シナリオ詳細
<ヴァーリの裁決>路地裏と不良少年のロック
オープニング
●ラウンドアイアウトサイド
昨日までは燦々と太陽が輝き、春の訪れを感じさせていたというのに、今日に限ってはひどい雨だ。
昼の内に止めばいいと願っていたのに、どうやら何者にもそんなものは通じなかったらしく、日が落ちてあたりが暗くなった今になっても、まだざあざあと降り続いている。
おかげで、舗装されていない地面はぐずぐずだ。
「こりゃ、帰ったらアンナに叱られる」
頭を掻いて、ため息をついた。アンナはまだ幼い割にはしっかりしていて、孤児たちの姉役を買って出ている。たいそう綺麗好きなものだから、泥にまみれた靴底で玄関を跨ごうものなら、またお小言が飛んでくるだろう。
だがそんな風に構われるのが、クランドは別に嫌いではなかった。ちゃんと、自分もあの孤児たちの輪に入って、家族のようになれていると、一員になれていると、そう思えるからだった。
と。
「チッ、クセェな」
鼻をひくひくさせて、忌々しげに眉にシワを寄せる。雨の匂いのせいではない。貧民街ではありがちな、吐瀉物や糞尿のそれでもない。
感じ取ったのは気配だ。奪うことにも盗むことにも慣れきっており、自分以外を人とは思わないような、そういう悪辣の気配だ。
襲撃だろうと、クランドは手にしたバールを肩に担ぎ直す。貧民街に住んでいて、親の居ない子供たちと暮らしていて、こういう輩に狙われるのは一度や二度ではない。
子供たちだけの頃は、それはひどいものだった。大人が居ないとばかりに良いように使われ、脅され、搾取されていた。それを振り払うだけの暴力をクランドが担ってからは、不当な扱いは減ったものだ。
だがそれは、下劣な視線がクランドに向いたことも意味している。大人たちはこう思うのだ。クランドさえ、あの男さえいなければ、身寄りのないガキを使ってまた楽ができるのに。
「帰りが遅くなって、血で汚れて。どやされるだけで済んでくれよ。いやほんと、マジで」
それでも、逃げるという選択肢はない。逃げれば、矛先は子供らに向く。それを許してはならない。
「いいか、オイ。痛ぇと思ったらすぐ帰れよ。今日はカレーだかんな、メシ抜きンなったら祟ンぞコラァ!」
●ピークアブーピークアブー
その日、『砂原で咲う花』箕島 つつじ(p3p008266)がローレットに顔を出すと、何やら騒がしい様子であった。
「お願いだよ、クランドにーちゃんを見つけてよ!」
「クランドにーちゃんがどっか行くはずないの! さらわれたに決まってるわ!」
「頼むよ、ここ以外聞いてくれないんだ!」
受付の職員が、子供たちに囲まれて困っているようだ。子供らはお世辞にも身なりが良いという格好はしておらず、普段からの生活水準が推測できる。
だがそんなことよりも、つつじは彼らに、そして何よりクランドという名前に覚えがあった。
「クランドが、どないしたん?」
声をかけてやると、子供たちが振り向いて、こちらの顔を見てはぱあっと表情を明るくさせる。
知っている人間がいて、頼れる大人がいるとわかって、不安が少し、拭われたのだろう。
「つつじねーちゃん!」
「クランドにーちゃんを助けてよ!」
「帰ってこないんだ!」
「誰も聞いてくんないしさ!」
要領を得ず、なんとか聞き出せたのは十数分先のこと。
どうやら、彼らと一緒に暮らしているクランドが昨晩から消息を絶っているらしい。
誰かを頼ろうにも、領地警備の者も、身寄りのない貧民街の子供など相手にはしてくれず、困り果ててローレットの門戸を叩いたらしい。
貧民街での小さないざこざ。そうとられてもおかしくはないが、ギルドが現在追っている状況と照らし合わせれば話は別だ。
どうやら、幻想内にある一部の領地で、貧民街を狙って襲撃、拉致を行う奴隷商が問題となっているらしい。
ちょうど情報屋もその奴隷商に目星をつけ、事実の整理が終わったらしく、攻め入ることは可能だという。
確かに本日未明、新たな『商品』を入荷したという情報もあがっているらしい。
つつじは子供たちの頭を撫でると、必ず連れ帰るからと、約束を交わした。
- <ヴァーリの裁決>路地裏と不良少年のロック完了
- GM名yakigote
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年04月02日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン
なんで見ず知らずのガキを守るのかって? よく言われンな、それ。別に、何でもいいじゃねえかよ。ンだよ、しつけぇな。あー……メシがな、美味かったんだよ。才能? ねぇよそんなもん。フツーだ、フツー。ただまあ、メシってのはよ。何食ったかより、いつ食ったかだよな。
人で活気賑わう町並みから少し離れると、途端にその反映が嘘に見えるようになってくる。
家々は廃れ、人の気配はなくなり、生えっぱなしの草木や虫の声が目立って、ようやく、このあたりが足を踏み入れてはならない場所だと気づくのだ。
そこではきっと、何かを見てはならない。何かに気づいてはならない。何かに気づかれてはならない。しかしそれでもきっと、そんなところでもきっと、恐ろしいのは何より人間であるのだろう。
「輝く魔法とみんなの笑顔! 魔法騎士セララ、参上!」
『魔法騎士』セララ(p3p000273)がポーズを決める。しかしこんなところで大声を出すとよく響いてしまうので、ポーズとは裏腹に声量は控えめである。悪い奴らが危険を感じとるのは、もう少し決定的な場面であってほしいのだから。
「人々を誘拐して奴隷にする悪党はお仕置きだよっ!」
さて、今日の悪党は一体どこで悪いことをしているのやら。
『仁義桜紋』亘理 義弘(p3p000398)は依頼の内容を思い返していた。
最近、何かと問題に上がることの多い奴隷商人。特に今回は、積極的に『人狩り』をしているような連中と来ている。悪質と言うならば、中でも極めてと呼称して、差支えはないだろう。
それにしても、嫌になるくらいには、まるでなくなりやしないものだ。
「……それだけ需要があるって事か。何とか根本から潰してぇもんだ」
「奴隷売買は肯定も否定もしないけれども。あまり気分の良いものではないわね」
『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)がその是非を、誰かと交わしたり、訴えでるつもりはない。どの世界でも歴史的に見れば当然としてあったもので、だがそれは、誰かが言ったのだ。もうやめようと。せめて人間が、人間を人間であることを奪うのはやめようと、誰かが言って、多くがそれに賛成したのだ。
「自分にとって大切な存在が攫われ、もう会えないかもしれないという辛さ。力が無く、助けに行く事が出来ない自分の無力さへの怒りと悲しみ。助けを求めてきたあの子達の想いはよく分かるわ、私自身がそうだったから……」
『プロメテウスの恋焔』アルテミア・フィルティス(p3p001981)はぐっと拳を握りしめる。思い強さは、手を伸ばせば届く者へと、確かに伝わっている。
「だからこそ、絶対に助け出す。あの子達に私と同じ想いをさせないためにもッ」
『汚い魔法少女』メリー・フローラ・アベル(p3p007440)は憤慨していた。子供を攫って奴隷として売り払う商人。あってはならないことだ。とても腹立たしいことだ。
「大人が子供に”反抗”するとか万死に値するんだけど。大人が子供の奴隷であるべきでしょ。常識的に考えて」
まあ少し、ベクトルの違いは見受けられたが。
「奴隷の件、ウチには関係ないと思ってたけど」
この世の全てに、首を突っ込む必要はないし、掲げる正義も人それぞれでいい。『砂原で咲う花』箕島 つつじ(p3p008266)にしたってそうだ。その是非をどうこう言うつもりはなかった。
だが、見知った顔がそこに巻き込まれたとなると話は別である。心情も主義も関係なく、手をこまねいてはいられなくなってしまったのだ。
「……皆と約束したからな。必ずクランド連れて帰って、事件も解決したる!」
「世の中は弱肉強食。強い親に保護されない弱い子供は奴隷となる」
実にわかりやすい話だと、『Dramaturgy』月錆 牧(p3p008765)は口にしてみる。が、それは野生においての話である。確かにあらゆる意味で力の有無は自由に直結するが、ボトムを一定位置に定めることが、法治国家としての役割のひとつであるだろう。
「奴隷商人が許されるかと言えばまったくもって別の話。今回も仕事は確りと果たさせてもらいましょう」
「人間を痛めつけて蔑んで、それで金儲けとは……貧しい精神だな」
ひとがひとを落として、富もうとする。さもしい話だと、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)。
「豊かであれ、高尚であれとは言わないけど、人間を劣悪な消耗品のように扱うのはさすがにひどい。そんな奴がそこかしこにいるなんて、嫌な世の中だ」
だから、手を伸ばせるならば、伸ばして良いのだろう。
「今回の奴隷取引は止めさせるし、攫われた人々も解放する……!」
●テイクン
誰も信じねえよ。テキトーな嘘ぶっこいて、はぐらかしてんだと思うだろうよ。だから言いたくねえんだ。知らねえやつに信じられなかろうがどうでもいいだろ。ただ、俺には大事な話なんだ。まともに聞く気もないやつに、言って聞かせようなんて気は起きねえだろ。
やはりこういう時、生き残る悪党というのは聡いものであるようで。
イレギュラーズたちが現場を覗いた時、ヴィレム・デボーとその一味、そして彼らの積荷以外は何も見当たらなかった。
苛立った様子のヴィレムを見るに、どうやら取引相手が来なかったか、はたまた取引を中止して早々に立ち去ったかのどちらかなのだろう。
それでもまだ、このようなところにとどまるというのは、危機感に欠けていると言わざるを得ない。
「なんだ、お前らは!?」
この期に及び、そのようなことを言う呑気な相手に、引導を渡してやるとしよう。
●プライベート・ライアン
あー、何話してんだろ。まあいいや。アンタ、この辺危ねえからさ。あんま来ンなよ。大丈夫そうだけどな。
「くそっ、とっとと片付けろ!」
ヴィレムが命令し、護衛らが武器を構えた、その背後。
荷馬車の真上に、セララが着地した。
「商品が狙いか! おい、奪われるな!」
その音に奴隷商人が振り向くものの、もう遅い。彼我との距離は既に逆転してしまっている。
手早く幌の中に入れば、そこには蠢く袋が幾つか。視界も遮られたまま、このようなところまで運ばれてきたのだろう。それこそ荷物のように、商品であるようにだ。何もわからぬまま、不自由なまま過ぎていく時間の恐怖は、どれほどのものだったろう。
袋をひとつ、破いてやれば、そこには猿ぐつわを噛まされた少女がひとり。怯えた顔をして、目尻に涙をためてこちらを見ている。
だからセララは、ここぞとばかりの笑顔を見せた。
「ボク達はイレギュラーズ。孤児院の皆に頼まれて、キミ達を助けに来たんだ」
正義に味方はここにありと。無条件で差し伸べられる手があるのだと。それを物語るかのように。
つつじもまた荷馬車に押し入り、袋のひとつを引き裂けば、そこには見知った顔があった。
暴れるからだろう。他の子供達よりも強く施された拘束具を解いてやると、クランドは斜に構えたような笑顔を見せた。
「よォ、つつじ。今晩カレーなんだってよ。食ってくかァ?」
多少の衰弱はしているが、骨や内臓に異常があるようには見受けられない。ひとまずの五体満足に、つつじは安堵の笑みを浮かべると、軽口に答えてやった。
「せやな、今日もこの後、肉体労働やし。疲れて腹減ったら、クランドの不味いカレーでも美味いやろ」
「馬っ鹿てめぇ、アンナの手料理に決まってんだろ。ああでも、俺も腹空かせて帰ろっかなァ。ちょうど、運動したい気分なんだよ」
立ち上がり、全身をほぐす彼に、適当な角材を放ってやる。そんな武器と言えぬものでも、彼ならうまくやるだろう。
「ほな、そっちは任せたで」
背を向けて、馬車の外へ。次に顔を合わすのは、仕事が片付いてからだ。
「アイアイ、キャプテン」
人が宙を舞うところを、見たことがあるだろうか。
荷馬車に意識が向いた護衛のひとり。その頭を義弘が掴むと、腕力任せに投げつけたのだ。
悲鳴を上げて、男が飛ぶ。向かう先は魔獣だ。大型の獣のようなモンスター。自分よりも大きな肉食獣。そこに向かって無理矢理の突進をさせられるのだ。落ちるそれと相まって、男の恐怖はどれほどになるだろう。
悲鳴に皆の意識が向く。視線が荷馬車から外れてくれる。義弘が稼いだ時間はわずかだろうが、それは仲間にとって十二分なものであるはずだ。
だが。
ばくん、と。魔獣は大口を開けて飛んでくる男を丸呑みにした。悲鳴。咀嚼音。悲鳴。咀嚼音。嚥下。
打って変わって、沈黙が場を支配する。
「予想は、してたがよ……」
護衛の男らは、こうなることを考えていなかったのだろう。呆気にとられている者と、混乱している者が半々に見える。
「何にせよこれで、きっちり息の根止めておかなきゃ、ならなくなったな」
人の味を覚えた獣は、殺処分せねばならない。
魔獣は踊り食いにしたその味が気に召したのか、護衛らも、イレギュラーズたちも、等しく好奇の目で見ている。
ずるぅりと舌なめずりをしようとして、その最中を、その横面を、図体を、レジーナによって召喚された軍馬が踏み抜いていった。
「控えなさい。ここにはあなたが口にしていいものは一つもないのだわ」
優越感に浸っていた顔から一転、怒りを顕にしたそれで起き上がる魔獣。鼻息を荒く、唸り声をあげてみせる。
その行為にレジーナは内心で呆れていた。知性はあるようだが、それでもやはり獣だ。今の時点において未だ、威嚇程度で怯む相手に見えているのだろうか。
この瞬間を殺し合いではなく、食事だと勘違いした獣の首から血が吹き上がる。
「これでおとなしくなってくれればいいけれども」
急所を切り裂かれ、絶命する魔獣。
獣は獣なりに、怯えてくれればいいが。
それとも血の匂いに、興奮するだけだろうか。
右肩がひどく熱くなって、それが刺された痛みなのだとメリーは気づいた。
痛みはその後からやってくる。過剰な外部からの刺激に脳がアラートを掻き鳴らし、肩が痛むのか頭が痛むのかわからなくなって、吐き気をもよおし、立っているのか横になっているのかわからなくなる。
必死に前に向かって手を伸ばそうとしたのに、視界を占領したのは暗い影。それが魔獣の足だと気づいたのは何もかもが終わったあとのことだ。
強烈なストンピィ。骨がぐしゃぐしゃと形を為さなくなっていく音を確かに聞いた。
歯を食いしばる。何が何でも悲鳴など聞かせてはやらない。自尊心が未来を握りつぶし、現在に還元する。
押しのけては立ち上がり、槍を引き抜いては投げ返し、決して肩で息をしない。この後数秒で、地に伏せようと決してだ。
頭数ばかりで連携がまるで取れていないものだと、アルテミアは感じていた。
自分たちにではない、護衛らの方だ。
状況が状況である。彼らには悪いが、とどめを刺さずに放置してやれはしない。負ければ必ず殺される。それがわかっているだけに、彼らも必死ではある。
だが、戦闘要員としては彼ら側であるはずの魔獣とは距離を取ろうとするため、行動が読みやすく、それが一人の戦士を刃物を持っただけの凡庸な男に変えていた。
無理もない、とは思う。隣に立てば、いつ頭から食われるかも知れない獣と肩を並べることなど出来はしない。
だが同情に値するとは微塵にも思わない。無力な人を食い物にしたのだろう。人間を売って生きているのだろう。
ひとりの首を切り落とし、思わずつんのめって、肩に力が入りすぎていることに気づいた。
ひとつ、深呼吸。思っていたよりも、心が荒れているようだ。
「……感情的になって、商人まで殺さない様にしないとだわ」
「くそっ、どいつもこいつも使えない!」
形勢を不利と見て取ったのか、ヴィレムがその場に背を向けて駆け出した。
ちらりと荷馬車に目をやってから、悔しそうにほぞをかむ。あわやよくば商品だけでもと考えたのだろうが、生憎と、それを守る相手はヴィレムひとりでどうこうできる物ではない。
そして、その欲が仇となった。
「ヴィレム・デボー。あなたの生死を問わず逮捕せよとの依頼が出ています。大人しく冥土に旅立たられよ!」
逃げようと思っていた方向に、牧が立ちふさがっていたのだ。
牧の口上は脅しに過ぎない。依頼目的はヴィレム・デボーの捕縛である。
そう、捕縛、なのだ。
だが、全員が子どもたちを優先して確保することに逆らわなかった。どうしてと、自問する。
「論理的に自問すれば『わたし達夫婦は遂に子供を授からなかったから』となるでしょう」
その意味が、目の前の男にはわかるまいが。
「このっ、どかせろ!」
一匹、魔獣が前に出る。
さあ、あとはこれだけか。
巨体故に、外すということはないが、戦闘も終盤を迎えると、イズマにもこの怪物の構造が分かり始めていた。
脇腹、肋骨。横合いから、内臓まで衝撃を通すように。
骨をぶっ叩いた衝撃が、自分の拳にも帰ってくる。痛い。痛いが、歪めた顔は荷馬車の方から反らしていた。子どもたちを救いに来たのだ。辛そうな顔を見せるものではない。
痛みに苦悶の鳴き声。魔獣の見せたそんな隙間を、ここにきて誰が許してくれるというのだろう。
刃が、拳が、魔術が、暴力が、獣に襲いかかる。見渡しても無駄だ。誰ひとり食えずに、肉食の獣はその本懐を遂げることが出来ずに、ここでただ、害悪の片割れとして処分されるのだ。
「ひ、ひぃいっ」
もう駄目だと悟ったのか。それとも魔獣が屠られて腰を抜かしたのか。尻もちをついて動けないでいるヴィレムの前に、イズマが立って睨みを効かせている。
「頼む、なあ、金なら払うからっ」
溜息をつくつもりにもなれない。交渉の余地など、あると思うほうがどうかしている。
「こんなところでやるような商売は、もう終わりだな」
●ダーク・ナイト
ンだよ、変わったやつだな。
貴族直属の警邏部隊を名乗る男にヴィレム・デボーを引き渡すことで、依頼は完了する。金で悪行を見逃してもらおうとするような男だ。あっさりと、後ろの存在も何もかも口を割ってくれることだろう。
さらわれた子供たちの殆どが、身寄りのない、孤児だという。帰る場所もなく、盗みと物乞いで生きていくくらいならと、クランドが自分のところで引き取ることを提案してくれた。
帰り道、少しだけ寄り道をする。
大通りではなく、裏通りを通って。貧民街の奥の方へ。
大きいとは言えない一軒家。だが中からは、美味そうな匂いがここまで届いていた。
了。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
しゃばしゃばだけど、おいしい。
GMコメント
皆様如何お過ごしでしょう、yakigoteです。
幻想内で問題となっている奴隷商のひとつを討伐するよう依頼されました。
商人が次に取引相手へと『商品』を受け渡す場所、時間も判明しており、ここを襲撃します。
また、商人は貧民街に住むクランドなる青年の誘拐犯でもあり、彼は現在囚われの身となっています。
商人を捕縛し、クランドを救い出してください。
【エネミーデータ】
■ヴィレム・デボー
・奴隷商人。バックには貴族がついている可能性が高く、殺さずに捕縛することが依頼達成の目標となります。
・本人の戦闘能力は駆け出し冒険者程度ですが、複数の護衛を雇い、また中型のモンスターを使役しています。これらを倒さなければ彼を確保することは難しいでしょう。
・形勢が悪いと判断すれば、逃げ出す可能性があります。
■護衛
・槍で武装した護衛。
・人数は6名。
・革鎧を身につけ、いかにも身のこなしを優先した出で立ちをしています。
■中型のモンスター
・カバとサイをかけ合わせたようなモンスター。サイズも実際のカバ程度。
・数は3体。
・デボーの命令には絶対服従の姿勢を取りますが、護衛にはそうではありません。
・噛みつき、体当たりといった近接攻撃と、火を吹くという遠距離攻撃を織り交ぜてきます。
・また、人を喰うことで自身の傷を癒やすことが出来ます。
【人物データ】
■クランド
・貧民街で子供しか居ない孤児院の護衛を買って出ている少年。
・子供たちのために暴力を振るうため、世間的な評判は良くない。
・荷台の中で拘束されています。
・単独で護衛1~2名と戦える程度の戦闘力を有しています。
・解放した場合、誘拐された人々の身柄を最優先に行動します。
・箕島 つつじと面識があります。
■『商品』
・デボーによって誘拐された人々。
・小さな子供が多い。
・十数名いると思われます。
【シチュエーションデータ】
・昼間。
・人気のない郊外。
・周辺に家屋はなく、廃墟ばかり。
・デボーは大きな荷台をつけた馬車を伴って現れます。
・戦闘が始まると、取引相手は逃げてしまいます。これは捨て置いて構いません。
●ブレイブメダリオン
このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
このメダルはPC間で譲渡可能です。
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