PandoraPartyProject

シナリオ詳細

Call of Panties

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●外への渇望
 暗く、狭い箱の中に「それ」はぎゅうぎゅうに押し込められていた。本来はただの物品であった「それ」はやがて魂を宿し、箱の中から出たいと望んだ。
「……や……だ。……い、や、だ」
「……た……い。ここから……出たい……」
「……く……れ。外に……出してくれ……」

 細々と聞こえてくる声に、再現性東京の神泉にある下着会社『フレッシュ』社長である権堂(ごんどう)は我が耳を疑った。最初は働き過ぎによる幻聴かと思ったが、次第に声ははっきり鮮明なものになってくる。
 薄気味悪さを感じながらも声の出所を探し当てた権堂は、やがて一つの部屋に行き当たった。売れ残って返品された商品――パンツやブラジャー――を置いてある部屋だ。
「ここだと? ハハハ、まさかな……」
 だが、商品が声を出すはずがないと言う権堂の常識的ではあるが希望的な観測とは裏腹に、声は間違いなくこの部屋から聞こえている。
 恐る恐る、権堂は部屋のドアを開ける。そして中を覗き込んだ瞬間、間違いなく返品の入っているいつくもの箱が声の出所だと、権堂は確信した。
 緊張を顔に貼り付けながら、権堂はゆっくりと返品の入った箱の一つに歩み寄っていく。そして、ビリリリ……と箱を梱包しているテープを剥がした。
「う、うわああぁぁぁ……!」
 箱を開けた権堂の視界を、パンツが埋めた。それが、パンツやブラで全身を覆い尽くされる前に権堂が見た最後の光景となった。

「今のは、権堂さんの悲鳴!?」
「返品置き場からだ! 行くぞ」
 権堂の悲鳴を聞いた『フレッシュ』専務の興田(おきた)と副社長の聖方(ひじりかた)は、権堂に何があったのかと返品置き場となった部屋に向かう。
 そして部屋に入った二人は、部屋中を飛び交うパンツやブラに襲い掛かられて、権堂と同じようにパンツやブラで全身を覆い尽くされた。

●ローレットへと飛んだ依頼
 社長、副社長、専務が自社商品のパンツやブラに覆われると言う事態に、『フレッシュ』の社員は混乱に陥りつつも、外への脱出を果たした。だが、全員は脱出出来ず、新たに七人が全身を自社商品の下着に覆い尽くされる。
 脱出してきた『フレッシュ』社員は事件を渋谷署に通報したが、出動した渋谷署の警察官達も如何することも出来ず、社内に突入した十人が権堂らと同じような姿になった。
 事件の指揮を執る警察官は、せめてこれ以上の犠牲が出ないようにと『フレッシュ』の社屋を出入り出来ないように封鎖すると、ローレットに事件解決の依頼を出した。

「ええと……今回の依頼なんですが、敵はパンツとブラです」
「はあ?」
 この依頼をどう説明しようか困惑した『真昼のランタン』羽田羅 勘蔵(p3n000126)の言葉のチョイスは、成功したとは言えなかった。勘蔵の言葉を聞いたイレギュラーズの何人かから、わけがわからないと言った声が上がる。
「ああ、すみません……正確には、空飛ぶパンツとブラの付喪神達と言いますか、それに覆われた人達と言いますか」
 イレギュラーズ達の反応に、勘蔵は言葉が足りなかったことを悟り、改めて言い直した。だが、また要領を得ない。もっとも、勘蔵とて話を聞いただけでわけがわからない状態であるから、仕方ないのだが。
 所々で言い淀みながらも勘蔵が語ったところによれば、『フレッシュ』と言う下着会社で社長以下十人がまるでミイラのように下着に覆われた。渋谷署が対応しようとしたがダメだったので、ローレットに依頼が回ってきたとのことだ。
「で、この付喪神達ですが、厄介なことに覆った人達の能力を強化した上で操るようでして」
 権堂をはじめ犠牲になった『フレッシュ』社員はいずれも一般人ではあるが、剣道や柔道、あるいは逮捕術の稽古をしているはずの警察官達が瞬殺されたというのだ。
 そして、その警察官達もパンツやブラに覆われた以上、能力にバフがかかっていると見るべきだろう。
「あとは、死人を出さないように解決して欲しいと言うのが要望でして。
 まぁ、何と言っていいやらな事件ではありますが、間違いなく依頼ではありますので、
 どうか上手くやって下さい。よろしくお願いします」
 どうにも締まらない雰囲気のまま、勘蔵はペコリと頭を下げた。

GMコメント

●Danger!
 当シナリオにはPCがパンツやブラに覆われた姿となる可能性がございます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

 こんにちは、緑城雄山です。PPPと言えばパンツ(?)と言うわけで、久々のパンツネタのシナリオです。舞台が下着会社という関係上、ブラも入ってきてますが。
 今回は、パンツやブラの付喪神を討伐し、取り込まれた『フレッシュ』社員や警察官達を無事に救出して下さいますようお願い致します。

●成功条件
 『フレッシュ』商品のパンツやブラの付喪神の討伐

●失敗条件
 以下の、何れかの条件の発生
・『フレッシュ』社員、警察官の中から1人でも死人が出る
・付喪神達が『フレッシュ』社屋の外に出る

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 『フレッシュ』本社ビル。4階建て。時間は夜、天候は晴天。
 ビル内には電灯の着いているところと着いていないところがあり、着いていないところでは暗視やそれに類するスキル・アイテムが無い限り、命中・回避に不利な修正が入ります。
 入口は正面玄関と裏口の2カ所で、少なくとも付喪神側はこの2カ所以外からは社屋の外には出ません。

●パンツやブラの付喪神に覆われた人達 ✕20
 今回の被害者です。身体全体を覆っているパンツやブラのHP(外部HP)と自分自身本来のHPを持っており、外部HPを減らせばパンツやブラに覆われている面積も減っていきます。外部HPを0にすれば助けることが出来ます。
 外部HPを0にする際にダメージが超過すれば本来のHPにダメージが入り、本来のHPが0になって戦闘不能となると、高い確率で死亡します。元が一般人であるため、本来のHPはさほど高くはありません。
 なお、オーバーキルが発生して本来のHPが0になっても、その攻撃が【不殺】であるか後述する「手加減」によるものであれば、死亡させずにすますことが出来ます。
 また、【識別】付きの攻撃で外部HPを0にした場合、本来のHPを減らすことはありません。
 全般的に、攻撃力、生命力、防御技術が高目となっています。また、カウンターを多用してきます。
 攻撃手段は木刀や鉄パイプ、警察官であれば警棒などです。

・権堂、聖方、興田
 この3人は、子供の頃から元々同じ道場で剣術を習っていたこともあり、他の社員や警察官達と比べて実力が高くなっています。ただ、パンツやブラに覆われている限り見た目では特定出来ません。
 傾向として、聖方が生命力と攻撃力に優れるパワー型、興田が反応と回避、EXAに優れるスピード型、そして権堂が両者折衷のバランス型です。

●パンツやブラの付喪神 ✕とにかくたくさん
 売れ残って返品された『フレッシュ』の商品に魂が宿り、付喪神となったものです。
 一体一体の力は大したことがありませんが、とにかく数で協力してくるのでその力は侮れません。
 誰かを覆っている間は、その覆っている対象の外部HPとして機能し、独自の行動は行いません。
 しかし、外部HPをパージして別の人物に取り憑く事が可能です。この場合、攻撃の処理はまとめて1回として行われ、パージしたHP分だけ【変幻】【多重影】【鬼道】の数値が大きくなります。
 そして別の人物に取り憑いた場合、その人物の外部HPとなります。イレギュラーズ以外が取り憑かれた場合は行動を支配されますが、イレギュラーズが取り憑かれた場合はBSによって行動を阻害されることになります。
 元が女性用下着だからか、特に女性が狙われやすくなっています。

・攻撃手段など
 覆い尽くす 物/至~超/単
  【無】【変幻】【多重影】【鬼道】【窒息】【麻痺】【呪縛】
  この攻撃によるBSは自然回復やBS回復では回復せず、外部HPを0にして引き剥がすことでしか回復させられません。
 優先攻撃:女性

・【怒り】を受けた場合
 パンツやブラの付喪神が【怒り】を受けた場合、誰かの外部HPとなっている状態であれば、外部HPを付与している人物を動かすことで【怒り】を付与した人物を攻撃しようとします。
 イレギュラーズの外部HPとなっている場合は、【麻痺】【呪縛】の判定で行動不能になったら、上述の行動を取ることになります

●手加減
 このシナリオでは、「手加減」を宣言することが可能です。手加減を宣言された攻撃によって戦闘不能なった場合、それが【不殺】の無い攻撃であっても対象を死亡させることはありません。
 しかし、当たり所や威力を上手く調整する必要があることから、手加減による攻撃は命中と攻撃力を半減して判定されます。

●再現性東京(アデプト・トーキョー)とは

 練達には、再現性東京(アデプト・トーキョー)と呼ばれる地区がある。
 主に地球、日本地域出身の旅人や、彼らに興味を抱く者たちが作り上げた、練達内に存在する、日本の都市、『東京』を模した特殊地区。
 その内部は複数のエリアに分けられ、例えば古き良き昭和をモチーフとする『1970街』、高度成長とバブルの象徴たる『1980街』、次なる時代への道を模索し続ける『2000街』などが存在している。イレギュラーズは練達首脳からの要請で再現性東京内で起きるトラブル解決を請け負う事になった。

 それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。

  • Call of Panties完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年05月04日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

津久見・弥恵(p3p005208)
薔薇の舞踏
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
ルーチェ=B=アッロガーンス(p3p008156)
異世界転移魔王
楊枝 茄子子(p3p008356)
虚飾
海紅玉 彼方(p3p008804)
扇動者たらん
ニーヴ・ニーヴ(p3p008903)
孤独のニーヴ
ポポポーポ・ポーポポ(p3p009187)
平和の象徴
レべリオ(p3p009385)
特異運命座標

リプレイ

●奇妙な依頼、現場に向かう前
(ええー、何この依頼……女性物の下着が襲いかかるって……何この依頼)
 『羽衣教会会長』楊枝 茄子子(p3p008356)は、依頼の現場に向かう道すがら、ずっとそんなことを考え続けていた。女物の下着が人間に襲い掛かってきて、パンツやブラで全身を覆うなど、奇妙にも程がありすぎた。
(いや、でも今も中で苦しんでるんだもんね!ㅤすぐに助けてあげるからね!)
 だが、相手がどんなに面妖であれ、犠牲者がいるのは事実である。茄子子はその事に意識を切り替え、犠牲者を救出する意を固めた。
「女性用下着に覆われるとは……一部の好事家にはご褒美だろうが、たぶんその人たちは違うだろうな。
 ……いや、違っていてもらいたいものだな。変態は厄介だ」
 頭を抱えてしまいそうな表情でぼやいているのは、『Meteora Barista』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)だ。モカはこれから救出する人達が、下着に包まれて喜ぶ変態ではないことを祈らずにはいられなかった。
「ツッコミどころは多いですけど、社員さん達のピンチには変わりません」
 『薔薇の舞踏』津久見・弥恵(p3p005208)の言う社員とは、下着会社『フレッシュ』の社員達のことだ。付喪神と化した『フレッシュ』の商品である下着から逃げ遅れた社員と、あと通報を受けて駆けつけた警察官、合わせて二十人がパンツやブラに覆われ、ミイラのような姿になっていると言う。
(死者が出る様な事にならぬように、全力で舞わせていただきます)
 そう意を決したように、ならば弥恵としては、無事救出できるよう力を尽くすのみだった。
「女性の下着の付喪神とは、珍妙な奴らであるな……。古来より長年使い古されたモノには魂が宿るというらしいから当然と言えば当然……であるか?」
 ううむ、と『異世界転移魔王』ルーチェ=B=アッロガーンス(p3p008156)は考え込む。ただ、今回のパンツやブラの付喪神に関して言えば、使い古されたどころか返品されて倉庫に入れられていたものなので、製造されてからの月日はさておき一応新品ではある。
「確かに、女性用の下着でも付喪神になる可能性はあるよね。絵面は凄まじくシュールだけど……」
 パンツやブラが飛び交いつつ人々を襲い、包帯ではなく女性用下着に覆われたミイラを生み出していく。そんな光景を想像した『孤独のニーヴ』ニーヴ・ニーヴ(p3p008903)が、何とも言えない表情をしながらルーチェに頷いた。管理用AIが意志と肉体を得たニーヴとしては、似たような存在である付喪神達に対して思うところがあるようだ。
「ともかく、こんなものが外に出てくると言うのなら倒しておかねばな。いろいろまずいような気がするのであるからな」
「そうだね。無事に事件を解決しよう」
 パンツやブラに覆われた『フレッシュ』社員や警官達が『フレッシュ』の社屋から外に出たら――ルーチェは筆舌に尽くしがたい光景を想像し、そのような事態を避けるためにも付喪神達は倒すと決める。似たような光景を想像したニーヴも、同様に付喪神達を『フレッシュ』の中で倒してしまおうと、頷いてみせた。
「下着に囚われ我を忘れてしまうとは、いやはや人間とは難儀なものでございます」
 ふぅ、と肩をすくめて溜息をついたのは、鳩の頭にスーツ姿の『鳩』ポポポーポ・ポーポポ(p3p009187)だ。だが、ポーポポはそれがまるで人間の性や業のように言ってのけたが、女物の下着の付喪神に囚われて支配されてしまうのは別に人間の性や業などではないことは、はっきり記しておきたい。
「目標は死者を出さずに付喪神を討伐する。努力目標は下着塗れにならないといったところか」
 一人、奇っ怪と言える状況に対しても落ち着き払っている『特異運命座標』レべリオ(p3p009385)が、静かにそう言った。
 レベリオが情報屋から聞いたところによれば、付喪神達は憑依されたとは言え、捕食、洗脳されている様子はないと言う。ならば討伐を急ぐ必要はなく、一体ずつ確実に片づけていけば如何にかなると思われた。

●玄関より
 『フレッシュ』社屋に到着したイレギュラーズ達は、社屋を包囲する警官達から現状を聞くと、玄関と裏口の二手に分かれて中に進入した。
 その一方、玄関から受付とエレベーターのある小さなホールに入った弥恵、『レディ・ガーネット』海紅玉 彼方(p3p008804)、ニーヴ、ポーポポは、そこでパンツやブラに覆われたミイラのようになった犠牲者二人と遭遇する。
「……これは、酷い有様ですね」
 話には聞いていたものの、実際にその様を目の当たりにした彼方は、呻くようにつぶやいた。彼方はそう言いつつも、下着会社の社長はじめ社員達が犠牲になっていると言うことで、救出したら『フレッシュ』にアイドル活動のスポンサーになってもらおうと言う計算も同時に働かせている。
「月を彩る華の舞、天爛乙女の舞踏を照覧あれ!」
 いつの間にか薔薇で身体を覆った姿になった弥恵が、周囲に死と腐敗と茨で形作られた結界を展開しつつ、舞い踊る。すると犠牲者達に纏わり付いていたパンツとブラの十数枚ほどが、力を失ったかのように床に剥がれ落ちていった。
「みんな、私に夢中になってね!」
 ギフトによって瞳を紅くした彼方が、弥恵に続いて犠牲者に纏わり付くパンツやブラへと仕掛ける。悪意を元にした死をもたらす霧で、犠牲者ごとその身体を覆うパンツやブラを包み込んだ。さらに、十数枚のパンツやブラが、ボトボトと床に落ちていく。
 一方で、多くのパンツやブラが、今取り憑いている犠牲者達を離れて弥恵と彼方に纏わり付こうとした。無理もないことである。女性用下着として造られたからには、やはり女性に着けてもらいたいのだ。それが、どんな形であろうとも。弥恵も彼方も纏わり付こうとするパンツやブラを振り払おうとするが、如何せん数が多すぎた。
「きゃっ……これは、恥ずかしいですね。どうか、見ないで下さい!」
「ううっ、私、アイドルなのに……でも、こうなったらまとめて吹き飛ばしますよ!」
 為す術無く、弥恵も彼方も下着まみれの姿にされてしまう。下着に覆われた中で弥恵は頬を赤らめつつ今の自分の姿を見ないように懇願し、彼方は泣きそうな声を出すもすぐに自分を中心に爆発を起こして振り払ってやると叫んだ。
(やっぱりボクは狙われなかったけど、これはまずいね……)
「今、お助けしますぞー!」
 見ないでと言われてもそう言うわけには行かず、ニーヴとポーポポはパンツやブラに覆われた弥恵を救出しようと、それぞれ術と拳を放った。弥恵を覆っているパンツやブラのうち、術や拳が命中した部分を覆っているものがやはり十数枚ほど弥恵から離れて落ちていく。

 弥恵に纏わり付いたパンツやブラはニーヴとポーポポ、そして弥恵自身によって剥がされていき、彼方に纏わり付いたパンツやブラは彼方を中心に起こった爆発の炎によって燃え尽きていった。それから何度か弥恵と彼方はパンツやブラに覆われたが、それは同時に犠牲者に纏わり付くパンツやブラが減ると言うことでもある。けっきょく、時間は要したもののパンツやブラの付喪神達を全滅させて、まず二人の社員を救出することに成功した。
 その後は、弥恵が歌の反響で先の状況を調べ、同じような犠牲者がいればギフトを発動して目立ちやすくなっている彼方がパンツやブラの注意を引き付けている間に全員で攻撃すると言う手法で、さらに二人の警官を救出した。

●裏門より
 一方、裏口から『フレッシュ』社屋に進入したモカ、茄子子、ルーチェ、レベリオの四人も社屋に入ってすぐ、外に出ようとしていた犠牲者の一人と遭遇した。
「さっそくお出ましだな……纏わり付いているものを、全部蹴り飛ばしてやる!」
 モカは一気に犠牲者との距離を詰めると、極力犠牲者を覆うパンツやブラだけを狙って、無数にも見える蹴りを繰り出した。次々と繰り出されるモカの爪先によって、犠牲者を覆うパンツやブラはどんどんと剥がされていき、一枚また一枚と、床に落とされていった。
 犠牲者を覆うパンツやブラは、その半ば以上が犠牲者の身体を離れ、モカに纏わり付かんとする。このパンツやブラ達も、女性用下着として造られた以上はやはり男性よりは女性に着けてもらいたいのであった。
「くっ、数が多い……!」
 モカの回避の技量は決して低くはないのだが、それでも纏わり付くパンツやブラを避けるにはあまりに数が多すぎた。瞬く間に、モカはパンツやブラに覆われた姿となってしまった。
「やっぱり女性を狙ってくるんだね! でも、何時までもモカくんには纏わり付かせないよ!」
 茄子子はモカを救おうと、亡霊の嘆きの様な呪いの歌を響かせる。その歌はパンツやブラの付喪神達の精神に作用したらしく、十枚ほどのパンツやブラが、ぐねぐねと捻ったように曲がるのを繰り返しながら、モカから剥がれて地に墜ちた。
「……これだけの数がいると、下着まみれにならないと言うのはさすがに無理か」
 なるべくモカを傷つけないように注意しつつ、レベリオは『漣のナイフ』でモカに纏わり付いているパンツやブラを斬り裂いていく。『漣のナイフ』に斬り裂かれたパンツやブラは、モカに纏わり付く力を失ったかのように、ハラリ、ハラリとモカから剥がれていった。
「もう少しだけ、我慢するのである」
 ルーチェはそうモカに告げると、モカの身体ごとその周囲のパンツやブラを漆黒の闇で包み込む。中の物を蝕む闇が消えた時には、モカの足下にさらに十枚ほどのパンツやブラが力無く落ちていた。

 モカを包んでいたパンツやブラは、程なくして剥がされた。その都度犠牲者に纏わり付いていたパンツやブラがモカや茄子子へと移り、その身体を覆ったが、次から次へと剥がされてその数を減らしていく。そして犠牲者を覆っているパンツやブラも間もなく全滅させられ、社員は無事に救出された。
 最初の犠牲者との戦闘を終えた後は、モカと茄子子が二手に分かれてそれぞれ敵を釣ってくるという手法で犠牲者達を探してはその身を覆うパンツやブラから解放し、さらに一人の社員と四人の警察官を救出した。

●最後の戦い
 『フレッシュ』社屋に玄関から入ってきた弥恵、彼方、ニーヴ、ポーポポ達と、裏口から入ってきたモカ、茄子子、ルーチェ、レベリオ達は、程なくして社屋の一階で合流した。そもそもほぼ渋谷と言っていい神泉に、そうそう大きなビルなど建てられるものではない。『フレッシュ』のビルもその例に漏れず、四階程度しかないことからもわかるように、それほど大きなものではなかったのだ。
 あっさりと合流を果たしたことに一同は苦笑いをしたが、ならばとイレギュラーズ達は全員でひとかたまりになって探索を進める。そして二階、三階、四階と登っていき、さらに三人の社員と四人の警官を救出した。
「……これで、全部だろうか?」
「特に強い三人がいると言う話でしたけど……」
「まだ、それらしい相手とは戦ってないよね?」
 最上階にまで到り、都合十七人を救出したところで、モカが確認するようにつぶやいた。だが、弥恵と茄子子は、今までに戦ったよりもさらに強いはずの三人――『フレッシュ』社長の権堂、副社長の聖方、専務の興田――が残っているはずだとモカに答えた。ならばと、イレギュラーズ達はさらに捜索を続けることにする。
 そして捜索の最後となる部屋、割と広めの会議室に、パンツやブラに覆われたその三人はいた。

「くっ、私が先を取られるとは!」
 最初にモカが蹴りでパンツやブラを犠牲者から引き剥がそうとしたが、その犠牲者がモカよりも先に鉄パイプで殴りかかってきた。鉄パイプは、モカの顔をチッ、と微かに掠める。
「――だが、やられる一方ではないぞ」
 犠牲者が鉄パイプを振り下ろした隙を衝き、モカは反撃に出た。殴りかかってきた犠牲者に、無数とも思えるような蹴りを浴びせていく。次々と放たれる蹴りを受けた、犠牲者に纏わり付いているパンツやブラは、バラバラと床に落ちていった。
「ここが、一番の魅せ場ですね。どうぞ、私の舞に見惚れて下さい」
 パンツやブラに覆われている犠牲者達を殺めてしまわないよう注意する必要があるこの依頼は、弥恵の決して敵を殺めることのない舞の魅せ場であった。そして、最後に他の犠牲者達よりも強い三人を相手にするとなれば、それはもう紛う事なきクライマックスである。
 弥恵は今まで以上に意気込みつつ、死と腐敗と茨による結界を展開しながら、薔薇に覆われた肢体を魅せつけるように踊った。黒く長い髪、スレンダーなボディ、長く美しい脚は、見るものを魅了する。興が乗りますます踊り狂う弥恵は、ある重要な事実をすっかり忘れてしまっていた。
 弥恵の舞に力尽きて落ちずに耐えきった、モカと攻防を繰り広げているのとは別の犠牲者を覆うパンツやブラの実に三分の二が、弥恵に襲いかかった。そう、女性に着けてもらいたいと望むこのパンツやブラの付喪神達にとって、女性としての魅力をこれでもかと魅せつけてくる弥恵は、ぜひとも身につけて欲しい相手なのだ。
「って、ちょっと!? きゃーー! 調子に乗りすぎました――!?!?」
 元々避けきれる数ではない上に、舞の最中に襲いかかられたとなれば、迫るパンツやブラを弥恵が避けることは不可能だった。瞬く間に、弥恵はパンツやブラの厚い層に覆われてしまう。
「アイドルとして、負けられない! さあ、おいでよ!」
 そんな弥恵に対抗心を燃やした彼方は、弥恵よりももっと多くのパンツやブラを引き寄せようと、踊り始めた。大人びてセクシーな弥恵の舞とは違った、少女としての可愛らしいダンスはやはりパンツやブラの付喪神達の琴線に触れたようで、最後の一人の犠牲者を覆っていたパンツやブラの三分の二が、彼方に襲いかかる。
 彼方はパンツやブラに覆われながらも、引き寄せた量は弥恵に劣るものではなかったと、満足を感じていた。あとは、自分を中心とした爆発を起こして、残らず吹き飛ばし焼き尽くせばいいのだ。
「大変なことになったな……今、覆っている下着を取り除いてやろう」
 今まで戦ってきたパンツやブラよりも、さらに多くのパンツやブラが弥恵と彼方を覆っていることに半ば呆然としつつも、ルーチェはより余裕が無さそうな弥恵を漆黒の闇で包み込む。弥恵の表層にあったパンツやブラは闇に蝕まれ、あるパンツは闇の中で消滅し、あるブラは弥恵の足下へと落ちていった
「ポーーー!! ワタクシも、アナタをお助けしますぞ!」
 ルーチェによる闇が消えたところで、ポーポポも弥恵をパンツやブラから救援せんと拳を振るう。弥恵を覆うパンツやブラを削ぎ落とすかのように振るわれた拳は、十枚ほどのパンツやブラを弥恵から引き剥がしていった。
(それにしても、女性用の下着に接近してこうして触れると、何だか申し訳ない気持ちになるね……)
 ニーヴも弥恵に纏わり付いているパンツやブラを剥がそうと試みるが、その最中に何処か後ろめたさを感じてしまう。だが、それで手を止めていられる場合ではない。
(いや、本来の使い方をされてない下着なんてただの布だ。大丈夫と信じて頑張ろう……)
 そう思い直すと、ニーヴは相手を殺めないよう威力を抑えた術を弥恵に向けて放った。さらに十枚ほどのパンツやブラが、弥恵から剥がれ落ちた。
「会長も手伝うよ! 大丈夫、死ななきゃ会長が治すからね!!」
 イレギュラーズ達の攻撃によって都合三十枚ほどのパンツやブラが弥恵から剥がれ落ちたが、まだ弥恵を覆うパンツやブラの層は厚い。茄子子はその層を少しでも薄くするべく、亡霊が嘆き悲しむかの様な呪いの歌を響かせた。その歌が響くと、また十枚ほどのパンツやブラが力尽きたように床へと落ちていく。
(弥恵を助けるか? それとも、奴らの動きを止めるか?)
 レベリオは瞬時迷った末、犠牲者達の動きを止めるよりも弥恵の救援を選んだ。『漣のナイフ』を慎重に振るい、弥恵を傷つけないようにその表面を覆うパンツやブラを斬り裂いていく。さすがに何度もやっているとコツが掴めてきたのか、スパスパと十枚強のパンツやブラを斬り裂き、弥恵から剥がしていった。

 弥恵と彼方を覆ったパンツやブラを剥がすのにイレギュラーズは手を焼いたが、それは同時にパンツやブラの付喪神を確実に倒していっていると言うことでもあった。今までと同じように弥恵と彼方を覆うパンツやブラが剥がされる度に、新たなパンツやブラが弥恵と彼方を覆っていったが、それも次第に少なくなっていった。
 最後には、権堂、聖方、興田の三人から全てのパンツとブラが離れて弥恵と彼方を覆ったが、既に大半が剥ぎ落とされて力尽きた以上、弥恵と彼方から完全にパンツとブラが引き剥がされるのをわずかに引き伸ばしたに過ぎなかった。
 ――かくして、『フレッシュ』の商品であるパンツとブラの付喪神は残らず討伐され、パンツやブラに覆われミイラのような姿になっていた『フレッシュ』の社員や警官達は、誰一人命を落とすことなく救出された。
 なお、『フレッシュ』社屋から出てきたイレギュラーズ達は、どっと疲れたような表情をしていたと言う。

成否

成功

MVP

津久見・弥恵(p3p005208)
薔薇の舞踏

状態異常

なし

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。皆さんの活躍によって、パンツとブラの付喪神は残らず討伐され、取り憑かれていた人達も無事に救出されました。
 MVPは、プレイングで舞の最後にオチを付けていて下さった弥恵さんにお送りします。あのオチがあったおかげで、最後を楽しく執筆出来ました。

 それでは、お疲れ様でした!

PAGETOPPAGEBOTTOM