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シナリオ詳細

深く紅い愛の行方

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

■始まりはとても小さく、幸せなもの
 とある世界の、ある地方都市。比較的平和なその世界にも、剣と魔術は広まっており人々は助け合いながらも修練を欠かさなかった。
 その都市の領主は人が良く、戦争孤児を見つけては引き取って、自らの子として育てていた。子供ができない体質であった、というのもあるだろうが。領民達もそんな領主を慕ってできうる限りの協力は惜しまなかった。
 その領主の「子供達」の一人に、魔術師としての才能を見いだされた少年がいた。まだ幼いながらも身に宿す力も小さいながらも、瞳は真っ直ぐで心根は優しく。正しく育てばよき青年になるであろう事は誰にも明白な少年。
 そんな彼は人々から好かれて毎日を幸せに過ごしていた。

 ある日、彼の住む孤児院に新たな子供がやってくる。孤児院の前に捨てられていたという女の子……いや、まだ赤ん坊だ。領主は当然の如くその子を救いあげた。
 何か惹かれるものがあったのか、少年がその赤ん坊の世話を率先して見ていた。まだできる事は少ないながらも、片時も離れないように、と。
 数年が立ち、二人は成長し。未だに仲はよく。銀髪が美しい少女はいつしかこんな事を口にしていた。
「あたし、大人になったらお兄ちゃんと結婚するんだ」
「はは、楽しみにしているよ」
 そう返すのが少年の日課であり、小さな幸せであった。
 周りの大人達も微笑ましく見守り、彼らに血の繋がりがないのはわかっていた為にそのうち祝福してやらねば、そう考えていた。
 運命の日が訪れるまでは。

■幸せの終わりは余りにも突然に残酷に
 月が真っ赤に輝く、誰にも不吉な予感を抱かせる嫌な夜だった。
 少女が一人孤児院を出ていく。少年もそれに気づき後を追いかける。
「どうしたんだ? まだ夜は寒い、早く戻ろう」
 そう言って手を伸ばす少年。しかし少女はその手を振りほどく。
「お兄ちゃん、ごめんね。私、約束守れない」
「何のことだよ?」
 涙を零す少女に、慌てながらも落ち着かせようと近寄る少年。……だが、足が動かない。体の、頭のどこかがそれ以上近寄るなと警告を告げる。
「私、愛する人を殺してしまう、吸血鬼なんだ……最近、お兄ちゃんの血が欲しくて、欲しくて、たまらなくて!」
「吸血鬼……」
 伝承にのみ残る存在。人を喰らう鬼の一つ。目の前の、守るべき少女がそうだという。
「お兄ちゃん、私を、殺して。私は……!」
「俺は……俺は……!」

NMコメント

 夢でみたものをライブノベルにする暴挙、以下略です。なお、この物語の結末は私自身も決めておりません、皆様の選択次第です。
 皆様にできる事は二つに一つ。「少年に加勢して少女を殺す」「少女に加勢して少年を殺す」のどちらかです。
 なお、介入せずに見守る場合は同士討ちとなり二人とも死ぬ結末になります。できましたら上記のどちらかに意思統一をして頂きますようお願いします。
 以下二人の詳細
・少年
 魔術師見習い。とはいえ今は魔法剣を作り出し振るう事と、かんたんな治癒術のみしかできない程度の腕前。イレギュラーズ一人より弱いです。
 少女を守るべき存在だと思いつつ、彼女に殺されるならばそれもまた、とOP時点では考えているようです。彼に加勢する場合は多少の説得が必要でしょう。
・少女
 吸血鬼である少女。そのためか腕力は強め。実戦経験はないためイレギュラーズ一人より弱いです、『今は』
 少年と添い遂げる事を願っていましたが吸血鬼の本能に逆らえず、少年の血を吸う位なら彼に殺して欲しいと願っております。
 彼女に加勢する場合は、アフターフォローが必要となります。放っておくと街の人々まで手にかける事でしょう。
・フィールド
 夜の草原となります。が、紅い月が異様に明るい為に明かりは必要ありません。

 以上となります。
 何をやっても悲劇しか起きない物語。皆様は如何なる選択肢を選ぶでしょうか……?

  • 深く紅い愛の行方完了
  • NM名以下略
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年03月15日 22時02分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

冬越 弾正(p3p007105)
終音
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女
斑鳩・静音(p3p008290)
半妖の依り代
カイン・レジスト(p3p008357)
数多異世界の冒険者

リプレイ

■人知れぬ静かな戦い
 衝撃の事実を耳にして、眼前で本能と理性の間で苦しむ少女を目にして。少年は立ちすくんでいた。何をするのが正しいのか、何をしてやるのが彼女の為になるのか。……自分のしたい事は何なのか。
 彼が悩む数十秒、遂に吸血鬼の本能に負けた少女が血走った目を見開き、少年に襲いかかる。
「っぶねぇ!」
 二人の間に割り込み、同時に少女を初歩魔術で吹き飛ばす『Nine of Swords』冬越 弾正(p3p007105)は間一髪間に合った事に息を吐く。
「大丈夫?」
 念の為に少年に怪我がないか見渡す『半妖の依り代』斑鳩・静音(p3p008290)の表情に、ようやく少年が自我を取り戻す。何が起きたのか受け入れ始めたようだ。
「あ、ああ……あんた達、見ない顔だな」
「旅の途中で寄ったところだけどね、様子がおかしかったからつけてきたんだ」
 『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)が適当に、しかし自分の来歴からくる説得力を伴って説明する。なるほど、如何にも旅慣れていそうなカインの風貌は真実味があった。
 『汚い魔法少女』メリー・フローラ・アベル(p3p007440)が楽しそうに笑みを浮かべる。彼女の笑みには狂気が含まれていた。
「ふふ、どうする? あなたが何もできないなら、二人とも私が殺して終わりにしてもいいのよ?」
 狂気の瞳に見つめられ、少年は再び考える。何もできないのか、俺は、と。
「いや……俺は、生きる。でも、どうすれば、あいつを救えるんだ……!」
「それは知らない。でも、そうね。少し考える時間をあげるわ。どうにもできなくなったら手伝ってあげる」
 二人別々の死をあげるわ、と言い残し。メリーは少し後方へと。

「少年、自分が殺されればいいとは思ってねぇようだが……こういうのは、生き残ったほうが長く苦しむんだ」
 かつての想い人を失った事。その最期に立ち会えず、永遠の別れを迎えた弾正は。悩み苦しむ少年の肩を掴んで、力強く語る。
 どっちが長く苦しんで、どっちが苦しみから解放されるべきか。よく考えるんだ、と。
「君は彼女の願いを無下にするのかい。彼女に血の十字架を背負わせる気なのかい?」
 吹き飛ばされた少女が体勢を立て直し、再び少年に襲いかかろうとするのを、カインが飛び出していなす。幸いにも吸血鬼としての力に目覚めたばかりの少女は、カインに深手を追わせる程の実力はない。
 故に、『攻撃を防ぐだけ』の事に集中しながらも、カインは言葉を紡ぐ。勝手だとはわかっていても、前向きに生きている彼の信念から。「相手に殺して欲しい」という願いを叶えてあげたい、と。
「カイン君、代わるよ。おいで、私が相手してあげる」
 穏やかな声色で、少女に相対する静音。彼女もまた反撃をする事はせずに、ただ振るわれる拳を受け止める。見た目に似つかわしくなく頑強な彼女の体は、少女の力ではびくともしない。
 時間を稼ぐ。少年が決意を固めるまで。少女の願いが、成就する時まで。

「ほんっと、お人好しよね皆」
 持参していたクッキーを一つ頬張りながら、静かな戦いを眺めるメリーは一つ零す。本当は二人纏めて、と思っていたけども。お人好しな誰かが苦渋の決断をするのを眺めるのもまた良いと考え直して。
 さあ、どうするの?
 悪魔のような笑みを浮かべる少女は、問いかける。

■少年の決意
「くぅ……段々、強くなってきてる、ような……」
 少女の拳を身に受け続ける静音が、苦悶の表情と声を零す。振るわれる拳は勢いを増し、心做しか脚がたくましくなったように見える。
 口の端からは八重歯がはみ出し、獲物に食らいつく時を待ち続けている。月明かりの下であれ、その瞳は赤く輝く。
「吸血鬼ってだけあって……人間よりは強くなる、みたいだね!」
 静音の横合いから飛び出したカインが、光の帯を無数に放つ。小さな少女の体が光に貫かれ血に塗れる……が、少女はまだ動きを止めない。
「いた、い……痛いよ、お兄ちゃん。早く、助け……血を、ちょうだい!」
「ちぃっ! もう一度時間稼ぐぜ!」
 弾正の手から放たれる青の衝撃波が少女の体を打ち、軽い体は吹き飛ばされる。
 少女の戦いに、言葉に、少年の心は未だ揺れる。唇が震え、声を絞り出そうとするがヒュー、と息が漏れるだけに終わる。
「少年、あの子を止められる、助けられるのは君だけなんだよ!」
 いつでも少年を庇える立ち位置に戻りながら、カインは叫ぶ。このまま少女の命を奪うのは簡単な事だけども、それでは本当の解決にならないと感じているから。
 彼女を『救える』のは少年だけだと、信じているから。
「覚悟決めな。死は苦痛じゃない、救いだ。あんなに苦しんでるあの子を、これ以上苦しめたいのか?」
 少年と目線をあわせ、弾正は険しい顔つきで語る。もう、これ以上時間を稼ぐのは少女の心がもたないと感じたからだ。
 今ならまだ『人のまま』逝かせてやれる。
「お前ができないなら、俺が刈り取ってやってもいいんだぜ」
 少年から視線を外した弾正が一歩、少女の方へと歩み寄る。一歩、一歩。その小さな首をへし折ろうと。
「……待ってくれ!」
 少年が遂に叫ぶ。その手には小さな、しかし決意の光を宿した剣が握られていた。涙を零しながら、それでも顔には男の意思を宿し、声を張り上げる。
「俺が、やる……やらなきゃ、いけないんだ!」
「……おう、そうだ。それなら俺達はサポートに徹してやる」
「魔力の残りは気にしなくていいさ。思いっきり、悔いのないように、ね」
「……君ならやれるよ。自分を信じて!」
 弾正が歩みを止める。カインが背中を押す。静音が道を開ける。
 少女が、最後の理性を振り絞り、最期の自我で義兄と語る。
「……あり、がと……お兄ちゃん」
「……悪いお兄ちゃんで、ごめんな」

 少年と少女がぶつかり合う。魂の叫びをあげながら、命を燃やす。
 本来ならば互角の力。しかし少年にはイレギュラーズの力が貸し出される。弾正の切ない覚悟が、カインの真っ直ぐな意思が。静音の優しい心が。少年の剣を大きく成長させていく。
「……あ、ぁ……」
「ゆっくり、おやすみ……」

■せいぎのみかた
 少女は、少年の手で討たれた。吸血鬼がいなくなった事でこの地はその驚異から人知れず救われた事となる。
 亡骸を抱き、夜が明けるまで泣き続けた少年をイレギュラーズは何も言わずに見守り続けた。そして少年が泣き止んだ頃に、少女の亡骸を地に埋める。
「これくらいはサービスしてあげるわ」
 メリーが魔術で穴を掘り、その中へ少女の身体を埋葬する。弾正とカインが協力して土を上からかけていき、静音がどこからか持ってきた、小さな白い花がその上に飾られる。
「……なあ、あんた達。少し、聞いてもいいか?」
 少年が口を開く。朝日が五人を照らす中、イレギュラーズは頷いた。
「正義の味方って、なんだろうな。俺は正義の味方になりたかった。そうすれば、皆を、この町を守れるって信じてた」
 けど、守るべき妹をその手にかけた。妹を救う為に。
 彼の中の正義は揺らぐ。これは正しかったのか、と。
「知らねぇな。俺は正義だ悪だに興味はない。……ただ、死者には等しくよい魂だとしてイーゼラー様へ祈りと共に捧げればいい」
 ぶっきらぼうな弾正は、少年の肩に手をかけてそう語る。
 それだけが教団から彼に課せられた使命だから、と。だから、俺の正義はこれだな、と加えて。
「僕も正義とかは考えた事ないな。僕はやりたい事をやってきて、ここまで来ただけだからさ」
 屈託のない笑顔でカインはそう応える。
 自分のやりたい事、自分の本能に従う事こそが、自分にとっての正義だと。
「そうだね……。正義も、悪も、本当はないんだよ。だって、お互いに自分が正義だと思うから……争いは起きるんだもの」
 今回の、悲しい戦いのように。静音は痛む心を抑えながら少年に教える。
 もしかしたら、今後君が戦う敵は、別の正義を持つ人なのかもしれないから、と。
「難しい事考えないの。敵は敵、ぶっ倒しなさい」
 単純明快なメリーの言葉は、ある意味では救いで、ある意味では迷いを与えるものであった。
 しかし、それくらいのほうが良いのかもしれない。迷い続けるだけならば、先へ進めないのだから。

「……そっか、ありがとうな、色々と」
 まだ笑えぬ少年は、それでも無理に笑って見せた。気持ちの整理がつくまで時間はかかるだろうけども、彼は強い。
 そう感じさせるくらいには、笑顔であった。
「俺、あいつの分まで生きるよ。そして本当の正義は何か、探してみる」
「おう、そうか。お前がそう決めたならそれでいい。彼女の分まで、しっかり生きな」
「頑張ってね。……またどこかで会った時は、よろしく」
「旅に出るのも、男をあげる修行ってね。手ほどきが必要なら僕を頼っていいよ」
「あーあ、今回も大した仕事じゃなかったわね」
 四者4様。それぞれの心の中に、それぞれの『正義』を抱いている。
 もしかすると、ぶつかり合っていたかもしれない。敵になっていたかもしれない。
 『正義』の方向性とは、危ういものなのだから。

「あの子には、道を間違えて欲しくないな」
 そう言い残したのは、誰であっただろうか。

成否

成功

状態異常

なし

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