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シナリオ詳細

【Tissier Town】おかしな街が生まれた理由

完了

参加者 : 3 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●当たり前すぎて、誰も知らなかった事

 ティシエール街では、この所街で見かけなかった若い顔が増えつつある。その殆どが、ティシエール街の美味と美景を味わいにはるばる訪れた観光客だ。

「わあ、本当に噴水からチョコレートが出てる!」
「ねぇ、バームクーヘンのベンチで一休みしようか」

 しかし、外部の人間がこんなにも急に訪れるようになって、街中でトラブルになりはしないだろうか?
その心配は無用。先日イレギュラーズにこってり絞られてからというもの、猛省し改心した元ならず者……今やこの街の新たな住人となった若者達が、日夜パトロールをしているからだ。彼らの懸命な働きぶり……そして至福の笑みで『つまみ食い』する姿に、ティシエール街に元々住んでいた人々も、すっかり暖かく受け入れるようになっていた。

「お兄さん達、歩き回って疲れたでしょう。ハニーミルクはいかがかしら」

それはこのティシエール街の名物おばあちゃん、マリアも同じだ。

「いいんすか!」
「ゴチになりまーす!!」

 老婆の持つトレイから、厚手のマグカップを受け取った彼等は、はやる気持ちを抑えて、火傷しないよう口をつける。
ハニー池のシロップと、新鮮な牛乳をよくよく温め、かき混ぜた一品は、他に余計なものを加えていないのもあって、ミルクの優しい口当たりと、まろやかな甘さを持つ蜜が、飲む物を皆笑顔に変えていった。

「やーっ、ばーさんが作ってくれるのは何でもうまいなっ!」
「ホントだなあ」

しかし、ここでティシエール街の外部から来た彼等は……街の外から来た人間だからこそ、とある疑問を抱く。

「そーいやあ、ばーちゃん。どうして、ティシエール街にはそこら中に甘いものがあるんだ?」
「そうそう、家とか、道までお菓子になってるなんてさ。俺等は美味いからいいんすけど、いつからこうなったんすか?」

「それは……」

 この街で生まれ、育ち、このティシエール街の恵みに感謝しながら生きてきたマリアであっても、その答えは分からない。彼女達が子供の頃……もっと言うなら、その先祖達の代から、この街は『こう』だったのだ。
故に、この光景が日常になり、当たり前すぎて……この街への感謝の情こそ忘れないが、その由来、所以までは……この街の誰もが、忘却してしまった。

ただ、一つ。

「昔、お母様にね、この街がこの姿になったのは『お菓子の魔女』との【約束】があったから、というのだけは、聞いたことがあるのだけれど……」

それ以上の情報は、彼女すらも思い出せず。マリアは困ったように笑うばかりだった。

●誰も知らない物語を語ろう

「……確かに。あたしも皆を送り出すだけで、この街の秘密は知らなかったな」

 マチネも山積みにされた書籍から、『それらしい』情報を探しているのだが。これといった収穫はないらしく、ふうとため息をついた。

「多分、『お菓子の魔女』との【約束】が、キーワードなんだと思うけれど……でも、いつだって物語を切り開くのは、貴方達だよね、イレギュラーズ」

 だから、お願い。
どうか、ティシエール街の物語を、作ってあげてくれないかな。……美味しいお菓子でも味わいながら、さ。

そう言って、彼女は静かに微笑んだ。

NMコメント

 どうも、なななななです。
誰も知らない、あるいは誰もが忘れてしまった街の歴史を、皆さんで作り上げてください。

以下、詳細になります。

●ティシエール街

 家も公園の遊具も外灯も、お菓子で作られた不思議な街です。
 
 街中のお菓子全てに不思議な魔法が掛かっていて、思いっきり踏んだり叩いたりすれば割れるものの、何をしても汚れる事はなく、食べてお腹を壊すこともありません。
また、食べてもまたすぐに、新しいものがどこかからやってきます。 
『チョコ噴水』『パフェ公園』『シュガーハーバー』『ハニー池』『ベークド通り』等、人気のスポットから寂れた裏通りまで、お菓子に覆い尽くされています。

 先日の『ティーパーティー』を経てから、徐々に隣町や遠方の人々を積極的に招待するようになり、今やすっかり、観光客にも人気の街となったようです。

●目的

『ティシエール街の物語を作ること』。

 この街の何もかもがお菓子で出来ている理由を、この街の住人は当たり前すぎて忘れてしまったようです。
街の内外に語り継ぐための、ティシエール街の伝説を、皆で作っていきましょう。
『お菓子の魔女との約束』が、唯一のキーワードです。

 悲しい物語、愉快な物語、不思議な物語と、正解、不正解はありません。参加者の皆様で、素敵なティシエール街の物語を作ってください。
それが、このままこの街の歴史となります。

●NPC

・マリア
 ティシエール街の名物おばあちゃんですが、彼女さえもこの街の歴史を正しくは知らないようです。
今回も、ティシエール街に来てくれた皆様に、美味しい飲み物やおやつを振る舞ってくれます。


以上になります。
それでは、お菓子と共に良い時間を。

  • 【Tissier Town】おかしな街が生まれた理由完了
  • NM名ななななな
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年03月29日 22時10分
  • 参加人数3/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 3 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(3人)

ニゼル=プラウ(p3p006774)
知らないこといっぱい
海紅玉 彼方(p3p008804)
扇動者たらん
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

リプレイ

●おかしな街の昔話

 ティシエール街の一部、ベークド通りは相変わらず、地元の人間の暮らしの気配はほとんど見えず、クッキーの壁は、今日も鮮やかなジャムで落書きされている。尤も、この所少しずつ増えつつある観光客は、ストリートアートの一部としてあまり気にしていないようだが……。
 
その静かな通りを歩いているのは、『知らないこといっぱい』ニゼル=プラウ(p3p006774)、『レディ・ガーネット』海紅玉 彼方(p3p008804)『お菓子の街の常連』イズマ・トーティス(p3p009471)だ。

 今回、イレギュラーズが依頼されたのは、このティシエール街の物語を作ること。『お菓子の魔女との約束』という言葉が、その手がかりだ。

 しかし、街唯一のウェハース図書館にも、それらしい資料はなく。マリア以外の老人に聞いても、成果は得られなかった。
街の住人も知らない街の歴史が、ティシエール祭の日を除いて誰も近づかない、このベークド通りに残されていないか、そのヒントを探しに来たのだ。

 ふと、彼方が目をやったのは、ブラウニー作りの一軒家。ニゼルもまた、釣られるようにそこに目をやった。あるいは、歩いている内に空いてきた小腹が、甘い香りに惹かれただけなのかもしれないが。一応、ドアをノックする。返事はないし、人の気配は感じられない。ドアを押せば、抵抗もなく空いた。そして、そこにあった一冊のノートに、彼女達は目を丸くした。

「これって……!」
「イズマさんにも後で知らせましょう」

これは、これから物語を作る彼らへの助けになるかもしれない。

●おかしな魔女の物語

 昔々、この街が『ティシエール』という名前ですらなかった頃のお話です。昔、この街はそれはひどい食糧難で、食べるものが何もなく、自分の家の机や椅子の足を削って、飢えを凌がなければならない程でした。
 その中で、ある日、女の子が、家の奥の奥に大事にしまわれていた『あるもの』を見つけました。銀紙から出てきたのは、嗅いだことのないような甘い香りのする、光沢のある、小さな小さな一欠片でした。

 時を更に遡って、これまた昔々のお話です。
ティシエール街から離れたとある町に、お菓子が食べられないほど、貧しい家に住んでいた少女がいました。

 彼女はいつもお腹を空かせていましたが、自分以外の誰もが、高級なお菓子を当たり前のように食べていて、そのくせ、つまらない顔をして、それらを貪る姿に、怒りを募らせるようになりました。
年月を重ね、魔法の力を手にした彼女は、その力で、世界から『お菓子』というものを消してしまいました。

 しかし、お菓子がなくなっても人々の生活に大きな変化はなく、代わりのものをすぐに見つけてしまいました。彼らにとっては、食べられるものなら何でも良かったのです。魔女は少しつまらなく感じましたが、お菓子がその程度の価値であったのだと改めて納得しました。

 やがて彼女は、とある山の魔女と呼ばれるようになりました。
ある日、そんな魔女の家を、一人のみすぼらしい女の子が訪ねてきました。

「魔女さん、教えて。これなあに?」

 そう言って、彼女は、銀紙に包まれた、小さな茶色い一欠片を見せました。山の魔女の噂を聞いた女の子は、彼女なら何か知っているかもと、この小さな一欠片だけをポケットに入れて、はるばる街からやってきたのです。
その女の子は知りませんでしたが、それは唯一、魔女の魔法から逃れた、最後のチョコレートだったのです。

 魔女は女の子からそれを受け取ると、完全にお菓子の存在を消してしまおうとその欠片を口に入れました。それは甘くほろ苦く、小さい頃の思いが魔女の心に蘇りました。
自分が触れ得ぬものをつまらないものとして扱いながら、捨て切れない憧れ。世の理を変えるほどの力を持った今でさえ、羨ましく他人の家を覗いていたあの頃と変わらない、貧しい自分に気づいたのです。

「……これは、チョコレートだよ」

魔女は、女の子に答えます。

「チョコレート?」
「甘くて苦くて美味しいものさ」
「美味しい……食べ物なの?」
「そうだとも」
「ねぇ、魔女さん。私の街の皆にも分けてあげて。皆いつも、お腹を空かせているの。皆、家の壁や土まで食べる始末で、誰も、ちゃんとした食べ物を持ってないの」

 そう話す女の子の細い細い手足に、魔女は気づいてしまいました。
それからしばらく考え込むと、魔女はこう言いました。

「あたしの魔法があれば、お前や皆の家を、さっきお前が持ってきたチョコレートにも、それ以外のお菓子にも、変えてやれるよ」
「皆、飢えずに済むの!?」

女の子は目を輝かせます。

「ああ、しかしあたしの力は無限じゃない。お菓子も食べればいつかは、無くなってしまう。けれど、一つだけ約束しておくれ」
「なーに?」
「あたしが魔法で、街をお菓子に変えてやるから、お前達は感謝して、それを食べるんだよ。そうすれば、あたしの魔法はずうっと続くよ。食べられるのが当たり前だとか、思っちゃいけない。……それから、あたしの魔法の事は、内緒にするんだよ」
「ありがとう、魔女さん。うん、私達、皆がしっかり、お腹いっぱい食べられるのが、何よりも嬉しい。絶対に飽きたり、『いただきます』を忘れたりしないわ。魔女さんの事も、勝手に皆に言ったりしない」

そうして魔女と女の子は、約束をしました。

「ところで、お前さん、名前は何と言うんだい」
「私、ティシエールです」
「そうかい。それじゃあいくよ、ティシエール。ちちんぷいぷい」

 魔女の呪文を聞いた途端、ティシエールは、元の街へ帰ってきていました。
これまでの事は、夢だったのでしょうか?

いいえ、そうではありません。
ティシエールの両親が、帰ってきた彼女に気づいて、声をかけてきます。

「ああ、ティシエール! どこに行ってたんだい、心配したんだよ」
「見てご覧、街中が甘くて美味しいものになってるよ! 誰がやったんだろう、でも、嬉しいことだねえ」
「ありがたや、ありがたや……」

 見れば、街中の人々が皆、幸せそうにホイップの川を掬い、チョコレートの噴水を汲み上げ、これも美味しいから食べてご覧、あっちにも美味しいものがあったよと、分け合っているではありませんか。
街の人皆が、幸せな笑顔を浮かべていました。

「魔女さん、ありがとう。私、ずっとずっと忘れない」

誰に聞かせるでもなく、ティシエールは、そう呟きました。

 後日、ティシエールは、魔女にお礼を言いに、再び山を登りましたが、そこには既に、誰も居ませんでした。
それでもティシエールは、いつか魔女に、お礼を言いたかったのです。
自分達が美味しいお菓子に感謝している事を、ちゃんと伝えたかったのです。

 美味しいお菓子に囲まれて、すっかり活気づいた街には、やがて名前が付きました。
今、私達のいるこの場所。『ティシエール街』、と。

こうして、お菓子でできた不思議な街が生まれました。

 この街が今でもお菓子の街であり続けられるのは、住人が感謝を込めてお菓子を食べ続けているからです。
どこかに消えてしまった魔女も、皆がしっかりお菓子への感謝をしているか、こっそり、どこかで見守っています。
街の人々も、事の経緯は忘れてしまっても、しっかり『約束』を守り続けているのです……。

●語り部達に、甘いご褒美を

 湯気がゆらゆらと立ち昇る紅茶、ふわふわと甘い香りが漂う、たっぷりのホイップクリームが添えられた、シフォンケーキに見守られ。
イズマの演奏、彼方の歌とダンスに乗せて、不思議な物語は、幕を下ろした。

最初の観客は、勿論、マリアだった。

「まあ、素敵なお話ね……」

 彼女は屈託のない笑顔とともに、ささやかな拍手を送った。
ティシエール街の名物おばあちゃんでもあるマリアへ、先行公開、という形で、小さなライブが開かれたのだ。

「いったいどうやって、こんなお話が思いついたの?」
「イズマさんとニゼルさんのアイデアが中心です。私はそれを歌と踊りに載せただけ」
「彼方さんもイズマさんも、すごくカッコよかったですっ!」
「ありがとう。でも、一番のヒントになったのは、マリアさんの言葉と……」

 イズマはそう言って、卓の上に視線を移す。彼らの座るテーブル、その中心には。
中身は、ほとんど読めないけれど。『ティシエール』と名前の書かれた、古びた日記が、置かれていたのだった。

成否

成功

状態異常

なし

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