シナリオ詳細
たのしいゾンビ掃除の時間
オープニング
●
「ふはは、どうしよう! 大ピンチだ!」
とある研究所にて、瓶底メガネの女が叫ぶ。
彼女が見つめるモニターにはどこかの洋館の景色が映っているが、そこにあるのはそれだけではない。
モニターの画面に蠢くのは――無数のゾンビ達である!
「失敗作の薬品がヤバイことになっちゃったなー! 屋敷ごと爆破しようにもセキュリティがなー」
女はぶつぶつ呟きつつ、部屋の中をぐるぐる歩く。
このまま自分一人でどうにかするのは難しい。かといってこのまま放っておく訳にもいかない。
どうするか考えあぐねて、女はひたすら部屋をぐるぐる歩くのだった……。
●
「来てくれてありがとう。ゾンビ退治の時間だ」
境界案内人・カストルがイレギュラーズへと声をかける。彼の手には一冊の本が握られていた。
「この世界では度々マッドサイエンティストの女性『シーディ』がトラブルを起こしているんだよ。そのトラブルの解決を君達に手伝って欲しいんだ」
今回のトラブルは所謂バイオハザード、危険な薬品によるゾンビの氾濫が原因らしい。
「シーディは薬品から人工生命体を作ろうとしていたんだけど、その薬品は失敗作だったんだ。出来上がったのは不完全なゾンビ達ばかりでどうしようもない。彼らを解放した屋敷ごと爆破しようにも、屋敷にも特殊なセキュリティが施してあるからどうしようもないみたいだね」
件の屋敷には『いざという時のために爆弾が設置してある』が『人の姿をした存在が動いている限り安全装置が作動する』という状態になっているらしい。
つまりトラブルを解決し屋敷を爆破するためには――。
「皆には洋館内部のゾンビを殲滅してきて欲しい。幸いなことにゾンビ達はそんなに強くはないよ。君達が力を合わせればきっと大丈夫」
まさかのゾンビパニック依頼だが、とにかくばっさばっさと敵を薙ぎ倒してくればいいようだ。
百戦錬磨のイレギュラーズ達ならきっと大丈夫。カストルはそう付け加え、皆に改めて笑顔を向ける。
「それじゃあ気をつけて。皆の活躍、楽しみにしているよ」
- たのしいゾンビ掃除の時間完了
- NM名ささかまかまだ
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年04月17日 22時48分
- 参加人数4/4人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●
訪れた屋敷は外から見れば小綺麗なものだった。
けれど内部から感じるのは呻き声、そして死臭。
あからさまなシチュエーションを前に、『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)はげんなりとした表情を浮かべていた。
「ゾンビが大量だなんてこれまたゲームみたいなシチュエーションじゃねえか」
「ああ、そうだな。名作ホラー映画にもありそうな舞台で……笑っちまうぐらいに、おあつらえ向きの舞台じゃないか」
世界の隣でニヒルな笑みを浮かべるのは『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)だ。
「まさかゴシックホラーをリアルで楽しめるとは思いもよらなかったぜ。シーディってお嬢ちゃんがやらかしたみたいだが、おかけで仕事が回ってきたんだ」
こういう馬鹿が居るから、俺達が食いっぱぐれることはない。何ともありがたい話だ。
「……まあ、絶対に俺の側にいて欲しくねえタイプのトラブルメーカーだがな」
「あ、オレ気になったんで、カストルに色々聞いておいたっス」
準備運動をしつつ、『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)もまた会話に加わる。
「屋敷は実験施設みたいなもんで好きにしていいって言ってたし、シーディも屋敷を爆破したら確認に来るって言ってたっス」
「そうですか。僕もシーディさんと少し話がしたかったので、ちょうどよかったです」
葵の言葉に応えるのは『無限循環』ヨハン=レーム(p3p001117)だが、彼の表情はいつもよりどこか強張っていた。
「人工生命体、そう上手くはいかないものですね。勝手に生み出されて何も考えることもできずに討伐される、不憫なものです」
「そうっスね……こんなにわんさかだなんて、シーディとやらはさぞ後先考えねぇようなヤツなんスかね」
ゾンビ達が他者に害を加えることしか出来ないのだと言うのなら、自分達が出来るのは彼らを滅ぼすことだけだ。
「……終わらせてあげるしかないでしょう」
「片っ端から潰していくしかないっスね、持久力を鍛えるには持って来いって感じっス」
決心を固めるヨハンの横で、準備運動を終えた葵も屋敷を睨む。
銃の準備を終えたジェイクは不敵な笑みをそのままに、屋敷の裏口を目指しているようだ。
「気合も十分、弾丸数も十分、保健所の代わりに汚物処理でもして来るとしよう」
「そうだな、全滅させるのは簡単ではないだろうが……敵は脆いみたいだし手こずるなんてこともそうないはずだ」
世界もまた裏口を目指し歩を進める。気楽に行かせてもらうかね、なんて呟きつつ。
「っしゃ、キックオフっスよ!」
勢いよく叫ぶ葵の言葉を皮切りに、一行のゾンビ退治が始まった。
●
「うわ、本当にゾンビまみれっすね」
表口から屋敷の中へと突入し、内部を改めて確認すればその状況は酷いものだ。
玄関ホールには家具が散乱し、ゾンビ達は所狭しと歩いている。
「……可哀想な生き物たちだ」
ヨハンもまたゾンビ達の姿を見遣り、沈痛な面持ちを浮かべている。
それならせめて、全力で葬ろう。秘めた力を開放し、圧倒的な魔性を発揮すれば準備も万端。
「オレもとにかく攻撃していくっス。ヨハンも気をつけて!」
「葵さんも! もし怪我をしたら、すぐに僕の所まで来て下さいね!」
二人はそれぞれ床を蹴り、ゾンビ達との距離を詰めていく。
「いつも通りに行けば大丈夫っスね」
愛用のサッカーボールを設置し、足元には真赤なエネルギーを充填して。
そのまま葵がボールを蹴り出せば――放たれるのは必殺のパーフェクトバウンスだ。
砲撃のように放たれるボールは次々にゾンビ達を撃ち抜き、彼らの命を終わらせていく。
攻撃をすり抜けたゾンビも見逃さず、葵は彼らとの距離を詰める。
思い浮かべるのはボレーシュートのイメージだ。そのまま身体を回し蹴りを放てば、足の甲が見事にゾンビの胴を捉えた。
「つってもやっぱ、サッカーと格闘技じゃ勝手が違うのは否めねぇな……」
相手が吹き飛ばされた道行きを利用して、葵は一気に廊下を駆ける。
奥に見えたのは2階へ続く階段だ。そちらにもゾンビが蔓延っているが、彼らはそのまま足場にしてしまえばいいだろう。
無数のゾンビ達を踏み越え、葵はぽつりと独り言を呟いた。
「結構な数を連続で踏みつけたら残機が増えねぇかな、無理か」
一方ヨハンもゾンビ達との戦いを始めていた。
「この歪んだ生に終わりを告げよう――ワールドエンド・ルナティック」
ヨハンの放つ魔力は紫色の帳へと変わり、次々にゾンビ達を包んでいく。
この魔法が齎すのは逃げられない死だ。それと同時にヨハンが籠めたのは、深い祈りの気持ちだった。
「次に生まれてくる時はもっと良い人生を送れますように。さようなら」
別れの挨拶を告げ、次のゾンビを目指してヨハンは駆ける。その音に誘い出されるよう、屋敷に奥からはゾンビ達が向かってきていた。
「……キミたちは生まれてきて幸せだったのだろうか?」
答えは返ってこないけれど、それでも何か出来ることはあるはずだ。
「天の光を見せてやる、フルルーンブラスター!!」
魔力を単純な破壊力に変え、一直線に突き出せば――眩い輝きは歪な命を呑み込んだ。
次に彼らが光を見る時が来るならば、それが幸福であることを願いつつ、ヨハンは更に屋敷を駆ける。
●
場面は変わって、屋敷の裏口にて。
ジェイクが勢いよく扉を蹴飛ばせば、その音に誘われるように無数のゾンビが姿を現す。
そのまま挨拶代わりに放つのは、二丁拳銃『狼牙』と『餓狼』による鋼の驟雨だ。
「さあて、料金分の仕事をさせてもらうぜ。世界はどうする?」
「そうだな……俺も今回は銃を使わせてもらおうか」
ジェイクに続いて屋敷へと足を踏み入れた世界の手には、魔道自動小銃『スノーフォックス』が握られていた。
本来ならば後方支援を得意とする世界だが、今回は状況が状況だ。
どこぞのゾンビ退治の通はナイフ一本で無双するなんて聞いたこともあるけれど……そんなのは自分にとって荷が重い。
それならジェイクと同じく、銃を使う方がいいだろう。
「囲まれた時のための準備もしてあるぜ。だから、どうにか出来ると思う」
「そいつは良かった。それじゃあ、楽しんで行こうぜ」
二人のガンマンは勢いよく屋敷を駆け、迫るゾンビへと立ち向かっていく。
鋼の驟雨は決して止まず、ジェイクは勢いのままゾンビを撃ち続ける。
広い廊下に出たのなら、これはこれで戦いやすい。
「汝、罪なりってな。これでも喰らいな」
二丁の銃が放つ裁きの弾丸は次々にゾンビ達を撃ち抜き、執拗にその生命を終わらせていく。
しかしこれだけ景気よく銃を放っていけば、どうしても弾切れというのは発生してしまう。
「おっと、こういう時こそ冷静に、だ。」
すぐさま破壊された家具の陰へと身体を滑らせ、慣れた手付きで素早くリロード。
スタイリッシュな銃撃戦を行うならば、慌てず騒がず射手としての基本に忠実に。
しっかりと銃に弾を籠め、ジェイクは家具の陰から跳ねるように飛び上がる。
そんな彼に注目するゾンビ達へ向け、身体を回転させつつ弾丸を放てば――あっという間に掃討の完了だ。
「汚物はきっちりと消毒しないとな」
着地と共に体勢を立て直し、再びジェイクは屋敷を駆ける。狼の狩りは止まらないのだ。
「……っと。慣れない武器を使うのも、新鮮だな……!」
スノーフォックスで次々に敵を撃ち落としつつ、世界も屋敷の中を駆け抜ける。
幸いなことに相手は脆く、動きも決して俊敏ではない。冷静に戦っていけば苦戦するような相手でもないだろう。
ならば注意しなければいけないのは――やはり数か。
撃ちきれなかったゾンビに囲まれそうになった瞬間、世界は懐へと手を突っ込んだ。
「こういう時こそ、こういう手段が一番だぜ」
取り出したのは用意してきた精霊爆弾だ。
それを周囲のゾンビへと投げつければ――火薬と魔力によって生み出された爆発がゾンビ達を呑み込んで、あっという間に周囲を火の海へと変えていく。
「やはり敵地ではこれが効くな。効率よく行こうか」
焼け焦げたゾンビの死体を横目に眺め、世界は更に屋敷を進む。
銃に爆弾、まさにゲームのような武装というのも楽しいものだ。
●
一行の戦いが終われば、後は爆弾を起爆するだけ。
燃え盛る屋敷を見遣りつつ、葵と世界は同時に大きな溜息を吐いた。
「何だろうな、やりきったハズなのにこの虚無感……」
「ゾンビを倒すごとに報酬でも貰えたら、今頃俺は大金持ちだぜ……」
無双と言えば聞こえはいいが、ゲームと現実はやはり違う。
死肉の臭いに残る障害物達。なんというか、凄くやりづらかった。
「当たり前と言われればそれまでだが、できれば二度と体験したくないもんだ」
「仕事としてはシンプルで悪くなかったとは思うぜ?」
スーツについた血を払いつつ、ジェイクは最初と変わらない笑みを浮かべている。
オーダーは果たしただろう。あとは依頼人と顔を合わせるだけだ。
「皆、お疲れ様。ありがとうね」
「あ、どうもっス。依頼、ちゃんとやってきたっスよ」
一行が一段落した頃に、シーディも現場へと姿を現した。
頭を下げる葵の横を通り過ぎ、ヨハンはシーディの前に立つ。
「シーディさん、今回だけは助けましたけど。今回の依頼も科学の進歩のために必要なものだったのかもしれませんが……」
「うん?」
「……僕は生き物の命を終わらせたくはなかった」
静かに、けれどしっかりと紡がれるヨハンの言葉。シーディも彼の顔をしっかり見つめ、聞き入れる姿勢を取っていた。
「彼らの犠牲を無駄にはしないでくださいね。あんなバケモノでも、きっと生きたかった」
「……そうだね。私も軽率だったと思う。彼らの犠牲も、しっかり受け止めていくよ」
屋敷とゾンビ達を焦がす炎はイレギュラーズ達を照らし、黙々と燃え盛る。
それは少しだけ、弔いの炎のようだった。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
こんにちは、ささかまかまだです。
ゾンビ相手に無双してください。
●目標
屋敷内のゾンビを殲滅する。
舞台となる屋敷は二階建ての洋風なお屋敷です。
いつか人工生命体が生まれた時に過ごせるように家具やらなんやらが揃えられていましたが、それも全部爆破させることとなりました。
ゾンビはゆっくり歩くタイプです。
知能は低く、噛みついたり引っ掻いたりしてきます。脆いですが囲まれると少々厄介かもしれません。
厳密にはゾンビっぽい人工生命体です。
好きに無双して下さい。
●この世界について
シーディというマッドサイエンティストの女性が好き勝手している世界です。
今後も何かトラブルがあればイレギュラーズ達に助けを乞うかもしれません。
●サンプルプレイング
ゾンビをやっつければいいんだね!
私のスキルが火を噴くよ!圧倒的な火力で大暴れしてやる!
でも囲まれないようには注意しなきゃ。
家具も盾にしていこうかな?
最後に屋敷が爆破するところまでしっかり見届けていくよ。ああ、よく燃えてる……。
Tweet