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シナリオ詳細

《狐の嫁入り 第十四幕》子猫の里帰り

完了

参加者 : 3 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

■暖かくなり始めたある日の事
 時折降っていた雪も鳴りを潜め、白く染まっていた山も緑を取り戻そうとしている時期。獣人達の世界にある城塞都市も、陽の当たる時間が増えて温もりを感じるようになっていた。
 そんな晴れた日。山猫の獣人、ミャーコは居候先のオーク族の家で日向ぼっこに興じていた。庭先では彼女が姉と慕うティティスが、洗濯物を干している。
「最近洗濯物増えたなぁ……お父さんが汗っかきだからかな」
 大きなシャツのシワを伸ばしながら呟くティティス。彼女の父親、ミルディンはオーク族を纏める立場として率先して力仕事をこなしている。そのためか、汗がすぐに服に染み込むので着替える事が多くなってきた。こんなとこで春の到来は感じたくなかったなぁ、とぼやく。
「あ、お父さんといえばミャーコ?」
「なぁに、おねーちゃん」
 顔をくしくしと手で掻きながら、ティティスの声に応えるミャーコ。半分寝ぼけているような彼女だが……次の瞬間覚醒する。
「里帰りしなくていいの?」
「え……あ、うーん、そのー……」
 半ば家出同然に城塞都市にやってきたミャーコ。その時は山道が雪で閉ざされるという理由をつけて帰らなかったが、そろそろ通れるようになっているはずである。
 その事を指摘されると、視線を逸らす。何か後ろめたい事でもあるというのだろうか。
「……黙って出てきたから気まずい? 私が一緒に行ってあげようか?」
「それはちょうどよい!」
「ひゅい!?」
 優しくミャーコを諭すティティスだが、突然の第三者の登場に驚かされる。城塞都市の長、スーラクがいつの間にか庭に入ってきていたのだ。
「お、すまんな。驚かせたようだな。」
「び、びっくりしたぁ……お父さんに御用ですか?」
「ああ、いや。お前達に、だな」

■山猫族との架け橋に
「いつもの獣人達の世界から、ご依頼が届いたわ」
 イレギュラーズ達はこの世界においてはスーラクの客人という扱いになっている。のだが……事ある毎に厄介事を頼まれるような気がする。気の所為ではない。
 境界案内人のポルックスも慣れたもので。新たに開かれた本のページを捲りながら苦笑いを浮かべている。
「ミャーコちゃん、を知っているかしら? その子の里帰り兼城塞都市からの贈り物を届けて欲しいという事なの」
 ちょっと険しい山を入っていくみたいだから気をつけてね、とポルックスはイレギュラーズを見送る。

NMコメント

 猫の日に出そうと思っていたんですよ、以下略です。どんだけ過ぎてんだ。
 さてはて。いつもの獣人の世界からの依頼です。今回は「山猫族の集落に使者として出向いて友好関係を築く」ように依頼が来ております。
 以下登場NPCなど。
・山猫の少女、ミャーコ
 家出同然で城塞都市に遊びに来ていた少女。そのせいか里帰りには非常に後ろめたいものがあるようで。
 しかし彼女の協力なしでは、山猫族は話も聞いてくれないでしょう。必ず一緒にいるようにして下さい。
・オーク族の少女、ティティス
 ミャーコが逃げ出さないようにとのお目付け役。身のこなしが軽く器用。常に狐人の少女に变化しています。
 それなりに戦えるので守る必要は薄いですが、人見知りする性格なので交流時には助け舟は必要です。

・山猫族×?
 山の奥の集落で暮らす獣人。傾向として警戒心が強く、他の土地で暮らす人々との交流はほぼありません。時折山の幸を売りに降りてくる程度です。
 そのような地で暮らす為か全員が身体能力は高く、また美味しい物には目がありません。
 今回、遭遇した時点では敵意剥き出しで襲ってきますので、なんとかして会話可能な状態にして下さいませ。多少なら怪我させても良いですが、殺さないように。
 
 以上となります。
 リプレイは山を登りきって山猫族と遭遇したところから始まります。襲ってくる彼らを鎮め、スーラクより預かった手紙及び礼物を渡して、うまく交流できるようにお願いいたします。

  • 《狐の嫁入り 第十四幕》子猫の里帰り完了
  • NM名以下略
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年03月24日 22時05分
  • 参加人数3/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 3 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(3人)

ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
優穏の聲
セリア=ファンベル(p3p004040)
初日吊り候補
アムル・ウル・アラム(p3p009613)
夜を歩む

リプレイ

■手荒な歓迎
「止まれ、怪しい奴ら!」
 険しい山道を登ってきて、くたくたになった一行の足元に矢が放たれると同時に、頭上から警戒心を顕にした声が降り注ぐ。
「……あの尻尾、山猫族で間違いなさそうね」
 『初日吊り候補』セリア=ファンベル(p3p004040)が、相手を刺激しないように小声で仲間に話しかける。狐人……ではなく、变化を使っているオーク族の少女ティティスと、スカイウェザーの少年、アムル・ウル・アラム(p3p009613)と、もうひとり……。
「あ、ああ……村の守り人の一人なのだ」
 山猫族の少女、ミャーコだ。今回イレギュラーズは、彼女の里帰り兼山猫族との交流作りの為に山を登ってきたのだが……警戒心が強いという情報は本当のようだ。
 そのことを事前にミャーコから聞いていた面々は、対応策を考えてきていた。アラムが一歩前に出て、何も持っていない手を上げる。
「ほら、僕達は何も、持っていない、よ」
 敵意がないことを示す為に空の手を見せるが、山猫族の守り人は険しい表情を変えない。よほど任務に生真面目なのか、それとも疑心が強いのか。
「ほら、ティティス。あなたの仕事よ」
「は、はいぃ……」
 セリアがティティスの背中を押し矢面に立たせる。そもそもの発端は、ミャーコを餌付けしたティティスなのだから、彼女が責任を取るべきだと考えているのだ。
 もっともティティスは人見知りをする性格なので、人との交渉など向いていないのだが。今も緊張でカチコチに固まってしまっている。
「あ、ああ、あの、その、私っ」
「……ダメねこれは」
「僕達……城塞都市から……来たの」
 見かねたアラムが口を挟む。彼の言葉に追従するように、首を縦に振るティティスだが……彼女を使者に立てたのははっきりいって失敗ではないだろうか。そんな考えがイレギュラーズ二人の脳裏を過る。
 そもそもにして、同族であるはずのミャーコはどうしたのだろうか、とセリアはもう一度背後を振り返る。当のミャーコはというと、縮こまってティティスの背中にへばりついていた。これでは向こう側からでは彼女の事は見えていないだろう。
「……何してるのよ」
「だ、だって、ミャーコが、見つかると、怒られる……」
 怒られる自覚があるなら、何故村を飛び出したのか。そして何故帰らなかったのか。等々ツッコミどころが多いのだが……そんなことを言っている場合ではない。
 とにかく今は、目の前の山猫族の敵対心を解く事が先決なのだから。
「私達は城塞都市の長、スーラクさんからの依頼で来ました。こちら、手紙と贈り物を受け取って頂けると有り難いです」
 この場での最年長であるセリアが渋々と仕切り始める。このまま年少組にまかせては、事態は悪化するばかりだ。
「……ミャーコもいる。危険はない」
「わかった、しばし待て、族長を呼ぶ」
 セリアのおかげで吹っ切れたのか、ようやく姿を見せたミャーコの言葉。それである程度信じたのか、見張りを置いて、一人の若者がひらりひらりと飛ぶように山道を駆けていく。これで一安心かと思った一行だが、次の瞬間に見張りに残った山猫族の者達がとんでもない事を言いだした。
「族長、待つ間暇だ。お前達、強さを見せろ」

 返事をする間もなく一息に距離を詰めてくる山猫族の戦士。セリアは反応が遅れたが、アラムは負けていない。彼が地を蹴ったと同時に翼をはためかせて小さな、本当に誰にもわからない程の音を立てていた。
「何を、した!?」
「秘密」
 急に足取りが重くなった事に目を見開き驚く山猫族の戦士。彼の問いにアラムは表情一つ変えずに、静かに応える。
「驚かせるわね……そんなにみたいなら、見せてあげるわよ!」
 セリアの宣言と共に、周囲を光が包み込む。命を裁かず、罪を裁く神聖なる一撃は誇示行為にはちょうどいい。
 光に押しつぶされた山猫族の戦士は、四肢を大地に縫い付けられる形になる。
「喧嘩売る相手が悪かった。この人達は、ミャーコより強いぞ」
「……そのようだ」
 這いつくばった戦士の前にいつの間にか立っていたミャーコが、どこか誇らしげに笑いながら話しかける。先程までの怯えっぷりが嘘のように。
 一方の戦士の方はというと、悔しげに呻きながらも負けを認める。尤も、ただの小競り合い程度で終わったのでお互いに怪我はほぼないのだが……精神的に折れたのだろうか。
 身軽なはずの彼らよりも早く反応して見せたアラムと、命を奪う事はなくされど強烈な一撃を放つセリアという、閉鎖された文化しか知らない彼らにとって驚異的な実力者を目にした事で。

■この親にして娘あり
「待たせた、客人」
 先に族長を呼ぶ、と言っていた若者が一人の壮年の男性を連れて戻ってきた。威風堂々とした佇まいは流石族長と言うべきか。
「こ、これ。スーラクさんから、の、手紙、ですっ」
 上ずった声だが、今度はティティスが自分で喋る事ができた。差し出した手紙が手汗で少し濡れているのは、この際目を瞑ろう。幸い向こうも気にしていないようだ。
 手紙に目を通した族長は、難しい顔をしてティティスに手紙を返す。何か逆鱗に触れるような事でもあったのだろうかとセリアとアラムが緊張する中……。
「すまぬ、文字、読めぬ」
「……えぇ……」
予想外の言葉に一行の肩の力が抜ける。それもそうだ。こんな厳つい顔つきで、威厳を漂わせている男が文字を読めない等と想像できるものであろうか。
「パパはこれだからダメなのだ」
「……パパ?」
 ミャーコの笑い声に、アラムが首を傾げる。頑なに帰りたがらなかったミャーコ、山猫族の娘、目の前にいるのは族長。それらの符号がようやく繋がる。
「……ミャーコさん……族長の娘さん、なの……?」
「お? 話してなかったのだ?」
「初耳だわよ……」
 あっけらかんとしたミャーコに、セリアがどこか呆れ半分怒り半分といった様子。ともあれ、セリアはティティスから手紙を受け取り、内容を読み上げる。
「なになに……『今度祭りをするから遊びに来るといい。できれば美味い物を何か手土産に頼む』……だってさ」
 事ある毎に祭りをしたがる男、スーラク。ここに極まれり。山猫族との交流を結びたいというのは嘘偽りないのだろうが、それをダシにしてまた祭りを開くつもりのようだ。
 気難しい山猫族が簡単に了承するのか? そう考えて目の前にいる数人の顔色を伺うと、何事か小声でヒソヒソと話していた後に咳払いを一つ。
「客人、その祭りとやらには美味い物が出るのか?」
「私は参加した事あるから知ってるわ。結構いいものがあったわよ」
「……そうなんだ……見てみたい、かも……」
 ふよふよと浮きながらアラムが思いを馳せる。浮いている理由は、急に元気になったミャーコがじゃれついてきたからだ。怒られないと感じた瞬間コレである。
「……ミャーコさん、ほら、お父さんに……謝るのと、渡すもの、あるんじゃ……」
「あ、う、む。……えーと、その、パパ。勝手に出ていって、ごめん、なのだ」
 ようやく父親の目の前で頭を下げるミャーコ。跳ねっ返りの悪戯娘が珍しく謝る姿を目にした父親は面食らうものの、その小さな頭に手を乗せる。
「息災ならば、良い。……ふむ、お前が素直に謝るとは……良き友を得たな」
「うむ! おねーちゃんは優しいし、この者達も素晴らしいのだ! これなんか、パパ達の為に選んでくれたのだぞ!」
 そう言ってミャーコが差し出すのは、セリアとアラムが選びぬいた手土産。魚が好きだと聞いたセリアは、上等な魚の干物を選び出し。アラムは城塞都市ではさほど珍しくなく、されど特別な時に食べるケーキを選んでいた。もちろん、保存魔法はかかっている為に傷んでいない。
「……ほう、これはこれは。客人、感謝する。謹んで受け取ろう」
「……喜んでもらえたなら、良かった」
「それじゃあ、手紙の件は前向きに考えてもらえるということで?」
「うむ。あちらの長に伝えて貰いたい。祭りには必ず、一族から希望者を募って参加させて貰う、と」
 良い返事をもらえた事で、ようやく肩の荷が降りた一行。
 その日は一晩集落にとどまる事になり、野性味溢れる生活の中で戸惑いながらもそれぞれにできる事を披露し交流を深めた。
 セリアは持ち込んでいた魔法器具を使って干物を焼いて皆に振る舞い、アラムは若者達と足の速さを競って汗を流す。
 賑やかな一夜は、あっという間に過ぎ去っていった。


「おう、そうか。ご苦労さまであった」
 城塞都市に戻った一行は、スーラクに報告を済ませ労いの言葉を受け取る。ミャーコは結局村に戻らずに、城塞都市に戻ってきていた。
 しかし以前とは違い、今度は親の許可を持って、である。親善大使としての役目も請け負ったようだが……果たして彼女に務まるのかは別問題。
「スーラクさん、お祭りをまたやるの?」
 手紙の内容を読み上げたセリアは、スーラクに問いかける。
「おう。おまえさんは知っているだろう? 義兄弟……フォレスト家が毎年やっている花の祭りだ」
「ああ、やっぱりアレなのね。今年はもっと賑やかになりそうね」
「……賑やか……僕は、楽しめる、かな?」
 生命の力溢れる季節は、もうすぐそこに。

成否

成功

状態異常

なし

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