【頽廃世界グノーシス】旅をする男

オープニング

●旅の道中
「やあ、随分と歩いたね」
　境界案内人のミヤコに声をかけられ振り返る海(カイ)。
ーーああ、あんたか。どこにいても見つけられるんだな。
　それが私の仕事みたいなもんだから、と苦笑するミヤコ。
「それで？旅の方は順調かい？」
ーーああ、とりあえずはそうなんだが……。
　どうにも歯切れが悪い。トラブルだろうか。
ーーあの方角に海がある。その海岸沿いに海洋都市があったんだが。
　問題はその道中、らしい。
　途中には森がある。そこを住処にする動物達は獰猛で更には集団で行動するものも多い。
迂回すればいいのだろうが、そうするとかなり日数を取られ、物資も持つかどうか。
ならば森の中を突っ切った方がいいのだが。
　ミヤコがこのタイミングで現れたのは渡りに船だろう。
「ああ、そういう事なら彼らに声をかけよう」
ーーあんたも同行してくれてもいいんだぞ。
「考えておこう」
　ミヤコとて元いた世界では狩りのひとつもやっていた人間である。まったく戦えないわけではないが、この危険な森を進むのに戦力としては如何なものか。苦笑しつつも境界図書館へ戻るミヤコであった。

●書斎にて
「というわけで、諸君。今回も頼めるかな？」
　書斎に集められていたイレギュラーズに説明をしていたミヤコ。
　森にはクマやイノシシ、オオカミなど一般的に森に生息している動物が生息している。
　更にはつがいや群れで行動している事も多々ある。
　以前、海がいた廃墟は警戒しながらも罠を仕掛けるなど対策は取れていたが今回ばかりは難しい。
ーーそれで、お前はついてくるのか？
「気が向いたらね？」
　気が向いたらて。
　それにしても元々いた廃墟からかなり離れた場所にいるようだが。よくここまで歩いてこれたものだ。
「ああ、それならーー」
　まだ動く自動車の類があったらしく、それを使ったらしい。ただ、燃料が手に入らなかった為にやむなく放置してきたようだが。
　よくもまあ、ろくな移動手段もないのに旅をしようと思ったものだ。呆れつつも海(カイ)のところへイレギュラーズは向かうのだった。

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第3章

第3章 第1節

朝。
荷物をまとめ、皆様方は出発するところです。
森を抜け、海岸沿いを歩き。
そして海洋都市へ。
この海洋都市、遠目からは
栄えていたように見えます。
もちろんそれは昔の事ですが。

海岸沿いには獣の類はいないようです。
森が近くにあるので
決して安全とは言えませんが……。
この海洋で夏の砂浜でできる事なら全てできます。
泳いだりスイカ割りしたり。
現実世界ではまだそれらは早いですが
そこはほら、異世界ですから。
これがしたい、とかあれば大凡はできます。
シャワーはありませんが、着替えはできます。
岩陰に隠れたりとか。
堤防釣りもできます。

海はその辺で何かしてます。
何かあればどうぞ。
ゴミは持ち帰りましょうね？

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第3章 第2節

　海洋都市。ここも廃墟になってから随分と久しい。
　遠目で見るぶんには立派に見えていたが、実際のその荒れ方は酷い。
　『剣砕きの』ラダ・ジグリ(p3p000271)が別荘で見つけた昔の写真。それからどれほどの月日が流れたのか。
　そしてカイは一体いつから独りになってしまったのだろうか。
「私は海で遊びたい性質でもないから、海（カイ）のやりたい事につき合うよ」
ーーん？そうか？なら……そうだな。
　少し考え、堤防へ。
「そういえば、カイはまだここに人がいた頃に来たことはあるのか？」
ーーあるよ。昔、家族と一緒にな。
　聞けばあの森も昔は危険な動物など、いなかったらしい。それにちゃんと道も整備されていた。
ーーあの時の俺は釣りを趣味にしていてな。よく別荘から子供を連れてここへ来ていたが、退屈すぎてえらくごねられたな。
　昔を懐かしむその表情はーー
ーーそれとまだ何か聞きたそうだな。
　カイの護衛は海洋都市に到着するまで。その先、カイがどうするかはわからない。だからカイと別れる前にもう一つ。
「何故……というより、本当はやりたい事や、心残りがあるんじゃないか？」
　カイはこの世界で独りぼっちだ。孤独。それは心をどれほど蝕むか。なのに、死んでもないし、諦めているようもに見えない。
ーー心残り、か。……そうだな、確かにある。どうしよもないけどな。が、それはまた近いうちに話すとしよう。

成否

成功

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第3章 第3節

　イレギュラーズのおかげで無事に海洋都市へ辿り着いた海。一息つきたいところではあるが、すぐにそうはいかないのが面倒なところ。
「それで？これからどうするんだい？」
ーーああ、それなら行くところがある。
　それがどこかまでは教えてくれなかったが、どこか懐かしんでいるように見える。
「ならしばらくしてからまた様子を見に来よう」
ーーああ、またお前達と会える事を楽しみにしている。
　その言葉に目を丸くするミヤコ。
ーー……なんだ。
「いや、まさか君の口からそんな台詞を聞けるとは思ってなくてね」
　そもそもこの男と関わるようになったきっかけはミヤコのお節介が原因なわけだが。
　最初のこの男は無愛想で他者を寄せ付けないところがあった。
　それが今ではその態度が軟化してきている。
　この世界で何が起きたのか。そろそろ明かされる頃かもしれない。
　そう思いつつ、この世界を去るミヤコであった。