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シナリオ詳細

キョウコツ&キツネの冒険。或いは、嵐の海を越えた先…。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●本日嵐天。所により槍が降るでしょう
 海洋。
 とある港に流れ着いた難破船は、どうやら遥か大昔に遭難した海賊の船であったらしい。
 ボロボロになった帆には、海蛇を模した海賊旗が描かれている。
 古い記録によれば、海賊団の名は“大海蛇海賊団”。
 船長であるサーペントは、組織の名が示す通りに海蛇の海種であった。
 当時は神出鬼没で名の通った海賊団であった。
 彼らが現れる時、決まって空は暗雲に覆われ、豪雨暴風はもちろん、槍や砲弾さえも降り注いだらしい。
 一介の旅船や商船が、降り注ぐ槍や砲弾に対処できるはずもなく、甲板は穿たれ、帆は裂けたという。
 そして疲弊したところを、気づけば真横に迫っていた海賊船に襲われ……雲が晴れた時には、一切合切を奪いつくされた哀れな船の残骸だけが大海原に漂うはめになったのである。

『とまぁ、暴虐の限りを尽くした大海蛇海賊団だけど、ある時を境にトンと姿を見せなくなった……ですってよ』
 と、嘲るような笑いを含んだ女の声は、海を行く鎧武者の肩口から聞こえていた。
 見れば、鎧武者の肩付近には青白い人魂が浮いている。
 人魂……彼女の名は“キツネ”。
 そして鎧武者は“キョウコツ”と言った。
 キョウコツとキツネは、豊穣の地で生まれ育った冒険者である。
「そして、その海賊船があれ……というわけか。見たところ、通常の船より細く長いようであるな」
 掠れた声で、鎧武者……キョウコツは告げた。
 現在2人は、人気の失せた港に立って沖に浮かんだ海賊船を眺めている。
 空は曇天。
 雨と風と、そして槍の降りしきる中、キョウコツは傘もささずにそこに居た。
 その肩や胴には槍が深く刺さっているが、彼は一切気にした素振りも見せてはいない。
 それもそのはず。
 キョウコツの鎧の中には、生身の身体が存在しないのである。
 彼が腰に差す妖刀“肉喰い”の呪いで、キョウコツとキツネは己の身体を奪われたのだ。
 つまり、彼らの旅の目的とは己の身体を取り戻すことに他ならない。
『キョウコツ。あんた、槍を避けるぐらいしなさいな』
「不要であろう。槍が刺さって痛む身体も無いのだから」
『今は良くても、変な癖が付くと身体が戻った後で苦労するんじゃない? 生身の身体で槍に刺されりゃ、普通の人は死ぬもんよ』
 などと、呆れたようにキツネは言った。
 それから彼女は、ふと思いついたようにキョウコツの肩から浮き上がり、数メートルほど上空へ。
『んー? やっぱり、あの船から妙な気配を感じるわね。妖術の類? 魔道具とかがたくさん積まれているのかも?』
「大海蛇海賊団は“魔道具を駆使した略奪を主戦略としていた”というキツネの予想は当たりのようだな」
『そうね。今のところ目につくのは悪天候を引き起こす魔道具。槍や砲弾をどこかから降らせる魔道具。そして、死者に身体を与える魔道具……ね』
 なんて、言って。
 キツネの見つめるその先……海賊船の甲板上には、青白い肌の巨漢が1人佇んでいる。
 フジツボの張り付いたキャプテンコートを羽織ったその男こそ、海賊船の船長であった海種“サーペント”なのだろう。

●長い旅の果て
「さて、というわけで窮鼠殿……呼び立ててしまってすまないのだが、また手を貸してはくれまいか?」
 港街の一角。
 寂れた酒場の片隅で、鎧武者がそう告げる。
 鎧武者、キョウコツの対面には髪の短い痩身小柄の男の姿。
 名を袋小路・窮鼠(p3p009397)という混沌の戦士である。
「あー、なんだ? 偶然知った顔を見かけたと思って声をかけたが、また宝探しか?」
 短い髪を搔きあげながら、窮鼠は問うた。
 その手元には透明な酒精が注がれたグラスが1つ。
 キョウコツもキツネも飲食することが出来ないため、注文は窮鼠の分だけだ。
「海賊船に乗り込むってのは面白そうだけどよ、俺1人じゃ手に余るぜ? 仲間にも声、かけていいか?」
『えぇ、こっちとして戦力が増えるのは願ったりよ。何しろ道中から不穏なのだもの。戦力は多い方がいいわ』
 窮鼠の問いにキツネは応えた。
 今回、キョウコツとキツネより依頼された仕事の内容は、海賊船への渡航の手助けと、魔道具奪取の手伝いである。
 悪天候の海を渡って海賊船に乗り込むのはきっと骨が折れるだろう。
 ましてや、降り注ぐ槍を避けたり防いだりしながらとなればなおさらだ。
 キョウコツは意にも介していないが、身体に槍が深く刺されば【流血】【ショック】は避けられまい。
「幸い、長く海の底に沈んでいた海賊船のようでな、見たところ大砲の類は既に使用不可能となっている」
『サーペントは海を自由に泳ぎ回るし、銛による近接戦闘を得意としていたそうだけど……今のところ、船の甲板から動く気配はないわね』
 身の丈2メートルを超える巨漢は、生前よりその長い腕で銛を操り多くの者を殺めたという。
 既に死した者ではあるが、魔道具の力で肉体を得た今、その戦闘力も再現されているとみるのが妥当であろうか。
 とくに銛の一撃には【必殺】や【ブレイク】【飛】【体制不利】といった状態異常が付与されている。
「キツネの見立てでは、姿を消してからつい最近まで、船は海の底を進んでいたらしい。何かしら、そのような海流につかまっていたのだろう」
『おかげで現在、船の中は水浸し。船内には海水が溜まっている状態で、それが抜けきるまで碌に航行できないでしょうね』
 キョウコツとキツネの話を聞いて、窮鼠は顎に手をあてた。
 甲板の上に佇んでいるサーペントは、おそらく船から海水が抜けきるのを待っているのだ。
 となれば、船を護るために起動させたらしい“天候を悪化させる魔道具”と“槍や砲弾を降らせる魔道具”も、サーペントの目が届く位置にあるだろう。
 それを奪われてしまえば、半壊している海賊船などあっという間に沈められてしまうだろうから。
「ま、ぱーっと行って、サーペントをぶちのめして帰ってくりゃいいやな。詳細は、集まった面子次第だが……」
 幸いなことにここは港町。
 漁船の1つや2つ程度なら、勝手に借りても問題あるまい。
 そもそもが悪天候と槍をどうにかしなければ、漁船も沖へは出られないのだ。
「それじゃ1つ、海賊相手の略奪と行こうか」
 ぱん、と。
 顔の前で両の手を打ち鳴らし、窮鼠はそう告げるのだった。

GMコメント

こちらのシナリオは『キョウコツ&キツネの冒険。或いは、我らの身体を取り戻せ…。』のアフターアクションシナリオとなります。
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/4922


●ミッション
サーペントが身に付けている魔道具を奪取する。

●ターゲット
・サーペント×1(海種、アンデッド)
かつて活躍していた海賊。
海蛇の海種。生前から武闘派で知られていた。
死後、長い年
月海底を彷徨い、つい最近やっと海上へ浮上してきた。
2メートルを超える巨漢。
銛を武器として操る。

シー・モンスター:物至単に大ダメージ、必殺
 空気を唸らせ放たれる渾身の刺突。

銛術:物中単に中ダメージ、飛、体制不利、ブレイク
 銛を巧みに操る武術。


・キョウコツ&キツネ
鎧武者(中身は骸骨)と人魂の旅人。
妖刀の呪いで現在のような姿になっているらしい。
呪いを解き、身体を取り戻すために旅を続けている。
キョウコツは生真面目な性格。
キツネはどこか適当かつ軽薄な性格をしている。

妖刀“肉喰い”:物至単に大ダメージ
 キョウコツによる斬撃。

妖術“狐火”:神遠単に中ダメージ、暗闇
 青白い炎による攻撃。キツネの技。


●フィールド
海洋。
とある港町。
嵐の中、船で海へ出ることになる。
沖に停泊している海賊船が目的地。
海賊船の甲板上にサーペントが控えている。
道中、海賊船にある魔道具の効果で空から槍や錆びた砲弾が降り注いでいる。
特に槍が刺さると【流血】【ショック】の状態異常を受けることになる。
海は大荒れであるため、海種であってもコツをつかむまでは思うように泳げない可能性がある。
※海賊船までの移動には船が必要。漁船であれば、港で借りることができる。

●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • キョウコツ&キツネの冒険。或いは、嵐の海を越えた先…。完了
  • GM名病み月
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年03月23日 22時02分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
秋宮・史之(p3p002233)
若木
ドゥー・ウーヤー(p3p007913)
海を越えて
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
綾志 以蔵(p3p008975)
煙草のくゆるは
袋小路・窮鼠(p3p009397)
座右の銘は下克上
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
耀 英司(p3p009524)
怪人暗黒騎士

リプレイ

●嵐の夜
 海洋。
 とある港より夜も遅く、嵐の海へと出航したその小さな船の名は『蒼海龍王』。
『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)の所有する船である。
 青い船体に横殴りの雨が打ち付ける。高い波に大きく揺られ、しかし船は縁の操船技術もあってか、安定した走りを見せていた。
「槍が降るってのはただの比喩だと思ってたんだがなぁ……実際に降ってくるとなると、なるほどこいつは厄介なことで」
「それに、凄い天気だ……気をつけて進まないと。海の藻屑にはなりたくないし」
 長い前髪の隙間から、空を見上げて『海を越えて』ドゥー・ウーヤー(p3p007913)はそう呟いた。
 槍が降るという異常気象はもちろんだが、そもそもからして嵐の勢いが強すぎる。
 ちょっとした漁船や民間船なら、あっという間に転覆してもおかしくないほどに荒れた天候だ。
「あぁ、心配すんなよ。俺の船と腕を信じな」
 雨に打たれながら、舵輪を手にした縁は言った。
 彼の視線のその先には、小さな船影。
 そして、次々と海へ降り注ぐ無数の槍が映っている。

 嵐の海に浮かぶ船影。
 それは、大破しかけの海賊船だ。かつてこの海を荒らしてまわり、ある日を境に姿を消した海賊“サーペント”の船だ。長く海中に沈んでいたその海賊船には、いくつもの魔道具が積み込まれていた。
 例えばそれは、嵐を巻き起こす宝玉。
 例えばそれは、槍や砲弾を降り注がせる羅針盤。
 例えばそれは、死者をこの世へ蘇らせる懐中時計。
「ハッ、死人が蘇るなんてな。キョウコツにキツネにも驚きだ」
 呵々と笑ったその男の名は『Heavy arms』耀 英司(p3p009524)。
 またの名を“怪人H”といった。
 頭をすっぽりと覆ったマスクに、パリッと糊を効かせたスーツといった姿は、なるほど不審であるだろう。
 事実、依頼人であるキョウコツとキツネは、そんな出航の直前に彼をちらちらと盗み見ていた。
「とはいえ、魔道具てんこ盛りの海賊船か……調べに行くのは面白そうだけど、近づく者にもれなく牙を剥くのが危ないな」
「あぁ、まったく。いくら世界に名を知らしめた海賊といえど、死ねば悪名も過去のものとなる。おとなしく眠っていて頂きたいものだ」
 甲板後方。
 船室の影で雨を避けつつ『新たな可能性』イズマ・トーティス(p3p009471)はそう言った。
 槍の降る海域に差し掛かるまで、まだ少し時間がかかるだろうか。
 とはいえ、敵船は魔道具を多数積んだ海賊船。
 不測の事態が起こらないとも限らない。
 警戒をして損をするということはあるまい。

「ふむ。確かに死人が生き返って動いているなど、常軌を逸した事態でござるな」
『っても、身体が無くなったまま生きてるワタシらも大概変だけどねぇ』
 などと、言葉を交わす鎧武者と人魂の姿。
 キョウコツとキツネは、魔道具の呪いにより体を失った冒険者であった。2人は失われた身体を探して、各国を旅して回っているのだ。その途中、偶然にも発見したのが蘇った古き海賊“サーペント”というわけだ。
 死人を受肉させ、再びの生を与える魔道具。
 それがあれば、キョウコツとキツネは体を取り戻せるかもしれない。
 と、そのように2人は考えたのだ。
「はっはぁ! 遺跡探索の次は蘇った海賊退治たぁ、随分と冒険してるじゃあねぇの。大変結構! 今回も楽しくいこうぜ」
 などと笑って『座右の銘は下克上』袋小路・窮鼠(p3p009397)は、キョウコツの背を強く叩いた。
 ばしぃん、と妙に軽い音が響くのは、鎧の中身が肉のない骨の身体だからか。
「うむ、頼りにしておるよ、窮鼠殿」
 かたじけない、と。
 深く頭を下げたまま、キョウコツはそう言葉を紡ぐ。
「ええ、雨が降ろうが槍が降ろうが砲弾が降ろうがやりきってみせましょうとも! すべては女王陛下のために!」
 と、鼻息も荒く腰の刀を抜き放ち『若木』秋宮・史之(p3p002233)はキョウコツの言葉に応と返す。
 戦意に満ちているのは、何も史之1人だけではない。
「いくら世界に名を知らしめた海賊といえど、死ねば悪名も過去のものとなる。おとなしく眠っていて頂きたいものだ」
 甲板の端で腕を組んだ『Meteora Barista』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)も既に戦闘の準備は万全といった様子である。
 キョウコツとキツネ、窮鼠、モカ、史之が乗っているのは『煙草のくゆるは』綾志 以蔵(p3p008975)の駈る船だ。
 縁の船に続く形で、彼らもまた港を出航していた。
「ったく、どうにも海賊ってのは執念深くていけねぇな」
 なんて、紫煙を吹かして以蔵は呟く。
 咥え煙草は、彼のトレードマークであろう。
 だが、しかし。
 黒い夜闇に灯った赤と、たなびく紫煙も、降りしきる雨に紛れてあっという間に消えてしまった。

●槍の降る航路
 暗い夜空に、ほんの一瞬何かが光る。
 それは鋼の輝きだ。
「いやぁ、参加者の中に船持ちと操舵出来るやつが揃うたぁ、幸先がいい。守備は俺らに任せて、以蔵さんは操船を頼むぜ!」
 と、そう言って窮鼠は【保護結界】を展開。
 以蔵の船はそれにすっぽりと覆われた。これにより、降る槍による船体へのダメージは無効化できる。
 ならば、問題となるは槍のみだ。
 今回のメインターゲットは海賊船に乗るサーペントである。現在はいわば、移動のフェイズ。道中に負傷していては、本戦にも支障が出るだろう。
「っしょ! それにしても、よく降るもんだな。早く帰って風呂入りてぇよ」
 窮鼠が腕を横に振るえば、喰らい夜空へ閃光が走る。
 光に包まれた閃光は、じゅうと音を立て燃え尽きた。
「おぉ。大荒れの海だからな、出来るだけ揺らさねぇよう気はつけるが、間違っても海に落ちるんじゃねぇぞ」
 船体を、波と波の間へするりと割り込ませながら以蔵は言った。
 操船技術を有するうえに、サブクラスには【セイラー】を持つ。船の扱いも、波を読むのも得意中の得意というわけだ。
 とはいえ、航路はまだまだ長い。
「船体に傷がつかないのなら、以蔵に当たりそうな分だけ対応すればいいだろ?  だったら槍はとにかく回避だ。それ以外対策が思いつかん」
 タタン、と軽い音を立てモカは後方へ飛び退る。
 先ほどまで彼女の居た位置へ、トン、と槍が落下した。保護結界の効果によって、槍は船体に刺さることなく弾かれる。
 砕けた刃の先端が、モカの頬に僅かな裂傷を刻んだ。
 既に船は危険海域に到達しいる。
 海賊船にいるサーペントも、接近してくる2隻の存在にそろそろ気づいたころだろうか。
 とはいえ、その結果として槍の勢いが増すものではない。
 その魔道具は持ち主の意志に関わらず、常に一定の槍を降らせるという類のものだ。
 槍の本数はかなりのものだが、自身らに当たりそうな分だけ弾くのであればさほどの苦労はなかった。
 実際、史之などは抜刀と同時に槍の穂先を刃で打ち付け、海賊船へ向けはじき返していた。
「当たれっ!」
「おぉ、そのような手があったか」
『キョウコツ、アンタもやんなよ!』
「無論。我らの旅路ゆえな、ただ見ているだけではおらんとも!」
 史之の真似をしてキョウコツも抜刀。
 船の船首へ駆けていくと、刀で槍を打ち返す。
「あら? まだ遠いかな?」
「あんまり前に出過ぎるなよ! 船が揺れるぞ、縁に捕まっておけ!」
 槍を弾くのに夢中になっている史之とキョウコツを呼び止めながら、以蔵は舵輪を素早く回す。大きく傾いた船を掠めて、大きな波が通り過ぎていった。

 降りしきる槍が、甲板上に突き刺さる。
 ちらとそれを一瞥し、縁は小さな舌打ちを1つ。
「やれやれ、随分と気軽に打ってくれるねぇ。こっちは修繕費も馬鹿にならねぇってのに」
 多少の荒波、暴風であれば縁にとって何ら脅威になり得ない。
 彼の持つギフトは“海上にいる限り、波や風などの悪天候の影響を受けにくくなる”というものだからだ。けれど、その代償として、絶えず彼の脳裏には女の声が響き続ける。
『許さない』
『寂しいわ、一人にしないで』
『ねえ、どうして私を――』
 幻聴だ。
 けれど、その声は確かにかつて耳にしたものに相違ない。
「えっと……十夜さん? 大丈夫です?」
「ん? あぁ、なに、問題ねぇさ」
 不安げに縁を見やるドゥーへ向け、彼はにやりと笑みを返した。
 脳裏に響く声は未だ鳴りやまないが、かといってその程度で操舵を誤るほどに半端な腕はしていない。
 ドゥーの放った魔力の弾丸が、降り注ぐ槍を撃ち砕く。
 砕け散った槍の欠片は雨と一緒にぱらぱらと海へ落ちて行った。
「サーペントは倒して魔道具は奪って……やるべきことは単純明快でいいね。問題はなかなか海賊船まで辿り着けないってことだけど」
 イズマの振るったアサルトブーケが槍を砕いた。
 甲板全体をカバーすることは不可能だ。そのため彼は、主に帆や操舵を務める縁に降りかかる槍ばかりを集中して狙っていた。
 一方そのころ、揺れる甲板の端に英司はしゃがみこんでいた。
「どうした? 酔ったのか?」
「俺が酔うのは上等な酒とイイ女にだけって決めてんだ。そうじゃなくってよ……今回の依頼は、いわばこいつは襲われたやつらの弔い合戦だろ? だったら無念は晴らさなきゃ浮かばれねぇよな?」
 なんて、言って。
 彼が取り上げたのは、いかにも頑丈そうな投網であった。
 出航前、港に泊まっていた漁船から拝借して来たものである。

 強風の中、窮鼠はマストを這いあがる。
 そうしながら彼は、一定のリズムを刻んで【神気閃光】を行使。槍を弾きつつ、何かしらの合図を送っているようだ。
「あ? ありゃもしかして、モールス信号じゃねぇの?」
 投網を引き摺る英司は告げた。
 その言葉を耳にした縁は、以蔵の操る船へと視線を向けた。
「……みたいだな。サーペントが、海に飛び込んだ、だと?」
「以蔵さんは目がいいらしいからね。きっと、この嵐の中でも、サーペントの姿が見えていたんだろう」
 そう言ってイズマは、甲板の端へと駆けていく。
 サーペントの襲撃に備えて、周辺の海域を警戒するつもりなのだろう。
「どうする? 一旦、船を止める?  これほど揺れる船の上だからあまり大きくは動き回れないし」
 ドゥーの問いを受け、縁は僅かに思案した。
 なるほど、サーペントの目的はイレギュラーズの撃退だろう。
 ならば、停船し襲撃に備えるべきか。
 そうすれば操舵する縁も戦線に加わることができる。
 けれど、しかし……。
「いや、このまま海賊船に乗り込もう」
「っし! サーペントが来たら、投網でとっ捕まえてやらぁ」
 ばさり、と投網を甲板に広げ英司が意気込む。
 そんな彼に笑みを送って、縁は船を加速させた。

 荒れ狂う波に乗るようにして、その男は泳いでいた。
 長い体をうねらせて、手にした銛を眼前に掲げたその姿はさながら1本の槍のよう。
 この世に蘇りし大海賊、サーペントの接近を察知し以蔵は大きく船を傾けた。波に乗って跳びあがったサーペント。迎え撃つべく、キョウコツと史之が甲板の端へと駆けていく。
 盛大な水しぶきを上げ、サーペントが海から跳び出した。
「うぉ!?」
「ぬぅ、速いな!!」
 刀を交差させた2人は、サーペントの突進を防御。けれど、勢いを殺しきれずもつれるように2人は甲板に転がった。
 倒れた史之へ向け、サーペントが銛を振り下ろす。
 青紫色の皮膚に、白濁した瞳。
 ボロボロの衣服。
 見れば、身体の一部は既に腐敗しているようだ。
 一切の容赦呵責もなしに繰り出された刺突は、しかし史之を穿つことは無かった。
 サーペントの背を、ドゥーの放った魔弾が穿ったのだ。
 姿勢を崩したサーペント。
「キツネさん、今っ!」
 刀で銛を弾きながら史之は叫んだ。
 直後、キョウコツの肩口に浮いていた人魂が高速の射出した。
 それはサーペントの眼前で、ぼんと音を立てて爆発。青白い火炎を撒き散らした。
 瞬間、既に駆け出していたモカがサーペントの眼前へと迫る。
「窮鼠さん、首から下げてる懐中時計だ!」
 甲板を蹴って跳躍したモカは、アッパーカットをサーペントの顎へ叩き込む。仰け反ったその頭を両手で掴むと、次いで膝を顔面へ。
 それは、シャイニングウィザードと呼ばれる技に似ていただろうか。
「おう、そいつが件の魔道具か! サーペントをぶった押して、じっくり拝ませ……」
 タン、と。
 駆ける窮鼠の眼前に、1本の槍が落下したのはその直後であった。
 思わず足を止めた窮鼠。
 意識がほんの一瞬だけ、槍へと向いたその直後。
 放たれた銛が窮鼠の腹部を貫いた。
「が……はっ!?」
 膝を突く窮鼠。
 腹に突き刺さった銛が引き抜かれれば、滂沱と血が溢れだす。
「俺のお宝ぁ、奪いに来たんだろ? 皆、そうさ。手下どももそうだった。だが、奴らは宝を奪えなかった。だから俺はここにいるのさ」
 ざらついた声だ。
 錆びた弦楽器のように、耳障りな声音でサーペントは笑った。
 
●サーペントの宝
 四方より迫る土塊が多数。
 ドゥーの放ったそれを回避し、サーペントは銛を振るった。
 ざん、と空気を切り裂く音。
 モカの腹部に裂傷が走る。
 よろめいたモカ。降り注ぐ槍に気づき、腕を頭上で交差させるが、それはサーペントの突きで弾かれた。
「くぁっ!?」
 ドス、と。
 鈍い音を立て、モカの肩に深々と槍が突き刺さる。
 裂かれたモカの腹部を蹴飛ばし、サーペントは後退。
 先ほどまで彼の居た位置を、史之の刀が空ぶった。
「槍が厄介だね。まずはそっちを何とかしないと……」
「奪うべきは魔道具は3つだったか」
 ちら、と視線を背後へ向けて窮鼠は呟く。
 海賊船まであと僅か。
 サーペントか、海賊船か。
 思案したのはほんの一瞬。窮鼠はサーペントに背を向け甲板を駆けた。
「横に付ける! しくじんなよ!」
「はっ、誰に言ってんだ! 得意なんだよ、こういうのは!」
 舵輪を回す以蔵に向けて、窮鼠はそう叫び返した。
 船が大きく旋回し、海賊船に側面を向ける。瞬間、窮鼠は甲板を蹴って海賊船へと飛び乗った。
 見れば、縁の操る船からも英司とイズマが海賊船へと飛び移っている。
「俺の宝に手を出すな!」
 怒声と共に放たれた銛の一撃が、モカの胸部を深く穿った。意識を失い倒れるモカ。【パンドラ】を消費し意識を繋ぎ止めるが、その時には既にサーペントは反転していた。
 その背へ向けて蹴りを放つが、しかしそれは旋回する銛に弾かれる。
 姿勢を崩したモカを支えるキョウコツ。
 その肩口からキツネは鬼火を射出するが、サーペントはゆらりと揺れてそれを回避。
 海賊船の甲板へと飛び乗った彼は、銛を投擲すべく身体を捩じるが……。
「おっと、待ちな。二度とは海に戻してやらねぇ……てめぇは三途の川で一生”コウカイ”してな」
 サーペントが銛を投げるその直前、その身に投網が投げつけられた。
 網に捕らわれ倒れたサーペント。
 銛を振るい、網を切断しようと藻掻くが……。
「死者はきちんと眠るべきだよ」
「逃がさないし、進ませない。ガンガン攻めるよ」
 四方より迫る土塊が、サーペントの脚を押しつぶす。
 甲板上よりドゥーの行使した魔術である。
 さらに、接近したイズマは武器を一閃。サーペントの首を狙った一撃は、掲げられた銛に止められた。
 ミシ、と銛の軋む音。
 モカや史之の攻撃を受け続けたことで、大きく損傷していたのだろう。
 砕け折れた銛を見やって、サーペントはその白濁した目を見開いた。生前より愛用して来た銛が折れるところなど、きっと彼はこの日初めて目にしたのだろう。
 時を同じくして、槍が止む。
 空を見上げてみれば、雨雲も次第に四方へ散って行っていた。
「へっ……ざまぁ見やがれってんだ。にして、あぁちくしょう。雨と海水で風邪ひいちまうよ」
 血の止まらない腹部を押さえ、窮鼠は告げた。
 彼の手により、海賊船に置かれていた2つの魔道具は機能を停止したようだ。
 残るはサーペントの持つ懐中時計、ただ1つ。
「くっ……貴様らの顔、覚えたぞ」
 投網を破り、サーペントは立ち上がった。
 踵を返し、彼は一路海へと向かう。嵐は去ったとはいえ、まだまだ海は大荒れだ。
 海種であるサーペントはともかく、他の者ではそう簡単に後を追ってはこられない。
 そう判断しての行動だったが……。
「起きて早々悪いがね。もう一度眠っちまってくれや」
 タン、と。
 甲板を蹴って、縁はまっすぐ海へと飛び込む。
 彼はサーペントとほぼ同時に着水。
 荒れ狂う海の中、対峙した2人はほんの一瞬、視線を交差させた。
 果たして……。
「今度は永遠にな」
 一閃。
 縁の刀が、サーペントの首を斬り落とす。
 首からかけられていた懐中時計を手に取って、縁は海面へ浮上。船上で待つ以蔵へ向けて、それを投げて渡すのだった。

 史之の治療を受けながら、モカはキョウコツへ視線を向けた。
「ほらよ。こいつでいいんだろ?」
 と、そういって以蔵は彼に懐中時計を手渡した。それにより、サーペントは蘇ったのだ。
 腐っていたはずの身体も再生していた。
 ならば、身体を失ったキョウコツは……。
『どう? キョウコツ。身体に変化、ある?』
「……いや。死者にしか効かんのだろうな」
 肉体こそ失っているものの、キョウコツもキツネも生きている。
 どうやら死者を蘇らせる魔道具は、2人に影響を及ぼさなかったようである。

成否

成功

MVP

袋小路・窮鼠(p3p009397)
座右の銘は下克上

状態異常

モカ・ビアンキーニ(p3p007999)[重傷]
Pantera Nera
袋小路・窮鼠(p3p009397)[重傷]
座右の銘は下克上

あとがき

お疲れさまでした。
サーペントは無事に討伐。
魔道具も回収されました。
依頼は成功となります。

この度はご参加、ありがとうございました。
縁があれば、また別の依頼でお会いしましょう。

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