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シナリオ詳細

【貴族邸危機一髪】無機妄想モグラダンジョン

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●真っ直ぐ進んで止まらない、そして自爆する
 幻想、首都から南に大きく下ったあたりの辺境貴族領。ラサとそう遠くない場所にあるその地には、地下1層程度の小規模な遺跡が見つかることが稀にある。といっても、精々どこかの馬の骨の墳墓か愚にもつかない研究施設の形をとったもの、程度。決して高価なものや危険な遺物が見つかるような場所ではなかった。
 ……その日までは。
「なんだあの遺跡は!? 先日までは見当たらなかったはずだぞ!」
 辺境の領主は驚愕と憤怒を顔に貼り付け、執事長を怒鳴りつけた。
 彼等のいる部屋の窓、そこから森の入り口辺りにはぽつんと地下への階段らしきものが現れている。周りが石畳と化していなければ、気づきもせず転がり落ちてしまいそうなほど簡素なつくりであった。
「ええ、はい……私共もこの家に仕えて長いですが、あのようなものに皆目思い当たりがなく……」
「じゃあ何故あんなものが現れて、あまつさえこちらに敵意を振りまいている? それどころかっ!」
 執事長の回答に怒り心頭の領主だが、その言葉が最後まで綴られることはなかった。なぜなら、その言葉が続くより早く爆発音が響き渡ったからだ。
 遺跡から現れたのは、大体3~4等身の女性……少女? 型のなにか。魔物というよりはゴーレムだろうか?
 それらは真っ直ぐ貴族屋敷に向かってくると壁にぶつかり、数度壁と自身との間に強烈な斥力を発生させた後に爆散する。
 一度子飼いの兵力を投じて阻止を図ったが、誰もが斥力に弾き飛ばされ何も出来ぬまま倒れてしまった。
 これが日に3回程度。威力は最初のうちは爆竹程度だったが、日増しに上昇している。このままでは間をおかずして全壊させられる可能性すらある。
 だが、ゴーレムを壊すのだけを依頼しても場当たり的対処西かなり得まい。
 やるなら遺跡の攻略も、なのだが……『そもそもあれはどこから現れた』?
 謎が多い案件だが、流石にこればっかりは悩んでいてもどうにもならない。領主は、取り急ぎ使者に手紙を託し、王都へと早馬で向かわせるのだった。

●うごめく遺跡は妄想に弱い
「地面様とわたしとの愛を力に戦える依頼があるときいて!」
「おまえ今絶賛巷間を賑わせまくりの『旦那様』はいいのかゆ」
「それは! それ!!」
 ローレットに駆け込んできた澄恋(p3p009412)の姿を見て、『ポテサラハーモニア』パパス・デ・エンサルーダ (p3n000172)は「うわぁ」という顔をしつつ一応聞いておいた。
 この娘、以前百合妄想に陥らせる敵と交戦した際に「地面様との愛を瓦礫でNTRしようとする敵は地雷!」とかいって戦闘での優秀者枠かっさらっていったツワモノだ。
 なおその前に無機物カップリングをもっともらしく語って話題になった男もいるがそれはそれとして。
 どうやら別働隊が排出されるゴーレムを押さえている間に本丸を叩き、以て貴族邸の危機を回避しようという話なのだが……実はその遺跡、唐突に現れたのは「動く遺跡」だから、だというのだ。
「わたちはラサで見たことあゆ。『ダンジョンモグラ』っていうクソモグラで、たまにどこかの遺跡を根っこから背中に乗せてはあちこちにそれを運んでひと騒動起こすクソモグラゆ。一体あたりの寿命が長くて今回も倒せないだろうから遺跡破壊だけ……ってそれは別に今回は脇道ゆ」
パパスは両手で「それはおいといて」の動作をして、肝心のところを話し始める。
「今回の遺跡、まあ一層だけなんだけどゆ、コア部がどうやら古代人の妄想で作られたっぽくてゆ。女型の彫像が向かい合って手を触れ合ってる状態の動力源から例のゴーレムが量産されてるらしいゆ」
「……遺跡の側が百合妄想を……?」
「間違ってねえゆ。で、まあなんていうか、妄想に妄想をぶつけて対消滅させゆ、みたいなクソみたいな手段で出力を落とした上でブッ叩けば本来の抵抗を最小限に機能停止させられるらしいゆ。それでも抵抗はしてくるから最低限戦闘はあゆ」
「つまり」
 そう、ここまでの説明で賢明なイレギュラーズ諸氏と澄恋は気付いたことだろう。
『この戦いはより妄想に狂ったヤツが勝つ』
 そんな単純で、且つどうしようもない事実に。

GMコメント

 アフターアクションひとり連動の2本目です。
 題材が題材なので相談期間は此方のが短いのでご注意下さい。

●達成条件
 ゴーレム遺跡コアの停止

●ゴーレム遺跡(仮称)
 貴族の邸宅の近くに突如運ばれてきた(字義通り)遺跡で、なぜか稼働状態に入っています。
 稼働中は常に自爆ゴーレム「パトリシア(仮)」を生み出し近くの建物を壊そうとします。理由は不明。
 別働隊がゴーレムも押し留めている間に稼働停止に追い込む必要があります。
 遺跡内部は大体70m四方、高さは10m程度です。

●ゴーレム遺跡コア
 女性の彫像2つの間に高エネルギー体が発生している状態の遺跡です。
 古代人のアレな性癖で動いている感じです。こんなモン作りやがってマジで。
 これそのものに強力な防御性能と反撃性能があります。
 弱体化なしで戦うと非常に高い防御技術と得体のしれないHP、【棘】、各種どえらい性能を目の当たりにし後悔することになります。すげえ雑な基準ですが、澄恋さん水準×8人でも普通に苦戦します。NORMALを名乗って良い数値ではない。
 『自分×無機物』『無機物同士』のカプをなんか戦闘に反映させつつアレしてコレすればコレもんよ。わかるだろ(言語感覚が昭和)。
 例:剣×鞘の包容力溢れる受けカップリング、製氷皿×水(自分の形に染め上げる製氷皿総攻め液体総受けで一本かけるなコレ)

○コアの攻撃(弱体化後):【通常攻撃レンジ3】【万能】【移動不可】
・割り込み圧搾(物近単:攻撃力中、【防無】【崩れ】【ブレイク】【攻勢BS回復(中)】)
・尊みの光(神超ラ:【万能】【魅了】)
・あなたがいなくなる日(神中扇:【Mアタック大】【喪失】)

●防衛ゴーレム×3
 遺跡内部に配置されたゴーレムです。剣士型。
 様々な剣術に習熟し、苛烈な攻撃を向けてきます。コアの弱体化に戦力が左右されません。

●防衛システム(飛矢)×6
 コアの左右に空いた穴から飛んでくる矢です。通常攻撃しかしません。穴なので怒りとか通じません。
 コアの弱体化で耐久力が一気に低下します。ソレまでは結構硬いです。
 【通常攻撃レンジ4】【弱点】

●注意点
 『【貴族邸危機一髪】等速で直進する少女型の敵P』とは相談期間が異なりますが時系列が同一です。
 同時参加はできませんのでご注意願います。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 【貴族邸危機一髪】無機妄想モグラダンジョン完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年03月17日 21時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
Alice・iris・2ndcolor(p3p004337)
シュレーディンガーの男の娘
アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)
Le Chasseur.
メアリー=バーン=ブライド(p3p008170)
燃やすのは任せて
わんこ(p3p008288)
雷と焔の猛犬
観音打 至東(p3p008495)
ジュリエット・ラヴェニュー(p3p009195)
ゴーレムの母
耀 澄恋(p3p009412)
六道の底からあなたを想う

リプレイ

●妄想族のお通りだ! どけどけ!
「地面様とのでぇと♡ 行先が戦場とは気が引けますが敵を〆ていいとこ見せる好機……」
 『花嫁キャノン』澄恋(p3p009412)は練達での一件以来、『地面様×私』というド級の境地に辿り着いていた。もう何処に行っても地面様とのデート扱いだ。幸せそうで何よりだよ。そして敵はあろうことか妄想を以て倒す相手。これは勝ったな(確信)。
「爆破に炎……派手な演出は恋を燃え上がらせる良いエッセンスですが、今回は阻止が目的…………残念ですが仕方ありませんね」
 『燃やすのは任せて』メアリー=バーン=ブライド(p3p008170)は澄恋とは別ベクトルで多くを求め続ける淑女である。あるが、無節操に爆発を振りまく相手を止めなければ、と告げられれば躊躇無く止めに行く常識人だ。まあ女子会(物理)を心から楽しみにしてるっぽいが。
「わんこ=ロボ=無機物。OK? つまりわんこの場合『自分×無機物』=『無機物同士』! OK!!!」
「語らせるか!? 流れのメイドとして様々の台所に潜む無機物カップリングを愛でてきた拙者に!」
 素晴らしい三段論法(二段じゃね?)をキメた『シャウト&クラッシュ』わんこ(p3p008288)と職業柄凄まじい経験を積んできた『破竜一番槍』観音打 至東(p3p008495)は既に無機妄想の準備を万全に済ませている。圧倒的な自信と矜持。というより、単純に「好きこそもののなんとやら」な気もするが。
「無機物の、妄想……難しい、な。だが、為さねばならぬなら、成し遂げよう。とはいえ」
 『金色のいとし子』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)は言葉を切り、地面にすり寄って感嘆の声を漏らす澄恋の態度だけはよくわからなかった。
「地面と愛し合う、というのは、理解の外、だ。愛とは、複雑怪奇なもの、だな……」
「旧き人の営みと云うものは、時に理解の範疇を超えるものです。故に、斯様に奇特な遺跡やゴーレムが在るということ」
 『plastic』アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)は困惑するエクスマリアに向かって淡々と物語る。要は古代人が正気じゃないのだ。ヨシ!
「そのユリモウソウというのはさておき、魔法使いとして未知の技術には大変興味あるわ」
 『在りし日の片鱗』ジュリエット・ラヴェニュー(p3p009195)は守るべきものがどうとか、というよりも遺跡の構造が気になって仕方ないらしい。とはい早く壊さないと地上の面々が危機に陥るんだが。
「はぁはぁ♡ この刃にあしらった宝石は私の血を結晶化させたものなので実質私……つまり遺跡に無機物の私をねじ込む……」
『Sensitivity』Alice・iris・2ndcolor(p3p004337)はこの時点で達した。多分、気分的な頂点とかそういうのに。
 こんな依頼なのだから当然だと言われると返す言葉もないのだが、この依頼、まともな感性のメンバーが1人としていない。
 今まさに遺跡の扉が開いて自爆ゴーレムが貴族邸に驀進し、サクっと倒壊させんとしているというのに。都合16人ものイレギュラーズの合同作戦なのに妄想族8人が遺跡を轢き潰しにかかっているのはギャグでしかない。
「骨は拾うし治療はしてやるから精々頑張れゆ。わたちは治療で手一杯だからそこんとこよろしく頼むゆ」
 あ、パパスいたんだ。都合17人の間違いじゃん。
「まず護衛のゴーレムをシバき倒して防衛機構とコアをぶっ潰す! OK?」
「「「OK!!」」」
 わんこの言葉に一斉に返答するイレギュラーズ達。血走った目にはもはや己の妄想を垂れ流すことしか考えていない様子が窺えた(エクスマリア除く)。難く閉ざされた遺跡の扉が……開く!

●前座は前座らしく行殺を受けるが礼儀である
「お主らは単に邪魔ござる! そう、百合の間に挟まろうという不埒者がごとく!」
 至東は剣士ゴーレムの間合いへ一気に詰め寄ると、楠切村正の鯉口を切り、反射した光を浴びせかける。動きを鈍らせたゴーレムは横薙ぎの一閃を受けよろめき、至東の姿を見失う。その姿は、すでに上に。
 踵落としの反動で更に飛んだ彼女は身を捻り回し蹴り。2度の衝撃から胸元への飛び蹴りで体勢を完全に崩すと、着地と同時にゴーレムの反撃の切れ間を縫って斬り込む。ほんの一瞬のうちに放たれた怒涛の連続攻撃は、ゴーレムの動きを止めるのに十分すぎる破壊力を見せつけた。
「killり捨てるに些かの躊躇なし――!」
「よっしゃ覚悟するデスよゴーレム! わんこ達の邪魔なんて剣士如きにゃ無理なのデス! ショウタイム第一章……!」
 わんこはゴーレムが動き出すより早く間合いに入ると、強烈な一撃をお見舞いする。そして拳を振り上げたわんこは、懐からaPhone10を引っ張り出した。たぶんこれ使う目的じゃない。使う(妄想)つもりだ。
「という訳でわんこが将来を誓った方をご紹介シマス。"aPhone10"~。彼の体にはぎっしり回路が詰まってマス、わんこと一緒♡ もうお財布だって一緒なんデスヨ?」
 そらお財布機能付きだしな。
「つまり己のインスピレーションを展開すればいいんでしょう? まかせなさい、そして覚悟なさい。無機物に生命を吹き込むことに関してはうるさいわよ私」
 背後からジュリエットの魔力の糸が絡め取り動きを鈍らせると、両者の連携によりゴーレムは勢いよくその余力を奪われていく。ジュリエットにとって無機物……というか魔法生物については一家言ある。つまりこの状況において妄想族以上に激重感情を持っていそうなのは彼女なのである。
「愛とは、恋とは、常に寄り添い、傍に居続けること。そうありたいと願う心……なのだと」
 アッシュは至東に向かわんとするゴーレム達目掛け雷撃を浴びせつつ、愛とは何かを語り始める。拳を握り、目を輝かせた彼女はどこかこう、なんというか。秘めたる情熱をこの期に及んで感じ始めた、そんな気がする。
「で、あるならば。常に共にあるものの間には、其れがあると考えて間違いはないのではないかとも。……なので、わたしはわたしなりに愛を見つけました。本と……その帯です」
 おおっとこの子結っっ構真面目枠だと思ってたんだけどなかなか重めのトンチキぶっこんできたな?
「面白そうな話デス! 詳しく!」
「これは……中々期待が持てそうなのでは……?」
 わんこと至東がすでに興味津々なのだが君達の妄想の本番はまだだったよなァ!?
「2人は、最初は一緒なのです。ずっと一緒にいられるのであろうと、思えるぐらいに。
 帯があることで本は飾られ、其の魅力を増し。本があることで、帯は帯であり続ける。不釣り合いにも思える組み合わせであります、が。
 其れでも一緒に居続けるいじらしさがあり……その反面。容易く引き剥がされて、二度と相見えることが出来なくこともある。
 依存と、悲恋と……儚い恋がそこにはあるのです……!」
 さあどうだと言わんばかりに手を広げたアッシュの目はぎらぎらに輝いている。その手から放たれた雷撃の勢いも、先ほどより気持ち強力にすら思えた。
「わんこ達はゴーレム全部ブッ倒して初めてこの熱い想いの丈を語れるのデスよ!」
「そーだそーだ! 拙者の妄想は安くないでござる!」
 うわぁめんどくさいなこの子達!
 まあなんかそんな感じで。この面子相手にゴーレムが保ったかっつったらそりゃまあ防衛システム込みでも長くはなかっただろう。たぶん。

●本気で語り合えば理解りあえる(一方的に)
 Aliceは妄想世界を展開し、己の血による刃を防衛システムに叩き込む。射程はあちらが上、間合いを詰めることがそもそも難題なのだが、そんな事は知ったことではない。防衛機構にだって穴はあるんだよな? 自らの血をシステムの穴に捻じ込んでガタガタ言わせるだなんてなんという興奮体験! Aliceはここでまたしても妄想の到達点へと達した。
 そうでなくとも、コア部が目の前にあるのだからその猛攻も加味すると明らかに劣勢ではないか……そう思われがちだが、そんなことを想定していないイレギュラーズではなかった。
「あのコアってわたしたちを象ってません? 左が私で右が母なる大地として豊満な肉体美を誇る地面様。我々の恋愛成就祝いで設立されたのでしょう。来年もまた一緒にここへ来ようね……♡」
 澄恋×地面の極致。ああ君って右側じゃなかったんだ。受け止める側だから地面が右ってかなるほど。
「ここに並んだゴーレム達はあのコアから生み出された子供達……謂わばあの二体の愛の結晶ではなくて? 一般的解釈であれば通常は男女の像になるはずの所を、敢えて女性二体にしたということは、同性間でのそういった愛情を形として表現したかった……そういった自由な表現は好きよ、私」
「待ってくださいつまりわたしは既に地面様とのお子を成して!?」
 ジュリエットはユリモウソウがわからぬ。しかし魔法生物クリエイターとしての血とかそういったものが目の前の像に対しインスピレーションを刺激されたものと思われた。凄いな。そして流れるようにそれに割り込む澄恋ほんと凄いな。
「ところで炎と可燃物って良い組み合わせだと思いませんか?」
 メアリーは澄恋の強火の妄想に合わせるかのように、次の妄想を口にする(背後でまだ澄恋が語っているが)。
「私花嫁であり、炎に纏わる事象から生まれた精霊種ですのでとても良いと思います。ええ! 良いですとも!」
 くそッ最近の結婚願望強めなブライダル衣装イレギュラーズはこんなのばっかりか!
「萌えと燃えは通じるものがあると思うのですそう、心が滾るのです。つまり何が言いたいのかといいますとですね……」
 一息ついて、メアリーは叫ぶ。
「移り気な炎×本命の可燃物の誘い受けカップリングって萌えますよね!!
 考えてもみてください。浮気性な炎はいろんなものを燃やしますがその度にオラつく可燃物に押し倒され『燃やしたのか? 俺以外の奴と』の一言から。熱く燃え上がるわけです。勿論一度火がつけば可燃物が炎に勝てるはずがなく……」
 クールダウンしましょう、とふー、とか一息ついているけどこれ以上は結構だよ。
「ハッいいムードの気配!」
 澄恋はここだとばかりに跪くと蝶ネクタイに手をかける。
「地面、愛してる。おれと結婚してくださ──」
 プロポーズはしかし、矢の一斉射を身に受けることで中断された。
「大丈夫かゆ!? 今のはちょっとやべーゆ、治療して」
 流石にあちこちで支援と回復ぶん回していたパパスもそれには驚愕。慌てて治癒を施そうとするが、澄恋の手がそれを遮った。
「……恋のキューピッドがわたしにずっきゅんきゅんしてきます! これはコアからわたしに向けた恋愛アプローチ? でも左の像、右の像、地面様ときたら我が身の奪い合いで世界が滅びます! やめて! わたしの為に争わないで!」
「ゑっ……」
「――そうだ。デスゲームを始めよう。最後に残った奴が、好きな子の運命を貰おう。疲れを癒し支え合う女子力、健やかなるときも病めるときも全てを受け止める包容力。以上を持つ者こそ恋人に相応しい」
 パパスですらもちょっとヒき気味の状況で、澄恋はどこか恍惚とした表情で語りだした。ちょっとよくわからないけどこ↑こ↓から彼女のフルスロットルな戦鬼暴風陣によるツンデレ流肉体言語式求愛行動が始まるのである。おいコアの明滅一気に弱まったぞ。
「まだ妄想が足りぬというか? よう候! ならば拙者の一家言リストから取っておきを食らわせてやるござる! それは……『酒盃と徳利』!」
 至東、満を持して妄想を開陳する。メイドってすげぇな。
「主の好みにもより申すが、互いに別離(わかた)れることなく有れと製造(つく)られたこの二人、その絆は海よりも深く山よりも高い! 尊い!
 そして互いに、夜な夜な主人への奉公(暗喩)にその身を委ねる(暗喩)のでござるが、愛でられるのはもっぱら酒盃のみ!
 徳利に口をつけよう(直喩)などという変わり者はおらぬゆえに! 何度も何度も徳利より酒精(隠喩)をなみなみと注がれ(暗喩)傾けられるたびに漏れる熱い吐息(暗喩)!
 その痴態(暗喩)を見届けねばならぬ、それどころか片棒をかつがされる徳利の心境はいかばかりなものか! 想像するだにゾクゾクき申すなあ!
 そしてついに、珍しく主人が早寝をした夜のことござる! 最早辛抱たまらなくなった徳利が、微睡む酒盃を押し倒しその唇文字数ッ!」
 直喩と暗喩を織り交ぜつつこれ実は割とリバ倫ギリギリを攻めている気がしなくもない。
 あと絶対これNTR趣味からの鬱おっとNTR地雷の澄恋さんが見ているからこの話はまた今度な!
「ああ、動けるかぎり激しく責めすぎてもう(スキルが)出せないわ。でも、安心して? ほら私の(武器は)まだこんなに固いの。だからあなたの弱点をいっぱい突いてあげられるわ♡」
 Aliceはなんだかんだで防衛システムをごりごりにせめぬいて全滅させていた。まだ弱体化は十分じゃなかったはずなんですけどもこの子エクスマリアとかアッシュと力を合わせて、なんなら単独でかなりの割合ブチぬいていったぞ。っていうか滅茶苦茶濃い妄想なんだけどコアからの猛攻うけまくりだよね?
「はぁはぁ♪ 何度果てても煩悩で魂を凌駕して復活してみせるわ。お願い、仕事して私の再行動(のうりょく)。
 ……そういや私のパンドラも無機物だったわね。ふふ、私の大事なところ(パンドラ)を傷モノにした責任はとってもらうわよ♡」
 いやパンドラってたぶん有機無機のくくりでなんとかなるものじゃなくて概念なんだけど、まあいいか。
「わんこショウタイム第2幕だ! ここに充電ケーブルがあるじゃろ? これをわんこのどっかの接続口と繋ぐと……」
 そういえばこの子アンドロイドだったな。そして接続するんだそれ。『ピロン↑』となったぞ。
「はぁぁあぁ……そんな可愛い声で充電を知らせてぇ。わんこの電気美味しいデスカ? ……あれ?
 ダメデス、急にドライバインストールしたら……ぁぁぁ、わんこ貴方のデータ読めるようになっちゃう……!
 ……えっ? ち、違うんデス! 嫌とかじゃなくて、もっと優しくして欲しくて! もぅ……意地悪♡ でも好き♡」
 わんこはあらぬところに向けて身をよじらせながら訥々と語る。すごいなこの子。そしてコア目掛けきっ、と厳しい目をむけた。
「だがコア、テメェにやるのは拳と弾だ!! 尊いと言え!!!」
 強制したよ。リアクション強制した。
 そんな強火のアプローチを受けてだいぶ弱体化されたコアに、遠間合いからの電撃球が飛び来る。エクスマリアの黄金の髪で練り上げられた静電気、その塊だ。そう、ここにきて彼女が満を持して、語る。
「さて、マリアにとって、最も大切な物品と考えれば、やはりこの櫛、か。毎日欠かさず、髪を梳き、整え、慈しんでくれている、この櫛、だ」
 スっと差し出されたのは、何の変哲もない櫛である。ただし、よく手入れされていることがつたわる年季の入り方をしていた。
「力強くも規則正しく並んだ歯で、乱れた髪を整えてくれる、コーム。
 ふわふわと柔らかな毛で、優しく撫で付けてくれる、ブラシ。
 この2つが1つになった、折り畳み櫛。故郷で出会い、混沌に来てからもずっと、共にあったこの櫛。
 今では、マリアのパンドラを蓄える器でも、ある。髪は女の命と云うならば、マリアの命を二重に支えてくれているとも、言えよう」
 つまり――『この櫛で整えられた髪で放つ迅雷は、並の雷より遥かに強烈、だ』とのこと。
 そう、すべては愛。
 あれも愛、これも愛、そして敵に対する猛攻すらも、愛の深さに気づかせてくれた相手に対する感謝と愛情、そして別れを告げるもの。
「わたしの地面様は初逢引時に耐えてるが、コア、てめぇらはどうかなァ!」
「……ぜってぇきれいごと入る余地ないゆ、これ」
 澄恋の苛烈な猛攻を以てコアは破壊され始め、記念写真とともにいろいろとやべーことになり、文字数!

成否

大成功

MVP

観音打 至東(p3p008495)

状態異常

なし

あとがき

 妄想レベルの過剰な高まりにより善戦したはずのコアやゴーレムの戦闘描写はまるっとカットされました。
 これに伴い、想定より戦闘終了時間が早まり、別働隊の依頼成功率および損耗率に優位な修正が入ります。
 お疲れさまでした。MVPはあふれ出す妄想で無機物ネタなのに倫理ギリ突っ走ったあなたです。
 ゴーレムにも間接と穴と聞く耳はあったんだな。

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