シナリオ詳細
殺人鬼たちの饗宴を
オープニング
●事件は夜に
「はぁっ……はぁっ……!」
闇夜の街道を、一人の少女が駆ける。脇目も振らず、何処へ向かっているのかさえ考えず。何が彼女をそうまでして走らせるのか。それは、彼女の心の奥底から湧き出る”恐怖”という感情ただそれだけだ。
「あそぼうよぅ、そんなに怖がらないでさァ……!」
「いや……っ!来ないで……!」
走る少女の後ろから、後を追うように着いてくるものがあった。痩せた男のように見える。その顔は化粧で真っ白に塗り固められ、笑顔をかたどった目や口の文様のせいで表情は読み取れない。だが、その描かれた笑顔が有効的なものでないということは、手に握られている、大きな鋏から、正確にはその鋏の刃にべったりと付着した赤黒い何かが物語っていた。
まるで何かの映画に出てくるような殺人ピエロ。冗談か何かのようなそれが少女を追いかけているのだ。
「なんで、何で振り切れないのよ……!」
「逃げないでよぉ。楽しいことしようよぉ」
少女は全力で足を動かす。一刻も早くこの悪夢から逃げるために。だが、悪夢は獲物を消して逃しはしない。殺人ピエロの動きは緩慢としているのに、決して少女から距離を離さない。それどころか、少しずつ距離は縮まって。
「つぅかまぁえた……♪」
「ひっ!?」
振り返ってはいけない。少女はそれだけは最初から直感していた。それをしたら、必ず良くないことが起きる。なぜか、それだけは革新として少女の中にあったのだ。だが、同時に何処にでもいるような平凡な少女には、背後に迫る恐怖から目を背け続ける強さがなかった。振り向いた時、そこには何もいなくて、これが全部夢だったのだと気付くのかもしれない。そんな誘惑に耐えられなかった。
「それじゃ、遊ぼっか……!」
「いやぁああああ!!!」
振り向いた時、そこにいたのはたった一歩の先に立つ殺人ピエロ。それが、赤黒く染まったハサミを振り上げているところで。少女は自分の選択が間違っていたことを、そして自分の人生がここで終わってしまうことを悟り。
「やめろぉおおおおおおお!!!!!」
「ぐべらっ!?」
殺人ピエロがなんか横から割り込んできたでっけぇ鉄板みたいなものでぶん殴られて吹っ飛んだことで思考停止に陥った。
「は?」
割り込んできた鉄板をよく見れば、何者かが握る、なんか鉈みたいな形のでっかい剣だった。握ってるやつに視線を向けて、後悔する。筋骨隆々の、上半身が裸で麻袋をかぶった大男だった。やっぱり私の人生ここで終わったかもしれない。
「おいぃ、なにするんだよぉ、人の楽しみを邪魔しやがってさぁ……!」
なんかもうひとり出てきた。全体的に黒っぽいファッションで黒髪ロン毛で顔色の悪い少年だ。そいつが指をぱちんと鳴らすとふっ飛ばされた殺人ピエロが少年のもとに駆け寄り、よくできた部下のように傍に控える。
「何をする、ってのはこっちの台詞だぜ!殺人鬼は人を傷つける道具じゃねぇ!!」
「何言ってんの?」
思わず突っ込む少女。よく見れば鉈持ち大男の傍らにも一人の少年が立っている。活発性な服装に、赤っぽいツンツンヘアーが特徴の、気強そうな少年だ。声をよく聞けば、先程やめろと叫んだのはこの少年らしい。
だとすれば、命の恩人なのだが、言ってることがアレすぎて少女はなんか感謝しきれなかった。
「はっ、知ったふうな口を!人を殺してこその殺人鬼!人を傷つけるなとは笑わしてくれる!」
「倫理観が終わってる以外はあっちのほうが道理っぽいこと言ってるわね」
「違う!殺人鬼は、人とわかり合うためにあるんだ!!」
「こっちも倫理観は終わってるわね」
二人の少年の意見は何処までも平行線だ。ならば。
「ふん、このまま言い合ってても埒が明かないな」
「あぁ、俺もそう思ってたところだ。だから……」
「「バトル殺人鬼で勝負だ!!!!」」
「私帰って良い?」
●境界図書館にて
「とある世界でバトル殺人鬼による傷害事件が多発しているんだ」
なんて????
境界案内人、カストルの言ったことに、イレギュラーズは思い切り疑問符を飛ばす。
「えーと、なんて言ったら良いのかな。ある世界ではバトル殺人鬼ってホビーが、あんまり流行ってはいないんだけど」
流行ってないんかい。とイレギュラーズが言ってみれば、題材が題材だからね。とはカストル。道理だった。
「まぁ、なんというか。いろんな殺人鬼を召喚して戦わせる、って遊び何だけど、これが物理的な攻撃力を持っていてね、これで一般人を襲う殺人鬼バトラーがいるんだよ」
廃れてしまえそんなホビー。だから流行ってはいないんだって。
「まぁとにかく。今はまだ通り魔的犯行で済んでるけど、騒ぎが大きくなるとこれを利用して世界征服を企む輩とかがでてくる……かもしれない」
ホビーアニメかな?
「というわけで、今のうちにそう言う殺人鬼バトラーたちを鎮圧してほしいんだ」
- 殺人鬼たちの饗宴を完了
- NM名小柄井枷木
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年03月01日 22時10分
- 参加人数4/4人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●ギアをひとつあげていくぞッ!
「ああああああああああああああ!!俺の殺人鬼で罪もない一般市民をぶっ殺してぇえなぁああああああああああああ!!!」
悪い殺人鬼バトラーが獲物を求めて夜の街を練り歩く。彼らももともとは純粋にバトル殺人鬼を楽しむ善良な殺人鬼バトラーであった。しかし、あまりにも流行っていないバトル殺人鬼で対戦相手を探すのは至難の業。いつしか対戦相手に飢えた心の弱い殺人鬼バトラーがバトル殺人鬼とはなんの関わりもない一般人を殺人鬼で襲うようになったのだ。彼らはそんな悲しい存在なのである。悲しいね。
だからといって、彼らを野放しにすることはできない。そんな事をしたところで、バトル殺人鬼は普及するどころかますます世間から白い目で見られるようになるばかり。それを理解している、未だ正気を残す殺人鬼バトラーは、悪い殺人鬼バトラーを止めるために戦いに挑む。そう、
「殺人鬼を使って人を傷つけるだなんて……そんなの間違ってるよ!!」
今ここに駆けつけたイレギュラーズたちのように。
「……あれ、間違ってる?ㅤまぁいいか!ㅤ会長と殺人鬼バトルで勝負だよ!!」
●戦闘開始(専門用語で「マサクゥル・スタート」)
「あはははは!!来たぜ哀れな子羊がノコノコとよぉ!!!」
悪い殺人鬼バトラーが歓喜の声を上げて己の殺人鬼を呼び出す。頭に麻袋をかぶった上半身裸の巨漢。武器はでっかい鉈みたいな剣だ。
「あれっ!?キミ悪い殺人鬼バトラーと戦ってた子じゃなかったっけ!?」
その姿を見て驚く楊枝 茄子子(p3p008356)。そう、この場に現れた殺人鬼バトラーはOPで正義側っぽく現れた、あの少年だったのだ。
「ふっ、そんな事もあったな……だが今の俺にそんな言葉は届かない!闇に染まったオレの心にそんな優しい言葉は!」
「会長まだ何も言ってないんだけど」
正義に燃えていた少年はもういない。あのあと普通に悪い殺人鬼バトラーに負けて闇に堕ちてしまったのである。悲しいね。襲われてた女の子はバトってる間に帰ったので無事です。嬉しいね。
「うーん、なんかよくわからないけど悪い殺人鬼バトラーなら倒しちゃわないとね。出てこい会長の殺人鬼!」
だが会長的にはそんなことは割とどうでも良かったのでバトルスタート。この日のために調達した殺人鬼を呼び出す。
ジャビャビャビャ!という鳴き声を上げながら現れたのはビニール袋に入れられた胡瓜、ではなく緑色のスーツを着てビニール袋をかぶった人形の何かだ。手にはプラスチックのスプーン。これで目玉とか抉るそうです。怖いね。
「さぁいけ、きうり……あ間違えた殺人鬼!!」
「へっ、そんな貧弱な殺人鬼なんて返り討ちにしてやるぜ!」
麻袋の殺人鬼とビニール袋の殺人鬼が激突、
「ジャビャアア!?」
「ああっきうりが!」
した途端にビニール袋の方は吹き飛ばされる。体格差がありすぎました。
「へっ、口ほどにもなかったな!」
「ふふふ、それはどうかな!?」
「何!?」
しかし茄子子は余裕の表情だ。なぜならば。
「会長の殺人鬼は生存特化!どんなにダメージを受けても次のコマには復活してあぁ再生した側から食べられてる?!」
実際そんなような能力を持つ殺人鬼だったのだがなんかいつの間にか現れていた大型肉食獣の殺人鬼によってガツガツと貪られていた。大型肉食獣って胡瓜食べるんですね。
「ふん、やはり新入りには荷が重かったか……俺が助けに来なければどうなっていたことか」
「え、いや、俺勝ってたよね?」
「だが安心しろ。俺が、いや。俺たち来たからには勝利は決まったようなものだ」
「話聞けよ」
殺人鬼バトラーは対戦相手に飢えている。気がつけば、茄子子の周囲には何人もの悪い殺人鬼バトラーが現れていた。
「さて、一人を相手にこの人数でかかるとなると……」
「流石に気が引ける?」
「いや、滅茶苦茶楽しい」
殺人鬼バトラーの倫理観は基本的に終わっているぞ。
「ふはは、なにせ俺らは悪い殺人鬼バトラー。卑怯とは言うまいな?!」
「うん、まぁ言わないよ。だってね」
茄子子がそう言った瞬間。
「ぎゃあ!?」
「グワー!?」
「あべし!?」
周囲から上がる悲鳴。突然に正気を失った仲間のはずの殺人鬼に攻撃され、突如として腹から無数のナイフを生やし、なにか大きな質量のもので叩き潰され。悪い殺人鬼バトラーの殺人鬼の内の何体かが戦闘不能に陥った。
「別に会長も1人じゃないしね?」
「貴様ッ謀ったな!?」
別に謀ってはない。勝手に1人だと思いこんだ彼らの落ち度だ。だがそんな理屈で納得できれば悪い殺人鬼バトラーなんてやっていない。怒りのままに殺人鬼に茄子子を襲わせようとするが。
「正直、こういうのどうかと思うんだけどね、僕的に」
しかしその殺人鬼は動かない。否、動けない。それは、カイン・レジスト(p3p008357)の操る殺人鬼、闇妖精の繰り出す暗黒魔法によって身体の自由を奪われていた。
「郷に入りては郷に従え、僕達が殺人鬼ディスクを装備する最後の人になれば良いって事だよね!」
殺人鬼を操る辺りに抵抗を感じているカインだったがちょっと考えて割り切った理論で殺人鬼を操っているのであった。実際どうかと思う感じのホビーなんでここで終わらせてあげるのが彼らのためかもしれない。でも殺人鬼を暴れさせて気を引いてる隙にプレイヤーをダイレクトアタックするのはどうかと思うよ、ホビーアニメ的に。
まぁホビーアニメじゃないので許される。情け容赦のない攻撃で悪い殺人鬼バトラーはみるみると数を減らすのだった。
「ひ、ヒィイイ!こいつら人の心がねぇのか!」
「やってられるか、逃げるぞ!!」
となると、もちろん逃げようとするものも現れる。彼らを責めてはいけない。勝てない相手から逃げるのはあらゆる生物に許された生存戦略だ。尤も。
「なっ!?いつの間にか囲まれていやがる!」
「い、いつの間に現れやがった!?」
逃げれれればの話だが。
「とてもとても残念なことです…殺人鬼を使って人を傷つけようなどと。殺人鬼と心を通わせ、バトルを通じて殺人鬼オーナー同士も友情を育む……。殺人鬼って、そういうものです」
「そういうものではねぇよ!?」
逃げようとした殺人鬼バトラーを諭すように語りかけるライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)。バトラーたちを囲む民衆、のように見える殺人鬼のオーナーである。
「くっ、だが群体型は一体一体の戦闘力は低い!強引に突破するぞ!」
「あら、怖いですねぇ」
パワー型の殺人鬼でライの民衆殺人鬼の人垣を切り開き、バトラーたちは逃走を図る。そして、ライは特に慌てることはなく、それを止めようともしない。止める必要がないから。なぜなら。
「ここを突破すれば安全だなんて……どこにだっているんです、殺人鬼の素養を持つ人間なんて」
ライの殺人鬼の恐ろしさは数だけではなく、その活動可能範囲の広さだ。逃げ切ったと思った瞬間、意識しないところから繰り出される攻撃に対処できる者は多くない。どこか、遠くから悲鳴が聞こえたような気がした。
「よく世界が許したね、このホビー……」
フィーア=U=ツヴァンツィヒ(p3p008864)は、ライのやたら胴に入った殺人鬼仕草を見て、そしてそもそもこのバトル殺人鬼というホビーのヤバさに思いを馳せる。ホントなんでこんなもんが流通してるんでしょうね。
なお、そんなふうに良識を持って事にあたっているようなフィーアであるが。
「ところでそれで君の殺人鬼なんだけどコンセプトはどんな感じなの?そこのパーツが特に興味深くてね!どういう意図でそんなピーキーな構築をしているのかと……」
「グイグイ来るなこの人!?」
倒した殺人鬼バトラーを捕まえて質問攻めにするなどしていた。割とこういうのにハマっちゃうタイプだったんですね。扱う殺人鬼は担いだ袋にあらゆるものを吸い込んで攻撃に防御に活用するタイプだ。吸い込むほどに袋の質量が上がって攻撃力も増す、シンプルながら強力な構成だ。
「あの、私の殺人鬼も吸い込まれてるんですけど……」
「コンボってやつだね!」
これはライとの会話。
●そろそろボス戦
「ちっ、不甲斐ない奴らめ……」
イレギュラーズが悪い殺人鬼バトラーをボッコボコにしているのをずっと見ていたものがいる。引き伸ばすものでもないので言っちゃうとOPで殺人ピエロを操っていた方の少年だ。何でずっと見てたかと言えば、自分が一番目立つタイミングで出てこようと思っていたからだ。
そしたらなんかみんなボコボコにされたもんだからこりゃやばいってなってた。だけど、考えようによったはチャンスだ。ここで自分の活躍で逆転できれば滅茶苦茶かっこいいから。
そんなわけで、実はこの辺のバトラーの中でも屈指の実力を持ってた少年が、殺人ピエロを伴い満を持して現れ、
「ふん、よくもまぁ暴れてくれたものだ。褒美にこの俺が直々に」
「おっと、まだ居たか」
カインの闇妖精に動きを封じられ。
「あれっ?」
「おお、その鋏良いですね。センスを感じます」
フィーアのスナッチャーに武器の鋏を奪われ。
「えっ?」
「大きな剣だのピエロだの…ふふ、ここは仮装大会ではないのですよ」
ライの民衆殺人鬼に程よく切り裂かれ。
「待って、待って?」
「やっと、会長の殺人鬼も復活!行くよ!!」
茄子子のきうりが翼を生やして飛んだと思ったら空中で分裂してその破片が爆撃めいて降り注ぐなどした。
「嘘だろぉおお!?」
「やったか!」
「ちょっと、やめて」
茄子子がフラグを立てたりしたが。
「殺ってた!」
普通にオーバーキルだったので殺人ピエロはミンチよりひどい状態で戦闘不能。これで、この町の悪い殺人鬼バトラーはすべて倒されたのだった。
こうして、この町には平和が戻ったのである……。
「ねぇもう帰っていい!!?? 」
あ。はい。お疲れさまでした。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
こんばんは、小柄井枷木です。
バトル殺人鬼は人を傷つける道具じゃねぇ!俺とバトル殺人鬼で勝負だ!!
って感じのシナリオです。深く考えたら負けです。
・シナリオについて
そのまんまです。悪い殺人鬼バトラーがいるので倒しましょうってシナリオです。
バトル殺人鬼は物理的な破壊力を持ちますが、バトル殺人鬼にはバトル殺人鬼でしか干渉できないので、悪い殺人鬼バトラーが操るバトル殺人鬼をイレギュラーズにバトル殺人鬼を操ってもらって倒す感じです。ですがイレギュラーズはイレギュラーなので「私自身が殺人鬼なることだ」って言って直接倒すこともできます。楽しそうな方法でバトル殺人鬼を倒してください。
イレギュラーズが扱うバトル殺人鬼についてはなんか支給されたってことで好きな殺人鬼を利用できます。
・バトル殺人鬼について
殺人鬼を召喚して戦うホビーです。あんまり流行ってはいません。見た目は腕にディスクを装備して決闘するカードゲームアニメのアレみたいな感じです。
召喚する殺人鬼はなんかモチーフがいるような感じだったり完全なオリジナル造形だったり人間じゃなかったり概念的な存在だったりします。要するになんでもありです。好きな殺人鬼を構築しましょう。
あんまり流行ってないのでバトル殺人鬼を知らない一般人は殺人鬼バトラーの言動に基本引いてます。
・プレイングについて
どんな殺人鬼で、どんな特殊能力を持っていて、どんな闘い方をするかを記述してください。
(例)
・巨漢の殺人鬼。上半身裸で麻袋をかぶっている。武器は大きな鉈。
・パワーがとにかく凄くてすごい。鉈を力任せに振り回して戦う。
殺人鬼は自由なので皆さんの発想でいろんな殺人鬼を生み出してもらえると楽しいですね。
それでは、皆さんのご参加お待ちしております。
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