済み※
カンティ=ビショップ(p3p009441)
鑑定司教

リプレイ


「えっ……アタシも着るの? なんで?
 こんなにシスターいるならアタシ一人くらい着なくて良くない?」
「はっ? そんな言動がまかり通るとでも思ってるの――? ジェックだけ逃れるなんて許さな、もとい、これは必要な事だから勿論ジェックもシスターになるに決まってるでしょ! おら、大人しくしなさいよ!!」
 うわ、やめろ! そう叫ぶも『まぁシスターがどうにかこうにか頑張ればなんとかなるでしょ』と楽観視していた『黒の猛禽』ジェック・アーロン(p3p004755)に『願いの先』リア・クォーツ(p3p004937)の魔の手が襲い掛かる。
 取り囲まれる陣形からは逃れられず、あれやこれやとしている内にいつもの装いは清く正しいシスター服へと。ぐすん、シスター強引だよぉ……ガスマスクだけは着用させてもらうからね……!
「ジェック様もシスターではないそうですけど、一緒にがんばりましょうっ。
 皆で力を合わせれば、すぐですよ……!」
「しかし、あの、なんといいますか……シスターだったら攻撃してこないだなんて、変わった魔物さんなんですね……」
 どうして、という表情を見せているジェックに言葉を紡ぐのは『はらぺこフレンズ』ニル(p3p009185)だ――ニルはシスターではなく、シスターの仕事経験もない。それでも気持ちが大事ならと今日一日ニルはシスターなのです!
 同時に、己らが行く道の先を見据えているのは『淑女の心得』ジュリエット・フォン・イーリス(p3p008823)であり……この先に件の魔物がいるのですねと遠い目を。いやというかそもそもジュリエットは正確にはシスターではなく神官なのだが判定は如何に?
「それだと私もシスターではなく司教なんですけど、大丈夫ですかね。ていうか私も厳密には違う世界の宗教の……えっ、とにかくシスターだったら良い変態だから大丈夫? わぁ……」
 そういう意味では『鑑定司教』カンティ=ビショップ(p3p009441)も同じだ。聖職者なら出席するだけで終わるかんたんなお仕事って聞いてきたらなんか凄まじい変態と相対することになった。誰なんだ一体そんな情報を流したのは……! えらいぞ。
「まぁ私以外にもシスターな人がいっぱい集まっているので勝ったも同然ですね。という訳で私はもう帰ってお風呂入ってきていいですか? ダメですかそうですか」
 まぁでも異世界とかはともかくシスター判定を潜り抜ければなんとかなるみたいだ。それならとジュリエットも意思を固めて。
「ともあれ神への信仰心には変わりはありません。精一杯務めさせて頂きます。
 ……という訳で、あの。私もシスター服をお借りしてもよろしいでしょうか?」
「ふふふ、もちろんだよ。まずみんなにシスター服を着てもらうよ! 今回の敵は『そういう』敵だし、当然だね!」
 ともあれジュリエットは必要であれば己もシスター服をと――意気込んだ瞬間に『鋼のシスター』ンクルス・クー(p3p007660)が若干テンション上げめに即座に来た。うわぁ!
 あれやそれやと皆シスターだらけ。あっちを見てもこっちを見てもシスターシスター!
「見事なまでにシスターの集まり……これは勝ち申しましたね。
 今日も受理でシスターが美味しいです」
 最早勝利を確信しているのは『ジュリエット』江野 樹里(p3p000692)だ。次々に準備が整う様を見据えていれば、思わずにっこり笑顔になってしまうもの。ふふふ。
 おっとともかく準備が整ったのならば森に踏み込まねば。
 ここから先はいつシスキーが現れるか分かったものではない。
 油断してはならない――シスターの心をもって行くとしよう! まぁ尤も。
「アタシはねえ……ったく、一体どうなることやら」
 『慈悪の天秤』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)は苦い顔をしていた。
 なにせ衣装はともかく『シスターの心』の判定まであるのではそれを抜ける自信がないのだ。シスターの心得など欠片屑程もない――期待すべきは他のまっとうなシスター度高い連中だろうか……んっ? なんだ? なんでこっちを見るんだ? ん?
「あぁ……アタシもなー他の皆みたいにシスター度高ければなー。シスタースキーの隙をつけたのかもしれないのになー! そう思うでしょ? ねぇねぇ」
「さぁ皆早く先に進みましょうか。変態はさっさとぶちのめすべきだわ」
「ねぇちょっと聞いてる? リア? ねぇ、ちょっと……どうして無視を!? うわ怪訝そうな顔をしないで!? ねぇちょっと皆――!?」


 みんなー! みんなー! みんなー……
 森の中にコルネリア(笑)の愉快な悲鳴が木霊する中――幻覚らも侵入者に気づいていた。
 領域に入る者許さず。シスター以外は全て殲滅すべしッ!
 その意思を抱いて侵入者の近くにいた幻覚らが接近すれ、ば。
「おや――こんばんは皆さん」
 まずもって接触したのは樹里であった。
 いやイレギュラーズ達はまとまって行動している訳ではない――彼らは各個にシスタースキーを探し始めているのだ。というかまずは幻覚らの無力化する為にも各々単独で幻覚にシスターする(動詞)。
 その為に樹里は往く。
「唱えなさい。受理を」
 します。
 させます。
 させません――の三段活用で召しませいっ! えいっ!
『ぬぁああ! こ、これはまごうことなきシスター……! 浄化される……』
「……ぁ。別に召さなくてもいいですよ? むしろうちの信者になります? 受理するままに待ちいたるだけの簡単なお仕事ですよ? ええまずはこの受理先に待機していただく形で……」
 いいのかこれでシスター判定通って! ともあれ受理の歌を歌いながら勧誘する樹里。
 幻覚らを精神的に落としつつ目指すはシスキーの下へ。
「どうも。特技は鑑定、趣味は高級品を撫で回すことなシスター(広義)です。
 (よさげな物品を持っているのでしたら是非私の所へ)よろしくおねがいします」
 同時。カンティもまた凄い含みのある言動を行いながら幻覚達の警戒網の中へと。
 諸事情で具体的な姿は見せられませんがちゃんと司教服着てますし。こう、霊験あらたかっぽい杖のようなものも持ってますし。ちょっと正確な鑑定はミスってますけど。けど。シスターの服は着てますし信仰心はあるので――
「畏れ敬って崇め奉っても良いんですよ」
 よ。
 そそくさと幻覚らに近づき、小声で呟く様に接触しながらそっと袖口に隠した小銭を握らせ――ああ! 幻覚らがめっちゃ【審議中】タイム! なぜ!?
「ていうかちょっと待って。シスターの気持ちっていってもどうすれば……信仰心とか欠片もないんだけど――うわ出てきた! 本職シスター達! 出番だよ出番……あれ、なぜいないの!?」
 更にジェックの眼前にも幻覚らが現れた。が、その前に本職シスターたちの対処手本を見せてもら……おうとしたらリアとかがいない! どうして! え、いや、めっちゃ幻覚こっち見てくるんですけど、いや、ちょ、期待されてもそんな、まっ……

「…………太陽を信じましょう」

 思わず飛び出てきた言葉は自分でも何言ってるのか一瞬分からなかった。
 けれど。
「陽だまりのように暖かに、特に燃えるように暑く、アタシ達を見守ってくれる……太陽を」
 多分、これが自分の『信じるもの』なんだ。
 喉の奥からするりと出てきた言葉こそ彼女の深奥にあった本質。
 ほら、聞こえてくるでしょう……あの可愛らしい高笑いが……

 きらめけ……ぼくらの……オーッホッホッホ……

『なるほどなぁ。流石シスターは信じる心が違うぜ……』
「え、なに。なんか納得しちゃった? え、いいのこれで。ホントにいいの!?」
 シスターというか、いわゆる広義的な意味での神とは違うと思うんだけど!?
 でもまぁ攻撃してこないならまぁ、いい、か!? ところでシスキー(本体)はどこにいるの? って聞いたら『あっちあっち』って指を差してくれた。ありがとう、でもそれでいいのか君たち。
「わぁ。ジェック様、シスターは初めてのはずなのになんて立派な……うん、ニルも負けてられないのです……! ごはんの前のいただきますも、ごはんの後のごちそうさまも、ニルはきちんとできるのです。だから、きっとニルもシスター……えっ、それはシスターと関係ない? あれれ……?」
 髪を結ってシスター服に着替えていたニル。あんまりしない格好にそわそわしてしまうものの、新鮮な感じの服にどこか高揚感がある気もした。シスターのこころえ、とか決めポーズとかがあったら教えてほしいのだが……決めポーズ?
「決めポーズって言ったら……まぁ、その、祈りを捧げる感じとか……? はぁ。でもそれにしても、ねぇ、すっごく帰りたいのだけど。半端じゃなくひっでぇ音色が……なかなかないわよこんな酷い音色」
 直後。思わず額を押さえるのはリアだ。彼女のギフトの力が周囲の感情を音色として捉えていて……わぁわぁわぁ欲望だだ塗れやんけ。なにさこの森は!
「くそっ、さっさと終わらせて帰るわよ! ほらコルネリアさん前行きなさい前に!」
「えぇっ!? いやだからアタシはシスター判定無理って……わぁまた幻覚来た!」
 前に行けと押し付けあうリアとコルネリア。うーんシスターの戯れというのは麗しくていいですね。はっ、シスタースキーに地の文を乗っ取られてしまったが、ともあれ。
「え、えええ……いや、なんだ、その。アタシのシスター歴……?」
 負けたコルネリアが前面に立ってしまった以上語るほかないと記憶を掘り起こす。
 ――迷子が居たら共に親を捜し。
 ――友が泣いていれば寄り添い。
 ――懺悔する者が居たなら最後まで話を聞く。
 あぁそんな事をしたこともあったかと。けれど。
「それでも――アタシは――」
 悪だから。
 きっとシスターなんて領域には似つかわしくないと。
 自嘲するように。幻覚たちへと語れ――ば。
「……うぉ!? なに!? なんでこの幻覚たち泣いてんの!?」
『いや……あんまりにもいい子すぎて……うぅ悪人ぶってるシスターかわいい……』
「何言ってんの!? いやマジ何言ってんの!? ちょ、アタシは悪人なんだって! 判定覆しなさいよ、ちょっとッ聞けッ――!!」
 思わず幻覚どもを往復ビンタするコルネリアだがむしろなんだか幻覚達、喜んでる気がする。むしろ列を成してぶっ叩いて下さいと長蛇の様子が……んっ?
「あれ――幻覚じゃないのが並んでないかい?」
 瞬間、ンクルスが見た。
 審議に入っている幻覚達がいないだろうかと周辺の様子を伺っていれば――明らかに外見が異なる個体が混じっている。早くぶっ叩いてとドM精神満載で列に並んでいる、アイツは――!
「こんばんは――シスキーさんですかね?」
 故に行くはジュリエットだ。
 微笑み携え聖母の如く。心の判定などなんのその――
 信仰心の判定なら女神様に誓って負けません。胸の前に手を合わせ語るべくは……
「女神様は祈りを捧げる誰しにもご加護を与えて下さります。
 この依頼を受けてシスキーさんの前に馳せ参じたのも、きっと女神様の思し召しです」
『なんと――神を信じるシスターが信ずる神が私を見ていると』
「ええ。他の方々もきっと寛大なる神の思し召しで集まったのでしょう。
 女神イーリス様は寛大な神です。
 きっと魔物の貴方にもご加護を与えて下さる事でしょう」
 ――えっ? つまりシスターの勧誘が始まっている??
 まさか。シスタースキーをシスターに勧誘し、シスターにしてしまおうというのか!? まさか、いやそんなまさか!?
「貴方に素晴らしい提案をするよ! もう感づいているだろうけど……貴方もシスターにならないか? 見れば解るその愛、練り上げられている。至高の領域に近い。だけれどもそんな貴方が何故討伐されるのか教えてあげるよ!」
 畳みかける様にンクルスも紡ぐものだ。なぜ討伐されるのか――だって?
「悪い事してるからだよ! だから――シスターになろう!
 シスターさんになればずっと討伐もされずシスターさんを愛で続けれるよ。
 そう……未来永劫シスターという存在に寄り添えるのさ! 魂レベルで、ね!」
『な、なんとぉ!?』
 何を言ってるんだンクルスは???
 ふふん、と得意げな顔。しかしいくら何でも魔物の説得なんて可能なのか不可能なのか……うわ、溢れんばかりの信仰を溢れさせるんじゃない! え、ここにいるのは皆十分にシスターでありシスター勧誘は事実だって――!?
「そうだよ……シスターの気持ちを知ればシスターの亡霊を出せるようになるかもしれないしね。お得だよ。きっときっとお得だよ」
「ほら……シスターの服もですね、ニルが持ってきたんですよ……
 平和な解決を望んでるんです! ほら、シスキー様も、着ましょう?」
 一人。また一人とシスキーに近寄るシスター達。なにこの宗教勧誘は。
 ジェックにしろニルにしろじりじりと距離を詰めていて……と、その時。

「受理あれかし――さぁ。シスキー様も共に参りましょう」

 背後。大爆発を生じて派手に登場するのは樹里であった。
 さぁさ皆さんポーズをポーズをとまるで戦隊物、いや全てのシスターが胸元に手を置いて祈るようなポーズと共にシスキーへと近づいてくる。背後では引き続き爆発が繰り広げられて、ああ派手な演出と共に幻覚達が空を舞う~
 全員で囲んでシスターシスター(動詞)してやるのだ。
「シスターシスター、シスターの中の仔羊いついつでやる」
 夜明けの晩にシスとターが滑った

 後ろのシスターだぁれ?

『ヒィ! シ、シスターに洗脳される――!!』
「いいえ、これは洗脳ではありません。これは罪の浄化の儀式です……
 私たちは出来ることなら貴方の罪を許し、共に祈る信徒として迎えたいと考えています。
 さぁ。今までの行いを懺悔し、シスターとして一緒に神へ祈りましょう……?」
 そして背後から肩を掴むように。耳元で囁くのはジュリエットだ。
 罪を憎んで人を憎まず――改心のチャンスは誰しもに与えられるべきだと。
 神の慈悲は魔物にだってあっていいはずだ。
 だから願うのです。心の底から……
 シスターに――なりたいのだと――
『む、むむむ! だが私は神を信じたいのではなく、神を信じるシスターの姿を眺めたいだけ――!! 故に如何にシスターの勧誘といえど私は――!!』
「成程。じゃあシスターにならないなら天罰するしかないね……さようなら」
 えっ。とシスキーが振り向いた時にはンクルスの一撃がぶち込まれた。
 それは相手をつかんで無茶苦茶に振り回し最終的に頭から地面に叩きつける――いや、突き刺すがばかりの勢いを伴った一撃――ッ! だってシスター勧誘断ったなら敵だよ。仕方ないね。
「分かってくれないなんて悲しいですけど……それが避けられないことなら全力で対応するのも、シスターの心……なのでしょうか? なのですよね……?」
「神敵を滅するのは神の御心に沿う事……容赦はしないよ。信じる素晴らしさを理科死してくれなかったから仕方ないね」
 続けざまにニルも躊躇いがちながら闇夜の魔力にて周辺もろとも薙ぎ払い。
 ジェックは銃弾一発、逃さず齎す『死神』の一撃。
 あっという間に追い詰められていくシスキー。そんな彼が逃げようとして現れたの、は。
「あぁ……ええ、可哀相にね……追い詰められて……
 いいでしょう、両手を広げて抱きしめて、祈りを捧げて差し上げましょう」
 リアだ――えっ、なんでこんな事してあげるかって?
「そんなの、これから旅立つ魂への鎮魂(前払い)ですよ……じゃあ、逝こうか」
『えっ』
 優しく抱きしめた形から、急速にその身を離し剣技一閃!
 オラオラオラ! 死ぬまでぶった切ってやる――ッ!
「ぶち抜いてあげるわあぁあああ!!」
『ぐああシスターはそんなこと言わなーい!! 清らかじゃなーい!』
「言うのよ! 現役シスター舐めんなァ!!」
 全ては目の前に広がっている光景こそが真実なのだと。
 数多の斬撃。もののついでにドロップキックで――シスキーの奴を吹っ飛ばしてやった。


 という訳で。
「はー無駄に疲れたわね……皆カフェにでも行ってお茶でもしていかない?
 いい事? 善行にはカロリーを消費するのよ。これは創世記にも記されている事なの」
 だから聖職者はいい事した後は美味しいスウィーツを摂取する必要があるわけ――なんですかリアさんその理論は。もしかしてこれただ単純に甘いもの食べたいだけなんじゃ……あ、なんでもないです。ヒッ!
「はーっ……結局シスターらしくは出来なかったわねぇ。アタシはいつもこんなんだから……」
「えっ、でも最後まで攻撃されませんでしたよね。私なんてものすごく『審議中』されたんですけれど……うう。小銭ではやはり見逃してもらえたませんでしたか。脱ぎたての衣類を渡そうとしたらなぜかサムズアップされましたが」
 えっ、脱ぎたてのシスター服を渡す……? コルネリアはカンティの方を向いて怪訝な顔を。わ、悪の私でもそんなことを考えた事はなかったぜ……!
 ともあれ疲れたのは確かだ。
 リアの提案通り皆でこのままご飯でも食べに行こう……そうしよう……
 そして。

「はっ――アタシは一体何を」

 数日後、ようやくシスターの瘴気が抜けて正気に戻ったジェック。
 なんとその間はずっとシスター服で過ごしていたそうな……

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 シスターとは……シスターとは一体……!?

 ありがとうございました!!

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