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シナリオ詳細

柴犬てらてら地獄

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●現世で満たされなかった欲望が、怨念と……化し、あの妄執が、あの、なに、こう、わーってなってがーってきてこう、ね、こう!
「ひゃん!」
 おめめのぱっちりした柴犬ちゃんがベロだして振り返った。
 まふっとしたふわふわのしっぽを千切れんばかりに振り、スキップごとき弾みで駆け寄ってくる。
「わー、可愛い子犬ー。どうしたのー、おいでー」
 なんか都合良くその場にいた女子が腰を落とし手をぱしぱし叩きながら柴犬ちゃんを呼び寄せる。
 ひゃんひゃん言いながら飛び込んでくる柴犬ちゃん。
 おいでーってする女子。
 柴犬ちゃん(笑顔)。
 女子(笑顔)。
 柴犬ちゃん(笑顔)。
 女子(真顔)。
 その距離が縮まるにつれ、女子の表情が陰っていった。
 距離にして3メートルあるかないかってところで、女子は巨大な影に覆われ、高く眼前の目標を見上げていた。
「ひゃん!」
「ちがうこいつ子犬じゃない――野生のゴーストだ!」
「ひゃーん!」
 飛び上がる全長5メートルの柴犬。
 女子はンアーみたいな悲鳴をあげ、もふりつくされたという。

●生命と精神を亡者に喰らわれた生者はアストラルの……なに、かくりょからの、目、的な、こう、やる気的な、あれが、くたーってなる……くたーってなる!
 右手をご覧くださいのポーズをとる『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)。
「そんな被害にあわれた匿名希望女子さんがこちらなのです」
「アルフです。友達はあるきゅんって呼びます」
 匿名つってんのに自分から名乗る匿名希望女子(仮)さんは、全身頭からつま先までが、なんかてらてらしていた。
 なんかてらてらしていたのだ。
 でもって、表情はすごくぐたーっとしていて、気が抜けてるというか気合いが無いというか、数日間の徹夜仕事から帰ってくるOLみたいな具合になっていた。
「バルツァーレク領の東に位置する草原地帯に漠然と『ゴースト』て呼ばれてるモンスターが現われたのです。
 これは生前あんまり遊んで貰えなかったワンコの霊魂がたくさん集まって出来た、『まだ遊び足りない感じ』の集合体なのです。
 その土地を納める小貴族さんから退治を依頼されていて、情報源としてつい最近出た被害者のこの方……えっと、職業や趣味は秘密の女子さんに来て貰っているのです」
「機織り職人をしています。趣味は男の娘観察です」
「ゴーストの外見はさっき説明した通りなのです。
 結果として、職業や趣味は秘密の女子(仮)さんのように、ぬけがらーって感じになってしまうのです。
 攻撃の仕方は……なんでしたっけ?」
「ぺろぺろされます」
「んっ」
 ユリーカは笑顔のまま停止した。
「ぺろぺろされます」
「はい……」
「ぺろぺろされます!」
「聞こえてます!」
 急に何かのスイッチが入ったらしい女子(仮)を押さえて、ユリーカはイレギュラーズたちを振り返った。
「そういうことなのです! ゴーストを倒してきてください! はやく! おさえてるうちにはやく!」

GMコメント

【オーダー】
 成功条件:ゴースト(柴犬)の退治

 このシナリオの成功ルートには二種類あります。

・Aルート:柴犬ゴーストを囲んで殴り続けそして殺す
・Bルート:柴犬ゴーストが満足するまで一緒に遊び倒す

 どちらを選ぶか、まずは相談して決めてみてください。
 円滑化を求めるなら自己紹介と同時に宣言しちゃうくらいの速度でどうぞ。
 どっちのルートを行ってもいいように、両方の攻略情報を解説します。

【Aルート:柴犬ゴーストを囲んで殴り続けそして殺す】
 一定以上の攻撃を受けるか、対応メンバーの多くが『こいつぶっ殺そう』って思ってると柴犬ゴーストは凶暴化して襲いかかってきます。メタ視点でいうと、このルートを選んだ時点でこのシナリオは搦め手ナシの純戦シナリオとなります。正面からわーっていってわーって戦ってください。

 柴犬ゴーストはHP・AP・特殊抵抗・命中・機動力・EXAが高く、大きいせいでマーク・ブロック不能です。
 攻撃方法は分かっていませんが見た目からして噛んだり殴ったり突進したりといった具合になると思われます。
 戦闘のパターンが走りながらばしばし攻撃して回るという形になりそうなので、盾役を前衛に出して回復する作戦がすげー速さで戦線ぶっ壊れます。全員がまんべんなく戦闘を維持できる作戦を立ててください。

【Bルート:柴犬ゴーストが満足するまで一緒に遊び倒す】
 柴犬ゴーストは遊びたくってしょうがない気持ちが集合したゴーストです。なので固有名称とかないんですが、とにかく遊びたいって気持ちはひとつです。なので遊んでくれそうな人たちを見つけると遊んでオーラ全開で突っ込んできます。
 このルートを選んだ時点で別ルートにはいかないようにして下さい。(厳密にダメではないですが、大変な上に多分後味がすごく悪くなります)

 柴犬ゴーストは全長5メートルの柴犬です。厳密には子犬じゃないのですが豆柴感もあります。
 犬が好きそうな遊びは大体好きで、ひたっすら皆で遊んでやれば喜びます。満足しきると成仏(?)してゴーストそのものが消えていきます。
 ただし柴犬側のスタミナが半端ないので、全員で一種類ずつ(飽き対策として他の人と被らない程度にわけつつ)遊びを持ち込んで、かわりばんこで遊んであげましょう。
 尚、全員もれなく全身てらってらになります。
 どうしてもてらってらになった様を見たくない人は……えっと、どうしよう、プレイングのどっかに『テラテラNG』とか書いてください。描写をカットします。
 書いてない場合容赦なくてらります。『テラテラOK』と書いても同じくらいてらります。なんだテラテラOKって。深夜のバラエティ番組みたいだ。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • 柴犬てらてら地獄完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年06月14日 21時00分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
フェスタ・カーニバル(p3p000545)
エブリデイ・フェスティバル
シエラ・バレスティ(p3p000604)
バレスティ流剣士
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
スリー・トライザード(p3p000987)
LV10:ピシャーチャ
ユーリエ・シュトラール(p3p001160)
優愛の吸血種
アーデルトラウト・ローゼンクランツ(p3p004331)
シティー・メイド
エナ・イル(p3p004585)
自称 可愛い小鳥
アリス・フィン・アーデルハイド(p3p005015)
煌きのハイドランジア
エウラリア(p3p005454)

リプレイ

●しばいぬごーすと
「あ、そうだ! ぺろぺろが好きみたいだし、『ペロ』ちゃんって呼ぼう!」
 『エブリデイ・フェスティバル』フェスタ・カーニバル(p3p000545)が頭上に電球ぴっこーんして顔を上げた。
「ペロちゃん」
「ペロ様」
「ペロ……」
 草原を歩いていた一同はぴたりと足を止め、一旦想像してみた。
「ぴったりですね」
 エウラリア(p3p005454)はペット用のオモチャとペットフードの袋をそれぞれ手に持ち、投げるオモチャやカリカリに夢中になるペロ(仮)を想像した。
 おもちゃもイイやつを用意した。ホネ型の荒縄みたいなやつで、わんこまっしぐらとポップに書いてあったやつだ。カリカリだって念を入れて大型犬用である。けど気づいてるかな……ペロ、全長5mくらいあるんだけど……。いや、気持ちは伝わるはず。オモチャもロープとかで作れるはず。
「柴犬ゴースト様……いえ、ペロ様は遊びたくてしょうがないのですね。折角ですしペロ様には遊び倒して満足していただくとしましょう」
「そうだな。思いっきり遊んで成仏してくれるなら、それに越したことはないだろう。皆で思いっきり遊ぼう」
 ぐっと拳を握ってみせる『慈愛の恩恵』ポテト チップ(p3p000294)。
 『魔法少女』アリス・フィン・アーデルハイド(p3p005015)もそれに同意して頷いた。
「悲しいお別れより、笑ってお別れ出来るのがきっと一番だから」
 ゴーストの退治を依頼されてはいるものの、その手段は問われていない。
 優しいゴースト退治があったって、いいはずだ。
「そうと決まれば!」
 『笑顔の体現者』ユーリエ・シュトラール(p3p001160)は大きな木の板から削り出したらしい美しい流線型フリスビーを頭上に掲げた。もうフリスビーっていうか敷物のサイズだったが、5mの柴犬にはピッタリなはずだ。
「いっぱいいっぱい満足して遊んでもらわないと! ぺろぺろされるのもどんと来いです!」
「そういえばぺろぺろされるんだったね」
 『輝きのシリウス・グリーン』シエラ バレスティ(p3p000604)がどうしようという顔で帽子を掴んだ。
「でも大丈夫。下に水着きてきたからね!」
 上着を開いて見せれば、フリルのついた可愛らしい水着がちら見えした。

「ゴーストは掃除するもの」
 どこからなにをつなげてきたのか、急に呟く『シティー・メイド』アーデルトラウト・ローゼンクランツ(p3p004331)。
「つまり、シティーメイドの出番というわけでございますね」
「え、あ、はい?」
 よく考えたらシティーメイドって名乗ってるのは今のところアーデルトラウトだけなので、常用語みたいに言われて戸惑う『(自称)可愛い小鳥』エナ・イル(p3p004585)である。
「遊び倒しててらってらになってやりますよ! いい遊びも考えてきましたからね!」
 ふんすっ、とガッツポーズをとるエナ。
 『神話殺しの御伽噺』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)も同じような気持ちなのか、髪の毛がリズミカルにふわふわしていた。どうやら感情に合わせて頭髪が動く癖があるらしい。
「巨大な霊体と遊ぶ。このような体験、そう得られるものではありません」
 『LV8:グール』スリー・トライザード(p3p000987)はシャベルを肩に担ぎ、きらりと目を光らせた。
「全力で取り組みましょう」

●柴犬てらてら地獄
「わーっ! わーぁ!」
 全力ダッシュのユーリエ。
 つまずいて転ぶシエラ。
「しえらちゃ~ん!」
「さきにいってー! わー!」
 背後から迫る巨大な柴犬にぺろっぺろされ、水着のシエラがたちまちのうちにてらってらになっていく。
 満足した柴犬はハッと顔をあげ、フェスタ止めがあった。
「まってまって! ほら! ささみ! ささみすてぃっくだよ!」
 大型犬用ささみスティック。いいお値段のするそいつを握りしめて掲げた手……っていうか上半身もろともはむっと咥える柴犬。フェスタは『ん゛ん~』みたいな声を上げて足をじたばたさせ、てらってらの状態で芝上へ放り出された。
「だめだこの子、遊びたくってしょうが無い状態になってる……」
 既にてらてらのポテトが顎を手の甲でぬぐう。もう汗なのか柴犬(ペロ)のよだれなのかわかんなくなってきた所だ。
「霊体になめ回される……なるほど、これも未知……」
 スリーはスリーでなんか満足そうである。
 今思ったけどこいつ無敵かもしれない。
「遊んであげるにも、まずは大人しくさせないと……」
 ひとりだけ空に飛んで逃げてたアリスが、魔法の杖に腰掛けるようにしてペロとそれになめ回されるユーリエたちを見下ろした。
「でも、言葉でわからせるのは難しいよね」
「なら、身体で語るしか無い」
 エクスマリアが仁王立ちでペロの前に飛び出した。
 髪の毛が編み上がり、巨大な四本の腕となってペロを受け止める。
「今だ」
「「はいっ!」」
 目をギラリと光らせたエウラリアとエナが、そしてモップを手にしたアーデルトラウトが、それぞれペロに飛びかかっていく。
 四方向挟み撃ち! 彼女たちはペロへ一斉に――。
「よーしよしよしよしよしよしよしよし!」
「いーこいーこいーこですねー!」
「ここですかここですかここですか」
 全員で一斉になで回しはじめた。
 肉体言語の正しい使い方かもしれない。
 暫くエクスマリアやアーデルトラウトをてらってらにしたペロは、なで回されたりペットフード(一袋を一瞬でいった)を食べたりしているうち徐々に大人しくなり、地面に伏せて遊んで貰うのを待つようになっていった。
「ペロ様、流石でございます」
 褒めてるのかしつけてるのか、ないしはその両方か。
 エウラリアはペロにペットフード二袋目を直接口にざーってやると、おでこをわしわし両手で撫でてやった。
 今は『待て』と『伏せ』を教えているところだ。
 普通の犬は子犬の内から教え込んでも数日かかるとか聞いたことがあったが、その辺は霊体ゆえの情報速度なのかペロはすぐにエウラリアのいうことを聞くようになった。
 彼女がしつけの基礎技術を持っていてその上で適切に行動したからというのも充分にあるだろう。
 暫く段階を踏んで、隠したオモチャを見つけさせたり投げたオモチャを撮ってこさせたりを繰り返しているうち、ペロはいよいよ巨大なだけの犬となっていった。
「そろそろ良い頃合いでは?」
「そうだね。頭を使った遊びをしてみようか」
 ポテトはおやつを手にして、ペロの前に近づいてみた。
 人の顔くらいある大きな鼻がくんくんと動く。ポテトのおやつに反応しているようだ。
「どっちの手にあるか当てるゲームをするよ。いい?」
 ポテトは一度見えないようにクッキーを手に握り込むと、ペロの左右へと突きだして見せた。
「どーっちだ」
「わん!」
 クッキーを握ったほうの手を鼻でつつくペロ。開いてみると、しっかりクッキーが握られていた。
「当たりだよ。いいこいいこ!」
 クッキーを口に放り込み、頬の辺りに寄りかかって前進でなで回すポテト。
 ペロが大きいせいでクッキーが歯に挟まるかすか何かみたいなサイズに見えたが、それでもペロは喜んでいるらしい。らしいというのは、振りまくる尻尾や目の純粋さからなんとなーく伝わってくるという意味だ。
「では、身体を使った遊びもしましょうか」
 アーデルトラウトがパイ投げでもするかのような姿勢で、手の上にエクスマリアを乗せて現われた。
 急に想像しづらいことを言って申し訳ない。
 メイドがトレーにおやつを乗せてやってくるかのようなテンションで、自身の頭髪を用いて巨大な球形になったエクスマリアを片手に乗せていると思って欲しい。特技の合わせ技である。
「ペロ様、ボール投げです。行きますよ」
 せーのと砲丸投げのフォームをとったアーデルトラウトが、エクスマリアボールをメイド力でぶん投げた。
「取ってくるのです!」
「わんっ!」
 大空を回転するボール。
 ユーリエやシエラがそれを見上げてげっそりした。
「酔いそう」
「大丈夫なのかな」
「どうだろう……エクスマリアちゃんって無表情だから」
「けど、きっと無事じゃあないよね……」
「うん……」
 ぼよーんと地面をはねるエクスマリアボール。それを口でくわえ、アーデルトラウトのもとへ走る。
 なんか頭髪(?)がくてっとしてる気がしたので、ユーリエたちは両手を振って割り込んだ。
「交代! 交代交代ー! 今度はフリスビーを投げるよ!」
 ユーリエが頭上に掲げて持ってきたのは、先述した巨大フリスビーである。
 木を素材にした軽くて弾力のある、上部なフリスビーだ。細かい部分は省くが、買ってこようとしたらとんでもない額になるイイ出来である。いや、こんなサイズのフリスビー売ってすらないと思うけど。
「まずはお座りだよ! 待て! よし……」
 ユーリエはハンマー投げの要領でフリスビーを投擲。
「とってこーい!」
「わーん!」
 ペロはとんでもない初速で飛び出すと、土と雑草を巻き上げつつフリスビーに飛びついた。
 うまいもんで、空中を飛ぶフリスビーをキャッチして戻ってくる。
「走ってばかりではありませんよ。ペロ」
 スリーがシャベルを地に突き立ててきりっとした顔をした。
「私とペロ、どちらが素早く穴を掘れるか、勝負です」
 言ってることが分かるのか、空気で察したのか、ペロは前足で地面をザッとひっかいて見せた。
「大きさ故のハンデということですか。なら、自分が埋もれる程度の穴を先に掘った方が勝ちです」
 目をぎらぎらと光らせ、スリーはスコップを構える。
「私が負けるようなことがあれば、好きなだけペロペロすればよいでしょう」
 ――三分後。
「ばかな……」
 てらってらになったスリーが穴に半分ほど埋まっていた。
「三本勝負にしませんか」
「てらてらにされる回数が増えるだけだよ」
 アリスはペロの頭上、というか首のあたりへ横乗りするように腰掛けると、長い棒の先に食べ物をつるしたやつを取り出した。
 一方で、横に立って頬を撫でるフェスタ。
「一緒に走ろっ。川辺まで!」
 頬にキスをして、先に走り出すフェスタ。
 ペロはそれをしのぐ速度で横を走り始める。
 犬の走るスピードとスタミナは人間のそれをゆうに超えるという。小型犬ですら大人の全力疾走を簡単に追い抜くらしく、5mともなれば――。
「ぴゃっ!?」
 アリスが風圧で吹っ飛んだ。
 ハッとしたペロがアリスを追いかけてUターン。
 フリスビーの要領でキャッチすると、フェリスの横を再び走り始めた。
「あーっ! ちがう! これ私の考えてたやつとちがうっ! はなしてー!」
 声がぐんぐん遠のいていくのを、エナやシエラたちは微笑ましく見送った。

 川辺は木々が生い茂り、ペロの巨体では通れない場所も多かった。
 けれど岩場を飛んだり細い枝を曲げて進んだりとなんやかんや器用に、ペロは川辺にたどり着いていた。
 べしゃんと落ちるアリス。
「だ、大丈夫?」
 手を差し出したフェスタに、アリスは目をぐるぐるにして応えた。
「もうどっちが上かわかんない」
「よくここまでこれましたね!」
 腰に手を当てたエナが、岩の上で待っていた。どうやら木々を抜けて先回りしていたらしい。
「次はかくれんぼです。ボクの居場所を探し出してみましょう!」
 エナは胸をはって、ふっふっふと笑った。
「完璧なスニーキングはわんちゃんすら欺くのです。もし万が一見つけることができたなら、ボクをてらてらにしてもいいですよ!?」
 ――三分後。
「ばかな……」
 てらってらになったエナが川の浅いところに体育座りしていた。
 顎に手を当てるスリー。
「デジャビュー……」
「次はこうは行きませんよ! 三本勝負です」
「デジャビュー……」
 そこへ、水着になったシエラが川へ飛び込んだ。
「フリフリ水着で可愛さ余って魅力100倍! さぁペロちゃん! 私と一緒に川遊びだ~!」
 わーいとばかりに口を開けて川へ飛び込んでくるペロ(全長5m)。
「わー!」
 悲鳴、跳ねとぶ魚、水しぶき。

 それからペロとシエラたちは遊びまくった。
 水をかけあい、魚をとり、てらってらになり、大きすぎるペロのアクションに振り回されつつも、へとへとになるまで遊び尽くした。
「さてと、仕上げですよ!」
 ユーリエは長くて頑丈なロープを持ち出すと、その一方をペロにくわえさせた。
「綱引きです! こちらは10人、ペロはひとり」
「ふ……」
 ロープを掴むポテトやフェスタたち。エクスマリアも頭髪をなんやかんやしてロープを固定している。
「遊びといえど勝負の世界は無情。メイドは全力で職務を全うします」
「こう見えても腕力はありますので」
 アーデルトラウトやエナもロープを握り、一方でペロもロープの端を加えて引っ張る姿勢をとった。
 アリスはきらりと目を光らせ、ロープを強く握りしめた。
「こっちは10人。戦闘経験も豊富なメンバー。もしこれに綱引きで勝てたなら……私たちをてらってらにしてくれていいよ!」
 ――三分後。
「知ってた……」
「「デジャビュー……」」
 10人はてらってらになったままロープを握っていた。
「一瞬だったね」
「私たちもろともロープが飛びましたね」
「地面がはがれた」
 それまで舌をだしてハッハしていたペロは、目をうとうととさせるとその場にうずくまった。
「おや……?」
 シエラやユーリエが頭をぽふぽふやっても、目を開ける様子は無い。すやすやと寝息を立てるようにしている。
「これは……」
「はい、恐らく」
 エナはペロのお腹に手を当てた。ほっこりと微笑むフェスタ。
「満足してくれたんだね」
「よかった、ですね」
「…………」
 スリーは黙って身体を撫でている。一方でポテトは身体に抱きつくように寄りかかり、顔をうずめていた。
「生まれ変わったらまた遊ぼうね?」
 同じく寄りかかって語りかけるアリス。
 ペロの身体が消えていく。
 現世に残った想いが解け、霊体もまたほぐれていくのだ。
 エクスマリアは冥福を祈るように、目を閉じた。
「ペロ様、良きお名前をいただきましたね。たとえ、貴方様が名もなき幽霊だったとしてもその名前とお姿はわたくしたちの記憶に生きた証として刻まれました」
 安らかに。そう述べて、アーデルトラウトもまた祈るように目を閉じる。
 皆が再び目を開けた時には、ペロの霊体は消えていた。ほのかなぬくもりだけを残して。

●後日談
 草原地帯から帰る一行。
 さっきまでのことを話したり報酬の受け取り方を相談したりといった具合だが、そこへ。
「おや?」
 遠くから駆けてくる小さな影に、エウラリアは首を傾げた。
 豆柴だ。遠くから走ってくる。
「あれは、またゴーストが?」
「ちがうこれはゴーストじゃない」
「ひゃん!」
 遊び足りないといった様子で胸へ飛び込んでくる子犬を、エウラリアは抱き留めた。
「野生のペロです!」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 おかえりなさいませ。
 途中で野良の子犬をひろっていらっしゃったのですか?
 ペロさんの生まれ変わりだと? ……そうかもしれませんね。これも何かのご縁、お連れ帰りになってはいかがでしょうか。

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