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シナリオ詳細

【貴族邸危機一髪】等速で直進する少女型の敵P

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●真っ直ぐ進んで止まらない、そして自爆する
 幻想、首都から南に大きく下ったあたりの辺境貴族領。ラサとそう遠くない場所にあるその地には、地下1層程度の小規模な遺跡が見つかることが稀にある。といっても、精々どこかの馬の骨の墳墓か愚にもつかない研究施設の形をとったもの、程度。決して高価なものや危険な遺物が見つかるような場所ではなかった。
 ……その日までは。
「なんだあの遺跡は!? 先日までは見当たらなかったはずだぞ!」
 辺境の領主は驚愕と憤怒を顔に貼り付け、執事長を怒鳴りつけた。
 彼等のいる部屋の窓、そこから森の入り口辺りにはぽつんと地下への階段らしきものが現れている。周りが石畳と化していなければ、気づきもせず転がり落ちてしまいそうなほど簡素なつくりであった。
「ええ、はい……私共もこの家に仕えて長いですが、あのようなものに皆目思い当たりがなく……」
「じゃあ何故あんなものが現れて、あまつさえこちらに敵意を振りまいている? それどころかっ!」
 執事長の回答に怒り心頭の領主だが、その言葉が最後まで綴られることはなかった。なぜなら、その言葉が続くより早く爆発音が響き渡ったからだ。
 遺跡から現れたのは、大体3~4等身の女性……少女? 型のなにか。魔物というよりはゴーレムだろうか?
 それらは真っ直ぐ貴族屋敷に向かってくると壁にぶつかり、数度壁と自身との間に強烈な斥力を発生させた後に爆散する。
 一度子飼いの兵力を投じて阻止を図ったが、誰もが斥力に弾き飛ばされ何も出来ぬまま倒れてしまった。
 これが日に3回程度。威力は最初のうちは爆竹程度だったが、日増しに上昇している。このままでは間をおかずして全壊させられる可能性すらある。
 だが、ゴーレムを壊すのだけを依頼しても場当たり的対処西かなり得まい。
 やるなら遺跡の攻略も、なのだが……『そもそもあれはどこから現れた』?
 謎が多い案件だが、流石にこればっかりは悩んでいてもどうにもならない。領主は、取り急ぎ使者に手紙を託し、王都へと早馬で向かわせるのだった。

●近接攻撃しかしないっていうかぶつかってくるんですけど?
「本当に近接攻撃しか能がないのね、その敵?!」
「そうですよ。……近いです普通に。ちょっと離れて下さい」
 ローレットに張り出された依頼内容に食いついたワルツ・アストリア(p3p000042)は興奮気味に『ナーバス・フィルムズ』日高 三弦(p3n000097)に詰め寄った。なお三弦にそのケはない。ワルツにもだ。
「近接攻撃だけ、というか……まっすぐ向かってくるんですよ、目標物に。その間に割って入る敵を弾き飛ばしながら、目標に到達したら自爆します。ゴーレム型ですが、どうやら肉体に強力な斥力を発生させて突っ込んでくるとかで……」
「それ前衛がいても危ないじゃない私達。芋れないじゃない」
 一気にテンションが下がるワルツ。だが三弦は続ける。
「いえ、でもあの領主の兵士はなかなか優秀でして。対処法が幾つか確立されています。
 ひとつ、『障害との激突から斥力発生までは20秒程度の時間を要す』。なのでブロッカーがスイッチしつつ受け止めればなんとか止められなくはないと。
 ふたつ、『衝撃を与え吹き飛ばす系統の能力を受けると斥力が対消滅して発生が一瞬滞る』。ですから単一ブロッカーでも衝術などで足止めは可能みたいですね」
「へえ……つまりそういうのが使えれば強くないイレギュラーズでも対処可能なの? 足止めは」
「そういうことになります」
 一応、ただ倒されるばかりではなかったらしい。これは大きな情報だ。
「ただ、足止めして倒した場合、自爆ほどではないですが爆発が起きますから、治療や耐久力はほしいところですが……ひとまず、別働隊で遺跡の機能停止ないし無力化を図ります」
 全てが全て楽ちん、とはいかぬものである。ワルツは深いため息をついた。

GMコメント

 アフターアクション2本をひとり連動で消化するという荒業に出てみるなどします。

●達成条件
 遺跡の機能停止まで「パトリシア(仮)」を撃破しつづける

●失敗条件
 「パトリシア(仮)」が5回以上、貴族邸に衝突し爆発する

●パトリシア(仮)
 遺跡から貴族屋敷に向かって突っ込んでくる女性型SDゴーレム。機動3、常に全力移動をしようとする。
 一度に出現するのは3体で、倒されるか自爆が成立するたび補充される。
 HPはそこそこあり、怒り無効。通常攻撃などは行わない。
・斥力突進(パッシヴ。同じ対象に隣接され続けた際、2ターン目終了時に対象に【飛】【無】発生。隣接しているため命中回避判定は発生せず、必ずノックバックさせる)
・爆発(HP0時):物特特(自身より1レンジ全周)、ダメージ中、【業炎】【スプラッシュ3】【飛】
・爆発(貴族邸衝突時):物特特(自身より2レンジ全周)、ダメージ特大、【炎獄】【飛】(貴族邸がこれを5回被弾すると壊滅します)

※パトリシア(仮)の貴族邸激突から爆発まで1ターンの間隙があります。HPを削りきれば爆発の被害を大きく減少させられます

●遺跡
 詳細不明。
 別働隊がなんとかしてくれるでしょう。

●戦場
 遺跡から貴族邸までの距離は推定120m。
 足止めを一切しないと3~4ターンくらいで到達して爆発する計算です。

●ポイント
 OPの通り、十分なケアと【飛】攻撃があればレベル関係なくマークしつつ移動阻害を続けることも可能かもしれません。
 逆に言うと、【ハイ・ウォール】で足止めしても両方を【飛】でなんとかしないと弾き飛ばされ追いつくのが困難になります。

●注意点
 『【貴族邸危機一髪】同性妄想モグラダンジョン』とは相談期間が異なりますが時系列が同一です。
 同時参加はできませんのでご注意願います。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 【貴族邸危機一髪】等速で直進する少女型の敵P完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年03月18日 22時06分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ワルツ・アストリア(p3p000042)
†死を穿つ†
日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
DexM001型 7810番機 SpiegelⅡ(p3p001649)
ゲーミングしゅぴちゃん
マヤ ハグロ(p3p008008)
カイン・レジスト(p3p008357)
数多異世界の冒険者
フォークロワ=バロン(p3p008405)
嘘に誠に

リプレイ

●ままならないのが人生だ
「近接攻撃しか脳の無い、安全な敵を狙って来たのに……! 死も恐れない爆弾人形の群れだなんて、聞いてないわよー!!」
 『紅の弾丸』ワルツ・アストリア(p3p000042)は安全な勝利を、一切の苦難なき成功を夢見ていた。それだけに割り振られた依頼が一歩間違えれば自分も仲間も成功条件すらも吹き飛ばすすっごいアレなエネミーの対応と言われれば流石に悲鳴だって上げたくなる。別働隊はやってくれるんだろうか? そんな不安もあり。
「面倒な敵なのは同意するけど、殲滅が目的ではないわ。なら、やりようはあるのではないかしら?」
 他方、『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)はその点について全く問題としていなかった。というのも、『撃破し続けろ』とは言われたが倒した分だけ現れる以上は『殲滅』は実質不可能だ。抜け穴めいたルールは、確かに存在する。
「やれやれ……山賊たるこのおれさまが、貴族サマのお屋敷を守ってやらねえといけねえたあな。
 まァ仕方ねえ、チャチャッと終わらせて、大金ふんだくってやるぜえ! ゲハハハッ!」
 『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)はいつも通り、気持ちは兎も角依頼となればなんだって、の精神で戦場に立つ。貴族様をお守りするなんてガラでもないが、報酬をふんだくれるなら別にいい。動機なんてその程度で構わないのだ。
「自爆型ゴーレムなんて厄介な物を……っ」
「しかし倒しても爆発、屋敷に近づいても爆発とは意地の悪い……兵器としては正解なのでしょうが……」
 『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)と『嘘に誠に』フォークロワ=バロン(p3p008405)は口々にこの状況に、そして別働隊が突入せんとする遺跡のあまりの近さに不満交じりの声をあげた。
 別働隊には話が通っているが、『ダンジョンモグラ』なる怪生物の仕業だと聞かされれば2人はどんな顔をすることやら。そしてひとたびゴーレムが現れれば素早い判断と冷静な対処が求められるというのは、どんな気持ちか。消耗戦って大変だよな。
「真っ直ぐ来るんなら抑えるのも楽なんスけど、まさか飛ばしてくるとはなぁ……経験が少ないだけで、ポジション柄DFも出来ねぇ訳ではないっスけども……」
 『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)の本職はMFだ。DFは本来の役割からやや逸脱している。それだけに『簡単ッスよ』とはとても口にできない。できないからこそ、学びの機会。彼は混沌に降り立って長いので、その辺り割り切ることができた。
「装甲、展開(スクリプト、オーバーライド)。
 戦闘機動構築開始(システムセットアップ)。
 動作正常(ステータスグリーン)。……いくよSpiegel」
『Jawohl(了解)』
 『シュピーゲル』DexM001型 7810番機 SpiegelⅡ(p3p001649)は3mに及ぶ人型兵器に乗り込むと、いつでも動けるように防御壁と再構築機能を展開する。数十秒単位のタイムラグは切り捨てるほか無い。戦闘開始後、押っ取り刀で武装を展開して脇を抜けられるより万倍マシだ。
「何が敵Pじゃいっ! こっちはぷんすこ、砲台Pだってのっ!!」
「シュピーゲル! 接触してからカウントしなさい。残り10秒になったら吹き飛ばすのだわ!」
「カウント了解。接触次第実行するよ」
 ワルツは固定砲台としての役割を全うすべくCauterizeを設置すると、射撃体勢に移行する。
 レジーナはSpiegelⅡと声を掛け合い、作戦の次第を再確認する。この戦闘、有機的な連携と尽きぬ緊張感こそが勝利のカギとなる。
 別働隊が扉の向こうに吸い込まれるのに合わせ、パトリシア(以下P)3体が出現。『キャプテン・マヤ』マヤ ハグロ(p3p008008)が反応するより早く、それらは貴族邸目掛けて駆け出した。

●突き抜けろ、覚悟
「オレ達が先に動けるのは確定だな。直線的に動くなら動きが読めて楽でいい」
「接敵予定位置に移動。静止行動に移行……」
 P達は直線移動しかせず、場所も固定である。となれば、先んじて進行方向に陣取れば足止めは容易だ。
 葵とSpiegelⅡはそれぞれ、Pが詰めてくる距離ギリギリに前進し足止め体制に入る。相手の斥力をどう捌くか、がここで試されることとなる。
『前進、突撃、破砕』
「奴さんども、またぞろおいでなすったぜ。オラオラ、掛かって来やがれ! この最強の山賊、グドルフさまに任せときな!」
 グドルフはPの前進に合わせるように前に出ると、接触するなり喧嘩殺法で畳みかけにいく。蹴り、殴り、ふっ飛ばそうとする一連の猛攻は、Pが持つ斥力を散らし、同じ土俵に引きずりおろす。
「接触確認! カウントスタート! ……女王様、援護を!」
「任せなさい! 天乖剣全力展開! 今疾走は軍破る怒涛となりて蹂躙せん!」
 SpiegelⅡの要請に応じるかたちで、レジーナが叫ぶ。『破軍疾走・蹂躙怒涛(フルーカス・エト・テンペスタス)』。その名に相応しい暴風雨のような騎馬隊の突撃はPの1体に突っ込み、斥力を踏み散らし歩みを鈍らせた。
「残るは葵君の方! ……この砂嵐に耐えてみせなよっ!」
「この一発を受けて、なお前に出るという気概は果たして皆さんにあるのでしょうか……?」
 カインは葵が受け止めたP目掛けて熱砂の砂嵐を呼び寄せると、その動きを鈍らせる。更に背後から放たれたのは、フォークロワの放った黒い泥の弾丸……宙を舞う無貌の仮面から生まれたそれは、斥力のフィールドを残したPの足を重々しく縛り付けた。
「この敵Pって極論、進攻と爆発を妨害し続ければ最初の3体のままよね? つまり足止めし続けていざ抜けたときに即撃破できるお膳立てをする。屋敷に辿りつく、辿り着いても自爆じゃなくて爆破処理に留める……なによ、結構単純じゃない!」
 ワルツは遅まきながら相手の行動と自分達の布陣、そして達成条件の相性が極端にいいことに気付いてしまった。ライフルから放たれた魔力が雷撃の形をとって敵を薙ぐと、いよいよ彼女の目は喜色に染まる。頼れる仲間、無難な連携、そしてうまいこと処理できる敵。これは勝ったのではないか? と。
「そういうのフラグだから期待しない方がいいっスよ……っと、シュピーゲルの相手は斥力が消えてるからあと20秒カウントし直しだ! レジーナ、俺のPを弾き飛ばせ! 各自で攻撃を続ければ……こいつら、倒せるっスよ!」
「了解、カウント再開!」
「一気に蹂躙するわよ!」
 葵はワルツにちくりと告げると、仲間達へと指示を飛ばす。SpiegelⅡとレジーナはそれに応じ、斥力の無力化、そして敵の体力を削り取ることに注力した。
 現状、一同の連携は有機的かつ効率的に動いている。ワルツの雷撃は相互距離が離れているので単体攻撃止まりになるが、それでも威力としては十分。機動力を削ぐ手段と斥力を一時無力化する手段、双方を用意したことでPの接近を許さない。
 この戦局は、ワルツやレジーナが想定したように膠着状態を生み出せるのだろうか? うまいこと状況を誘導できるか?
 葵、そしてグドルフあたりはそれを内心で『否』と断じていた。
 個々人の実力が突出した編成とはいえ、20秒そこそこで倒しきれる体力の自爆人形。それを生かさず殺さずで足止めするのはとてもじゃないが不可能だ。
「ちっ、キリがねえなあ! 全く、うざってえゴーレムどもだぜ……っ痛」
「グドルフさん、大丈夫ですか? ……今ので『軽い』爆発……?」
 グドルフの舌打ちに合わせるかのように、Pが彼の眼前で爆発する。SpiegelⅡや葵が足止めした個体もまた、然り。
 問題点は、ここにもある。
 倒され易いということは、自爆し易いということだ。能動的な攻撃手段こそないが、ブロッカーが20秒程度に一度、高確率で爆炎に巻き込まれる。グドルフの回避能力や葵の安定した能力があればさした脅威ではないかもしれないが、それは『一度限りなら』。彼らに引けを取らぬとはいえ、SpiegelⅡにとっては輪をかけて脅威でもある。付与術式を破壊する手段を差し挟まれていれば、間違いなくじり貧になっただろう。
 自爆した傍から遺跡の入り口に、先ほどと同じ配置で現れたP達は駆け出すべく身構えている。タイムラグがあるのは幸いだった。今、真っ先に駆け出されればブロッカーとなる面子も間に合わない。
「遺跡攻略の連中、まだ時間食ってんのかよ!」
「さっき入ったばかりよ! あっちはあっちで強力な相手だろうからあんまり速攻は期待できないわよ!」
「ちょ、ちょっとお……近付いてくる相手を鴨打ちにできればよかったのになんでこんな事になってるのぉ……??」
 グドルフが毒づき、レジーナが返し、ワルツが焦る。
「地面の抉れ具合を見るに、当たればタダではすみませんね。貴族邸で炸裂すればこの数倍……なるほど」
「量産型だから動きが全く一緒なのが不幸中の幸いだけど、それにしても数で攻めてくるのは本当にどうかと思うよ……!」
 フォークロワは冷静に地形の変化を観察しつつ、前衛たちが第一波を避けられた幸運に息を吐く。カインは十二分に勝機を見出していたけれど、さりとてこんなものを延々相手にするなんて考えたくない、と焦りを深めた。そして、マヤは第二波の接近に合わせ銃口を傾ける。……遠い、そして、近い。一瞬の逡巡のうちに狙いがぶれるほどの前進は、彼女の思考から冷静さをはぎとっていく。射手にとって最大の敵は焦りだ。この状況は、想定以上に最悪だった。
 第二波は瞬く間にイレギュラーズへと迫り、うち1体がブロッカーの隙をついて抜け出した。動きが鈍っていなければ、サポート役の射程外にすら逃げられたろう。
「悪ぃなぁ、大丈夫か? これくらいでやられるタマじゃねえだろお前ら、ゲハハハッ!」
「仰る通りで。間一髪といいますか……」
 グドルフの豪放磊落な笑い声に、爆炎から抜け出たフォークロワが応じる。決して軽い怪我ではないが、そのパンドラを奪うにはいささか以上に火力不足だ。
 まだ戦える、少なくとも、倒されるほど柔ではない。……第三波、そして第四波。これが十も二十も続くなら、きっと彼等で対処できる状況ではなかっただろう。
「自走式人形爆雷とか地味に実用的ね。数が出ないだけましだけれども……できればあの『仕掛け』が使われないことを祈るばかりだわ」
 レジーナは自らの背後、貴族邸の間際に設置された拒馬をちらりと見た。作りは粗雑だが、僅かな足止めにはなろう。但し、それが消費されるようならいよいよ以てじり貧だ。
「ここまで徹底マークするなんて初めてだから神経使うっスね。いつもはマークされる側なんだけどな」
「早くしやがれってんだ、もう保たねえぞ!」
 グドルフの叫びに合わせるように第五波が出現する。ここから先はいよいよ、不味いか? 然程経過していない時計が何より憎い。……だが倒すしかない。
 一同の覚悟と意思、緊張がピークに迫ろうとしていたころに、それは起きた。
 遺跡の入り口周囲に立ち込めていた、P達を輩出する光が消えたのだ。然るに、これは別働隊が成し遂げたことを示す。
 ……そう、成し遂げたのだ。
「こいつら壊したら終わりよね? 終わりなのよね?!」
「落ち着いて下さいっス。ここで油断したら屋敷より俺達がヤバい」
 状況の明らかな進展に喜色満面のワルツはしかし、葵に再び釘を刺された。焦ってはだめだ。ここからが分水嶺だ。
「ラストスパートだあ、キバって行くぜえ、おめえらッ!!」

●最後の一瞬に思いを乗せて
「コード:VOB(ヴァンガードオーバーブレイド)」
『Warnung(警告)。Unbekannt Einheit(不明ユニット)の接続を確認。ナノユニットの異常放出発生。機体維持に深刻な障害。直ちに使用を停止シテクダサイ』
 SpiegelⅡの音声入力に、機体が異常を訴える。一瞬のうちに消費される莫大なエネルギー量に、異常を感じ取ったのだ。だが彼女は止めるつもりなどない。
(貴女達は壊れる為に生まれたのね。ならシュピと一緒かも)
 上がった撃鉄の音を脳裏で聞き、機体のエマージェンシーコールを無視し、彼女はP目掛け機体を傾ける。何も成し遂げられぬままに消費され壊されていく15もの少女型ゴーレム達。きっとすべてに、意味があった。意味もなく破壊されていく悲しみを知ったればこそ、彼女は思い切り壊してやろうと心に刻む。
「ヒートパイルセット、アクセラレート! 零距離! ……壊れろ!」
 レヴィアン・セイバーを突き出した機体ごとぶつかっていくと、Pの1体が盛大に爆発する。爆炎の中から現れた機体は、しかし煤のみを身にまとう。
「倒しても倒さなくても爆発するなら、被害を最小限に抑えて吹き飛ばす! ……だよね!」
「ええ、その通りね! このまま何もさせずに蹂躙してあげるわ!」
「ゴーレムの排出が止まった以上、遺跡から帰ってくる皆様に花道を作りませんとね。……聊かでこぼこに過ぎますが」
 カイン、レジーナ、そしてフォークロワは中心を驀進するP目掛け集中砲火を傾ける。葵が道を塞げば、あとは避けるすべのないPは破壊されるのを待つばかり。爆発がおきようと、彼ならば避け、そして耐えるだろう。
 ……最後の一体は、グドルフの斧に出合い頭に殴りつけられ、動きを鈍らせた。
「こっから先は行き止まりだぜ! グドルフさまがいるからな!」
「メイン壁きた、これで勝てる……本当にこれで勝ちよね? おかわりとか嫌よ!」
「だからそれフラグになるっスよ……」
 グドルフの声に歓喜の叫びを織り交ぜるワルツ。そしてそのやり取りに不安しか感じない葵。しかしながら、別働隊は成し遂げた。
 彼等とて、いずれ劣らぬ猛者である。止められぬ道理がない。
 最後の爆発は苛烈に、しかし想定よりずっと、小さく。貴族邸を一切傷つけることなく、作戦は終了した。

「……ところで倒した時の爆発で出来たこの穴ぼこのケアは依頼内容に含まれていましたでしょうか?」
「お貴族サマのためにそこまで気を遣うこたァねえな、帰ろうぜ!」
「疲れた……もうこれ以上考えたくないわ……」

成否

成功

MVP

グドルフ・ボイデル(p3p000694)

状態異常

マヤ ハグロ(p3p008008)[重傷]

あとがき

 お疲れさまでした。
 別働隊の活躍もありましたが、皆さん自身の活躍も大きかったと思います。
 ともあれ貴族邸は無傷。イレギュラーズの勝利です。
 ひとまずゆっくり休んでくださいね。……そうも言ってられないのかもしれませんけど。

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