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シナリオ詳細

<ヴァーリの裁決>誰がためにドーナツは実る

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●実りしドーナツは食い荒らされて
 広く間隔を取って植えられたドーナツの樹々には、オールドファッション、フレンチクルーラー、ポン・デ・リング、ハニーディップなどの様々なドーナツがたわわに実って収穫を待っている。もう少しすれば、それらのドーナツは聖剣騎士領キャラメル・ロットの特産品として出荷される――はずだった。
「ウメー、ウメー。ココノドーナツ、タマラネー」
 だが、体長五メートルを超えんとする大猿が、実ったドーナツを次々と引き千切っては口の中に放り込んでいく。その勢いは止まるところを知らず、ドーナツの樹は次々と実っているドーナツを食い荒らされた。しかも、力任せに実を引き千切るものだからドーナツの樹自体も枝を折られたりして痛めつけられている。
「くそっ、やめろぉ!」
 このままではドーナツ畑のドーナツが食い尽くされてしまうと、ドーナツの樹を世話している農民や、騒ぎを聞きつけてきた勇者らが大猿を止めようとする。だが大猿はその体躯に似合わぬ俊敏さでヒョイヒョイと制止を避けると、反撃とばかりに邪魔してきた相手を次々と殴りつけていった。
「……ぐはっ!」
 殴られた者はことごとく派手に吹き飛ばされ、地面に叩き付けられる。その様を見ていた周囲の者達は自分達では敵わないと判断し、領主であるセララ(p3p000273)とローレットに救援を求めるのだった。

●セララの怒り
「全く! ボクの領地の大切なドーナツを問答無用で食い荒らすなんて、許せないよ!」
 用事でローレットに足を運んでいたセララは、大猿が自領のドーナツ畑に実るドーナツを食い荒らしているとの報を受けると、カンカンに怒った。セララが領地である聖剣騎士領キャラメル・ロットを得てからと言うもの、樹を植えて畑として整備し、特産品と出来るほどにドーナツを実らせるまで、どれほどの手をかけてきたか。それを思えば、到底捨て置ける所業ではなかった。
「ドーナツを食い荒らす大猿……もしや」
「知っているの!?」
 側で話を聞いていた『真昼のランタン』羽田羅 勘蔵(p3n000126)が、ふと心当たりがある様子を見せる。セララは、何か知っているのなら教えて欲しいと言わんばかりに尋ねた。
「――最近、妙に幻想で魔物の出現が増えているのですが、その一つとしてそんな狂王種が噂になっているんですよ。
 どうやら狂王種になった際に甘味に目覚めたらしくて、甘い物を見かけては次々と力尽くで奪っていくという行動から、『甘党』スイーツイェーガーと呼ばれています」
「……随分ふざけた狂王種だね! チャッチャッと、ボクがやっつけてくるよ!」
「まぁ、待って下さい。曲がりなりにも相手は狂王種ですし、撃退しようとした人は軒並み返り討ちという話ですから。
 セララさんと一緒に行ってくれる人がいないか、すぐに当たってみますよ」
 今すぐにでもスイーツイェーガーを討伐しに行こうとするセララを、勘蔵は宥める。そして、セララと共にスイーツイェーガーを討つというイレギュラーズを探しはじめた。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。OP書いてたらめっちゃドーナツ屋に行きたくなりました(苦笑)
 それはさておきまして、今回は、<ヴァーリの裁決>のうちの一本をお送りします。『甘党』スイーツイェーガーを倒し、セララさんの領地のドーナツ畑で実っているドーナツを守って下さい。

●成功条件
 『甘党』スイーツイェーガーの死亡

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 セララさんの領地『聖剣騎士領キャラメル・ロット』の『ココア森林』にあるドーナツ畑です。
 間隔を取ってドーナツの樹々が植えられており、それを遮蔽とされる可能性はあります。
 時間は晴天、天候は昼で、ドーナツの樹を遮蔽にされる以外での環境による戦闘へのペナルティーはありません。
 しかし、戦い方次第ではドーナツの樹に被害が出てしまうでしょう。

●『甘党』スイーツイェーガー
 セララさんの領土に襲来した、大猿の狂王種です。
 狂王種に進化してから、人間の味わうお菓子の甘さに目覚め、至る所で略奪を繰り返した末にセララさんの領地にたどり着きました。
 攻撃力が特に高く、その他の能力も全体的に高水準となっています。巨体に似合わずすばしこいため、回避、EXA、機動力も高いです。

・攻撃手段など
 パンチ 物至単 【弱点】【飛】
 薙ぎ払い 物至範 【飛】
 ドラミング 神自単 【自付】
 雄叫び 神自域 【災厄】【乱れ】【恍惚】
 マーク、ブロック無効
 精神無効
 【怒り】無効

●ブレイブメダリオン
 このシナリオ成功時参加者全員にブレイブメダリオンが配られます。
 ゴールド、ミスリル、アダマンタイトとメダルごとにランクがあり、
 それぞれゴールド=1p、ミスリル=2p、アダマンタイト=5pとして扱われブレイブメダリオンランキングにて総ポイント数が掲示されます。
 このメダルはPC間で譲渡可能です。

 それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。

  • <ヴァーリの裁決>誰がためにドーナツは実るLv:1以上完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年03月25日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

セララ(p3p000273)
魔法騎士
鶫 四音(p3p000375)
カーマインの抱擁
江野 樹里(p3p000692)
ジュリエット
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
エリス(p3p007830)
呪い師
カナメ(p3p007960)
毒亜竜脅し
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

リプレイ

●スイーツイェーガー討つべし
「これは、酷い……」
 『甘党』スイーツイェーガーによって荒らされたドーナツの樹々の惨状を目の当たりにして、誰かがそう呻くように呟いた。もうすぐ完全に実るはずだったドーナツはことごとくもぎ取られ、辺りにはその際に折ったと思しき枝が何本も打ち捨てられていたからだ。
「……甘党なのは結構だけど、こんなに食い荒らされたら、とてもじゃないけど許しておけないね」
 ドーナツの実を木の実感覚で食い荒らすのはまだしも、食い荒らし方も、食い荒らした量も、あまりにも酷すぎる。『新たな可能性』イズマ・トーティス(p3p009471)は、眼前の光景に憤りさえ抱いた。
「好き勝手な略奪はここで終わらせるぞ。確実に討伐する! セララさんの領地を襲ったのが、運のツキだと思わせてやろう!」
「そうですね。これ以上ドーナツの木の被害を増やさない為にも、スイーツイェーガーをやっつけてしまいましょう!」
「ええ。どーなつの実りを台無しにする不届き者には天誅です」
 イズマが意気込めば、『呪い師』エリス(p3p007830)も『ジュリエット』江野 樹里(p3p000692)もこくりと深く頷きながら、心を同じくする。エリスにも樹里にもそうさせるほどに、スイーツイェーガーの食い荒らし方は見るに堪えないものであった。
「まあ魔物からすれば、食物を取ってるだけですし……そこに至るまでの苦労等は分からないのでしょうね。
 その無理解故に、これから命を奪われることになる訳ですけど……ふふふ」
 意気を高める三人の様子を見ながら、『カーマインの抱擁』鶫 四音(p3p000375)はスイーツイェーガーに待ち受ける運命を想像し、妖しく笑う。人の側としても、黙って食物を奪われるわけにはいかないのだ。
「ドーナツの樹からドーナツを食べるサルか……」
 『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)は、苦笑いしながら溜息を吐いた。言葉に出しただけならファンシーなのであるが、それでも怪王種なのである。
「何にしても、怪王種となれば強敵だからね! 気合入れて行こう!」
 イグナートは、胸の前で掌に拳をパン! と叩き付け、全身に気合いを漲らせた。
(へー、セララっちの領地でドーナツ採れるんだ! すごーい! どんな種類がなってるっかなー♪)
 そんなことを考えながら、『二律背反』カナメ(p3p007960)はドーナツ畑に来たのだが、実がことごとく食い尽くされている有様にガクッと肩を落とした。しかし、この事態を起こしたスイーツイェーガーを討伐すればドーナツの樹のドーナツを楽しめるだろうと気を取り直す。

●甘い物は俺の物
 やがて、イレギュラーズ達はドーナツの樹のドーナツを食い荒らしている最中のスイーツイェーガーを発見した。遠目からでも、常人の三倍以上の大きな体格を有していることがはっきりとわかる。
「あ、図体大きくて……アレに殴られたら、どれくらい痛いかなぁ……うぇへへ」
 ドがつくほどのマゾヒストであるカナメは、スイーツイェーガーの巨体を見て、そんなことを口走る。想像した痛みへの期待は、カナメの背筋にゾクゾクとするような感覚を走らせた。
「セララフィールド、展開!」
 さらにスイーツイェーガーに接近したところで、『魔法騎士』セララ(p3p000273)はすぐにでも攻撃したい衝動を抑えつつ、戦闘から周囲の環境を保護する結界を張る。そして、野外で紅茶を楽しむための茶葉やポット、カップなどのセットをセララの手作りのドーナツと、封のされている壺と共に簡易式のテーブルの上に設置した。
「!? アタラシイ、スイーツ!」
 スイーツイェーガーはセララフィールドによって何者かが来たことを察知し、さらに手作りドーナツを目にするとそれを奪わんとピョンピョンと身軽にジャンプを繰り返しながら近付いた。
「愛と正義とドーナツの守護者、魔法騎士セララ参上! いくらお腹が空いてても、ドーナツの樹を荒らすなんて許せないよ。
 空腹ならボクにドーナツ下さいって頼みに来てよね!」
「……ナンデ、オマエニ、タノマナキャナラナイ? ソンナ、必要、ナイ!」
 セララの言い分は領主として当然であるのだが、社会の有様を知らず略奪を当然とする思考のスイーツイェーガーには理解出来るものではない。ただ、セララや他のイレギュラーズ達からの敵意だけは、敏感に感じ取った。

「ウオオオオオオ!!」
 ドコドコと胸を何度も拳で叩き、スイーツイェーガーは敵を前に己を奮い立たせる。そして器用にイレギュラーズ達の間を跳びはねて抜けると、簡易式テーブルの上に置かれたドーナツを手に取り、頬張った。
「ウメー、ウメー。樹ノドーナツヨリモ、モットウメー」
 ムシャムシャとドーナツを咀嚼し、ゴクリと飲み込んでいくスイーツイェーガー。だが、それをイレギュラーズ達が放っておく事はない。
「てめえが招かれざるお客サマかい? ま、生きる為にゃあ食わなきゃならねえ。
 力ずくで奪うも貪るも、山賊たるおれさまにゃ共感出来るハナシだ。
 だが、こっちも商売なんでね。つまみ食い分の代金は、キッチリ支払ってもらわなきゃなあ。
 ここの領主サマはずいぶんと心のお優しいお嬢ちゃんでねェ──支払いはてめえの命で良いとよッ!
 ツケはナシだ! とっとと耳揃えて払ってもらおうかい!」
 まず、『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)が猛然と叫びながらスイーツイェーガーに迫った。
「代金? 支払ウ? 何ダソレ。命ナンテ……」
 グドルフの言葉に、スイーツイェーガーが最後まで答えることは出来なかった。スイーツイェーガーをぶっ壊す勢いで、グドルフの斧を何度も叩き付けられたからだ。
「グアアアッ!」
 グドルフの勢いに気圧されたスイーツイェーガーは、胸を叩いて高めた己の闘志をすっかり打ち消されてしまっていた。
「その樹のドーナツが誰の物か、樹に実るまでに誰が手をかけているのか、わかりますか?」
「ウグッ……ソンナモン、知ッタコトジャネー。甘イモノ、ソコニ、アル。俺、食ウ」
 そして四音が、スイーツイェーガーに問いかけを交えつつ邪悪を灼く神聖なる光を浴びせる。スイーツイェーガーは破邪の光に身を焼かれつつも、四音の問いに悪びれることなく答えた。
「そのドーナツを食べているうちに、カナがぜーんぶここのドーナツ取っちゃうよー?
 取られたくなかったらカナを倒さないといけないくらい分かるよねー、ド低脳お猿さん♪」
「ソノドーナツモ、俺ノモノ。ココノドーナツ、俺ガ、全部、食ウ」
 カナメはまだドーナツが残っているドーナツの樹の前に立つと、ドーナツをもぎ取る素振りを見せて挑発しつつ、自身に触れる物を襲う異界の黒い靄を纏わせる。カナメの挑発に、スイーツイェーガーはドーナツ畑のドーナツは全部自分のものと言わんばかりに返した。
「はむはむ……めっちゃ美味しい! これが、完全に熟したドーナツの美味しさだね!」
 いつの間にかドーナツを手にしたセララは、スイーツイェーガーに見せつけるようにドーナツを口にする。
「完全ニ、熟シタ……? ソレモ、ココノドーナツヨリウメーノカ!」
「ボクはまだまだいっぱいド-ナツを持ってるから、倒されたら美味しいドーナツを奪われちゃうかも!」
 スイーツイェーガーの問いを肯定するようにドーナツの所有を示唆しながら、セララは天から落ちてきた雷を『聖剣ラグナロク』に纏わせ、スイーツイェーガーに斬りつける。雷撃と斬撃が一つになった一閃は、スイーツイェーガーの腹部に横一文字の傷を刻むと同時に、その傷をジュウ、と焼いた。
「この剣で……そこに縫い付ける! 自由に暴れさせたりなどしない!」
「ウヌッ……邪魔ダッ!」
 そこに、スイーツイェーガーの行動の自由を奪うべくイズマが双剣を振るう。放たれた剣閃は、スイーツイェーガーに傷を負わせただけでなく、その神経を不完全にではあるが麻痺させた。
「高機動で近づいて殴る……まさに力いずぱわーな怪王種ですね。ですが、力なら私も少し自信ありです。
 まずは、その幻想、もとい力自慢を打ち破ります」
「ハ、ソノ小サナ身体デ、何ガ出来ル」
 スイーツイェーガーが、樹里の言葉を嘲笑う。だが、すぐにスイーツイェーガーは樹里を侮ったことを後悔することになる。
「受理あれかし」
 イレギュラーズの姿を彩り、声に艶を乗せ、その魂を震わせる不可視の概念の力が『真魔砲杖』に宿る。
「良し。受理は為された」
「受理ッテ何ダァァァ!!」
 『真魔砲杖』から放たれた不可視の概念の力が、砲弾となってスイーツイェーガーの胸部に直撃する。スイーツイェーガーはそのダメージにも構わず、樹里にツッコミを入れた。入れずにはいられなかった。
「まずは動きを止める! 好き勝手に走られちゃヤッカイだからね!」
「グウッ、面倒ナ奴メ!」
 苦難を退け栄光を掴む力をその身に宿したイグナートが、ファイティングポーズを取り拳の連打を繰り出した。そのコンビネーションはスイーツイェーガーの動きを牽制するように放たれており、スイーツイェーガーの足は鈍らされた。
「ドーナツも美味しいですがこちらも美味しいですよー? お猿さんにはこの味がわからないでしょうけど!」
「アアア、ソレモヨコセエ!」
 エリスは普段から持ち歩いているおやつのうち、チョコレートを包みから出して見せつける。スイーツイェーガーがそれに気を取られた隙を衝いて、エリスは深緑の大樹ファルカウの呪(まじな)いをスイーツイェーガーに施した。
「……ウグッ!?」
 己の身を蝕む呪力に、スイーツイェーガーはたまらず呻いた。

●スイーツイェーガーの最期
 如何に怪王種であっても、実力上位のイレギュラーズ八人を相手にしては多勢に無勢でしかなかった。しかも、イズマによって不完全ではあるが麻痺させられ、かつエリスの呪(まじな)いによって蝕まれた身体は、時々スイーツイェーガーの動きを止める。それに加えて、周囲に集ってくるイレギュラーズを蹴散らそうとスイーツイェーガーは咆哮を放たんとするが、放てなかったことに愕然とした。
 それでもスイーツイェーガーはこの場のスイーツを総取りしようとすべくイレギュラーズ達に殴りかかる。主に狙われたのは不可思議な力による砲弾と魔力の弾丸で立ち回る樹里だったが、グドルフとカナメが交代で盾になり、スイーツイェーガーの腕を受け止めた。なお、スイーツイェーガーの拳を受けたカナメは何処か嬉々としていたことを記しておく。グドルフとカナメが受けた傷は、四音の調和の力による癒やしとエリスので完全にでこそないもののすぐに癒やされた。
 樹里を直接殴れないならと他のイレギュラーズに狙いを変えようとしたスイーツイェーガーだったが、その頃には樹里からの攻撃に加えてセララの雷を宿した斬撃、イズマの変幻の剣閃、そして刻まれた傷を虎の爪の如く深く抉るイグナートによって、既に生命力の大半を削り取られていた。
 程なくしてスイーツイェーガーは不利を悟り、逃亡を試みようとするが、身体に自由の効かない状況ではその判断は遅きに失した。その間にもさらにイレギュラーズ達から攻撃され、身体中から血を流し満身創痍となっていく。
 それでも、気力を振り絞って身体を強引に動かし、この場から逃れんとするスイーツイェーガーだったが――。

「ここで私達に怖気づいて逃げれば、もう襲撃するなんて出来ませんよね?
 二度と菓子を食べなくていいなら、逃げれば良いんじゃないですか」
「こんなにもおいしいどーなつが目の前にあるのに、食べずに逃げるなんて情けないですね?」
「残念だねー、ここのドーナツ食べられないなんて!」
「ウグッ……」
 スイーツイェーガーが逃亡しようとしたところで、四音と樹里、カナメがその足を止めるべく気を引く。
「そうやって逃げるんだったら、最高のドーナツは俺たちが全部食べちゃおうかな?」
「ウマイなぁ!こんなにウマイドーナツがあるのに逃げようとするなんて残念だな!」
「ドーナツもそうだけど、このチョコレート、いらないのかなー?」
「ウ、アアアア……!」
 そこに、イズマはドーナツを手にして、イグナートは実際にドーナツにハチミツをかけて食べながら、そしてエリスはチョコレートを見せびらかしながら、スイーツイェーガーに語りかけた。スィーツイエーガーはすぐに逃げねば危険だとわかっていながらも、甘い物を食いたい欲に懊悩する。
「オイ、誰かあいつの気ィ引け、気ィ! 例えばハチミツでも全身に塗りたくってみるとかよォ!」
「ハチミツだね、取ってくるよ!」
 グドルフの指示に、セララが簡易式テーブルの方に走り出した。そして封を解きつつグドルフの方へと戻ってくる。
「蜜もしたたる良い男!」
「──え、おれさま?」
 そして、セララはグドルフに壺の中のハチミツをぶっかけようとした。グドルフはまさかハチミツを被るのが自分になるとは思わず驚きに目を点にしたが、実際にハチミツを被ることはなかった。
「アアアアアア!! ソンナ、モッタイナイコトスルナアアアア!!」
 魂の叫びと共に、スイーツイェーガーがセララの手からハチミツの入った壺を奪い取ったからだ。そしてスイーツイェーガーは無我夢中で壺の中のハチミツを掬い取り舐め回したが、それがスイーツイェーガーの味わった最期の甘味となった。この機を逃すはずがないイレギュラーズ達に、袋だたきにされたのだ。
「ハチ、ミツ……モッ、トォ……」
 スイーツイェーガーは、最期までハチミツの壺を庇うようにして懐に抱きながら、末期の水ならぬ末期のハチミツを飲んで死んでいった。

●ドーナツパーティー!
「みんな、ありがとう! お礼のドーナツパーティなのだー!」
 スイーツイェーガーに勝利してから一息ついたところで、セララは救援に来てくれた仲間達に感謝を込め、ドーナツ畑から収穫されたドーナツを振る舞った。シンプルな砂糖からハチミツを冷やして固めたもの、チョコレートやクリームなど、様々な味付けをされたケーキドーナツ、イーストドーナツ、クルーラーが所狭しと並んでいる。
 その種類の多さにどれを食べるか迷うイレギュラーズ達だったが、樹里は迷うことなくシンプルなオールドファッションを皿に取った。ドーナツの中で樹里の推しが、オールドファッションだったのだ。程よく揚がったサクサクの食感が、樹里の口を楽しませる。
(ドーナツの樹……見た目はともかくどういう理屈なんだ……?)
 樹から採れたドーナツが油に揚がった食感を出していたり、チョコやクリームで彩られていることに、イズマは首を捻る。だが、すぐにイズマは考えるのを止めた。美味しいドーナツであることに間違いはないのだから。
 イグナートは、シンプルなドーナツにはエール、クリームが入っているドーナツには赤ワインと、ドーナツによって持ち込んできた酒を合わせて楽しんでいる。これもいわゆるひとつの、マリアージュと言えた。
「ほぉ……これはイケるじゃねえか」
 ドーナツのような甘い揚げ物は胸焼けしてキツく感じることに、もう歳かと本気で悩んでいるグドルフだったが、イグナートのように酒と合わせればツマミ感覚で軽く食べられることを発見した。どうやら、グドルフが老け込むにはまだまだ早いようだ。
「おーいしー! でも、ドーナツがなる樹なんてよく考えると不思議だね!」
「そうですね……それにしてもドーナツの樹、私の領地にも欲しいですね……」
 カナメはドーナツの美味しさに叫び、それから脳裏に浮かんだ疑問を口に出した。エリスはドーナツの美味しさとドーナツがなる樹の不思議の両方を肯定する返事を返しつつ、自分の領地にもこんな樹があればと思った。
「あ、いくらかお姉ちゃんのお土産に貰っていいかな!?」
「いいよ! もうお土産に包んでるのがあるから、持っていって!」
 カナメが大好きな双子の姉に持って帰りたいとセララに尋ねると、セララは既に用意しているものがあると笑顔で答える。
(魔物すら虜にするドーナツ。興味深いですが、そんなに食べたりは……私だって体重位は気にしますよ)
 ……とは思いつつも、ドーナツの樹のドーナツの美味しさに、ついつい四音は手を伸ばしてしまうのであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。『甘党』スイーツイェーガーは見事に討たれ、ドーナツ畑のドーナツの樹への被害は食い止められました。
 なお、OPでスイーツイェーガーを狂王種と書いておりましたが、これは怪王種の間違いでした。大変申し訳ありません。リプレイの方では、正しく怪王種としてあります。
 余談ですが、スイーツイェーガーの死に様を書いてる際に、三国志の袁術を思い出しました。まぁ、スイーツイェーガーはハチミツを舐めながら死ねた分、袁術よりはまだ幸せな最期だったのではないかと思います。

 それでは、お疲れ様でした!

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