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シナリオ詳細

再現性大阪2010:かにざんまい

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 再現性東京<アデプト・トーキョー>――それは練達に存在する地区である。
 練達は旅人達が作り上げた都市国家だ。この世界に突如として召喚された者達の中にはファンタジー世界である混沌に耐えきれぬ者が居た。平穏と普遍の生活を求め、主に地球、それも日本地区出身の旅人や、それらに興味を持つ者達が作り上げた『日本』を模した特殊地区だ。
 複数エリアに分かれた内部では様々な時代が乱立していた。古き良き昭和をモチーフとする『1970街』、高度成長とバブルの象徴たる『1980街』、次なる時代への道を模索し続ける『2000街』――そして、ここ、再現性東京に何故だか存在する『大阪地区』だ。

「ちゃいますがな」
「何も違わへんやろ」
 クルル・クラッセン(p3p009235)の心からのがっかり感満載の嘆きに、再現性大阪での案内役として抜擢された東出――関西なのに東とはこれいかに――が応じた。
「いや、カニ食べ放題の道楽気分が味わえる依頼って聞いて来たのに? 依頼内容はカニ専門店の看板(メス)が『24時間365日立ちんぼなんて嫌や』言うて逃げ出したから捕まえろとか? しかも水槽のカニ達も『食べられるまで生配信とかプライバシーがなっとらん』みたいに逃げ出した? それらを捕獲して店に戻せと?」
「せやねん」
 せやねん、じゃねーんだわ。
 なんで看板が逃げるんだよ。カニが逃げるんだよ。自我を持つんだよ。まずそこから説明してくれよ。
「いうて混沌(ここ)でその辺り真剣に議論すんのアホちゃう?」
「アホっつったなお前! バカなら許せるけどアホは戦争だよ!?」
 大阪だとアホ>バカぐらいの罵倒レベルらしいことはクルルもしっていた。これは虚仮にされたなと。
「まあ、ええわ」
「よくねえよ」
「なんやねんホンマ……成功報酬やろ? カニ懐石の約束取り付けとるわ。これでエエか?」
「分かった。頑張るよ」
 ちょれーな。


 カニ達はドウトンボリへと集結していた。
 人間達には自らの不満をありったけ叩きつけて出てきた。それでいいんだ、と。
 これから起きる話は『後日談』であるべきで、カニ達は不満を抱えて出ていった不敬者という認識でいい。
 そう、これはカニ達にとっては生鮮、いやさ聖戦であり、人間にとってはただの動乱である。
 それで終わりだ。それ以上のことなど何も起きない。
「OCTPuuuussssss!!!!!」
 道頓堀に現れたこの大ダコもろとも、カニ達は堀の残骸になる。だから、それでいいのだ。

GMコメント

 アフターアクションだからこういうことになるんですよ(今月2回目)

●成功条件
 ジャイアントドウトンボリオクトパス(『タコ』でいいや)の撃破
(オプション)看板蟹の生存、生簀蟹の半数以上の残存

●ジャイアントドウトンボリオクトパス
 タコです。
 海から遡上してドウトンボリに至った過程で全身に色々なゴミとかを纏っています。
 なお何故か兵器の類もくっついており、それらも動きます。
 HP・EXA高め。
・礫体防護(P):瓦礫により防技が高い状態です。部位狙い(命中下方修正)の高火力攻撃を受けた際、瓦礫が剥がれて徐々に防技が低下します。代わりに反応が上がります。
・礫脚(A):物遠ラ、連、万能。瓦礫による威力補正とかBSとかが結構あります。
・瓦礫キャノン(A):神中単、大威力。キャノンの動力はタコの魔力のため神秘属性です。
・水飛沫(A):物近範、目くらましなどの効果があります。なんていうか水が綺麗ではないのでBS的にもアレです。

●ドウトンボリオクトパスベビー(子タコ)×たくさん
 タコの子供的なサムシング。
 1体あたりの戦闘力は大して強くありませんが張り付いて噛み付いて来るため、命中力の高い『防無』攻撃を行ってきます(低威力)。集中攻撃による回避減衰が特に厄介。

●看板蟹
 友軍1。カニ料理店のAI搭載看板です。
 そこそこの戦闘力をもちます。
 雑魚相手ならまあ戦える方です。

●生簀蟹×10
 いけすかないカニ共です。生簀だけに。
 子タコを仲間から剥がして回りますが、タコの攻撃に当てられたらひとたまりもありません。注意してください。

●戦場
 堀の前の大通り的なところです。
 タコは堀の中から攻撃してきますが、レンジ1以上の攻撃なら路上からでも当たります。
 至近攻撃の場合は工夫が必要ですが、堀の中に無策で入ると【致死毒】を被るのでやめたほうが無難です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 再現性大阪2010:かにざんまい完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年04月17日 22時48分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

道頓堀・繰子(p3p006175)
化猫
アンジュ・サルディーネ(p3p006960)
世界の合言葉はいわし
エリス(p3p007830)
呪い師
ルーチェ=B=アッロガーンス(p3p008156)
異世界転移魔王
雑賀 才蔵(p3p009175)
アサルトサラリーマン
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
クルル・クラッセン(p3p009235)
森ガール
チクワ=ザ=アークゴッド(p3p009420)
誰だお前!

リプレイ

●本国のノリを再現しにいく
「にゃははー! 来たで再現性大阪!! この感じめっちゃ懐かしいわー。おっ! あの看板もあんねんな! 再現度たっかいなー!」
「ちくわ大明神」
「誰や今の!」
 『化猫』道頓堀・繰子(p3p006175)は再現性大阪のあまりの再現度の高さに心から喜びつつ、アチコチ眺め回していた。そんな中唐突に挟まれる『誰だお前!』チクワ=ザ=アークゴッド(p3p009420)の言葉に突っ込む事も忘れない。ほんとなんだ今の。
「看板のカニさんも、たまにはお休みをもらえたらいいですよね。ニルも同じところにずっといるのは退屈になりますし、カニさんにも気分転換? は必要だと思うのです」
 『はらぺこフレンズ』ニル(p3p009185)は概ねにおいていい子なので、脱走を企てた蟹達に凄く同情していた。そりゃあまあ蟹にだって事情在るよなと。看板として勤め上げてるなら週休制にしたほうがいいよなと。まあこういう高級店に休日なんざあるのかな? と言われるとわからんけど。
「かににもプライベートはあるから逃げ出したい気持ちはわかるけど、戻ってもら……なにこれ!? きっったない川! さいあく!」
「汚いやろー。これがコダワリの再現度なんやなあ。……例のファーストフードの像とかも沈んでるんやろか?」
 『いわしを食べるな』アンジュ・サルディーネ(p3p006960)はニルに同調してうんうんと頷いていたが、目の前の堀のあまりの汚さに鼻を摘み手を振って追いやろうとした。だが、繰子はこれが本来の姿なんよとばかりに喜んでいる。喜んじゃいけなくない?
「……成る程、つまりやってられないと看板の蟹が逃げ出し、さらになってないと生簀の蟹が逃げ出しそれを連れ戻せば蟹懐石と……ついでにミス・クルルは『ちょろい』と」
「ちゃいますがな。……じゃなくて!」
 『アサルトサラリーマン』雑賀 才蔵(p3p009175)は依頼人というか東出から聞いた情報を整理し、それから『森ガール』クルル・クラッセン(p3p009235)の方をちらっとみて頭を下げた。なんで頭を下げられたのかさっぱりわからないクルルであったが、ロクな理由じゃなかったなと理解するまでも早かった。バカにされている気がしたが、彼女にとっては今がまさに踏ん張り所だった。なぜなら。
「カニ三昧の前には全てはどうでも良い事だよネ」
「……だが奴等を捕まえねばそれも叶わぬ話だし、何ぞ堀から顔を出しておるがのう」
 クルルが「はー楽しみ!」とチョロさを見せつけている傍ら、『異世界転移魔王』ルーチェ=B=アッロガーンス(p3p008156)は目当ての相手と思われる蟹達と、今まさに堀から顔を出さんとする大ダコの姿を指差す。
「ええと、カニ専門店の看板とカニ達が自我を持って逃げ出したからそれを捕まえる……??? どこから突っ込めばいいのかわかりませんがとりあえずこのタコ達を倒せばいいのですね!」
 『呪い師』エリス(p3p007830)は大体わかったというようなリアクションで大ダコを指差すが、一同は(特にニルは)頭にクエスチョンマークを大量に浮かべている。
「……タコ……ですか?? 」
「まさかあのジャイアントドウトンボリオクトパスがいるとはな……あのデカさは並大抵のジャイアントドウトンボリオクトパスでは無いのだろう……いや、全く知らないのだかな、ジャイアントドウトンボリオクトパス」
「はー、タコとかクソじゃん。いわしを食べる不届き者じゃん。殺さなきゃ」
「何ぞ知っとるんか才蔵君、そしていきなり物騒やなアンジュちゃん?!」
 才蔵はワケ知り顔、そしてアンジュは宿敵の出現に殺意5割増し。繰子はそんな2人に思わずツッコミを入れてしまった。関西人のサガというやつである。
「体は練り物でできている。ゆえにカニカマは少し邪教であるが、カニと共闘に不満はない。
 衆生は一切救われねばならぬ。ならば害を成すタコを成敗するのが道理。ちくわの威光は無尽無辺に照らし届かねばならぬのである」
 チクワはちくわなので練り物である(自称)。大明神であるからして、カニを救うことに異論なく(自称含む)。
『アノ生体ハ危険デス。我々ニオ任セヲ』
「君達がいなくなれば蟹(懐石)の未来はどうなる。蟹(懐石)の為にも生き残って欲しい」
 「蟹」と発音しながら「懐石」と口を動かす凄い技術を見せつけつつ才蔵は看板蟹を説得。次々堀から上がってくる子ダコ相手に奮戦する生簀蟹を説得するように看板蟹に迫る。
「さて、さっさと倒して懐石料理とやらをたべてみた‥…おっとここでは言わぬが花であるな」
「大体全部言っとるんよなあ。それにしても……なんや怪獣モノのB級映画みたいな絵面になってんなぁ。『巨子ダコVSメカ蟹 子タコとカニを添えて』っちゅーところやろか?」
 ルーチェは隠したようで全然隠せていない本音を散らしつつ即座に繰子にツッコミを入れられている。繰子はといえば目の前の様子に凄いB級映画臭を覚えているが諦めてほしい。世にはコアな洋画っぽい依頼を好む連中が普通にいるのだ。
「さあ、今日もお仕事、頑張ろー! 」
 クルルは仲間達へ向けて拳を突き上げ、元気よく宣言した。なお、一同「せやな」って感じで神妙な顔をして頷いていた。


「皆、依頼人のオーダーは蟹の捕獲だから子タコもガンガン減らしていくよ!」
 クルルはタコ達を可能な限り多く狙える位置へと踏み込むと、挨拶代わりと電撃を放つ。子タコ達はぶっちゃけ個体性能が低いので驚くほどバタバタ倒れていく。が、タコ同士が折り重なることで犠牲を軽減するなどの小賢しい手練手管を用いる辺りズルい。
「いわしに仇なす全ての者に、滅びと裁きの鉄槌を! ……パパたちを呼びたくないけど水辺だし、仕方ないよね」
「ここからでは真っ直ぐ打つとカニに当たるな……ならば大ダコの瓦礫を引っ剥がすのである」
 アンジュはいわしジャッジメントによる裁きを大ダコに叩き込み、電撃によってとっさの対応力を削り取る。堀の汚れは、ここにきてタコ不利に働いている。なにせ汚い水というのは導電率とか高いからだ。続けざまに発されたチクワの魔砲は、混沌に来て日が浅いとは思えぬ高威力でゴリっと大ダコの瓦礫を引き剥がした。動けないので子ダコの接近が鬼門だが。
「こちとら関西人やで。この橋の欄干に乗って目隠しで大道芸出来るレベルでよう知っとるからなー」
「繰子さん、凄いです……!」
 繰子は言葉通りに橋の欄干に飛び乗ると、華麗な動きで赤と黒、破滅をもたらす連撃を叩き込む。あまりに自然に動くものだから、よもやタコ陣営も敵対者とは思わなかったのだろう、彼女の一撃は綺麗に入る。声援を送るニルもまた、周囲の子ダコを闇の月を以て一掃し、生簀蟹達を庇いにいった。
「あの大ダコのサイズなら、余の攻撃も当たるであろ……お……!?」
 ルーチェは瓦礫目掛け強烈な魔力を文字通り『吐き出し』、大ダコの守りを削ごうとした。のだが、子ダコ達が彼女に群がり動きを鈍らせた刹那、身を捩った大ダコの触腕が連続してルーチェの身を叩く。魔力の奔流は夜の大阪をネオンよろしく照らし出すと、何処かへ消えていった。残されたのはギャグ構図よろしくぺしゃんこのルーチェ(パンドラ使用済)だ。
「ミス・クルル、俺と貴女でもう少し子ダコを減らしたら大ダコ掃除だ。頼りにしても?」
「大丈夫大丈夫、わたし今日すごくやる気だから! あっ、アンジュちゃんなーいす! 動き鈍ったよ! 繰子ちゃんも凄い凄い!」
 才蔵は続けざまに襲いかかる触腕を避け、仲間に落下しようとした大砲の弾を撃ち落としつつ、子ダコを掃討していく。グリード・ラプターから吐き出される弾丸は彼の意志を全く邪魔することなく、苛烈な火力を叩き出した。クルルは彼の言葉に応じつつ仲間に声援を絶やさない。すべては懐石のためだ。
「弊板に纏わりついた程度で勝ちをとれると思っているなら大間違いである。弊板の役目は仲間の補助であるがゆえに」
 チクワは自らに纏わりつく子ダコを完全に無視し、魔砲を撃ち、ルーチェ含む仲間達を治療しに回る。とはいえ彼は不動の大明神なので、なんとか手が届く範囲内で、だが。
「蟹さん達、体力がそろそろ危なさそうだから逃げてね? 看板蟹さんもちょっと治療が追いつかなさそう……」
『――仕方アリマセン』
 エリスは大ダコの動きを魔術で阻害しつつも、仲間達の治療を引き受ける。だが、治療した傷より受けた傷が多くなれば、そろそろマズいことは薄々ながら理解できた。特に蟹達は下手にタコから攻撃を受けて汚水に穢されては困る。懐石のためにも。なので看板蟹に頼んで逃してもらうことにした。そうじゃないとほんとヤバい。
「はーアンジュ達の蟹に手を出すなんてゆるせねえ」
 アンジュも治療に回っていたものの、飽くまでメインは攻撃といわんばかりにいわしミサイルを叩き込んでいた。大ダコだろうと子ダコだろうと構わずドカドカと。それでも蟹に当たらないように十分に状況を見ている辺りやはり彼女は才女なのだと思われる。色々アレなのはさておき。
「OOOoooct……」
「大ダコが砲撃準備しているのです、みなさん気をつけて下さいなのです……!」
 大ダコ、触腕による乱打が尽くカス当たりだのスカったりだの、一時的に触腕以外での攻撃ができなかったりとイレギュラーズによる妨害をこれでもかと受けたせいで半ばキレ気味になっていた。
 複数の砲台をフル稼働させて強烈な一撃を放とうとチャージを始めた姿は、ニルから見ても最悪レベルの危険度であることは間違いない。蟹はのがしたが、このままではイレギュラーズの命が危ない。
「弊板の火力では瓦礫を剥がせてもあの砲台を今から落とすのは難しいのである。できるだけ丸裸にして残った仲間で倒してほしいのである。……弊板はこの距離なら当たらないのであるが」
「ミスタ……ミスタ? チクワ、それはフラグになるからやめたまえ! 堀から登ってきたらどうする!」
 チクワはある程度離れているから攻撃の射程外ではあるが、才蔵の言う通り万が一がありうる。
 仮にその「万が一」が起きた場合、再現性大阪ドウトンボリ周辺に安全地帯はないのだ。たとえ懐石料理店の中ですら!
「あれだけ行動を封じたのになんでまだ動けるのですか……!?」
 エリスはかなり優位に戦闘を進める助けとなった。なっていたのだ。だが、大ダコの根性はどうやらそれすら上回るらしく。徐々にチャージが増幅されていく状況下、さらなる一手を狙おうにもちょっとヤバめな状況だった。
 そう、普通に考えてこんなところで一発逆転EX超攻撃なんてぶっぱする奴は大抵クソである。
「そんな技、予想してないと思てんか?」
 クソであるが、これが盛大な前フリであることはよくある話だ。繰子は欄干にまっすぐ立ち、この時をまっていたとばかりの渾身のドヤ顔を見せた。イレギュラーズ一同は動揺を隠せない。……だが才蔵とクルルは彼女の戦いぶりから察していた。
「まさか――」
「そのまさかや! さあ射ってみい、このタコ!」
 繰子の挑発にあわせたように、チャージを終えた大ダコが砲撃を放とうとした。
「――PPPPPuuuuuS!?」
 だが、背面のキャノンは盛大に爆発した。それが複数。ジャイアントドウトンボリオクトパスの瓦礫は、その衝撃で全て吹き飛んでしまったのだ。
 そう、繰子は暗刻による執拗な攻撃で大ダコの運命を徹底的に穢していたのだ。時折攻撃が盛大に空振ったのもそのためだが、大ダコは気づかなかった様子。
「アンジュ、タコ嫌いなんだよね。いわし食べるから。は~~ビビらせやがって許せねえ たこ焼きにするね」
「タコは大人しくタコ焼きになってればいいんだよ! わたしのカニ三昧の邪魔しないで欲しいんだよ!」
 アンジュはひとしきり盛大なため息を付いた後、殺意をあらわにした。クルルもそろそろ懐石おあずけにキレかけていた。

●この後さんざBSを盛られた大ダコはクルルの呪殺ラッシュでざくざく潰されていったし才蔵のスタイリッシュガンアクションが展開されたわけだけど瓦礫のないタコをボコる描写は動物愛護的にNGなので蟹懐石をお楽しみ下さい
「これが……蟹懐石……」
「あんなくさいタコのごはんにならなくてよかったね……アンジュ達のご飯として人生を全うしてくれて有難うね……」
「チクワの威光がカニに届かぬという道理はない。だが、今回ばかりは懐石になってもらったのである」
 全て終わり、心からの感動に声をつまらせた才蔵の前には甲羅で温められたカニ味噌があった。これを平らげた後に甲羅酒をキュっといくのである。最高かよ。アンジュはカニ天ぷらを塩でいただく。海から取れた塩だけに、海中で食べるのと大差ない(しかし甘味が大幅に増幅した)味わいは感動すら覚える。チクワにとっては救えなかった後悔がなきにしもあらずだが、美味しいので仕方ない。
「この汁、カニの味がすごい……! すごく、凄い……!」
「鍋とかで殻をなんとかするのに無口になるって聞きましたが、高いお店だとその辺もちゃんとしてるんですね……ああ、なんていうかこの身の解れ具合……!」
 クルルはカニ汁を前に完全に語彙が死んでいた。食べ放題ではないものの、お高いカニの味をこれでもかと凝縮した汁物の味は言葉を奪いにくる。エリスはしっかり殻とか切られて刺し身としてお出しされた(だがつかめるように足がある)カニをちゅるりと一息で頬張り、弾力と解れやすさの絶妙なコントラストに心が癒やされる感じがした。
 というか。
 先程までドウトンボリのクソ悪臭のなか戦った一同(服はファブったり洗ったり乾燥したりしました)は、かに料理店内のそこはかとなくいい香りに全員、浄化されつつあった。アレだけの戦闘を行っただけあって、空腹は絶頂、食事の味は最高潮。
「さっきまで守っていたカニさんが、おいしいごはんに……でも、皆さん楽しそうなのでニルは『おいしい』と思います」
 ニルの感じる『おいしさ』の根幹は、つまるところ『交流と明るさ』にある。
 なので、俗に静かな食卓になりがちなかに料理というのはニルには美味しく感じにくい……のだが、今回は会席料理。静になるリスクを抑えた状況ならば、とても『おいしい』のである。
「再現性大阪にはたこ焼きというのがあると聞きました。タコは焼いたらたこ焼きになるのでしょうか?」
「おっ、タコ焼き気になるか? うちが出したるで!」
 ニルがカニ茶碗蒸しを食べながらぽつりとつぶやくと、すかさず繰子がギフトでたこ焼きを生み出す。
 あまりの早業に驚く者、先程のアレを思い出し神妙な者になる者、反応は様々であったが概ね場が明るくなったのは確かであり。
 ……これはとても『おいしい』なと、ニルは想ったのだった。

「ちくわ大明神」
「だから誰や今の!」

成否

成功

MVP

クルル・クラッセン(p3p009235)
森ガール

状態異常

ルーチェ=B=アッロガーンス(p3p008156)[重傷]
異世界転移魔王

あとがき

 こんな川にいるタコは食べちゃ駄目です。

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