PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<ヴァーリの裁決>ゾンビに占拠された宿場町

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 幻想貴族。
 言わずと知れた腐敗と退廃の代名詞。
 とはいえ、全ての貴族がそうとは言えない。
 西の湾岸地帯に、こじんまりとした領地を構えるペンウッド男爵も、そのひとり。
 人が好い、というのが『世間一般での評判』だ。
 気は小さく、領民の嘆願さえ耳を貸すという。
 一歩間違えれば舐められそうなものだが、不思議とそうならないのは、人徳というべきか。
 三大貴族の派閥に属してはいるが、近からず遠からず微妙な立ち位置をふわふわ漂っている。
 顔を思い浮かべることはあっても、名前を思い出すのには間が空くような、そんな人物。
 だというのに、不思議と色々な所に顔が知られている。
 そんな彼が、困っていた。

「助けて~」
「呼ぶなりそれですか」
 ペンウッド男爵の嘆願に、メイド服を着た女性、リリスは溜め息をつくように返した。
「用があるからと言われて来てみれば。今回は何なんです?」
「君達に任せようと思っていた宿場町に、魔物が押し寄せてるんだよ」
「またですか?」
 聞き返したのは、壮年の紳士に見える男性、ヴァン。
「前は魔種だと聞いてましたが、今回はどうなんです?」
「前とは関係ないよ。なんか知らないけど、最近幻想の領地が襲われてるって話聞いたことない?」
「三大貴族に属する貴族の領地や、イレギュラーズの領地が襲われてるみたいですね」
「精度を詰めた訳じゃないけれど、神翼庭園ウィツィロと古廟スラン・ロウから現れた魔物と聞いてるわ」
 ペンウッド男爵はヴァンとリリスの言葉に頷き、続けて応えた。
「宿場町に来てるのは、古廟スラン・ロウから現れた魔物だね。神翼庭園ウィツィロから現れたのは、鳥獣型の怪王種が多いけれど、うちに来てるのはアンデッド系の奴だから」
「鳥小屋からは鳥が出て来て、墓場からはお化けが出てるってとこかしら?」
「簡単に言えば、そんな感じだと思うよ」
 下手をすれば不敬と取られかねないことを、さらっと同意するペンウッド男爵。
 それだけリリスとヴァンとは関わりが深いということだ。
「それで、どうされるんです?」
 ヴァンの問い掛けに、ペンウッド男爵は応えた。
「今うちの兵隊には余裕が無いからね。宿場町以外の、うちの領地を襲撃してる魔物を駆除してくれてるから。あ、ちゃんと宿場町の住人は逃がしてるよ。だけど魔物をぶち殺す手が
足りないんだ。出してくれない?」
「……私達の報酬は何です?」
 リリスの問い掛けにペンウッド男爵は、ぼんやりとした笑みを浮かべながら応えた。
「宿場町を好きに出来る権利をあげるよ。町の危機を私費を投じて解決したって箔が付けば、色々とやり易いだろう?」
「ひょっとして、現地の住人に歓迎されてなかったんですか、私達」
「いやいや、そういう訳じゃないよ」
 ヴァンの問い掛けにペンウッド男爵は返す。
「前の魔種に襲撃されて荒らされていたからね。そのせいで人手も流出しちゃったし。君達が宿屋をしてくれるってんのなら、歓迎してくれるよ。でもほら、君達が宿屋の店員にしようとしてるの、大半が子供達なんでしょ?」
「ちゃんと子供達でも回していけるようにしますけどね」
「そのために、鉄帝の遺跡でメイドロボの発掘もしてるし」
「いやいや、私は君達のことを知ってるから大丈夫なのは分かってるよ。でも知らない人達だとねぇ。それに――」
 少しだけ目を細め、ペンウッド男爵は続ける。
「子供達は、犯罪させられてたり、奴隷にされそうになってた子達でしょう? そういう子達にさ、歓迎してくれる場所や人が居るって、教えてあげたいじゃない」
 人の好いことを言うペンウッド男爵。
 これが彼の本質である。
 気が小さくお人好しで、領民の事を考える善人。
 けれど爵位は低く権力がある訳ではないので、裏でこそこそ動いて悪巧みのひとつやふたつ、することをためらうような気の弱さは無かった。
「君達も、そう思うでしょう?」
 リリスとヴァンに問い掛ける。
 この2人も、思惑はあれどペンウッド男爵と根っこの部分は同じだ。
 だから、頷く。
「好いですよ。でしたらローレットに依頼を出します。費用はこちらで持ちますから、現地でも便宜は図って下さい」
「ああ、そちらは任せて。住人は逃がして、今はゾンビみたいなのが徘徊してる街になってるからね。そいつらを全滅させてくれるなら、多少建物とか壊しても構いないよ。壊れたところを直す賠償は、そちらに任せるけどね」
「それで町の住人に、より恩を売れってことね。分かったわ。で、そちらは良いんだけど、この前イレギュラーズの子達に捕まえて貰って突き出した、奴隷商人のコネクションは掴めそう?」
「ああ、それなら、保釈されたよ」
「計画通り、ですか?」
 ヴァンの問い掛けに、ペンウッドは応える。
「まぁね。保釈を働きかけた貴族筋の情報を、今こちらで探ってる。あの2人にも手伝って貰ってるから、近い内に詳細を教えられるよ。それと――」
 ペンウッドの屋敷で、その後もしばらく話は続くのであった。


「宿場町がモンスターに占領されてるので、排除して欲しいのです」
 招集されたイレギュラーズに向けて、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は依頼の詳細を説明してくれる。
「ゾンビみたいなモンスターが襲って来たらしいのです。幸い、町の住人さん達は避難することが出来たらしいのですけど、そのあともモンスターが居座ってるみたいなのです」
 遠くから確認した限りでは、数十体のモンスターが町を徘徊しているらしい。
「町の中に入ると襲い掛かって来るみたいです。それと近く付くと、なにか恨み言みたいなのを喋るみたいなのです」
 真偽のほどは不明だが、勇者王や人間に対する恨み言を口にしているらしい。
「町の住人さん達が安心して戻って来れるよう、一匹残らず対峙して欲しいのです」
 話を聞き終ったイレギュラーズ達は、現場に向かうことにした。

GMコメント

おはようございます。もしくはこんばんは。春夏秋冬と申します。
七本目のシナリオは、今が熱い<ヴァーリの裁決>関連を出させていただいています。
今回のシナリオでは、以下の特殊アイテムを取得することが可能です。

●ブレイブメダリオン
 このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
 ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
 それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
 このメダルはPC間で譲渡可能です。

奮ってご参加いただけると幸いです。
それでは、以下が詳細になります。

●成功条件

宿場町を占拠しているゾンビ系モンスターを全て倒す。

●場所

小さな宿場町。
長距離運搬の中継地点として作られた。
十数軒の宿屋や店がある。
地図で見ると、ほぼ正方形の、箱庭的な宿場町。

建物の外だけでなく、中にもモンスターが居る可能性があります。
建物の外は戦闘の際に邪魔となる障害物はありませんが、建物の中は家具などがあります。

●敵

外見はゾンビな死霊。
倒せれば消滅します。

非常に敵対的。
町の中に入ると、PCを見つけ次第襲い掛かってきます。
知性はほぼありませんが、支離滅裂な恨み言を口にしています。
内容は、勇者王や人間に対する怨念のようです。
意思疎通は出来ません。

合計で50体居ます。
1体1体は、それほど強くありません。
攻撃手段は近接のみです。
BSとして、毒や猛毒、あるいは痺れを使用します。

基本的に、B級映画に出て来るゾンビのような敵だと思っていただければ間違いありません。
それに加えて、勇者王や人間に対する怨念を喋り続けるだけです。
恨み言を聞いたからと言って、なんらかの不利になるようなことはありません。

建物の外と中に、おおよそ半々の割合で居ます。
建物の中でPCを見つけると、即座に襲い掛かってきます。
その際は、周囲の家具や壁などもお構いなしに殴ってきます。
戦い方によっては、建物が損傷する可能性もあります。

建物や家具などが破壊されても、PC達は責任を取る必要はありません。
建物などの損傷は依頼人が賠償しますので、破壊しても構いません。

●依頼人

リリス&ヴァン

町の外で依頼完了を待ってます。

今回の流れは、

1 ゾンビに襲われない町の外で依頼人から、街の中に居る敵の数などの詳細を聞く。
2 町の中に進行。街は正方形をしており、どの位置から入るのも可能。全員がバラけて入ることも出来ますし、纏まって入ることも可能です。
3 ゾンビを全滅させる。
4 ゾンビの絶滅を確認して、依頼人に報告し終了。

という流れになります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 説明は以上になります。

 それでは、少しでも楽しんでいただけるよう、判定にリプレイに頑張ります。

  • <ヴァーリの裁決>ゾンビに占拠された宿場町完了
  • GM名春夏秋冬
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年03月22日 22時03分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
ロイ・ベイロード(p3p001240)
蒼空の勇者
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)
生イカが好き
ルーチェ=B=アッロガーンス(p3p008156)
異世界転移魔王
ヲルト・アドバライト(p3p008506)
パーフェクト・オーダー
オウェード=ランドマスター(p3p009184)
黒鉄守護
微睡 雷華(p3p009303)
雷刃白狐

リプレイ

「おお! リリス殿! ヴァン殿! 久しぶりじゃのう! 鉄帝のメイドロボ以来かね? 調子はどうかね?」
 現地に集合し、依頼人と顔見知りの『身体を張った囮役』オウェード=ランドマスター(p3p009184)は、軽く言葉を交わす。
 これに依頼人である、ヴァンとリリスは返した。
「お蔭様で、あちらは巧くいっています。ただ、こちらが問題で」
「他所でも騒動が起きてるみたいだけれど、ここでも大変で。よくは知らないのですけれど、イレギュラーズの皆さんも活発に動かれているみたいですね」
 これにオウェードは、少し声を潜めて説明する。
「実はのう……フォルデルマン様がメダルを量産してのう……」
「まぁ、そんなことが」
「何か余程大きなことでも起こってるんでしょうか?」
 依頼人は心配する様に呟くと、少しでも早く街を解放して欲しいというように、状況を詳しく説明した。
「ゾンビに占拠された? ワシに任せとけ! とある墓荒らしの救出で、ゾンビには詳しいと思うからのう……まぁ、その話は全滅させてからじゃ」
 依頼人から話を聞いてオウェードは返し、皆もそれぞれ反応した。
「ゾンビたぁ穏やかじゃねぇな」
 依頼人から詳細を聞いて、『被吸血鬼』ヲルト・アドバライト(p3p008506)は算段する。
「数も多いし、オレじゃあちょっと力不足かもしれないな」
 小さいとはいえ、町ひとつを占拠するほどの数がいるのだ。単独で進めば危険度は増す。けれど――
「ま、そういうときのために仲間がいるんだ。存分に頼らせてもらうさ」
 ヲルトの言葉通り、今ここには仲間が居る。
 彼の言葉を証明する様に、『ガトリングだぜ!』ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)は元気な声で応えた。
「なるほど、街がゾンビまみれで困ってるんだな!」
 屈託のない笑顔を浮かべながら、依頼人を安心させるように言った。
「そういう事ならオイラ達に任せておけー! ゾンビどもなんざオイラのガトリングで蹴散らしてやるぜー!」
 ガトリングを構えるワモンに、依頼人は頼もしげな視線を向けた。

 そして皆は2人組に分かれると、街を囲むように、四方から攻めることにした。

●北部戦闘
(街一つが魔物の手に落ちるなんて……いよいよ、大事になってきたね)
 現場に向かいながら、『雷刃白狐』微睡 雷華(p3p009303)は心の中で呟く。
 神翼庭園ウィツィロや古廟スラン・ロウの異変は、確実に幻想の地を侵している。
 さらにフォルデルマン王の宣言によるブレイブメダリオンの配布など、状況の変化は目まぐるしい。
(勇者……勇ある者なんて称号、わたしには全く当てはまらないけど)
 従者として生きてきた雷華にとって、勇者とは仕える者であって自分がなるものではない。
 けれど、それでも――
(助けを求める人の声に応えることくらいは出来る……はず)
 静かに意志を抱きながら、北へと向かう。
 彼女と共に向かう『雷はただ前へ』マリア・レイシス(p3p006685)も、心の中で呟いていた。
(ゾンビか……)
 故郷の世界では軍人として、戦いの果てを知るマリアは思う。
(死してなお呪詛を吐きながら彷徨うのはあまりにも不憫だ……。もう休ませてやろう……)
 生者の戦いを尊重し、死者の安らぎを願いながら、現地へと辿り着いた。
「さて! 雷華君! 手筈通り敵を倒しながら南下を開始しよう!」
 戦いを前に意識を切り替えたマリアは、今回の戦いで相棒となる雷華に力強く声を掛ける。
 彼女の呼び掛けに、雷華は応えた。
「雷使い同士……一緒に、頑張ろう」
「ああ! お互い気を付けて!」
 戦いに慣れている2人は言葉を交わすと、そのまま一気に進攻を開始する。
 2人は、お互いをフォローできる距離を保ちながら進む。
 僅かに先行するのは雷華。
 街に入ると同時にハイセンスで感覚を強化し索敵開始。
「右手から2体、左手から3体、来るよ」
「分かった。なら左手は私が担当するよ。右手を頼めるかな?」
 マリアの提案に雷華は頷き、戦闘開始。
 お互いの距離を意識しながら、まずは範囲攻撃を叩き込む。

「君達にどんな理由や事情があるのかは分からない……けれど――」
 マリアは恨み言を口にするゾンビ達を翻弄する様に引き付け、1箇所に集める。
 彼女はゾンビ達の過去を思いながらも、それでも倒すべき敵として全力を尽くしていく。
「私は、罪なき人々が傷つけられることは看過できない!」
 蒼雷式起動。
 それは上空大気に干渉し、神鳴る力へと導いていく。
「せめて安らかに……雷の鉄槌で!」
 天槌裁華発動。
 それはまさに、天から振るわれる一撃。轟音と共に落ちた雷が裁きの華を咲かせ、ゾンビ達を撃ち据えた。

 マリアの一撃とほぼ同時に、雷華も攻撃を叩き込む。

(攻撃は最大の防御……損耗が大きくなる前に、倒してしまおう)
 戦力の出し惜しみはせず、雷華は雷爆の準備に入った。
 まとめて吹き飛ばすため、まずは敵を引き付ける。
 雷を纏い運動能力と思考速度を大幅に強化すると、素早い動きで敵を翻弄しつつ動きを誘導。
 敵が1箇所に集まった所で、小型の爆発物を投擲。
 敵がそれに注意が向いた瞬間、雷を纏わせた飛び道具を当て爆破させた。
「ォ、ォォオオ……」
 爆発で体の一部を吹き飛ばされながら、敵は唸るように声を上げる。
 その言葉を、雷華は可能な限り聞き取ろうとする。
(恨み言以外の、言葉があれば)
 しかし、その願いは叶わない。
 ゾンビ達の口から零れるのは恨み言だけ。
「……」
 掛ける言葉は浮かばず、嘆きにも似た気持ちを抱きながら倒していく。

 見える範囲の敵を倒し切ると、マリアは雷華に呼び掛ける。

「よし! 雷華君! そろそろ大丈夫かな?」
「大丈夫。先に進もう」
 2人は連携を意識しながら仲間の居る中央に向かう。
 時には建物の中に居るゾンビを発見し殲滅。
 雷華がハイセンスで索敵しながら保護結界を展開。
 そこにマリアが吶喊。
 援護する様に雷華も動く。
 共に雷を纏い戦う2人は、雷の華を散らしながら電光石火の勢いで敵を倒していった。

 彼女達と同じように、仲間も敵を殲滅していた。

●東部戦闘
「そんじゃヨハン、オイラ達は東からいこうぜ!」
 元気一杯なワモンの呼び掛けに、『宵闇の調べ』ヨハン=レーム(p3p001117)は苦笑する。
(さてさて、わかれて行動しようと言うのは死亡フラグとも言いますが)
 ワモンを見詰めて小さく呟く。
「ワモンさんに至ってはなんか最後まで生きてそうというか、作品が違うというか……」
「どうしたんだ? ヨハン」
 不思議そうに尋ねるワモンに、ヨハンは笑みを浮かべ応える。
「いえ、こっちの話です。気を取り直していきましょう」
 そう言うと、ワモンの持つガトリングに視線を向け続ける。
「それにしてもこのガトリングかっこいいですよね……あとで試射させてください?」
「おう! いいぞ!」
 ガトリングを褒められて嬉しそうに返すワモン。
 そのまま東部に向かい、街の中に入ると同時にゾンビ達が集まってくる。
「あいつらの後ろから、まだまだ来るぞ!」
 ワモンはエネミーサーチで索敵を行いながら、近付いて来るゾンビに向け銃口を向ける。
「オイラはゾンビへの攻撃に集中すっから援護頼んだぞー」
「いいですよ。でも、その前に」
 ヨハンは保護結界を展開。
「町の中ぶっ壊しても構わないとか言われると反骨精神に火がついちゃいますよね」
「いいな、それ。だったら思いっきりぶっ飛ばすぞ」
「あ、ワモンさん意識したら破壊されますからね! ゾンビだけ、ゾンビだけに集中です」
「おう!」
 ヨハンの呼び掛けに応えながら、ワモンは進攻を開始する。
「みんな吹っ飛べ!」
 ワモンは近付くゾンビに向け、リコシェット・フルバースト。
 出鱈目に放たれた無数の弾丸が空間で跳ね回り、銃弾の嵐に巻き込んだゾンビを、バラバラにする勢いで撃ち砕いていく。
 ゾンビは次々粉砕されていくが、死者には恐怖が無いのか、仲間を盾にするようにして距離を詰めて来る。
 そこにヨハンが、神気閃光を放ち動きを抑えた。
 激しく瞬く神聖の光は、ゾンビ達にとって身体を砕かれるよりも苦しいのか、悶えるようにして動きが止まる。
「今です、トドメを」
 ヨハンの呼び掛けに応えるように、ワモンは超奥義、海豹牙斗燐具薙払猛怒を放つ。
 左右に首を振りながらガトリングを縦横無尽に撃ち放ち、ゾンビ達を吹っ飛ばしていった。
「このまま行くぜ! とにかくまとめて倒しながらゴーゴーだぜ!」
 全力を出しながら進むワモン。
 それだけに力の消費も多くなるが、そこもヨハンがフォローしてくれる。
(接続――)
 ヨハンはハッキングを発動。混沌に干渉し、ワモンが消費した力を回復させる。
「ありがとな!」
 ワモンはヨハンに礼を返しながら、行け行けドンドンで突き進む。
「技の出し惜しみはなしの攻撃集中でいくぜいくぜー!」
 勢い良く突っ込むワモンに、ヨハンは声を掛けながら援護を続ける。
「最後まで警戒を緩めず、丁寧に!」
 弟を助ける兄のような頼もしさでワモンをフォローしながら、合流地点となる中央を目指していった。

 戦いはイレギュラーズが優勢。
 その中で油断せず、皆は戦いを続けていく。

●南部戦闘
(ゾンビか……アンデッドが湧いてきているのか)
 街の南にオウェードと共に向かう、『蒼空の勇者』ロイ・ベイロード(p3p001240)は、走り続けながら心を落ち着かせる。
 とある世界からやってきた勇者で、魔王との戦いのさなかに召喚されてきたロイとしては、魔に属しているかのようなゾンビに対して思う所があるのかもしれない。
 しかし戦いの中で意識を乱さないよう心がける。
 心を落ち着けたまま街の中に入ると、早速ゾンビ達がやって来た。
(ともかくとして、小奴らに対しては、平常心でいかなくてはな)
 心を静めたまま剣を構える。
 そこにオウェードが声を掛けてきた。
「ロイ殿、右手の建物からゾンビの増援がある可能性がある。まずはここで引き付けて、各個撃破するのはどうじゃろうか?」
 戦略眼で隠れたゾンビを探索していたオウェードの言葉に、ロイは頷く。
「確実に倒していこう」
 お互い連携を意識しながら、近付いて来るゾンビに接敵する。
「まずは、最初の攻撃だ」
 ロイは剣の間合いにまで距離を詰めると、リッターブリッツ。
 雷を思わせる鋭い突きは、貫いた相手のみならず、後方の敵すら衝撃波で身体を貫通させる。
 ロイが前方の敵を相手取っていると、ゾンビは横手から襲い掛かってこようと動く。
 しかしオウェードが前に立ちはだかり迎撃。
 ゾンビの攻撃を防御を意識して受け流すと、その勢いを利用しバックハンドブロウ。
 カウンターを受けたゾンビは粉砕された。
 オウェードが守りを担当してくれるお蔭で、攻撃に専念できるロイは刃を振るっていく。
 周囲の敵が3体ほどに減った所で攻撃集中。
「火炎剣でも喰らうがいい」
 焔式を使いゾンビを焼き払った。
 通りを徘徊するゾンビを倒しきれば、今度は建物の中に潜む敵を殲滅。
 ここでオウェードは名乗り口上を使い敵を引き付ける。
「相当勇者王に恨みがあるようじゃのう……そんなお前さんらに言っておくことがある!」
 怨念を吐き続けるゾンビ達を諭すように言った。
「この宿場町は勇者王は関わってない」
 しかしゾンビ達は逆上したようにオウェード目掛け襲い掛かってくる。
 それにより、建物の外にゾンビを誘き出すことに成功。
 建物への被害を抑えながら、ゾンビ達を駆逐していった。

 ゾンビの数は次々減っていく。
 もちろんそれは、西部でも同じだった。

●西部戦闘
「……他の奴らも戦闘を始めているようであるな。ならばこちらもゾンビ討伐するとしようか」
 街の西側にヲルトと共に向かった『異世界転移魔王』ルーチェ=B=アッロガーンス(p3p008156)は、戦いの前に声を掛ける。
 これにヲルトは並走しながら応えた。
「よろしく頼む」
「うむ、良き返事である。なれば今このひととき、余の護りを任せるとしよう」
 ウォーカーで異世界の魔王なルーチェは、尊大な口調で応える。
 とはいえ、ヲルトのことを見くびるような響きは無く、小柄な見た目もあり不快さは無い。
 なのでヲルトは苦笑する様に返す。
「任せとけ、お前には指一本触れさせないさ」
 この時点で、ヲルトは今回の戦いでの自分の役割を決定する。
「ってことでオレはタンク役だ」
 ヲルトはルーチェと共に街の中に入ると、連携できる距離を保ちながら先行する。
 幾らか進むとすぐに、ゾンビが数体近付いて来た。
「1箇所に集める。そこを叩いてくれ」
「うむ。承知した」
 戦術を組み立て敵へと踏み込む。
 ヲルトはゾンビ達に近付くと、動きを誘導した。
 近未来観測で敵の動きを予測し先んじて動くと、イドの反乱やデススタックを使い引きつける。
 時に幻影も使い翻弄しながら敵を1か所に集めていき――
「今だ!ㅤ撃ってくれ!」
 合図と共に跳躍を使い、大きくその場を離れる。
 ヲルトの退避の動きに合わせ、ルーチェは攻性魔力の咆哮を放った。
 バスター・レイ・カノン。
 全身の魔力を口の中で収束させ、すべてを薙ぎ払う光の奔流として放つ。
 射線上に居たゾンビ達は光りに貫かれ、ごっそりと身体を消し飛ばされた。
 そこから逃れた者もいたが、叩き潰されていく。
「うるさい死体共だ。死体は死体らしくそのまま黙っていろ」
 ルーチェは距離があいている内はマギシュートで薙ぎ払い、距離が詰まった所で剣魔双撃で叩き潰す。
 最後にキルザライトにより生み出した闇に飲み込み、欠片も残さず消滅させた。
 周囲の敵を全て倒した所で、次は建物内部の敵を殲滅。
 ヲルトが建物の中に入ると敵を誘導していく。
「恨み言?ㅤ知るか。お前が何を恨もうと、町を襲っていい理由にはならねぇよ」
 挑発しながら引き付け、建物の外に誘き出した所で全力攻撃。
 殲滅すると即座に次の建物に移動。
 念入りに確認しながら中央へと進み、そこで仲間と合流した。

 イレギュラーズ達は合流すると、それぞれ倒した敵の数と進攻経路を確認。
 取りこぼしが無いのを確認すると、最後に念のため、街を手分けして索敵。
 確実にチェックをした所で、敵を全滅したと確信し依頼人に報告に向かった。

●お疲れさま
「ってわけで、ゾンビは全てこちらで討伐した。これで安心して戻ってこれるだろ」
 ヲルトが皆を代表して、状況を説明する。
 これに依頼人の2人は礼を言い、依頼は完遂した。
 そしてアフターケアをするように、ヨハンが言った。
「建物は傷つけていない筈ですが、ゾンビがいた部屋とか気持ちのいいものでもないですよね。お祓いとかして貰った方が良いんじゃないです?」
「それは好いですね。これから来るお客さん達のためにも、そうします」
「ええ。それに、ゾンビも悼んであげた方が良いでしょうし。祈っておきましょう」
 リリスとヴァンの応えに、マリアも賛同する様に祈りを捧げた。
「ゆっくりおやすみ……」
 祈りの言葉は静かに周囲に融け込み、風と共に空へと昇って行った。
 そして一息つくような間を空けて、依頼人は言った。
「お疲れ様でした。帰りの馬車を用意していますので乗って行って下さい」
「近くの街に宿を取っているから、よければそこで休んでいって」
 断る理由もないので、馬車に揺られて宿屋に到着。
 ちょっとした慰労会ということで、飲み物や食べ物が振る舞われる。
「皆、お疲れさまじゃな」
 オウェードはサイダーの入った杯で乾杯の音頭を取り、一時の休憩を取る。
 神翼庭園ウィツィロや古廟スラン・ロウの異変に端を発する戦いは各地で続くが、戦いばかりでは体が持たない。
 次なる戦いに向け一休みをする中で、オウェードはリリスとヴァンに尋ねた。
「メイドロボとやらはどうやらうまく始動しているのう……そう言えばヴァン殿、義手の製作状況はどうかね?」
 これに2人は応えた。
「お蔭様で。メイドロボはイオと名付けて、イレギュラーズの皆さんに教育して貰っています。今回の依頼で守って貰った街に宿屋を作るんですが、そこで働いて貰う予定です」
「義手の方は、近い内に練達の知り合いの所に持って行くつもりです。安価で手軽に広めるには、まだ課題がありますから。他にも遺跡の技術をフィードバックさせたいので、今後も遺跡を探索する予定です」
「なるほどのう。道のりは、まだ遠いという訳じゃな」
 話をする内に話題も多くなり、その日は宿に泊まることになった。

 かくして依頼は完遂される。
 ゾンビを全滅させつつ、街の被害も可能な限り少なくすることの出来たイレギュラーズ達であった。

成否

成功

MVP

マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした!

皆さまのお蔭で、街からはゾンビが一掃され、住人達は戻って来ることが出来るようになりました。
街の建物被害を出さないように戦って貰えたお蔭で、住人のイレギュラーズに対する好感度も上がりました。
以降、この街を舞台にするシナリオを出す場合は、イレギュラーズに好感度が高く、便宜が図られやすい状態で進むことになります。

それでは重ねまして、お疲れ様でした。ご参加、ありがとうございました!

PAGETOPPAGEBOTTOM