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シナリオ詳細

【日夜探偵事務所】きみが二度と目覚めなくなる前に

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●広がる悪夢

 主の性格を表すように、小綺麗に整理整頓された、日夜探偵事務所。そのソファーに、この場に似つかわしくない子供が二人座っている。
一人は、顔を手で覆ったまますすり泣く少女。もう一人は、そんな彼女を宥める星宮太一だ。

「……太一くん、ミキ、どうしたらいいの……」
「ミキちゃん、大丈夫だよ。ここの人達なら、きっと何とかしてくれるから」
「そうだとも。だからミキ君。君の身に果たして何があったのか、話してくれないか」

 そして彼らとローテーブルを挟んで向き合うのは、ここの所長でもある探偵……日夜歩。彼の真摯な態度と、太一の励ましに、少女は少しずつ、その口を開く。

「お姉ちゃん、いつも早起きなのに、今朝は全然起きなくって。ミキも心配だったんだけど、ママは『ミキはいつもどおり学校に行ってきなさい』って言うから、いつもどおり、学校に行ったの」
「そうか、それでミキちゃん、今日はあんまり元気が無かったんだね……」
「うん……それで、学校が終わってすぐに家に帰ってきたら、お姉ちゃんの看病をしてたママが、お姉ちゃんに覆いかぶさるみたいに寝ちゃってて。パパも、仕事から帰ってきたら、すぐ玄関で倒れちゃって。何回呼んでも揺すっても、誰も起きないの」
「ふむ……君の家族が、順番に眠りに落ちてしまった、ということかい」
「うん……ミキ、怖くなって、家にいられなくなって、飛び出しちゃって。そしたら太一くんが居て」
「で、ボクもミキちゃんに『皆起きないの、どうしよう』って言われたから、歩さんなら何とかできるかも、相談しようってミキちゃんに話して、ここまで連れてきたんです」
「そういう事だったか……」
「うん……ねえ、探偵さん。お願い。皆を助け……て……」

するとミキは、急に太一に寄りかかるような姿勢になって、全身の力が抜けていく。それから目を瞑り……ピクリとも、動かなくなった。

「ミキちゃん!?」
「星宮君、僕が彼女を安全な場所で休ませるから、ローザ君を呼んでくれるかい」
「え、えっと、歩さん。これも『怪異』の仕業なんですか!?」
「ああ、恐らくだが、これは……『夜馬』。別名ナイトメアなる者の仕業だ。これを打ち倒すには、これからミキ君の夢に入る必要がある。その為の準備をローザ君に頼みたい」
「わ、わかりましたっ」

事務所を慌てて飛び出し駆けていく太一の背中を見送りながら、歩は呟く。

「しかし、たったの一日でここまで、彼女やその家族を侵すとは……」

思いの外、事態は逼迫しているようだ。これは、また『彼等』の手が必要になるかもしれない……。

●夜馬を祓え

「また、日夜探偵事務所に助っ人が必要みたい」

 単刀直入に、マチネはそう告げた。
今回倒すべきは、夜馬(ナイトメア)なる怪異。眠っている人間の精神に入り込み、その心身を侵し……やがてはその者の家族や、親しい者の精神をも食い潰し、廃人へと変えてしまう。

 しかし、通常の夜馬は、よりゆっくり、じっくりと時間をかけて、取り憑いた人間の夢や精神を喰らう者らしい。
今回のものは、一日のうちに次々と、ミキの姉や、父母の精神を貪り……そしてミキ自身を眠りに落とし、支配下に置いている。
その事から、今回出現したものは、通常の個体より強敵であると想定される。

「だから、日夜さんとも協力して、夜馬を何とか、やっつけて。ミキちゃんっていう子と、そのご家族の為にも」

NMコメント

どうも、なななななです。
悪夢に閉じ込められた少女と、その家族を助けてください。
以下、詳細になります。

●ジアース

 皆様が赴く世界の名前です。要するに神秘、怪異、化物、魔術が存在する現代日本……と思っていただければ結構です。

それらの存在は公には知られておらず……何も知らない人間は、それらに貪られ、弄ばれ、真相も分からぬままに命を落とす事も珍しくありません。
それらを扱い、対処するのが、【日夜探偵事務所】の裏の顔でもあります。

●エネミー

・夜馬(ナイトメア)×1
 黒い毛並みの巨大な馬ですが、足元には常に黒い靄がかかっています。
戦場を逞しい脚で素早く駆け回り、精神世界を踏み荒らしていきます。

 また、脚で蹴られたり、馬体で当たられるだけでもかなりのダメージになるでしょう。
機動力を奪うなり、足を狙い態勢を崩すなりすると、より戦いやすくなるかもしれません。

●戦場

・ミキの精神世界
 平坦で見通しの良い戦場ですが、夜馬が派手に動けば動くほど、足場、もとい彼女の精神が荒らされてしまうことでしょう。
しかしイレギュラーズの攻撃、移動で踏み荒らされる事は無いので、気にせず動き回ってください。

ローザの術により、皆様のアクセサリーや装備なども、問題なく戦場に持ち込めます。

戦場に障害物はありません。

【共闘者】

日夜歩(ヒヨリ アユム)

・OPにも登場しました、皆様と共に夜馬と戦う日夜探偵事務所の探偵兼所長です。主に接近戦を得意としています。
夜馬が逃げないよう、常に注意を引き続けるつもりのようです。
細身の青年ですが、強力な夜馬の突撃を受けても、数回は耐えられる程度にはタフです。
また、味方の傷を癒やす術も一応習得しています。

ヒールが少し使えるタンクだと思ってください。
また、皆さんから作戦の提案があれば、可能な限り協力します。

●その他NPC

星宮 太一(ホシミヤ タイチ)

・OPに登場した少年です。年齢は小学校高学年程。目上の人を必ず『さん』付で呼ぶ等、礼儀正しい子供でもあります。
怪異の好む香りを常に放ってしまう特殊体質持ちですが、ローザの『御守』のお陰で、日常生活に支障はないようです。
かつて彼自身が怪異事件に巻き込まれた際、日夜探偵事務所に助けられた事があり、今回依頼人のミキを事務所に連れてきたのも彼です。
今回は、皆様が夜馬と戦う為のバックアップに専念します。

ロザリー・カンナヅキ(ローザ)

・OPに名前だけ登場した、軽い雰囲気の若い占い師です。怪異に精通しており、それに対する防衛術も心得ています。特殊体質の星宮少年が普段平和に暮らせているのも、彼女謹製の『御守』の力があるからです。
誰彼構わず『ちゃん』付したり、あだ名をつけたりと、良く言えばフレンドリー、悪く言えば馴れ馴れしく人物です。
今回は、皆様が夜馬と戦う為のバックアップに専念します。

ミキ

・今回の依頼人。太一のクラスメイトです。
太一に勧められるまま事務所を訪れましたが、怪異や神秘の知識は皆無です。

以上になります。

ミキ達一家の眠りが永久のものとなる前に、どうか、悪夢を払ってください。

  • 【日夜探偵事務所】きみが二度と目覚めなくなる前に完了
  • NM名ななななな
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年03月23日 22時02分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
バルガル・ミフィスト(p3p007978)
シャドウウォーカー
エクレア(p3p009016)
影の女
青燕(p3p009554)
蒼穹の翼

リプレイ

●夢の中へ

 イレギュラーズ……『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)、『影』バルガル・ミフィスト(p3p007978)、『影の女』エクレア(p3p009016)、『蒼穹の翼』青燕(p3p009554)、そして日夜歩の5人の周りに、暗く、何も見えない世界が広がる。しかし、エレベーターが動くかのような浮遊感を味わうと、あたりが眩しい程の光に包まれ……そして、ミキの自宅と思しき建物と、そこに面した道路が、視界に映る。一行は『夢の中で目を覚ました』のだ。
 一同は現在、夜馬に侵された少女……ミキの精神世界に居る。しかし、夜馬の影響か……彼女の青空が時々、ノイズのように暗くちらついている。

「ゆったりと眠って過ごせるならいいけど、見せられてるのが悪夢だってんなら俺だって御遠慮したいものだね」

世界は不穏な空を見上げながら、小さく溜息をついた。

「今夜のメニューは黒馬の馬刺しだな」
「やめておけ、アレの血肉は美味いモノじゃないぞ」

彼の呟きに、日夜は小さくツッコミを入れた。

「おや、青燕さんがいらっしゃいませんね」
「バルガル君、忘れたのかい? まずは僕達の中で唯一空を行ける、広い彼の目で夜馬を見つけるという話だったじゃないか」
「ははは、そういえばそうでした」

 エクレアは、君も事前に手筈は聞いていただろうにと視線を投げるが、バルガルの笑みはどこか胡散臭い。それでも、一同の為すべき事は分かっている。

「いま、飛んで助けに行くからな。待ってろよミキちゃん。それに太一君も」

青燕は空を駆け回りながら、拳を小さく握りしめた。

『皆さん、どうかきっと、ミキちゃんを……!』

 彼女を救ってほしいと切に願う太一の声は、今も彼の耳にしっかり残っている。
そんな太一は今、有事の際に皆を起こすために、ローザ共々、現実世界で待機している。無防備な身体を見守る人間がいるのならば、イレギュラーズ達の身に差し迫った危険は無いだろう。それよりも、今は。程なくして、ミキ達家族を苦しめているソレは姿を表した。
 黒い靄を足に纏わせながら、アスファルトを砕いて走り回る、立派な馬体。先に聞いていた特徴と一致している。あれこそが。
青燕はベルを鳴らしながら空中を旋回。標的の居所を皆に知らせた。夜馬もその動きに当然気づくが、すぐに馬の顔近くまで高度を落とし、並走するようにその横を飛ぶ。

「なあ、君の脚と俺の翼。どっちが速いか競走しようぜ」

 よもや自分の脚に追いつく者がいようとは、夜馬も思わなかったのだろう。鼻を鳴らして、青い翼を撒こうとする。しかし、それこそがイレギュラーズの狙い。やがて彼と競ううちに袋小路に入り込んでしまった黒馬が、身を翻し引き返そうとするが、そこに立ち塞がるように、青燕の知らせを受けた皆が集まっていた。

「やあやあお馬さん、今までたくさん走れて気持ちよかっただろう。ここらでそろそろ、引退したらどうだい」

 ポーションの瓶を投げ捨て、エクレアは不敵に笑い、折れた直剣を突き付けた。更に、世界のイオニアスデイブレイクが、こちらの構えを盤石にする。
馬が競争に興じている合間に、こちらの準備は既に出来ていたのだ。まんまと陥れられた、そう感じた夜馬はダンダンと脚を踏み鳴らし、こちらへと勢いよく突っ込んでくる。

「おっと、皆! 危ないぞ!」

青燕が慌てた様子で皆の頭上へと舞い戻るが、この猛スピードで突っ込まれては、全員が退避することなど到底間に合わない。しかし。

「力任せの突撃など、我々には通じない!」

 日夜が馬体にわざとらしく嘲笑を浴びせ、その身体を晒す。それは彼には、夜馬の突撃を受けきれる自負があるから、というだけではない。
コートの青年の身体が、爆風を上げて走る巨体に軽々と跳ね飛ばされる……が、漆黒の馬体を裂くように……否、事実裂かれている。バルガルが、自分の脇をすり抜けていくそれを禍々しい剣で切りつけたのだ。それは路面に落ちた木片を知らずに踏んでパンクしてしまった自動車のように、気づかぬ内に災いをもたらす。だが、被害はそれだけではない。

 バルガルに切りつけられた痛みから立ち上がろうとする夜馬だが、足が思うように動かない。煙を上げながら、じりじりと、脚が焼けている。夜馬が日夜に向けて駆け抜ける進路上に、爆弾が仕掛けられていたのだ。それを仕掛けたのは。

「回言君、助かったよ。これでヤツは思うようには動けない」
「ああ。……しかし作戦のためとはいえ、中々無茶をするな」

 世界のミリアドハーモニクスを受けた日夜は、ゆっくりと立ち上がり、口内に溜まった血液を飲み下し、土埃を払うと、夜馬を睨んだ。

 ブルルルル、と低く唸るナイトメアだが、青燕にまんまと誘い込まれ、日夜に煽られるままに世界の持ち込んだ精霊爆弾を踏み抜いてしまい、重ねてエクレアの支援を受けていたバルガルの手痛い一撃、と、既に満身創痍だ。そんな彼に、エクレアはそっと微笑みかける。

「やあやあ、ナイトメアの君。ぼかぁ見た目通りの容姿端麗の窈窕淑女でね、そんな一輪の花のようなお姉さんを攻撃するわけないよね?」

 それを挑発ととったか、よろよろと重い身体を持ち上げ、真っ白な少女の元へと、走りだそうとする。が、その脚は、先刻日夜を跳ね飛ばそうとした勢いに比べれば、見る影もなく。

「危ない、っと!」

 青燕が軽々とエクレアを抱えて、空中へ退避……するとともに、ハイロングピアサーで更にその脚を折る。

「全く、つい先程も煽られて痛い目に遭ったばかりだというのに……正しく馬鹿ですかね」
「その言葉、本物の馬に失礼だぞ。それはそれとして世界君、もうすぐ馬刺しにありつけそうだが」
「あれは冗談だ」

 バルガルのヘヴン・セブンスレイ、日夜の爪が、更にダメージを与え。世界の白蛇が、きりきりと太い首を締め上げた。

 如何に屈強な体躯を持つ夜馬といえど、これ以上のダメージには耐えられない。そのまま、力尽きて倒れると。まるで夢だったかのように、溶けて、薄れて、消えていった。

「……協力、感謝する。僕一人では、こうは行かなかったろう」

 日夜はイレギュラーズに向き直ると、一人一人へと礼を繰り返した。意味深そうにに微笑む者、気にするなと笑う者、特に平素と変わらぬ者、その反応は様々だ。

「君達がうまくやってくれたこと、星宮君達にも伝わっている事だろう。さあ、現実世界に帰ろう」

そう言うと、朝日が登るように、世界に少しずつ光が満ちていき……。

●夢から覚めて

「すっごーい!!」
「ミキちゃーん!次はボクがやりたーい!!」
「ははは、順番になあ」

 事務所近く、自分達以外、誰もいない、ただっぴろい空き地の上空で、彼らは空と戯れている。
イレギュラーズがミキの精神世界から退去して間もなく、ミキは目を覚まし、涙声で『ありがとう』と伝えてきた。その様子を見て、ひと目で彼女は無事だと分かり、一同は安堵の表情を浮かべた。
ミキの家族の安否も即座に確かめたが、一番最初に被害を受けたミキの姉に関しては念の為、一定期間の治療・経過観察をとる必要があるが、会話等にも支障はなく、父母にも異常はみられない。これが日を跨いでいたら、こうは収まらなかったろう。

 そんなミキも今は、青燕の提案で空中散歩を楽しんでいる。日夜にも『楽しい気持ちが、夜馬に荒らされた精神を癒やす良い薬になる』と前向きに言われたのもあるが、何よりも彼女が『いいの!?』と目を輝かせたからだ。青燕は、少年少女の笑顔を守れた事を、心底喜んでいる。

「さっきまで眠り込んでいたと思ったら、もう遊び回るのか。子供は元気だな」
「私達にも、ああいう時代があった筈なんですがねえ。……一応」

 大人達が目を細めた意味は、何なのだろう。少なくとも今のミキ達は、知らないほうがいいだろう。

「そういえば、日夜と、エクレアは?」
「日夜さんは、怪異の痕跡が残っていないか、ミキさん達ご一家の周辺を、改めて見てくるようです。エクレアさんも、彼について行ってしまいましたねえ」
「……そうか」

 世界は改めて、空を見上げた。青空の端に少しずつ、オレンジが滲み出す頃だった。

その頃、ミキの家の前では。

「君達の仕事は終わりだぞ。他の人達とともに、空き地にいても良かったのに」
「こちらが、そちらに用があるのさ」
「……まあ、確かに君も、『怪異』のようなものだがね。僕も人のことは言えないが」
「そうとも、俺は【財団】の一員だからね。そういう事には慣れっ子さ」

 そう言って、エクレアは、自らの属する【アビス財団】について、ぽつりぽつりと語り始めた。
日夜探偵事務所と形は多少異なれども……自分達もまた、『人ならざるもの』に関わっているのだ、と。

「僕の所属している組織は、君たちと同様に不可思議な存在を相手してるから共闘出来て良い経験になったよ。ありがとう」
「……良い意味で、受け取っておこう」
「ふふ、これからも友好的にいられると嬉しい」

空は、昼と夜の境界を映す色へと染まっていった。

成否

成功

状態異常

なし

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