シナリオ詳細
【Tissier Town】お茶会、その前に
オープニング
●お菓子の街の、お困り事
「まあ……どうしましょう」
ティシエール街のシンボル、チョコレート噴水。そこを目印に、ふわふわのシフォンケーキで作られた、ドーム状の家があった。
シフォンの家に住むマリアおばあちゃんは、このティシエール街の名物おばあちゃんだ。
特に、毎年冬になれば、マリアおばあちゃんは近隣住人にホットチョコレートを振る舞い、皆の心と体を温めてくれる。
この街のお菓子は普通に食べても美味しいのだが、やはり一手間二手間加えるだけで、格段に上質な味になる。
笑顔がかわいい、心も優しい、料理が上手とあらば、この街一番の人気者に間違いなかった。
そんなマリアが、先程から所在なくキッチンの前を右往左往している。一体どうしたのだろう?
「材料はこのあたりでも、充分調達できるけど……」
何しろ、ティシエール街は『お菓子の街』。食べることに関しては事欠かない。しかし、『あるもの』が足りていない。
ナイフ、フォーク、スプーン。そういった『食器』の類も、てんで足りないのだ。
彼女がそれを求めるのには、訳がある。
先日執り行われた『ティシエール祭』。珍しい来訪者が居たのもあって、大成功のうちに幕を下ろしたが。
これを機に、町おこしに『もっとこの街のお菓子を売り出そう』と、町長が奮起した。
そこで、街一番の料理上手であるマリアに、『ティシエール街のお菓子をアレンジして、観光客に振る舞ってほしい』と、白羽の矢が立ったのだが。
これまで、これといって生活に困らない分、外部との交流も少なかったこの街では、おおよそ『おもてなし』に使う道具が足りていないのだ。
「どうしましょう、あたし一人じゃあ、『カトラリー峠』には行かれないし……」
かといって、この街出身の若者の多くはよその街まで出稼ぎに行ってしまっているし、数少ない若人もまた、それぞれの仕事があるだろう。急にこんな事を頼むのは忍びない。
こうして考えている間にも、日が暮れてしまいそうだ……。
●きのこ狩り、ならぬ
「……と言う訳で、イレギュラーズ。マリアさんを手伝ってあげて」
事のあらましをすべて語り終え、マチネは貴方達へと向き直った。
「……それにしても、建物や何もかもが、お菓子で出来ている、というのもすごいけど。まさかスプーンやフォークが『生えている』なんてね」
そう、今回の目的地、『カトラリー峠』。
その頂き付近には、大小様々のスプーン、フォーク、ナイフ……カップやソーサー等、様々な食器が『自生』しているという。
老いたマリアに代わり、それらを収穫してくるのが、今回の仕事だ。
「きっと、ひと仕事終わったら美味しいご褒美が待ってるから。しっかり、味わってきて」
- 【Tissier Town】お茶会、その前に完了
- NM名ななななな
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年02月20日 21時55分
- 参加人数4/4人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●いざ、山登り
ーーブゥゥゥーンーー
クッキーの民家、バームクーヘンのベンチ、リーフパイに飾られた街路樹等が建ち並ぶティシエール街の奥の奥……ハニー池から、この街では珍しい車が走っていく。『ザ・ハンマーの弟子』リサ・ディーラング(p3p008016)の操るオフロード車だ。
「お菓子の街……ティシエール街もすごいっすけど、今から行くカトラリー峠も、凄いとこみたいっすね」
「うん……。だけど、仕事を頑張ってくれば、美味しいお菓子が待ってるし。これはやる気が出るよねっ」
助手席で意気込むのは、『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)。
後部座席の『新たな可能性』イズマ・トーティス(p3p009471)も、籠を膝に載せ、ワクワクと外の風景を見つめている。目指すは、カトラリー峠、その山頂だ。
やがてカトラリー峠、その何合目かで車が停まる。ここからは、車で行くには悪路になるので、皆で歩く事になる。
「ここなら、大丈夫だな。さあ、出ておいで」
『天穹を翔ける銀狼』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)がそう言うと、ギフトで呼び出したふわもこな友人ジーク、コートのポケットからはにゃんたま達が姿を現した。
「わあ、かわいいなあ」
「この山は、特別危険も無いと聞いたからな。今日は良いだろう」
峠にはこれといった危険もないと聞いたゲオルグは、今日くらいはと、愛らしい友達との登山を楽しむ事にしたのだ。彼等の登場に、一行の心も一層和らいだ。
イズマを筆頭に、イレギュラーズは軽い足取りで進んでいく。自前で持ち込んだ紅茶等で喉を潤し、出発前に依頼人が渡してくれたトレイルミックスで、小腹を満たしながら、無理なく進んでいく。イレギュラーズは体力仕事も多いため、このぐらいの道程は休憩も挟めばなんのことはないが、確かに、車も持たない老婆が一人で往くには、遠い道程だっただろう。
やがて、目標地点が見えてみた。
四人の身長すべてを足してもなお大きいフォークやスプーン。その足元集まる、子供のような食器達。
木の枝に引っかかるかのように生っているティーカップ。葉っぱのように、くっついているソーサー。
「冒険者にとっては、採取の仕事は慣れたものだけど……まさか、本当に食器が自生しているなんて」
「確かに、驚きっすね……」
夢のような光景に、カインもリサも、目を丸くする。先に聞いていたとはいえ、やはり実際に目にすると、驚きもひとしおだ。しかし、驚いてばかりではいられない。早速、収穫しなければ。
「おお,、これなんか、ゲオルグさんの友達に似てないか?」
「ははは、確かに。トラのような柄をしているな」
ゲオルグにイズマは談笑しながらも、割れ物をそっと、古紙に包んで包んで籠に入れ、雑草のように生えているティースプーンなども、一本一本丁寧に抜いていく。リサはナイフ、フォーク、スプーンを種類別に分け、大皿や深皿も忘れずに持っていく。カインは客人が使うのだから派手すぎないものをと、シンプルかつ質の良いものを、確かに目利きしていく。やがて、4人も居るだけあって、マリアの注文した分だけの食器は、苦もなく皆の元に集まった。
「たくさんとったっすねー」
「しかし当たり前だけど、大荷物になってしまったな」
「大丈夫!」
言いながら、カインが妖精の木馬の背をなでた。
「割れ物は危ないかもしれないけど、フォークとかスプーンくらいなら、この子に持っていってもらおう。車まで行ければ、きっと大丈夫だし」
「もちろん。帰りも私が動かしまっす」
「……すまない、カイン。この子達も、載せてもらえるかな?」
ゲオルグの方を見れば、すっかり歩き疲れたのか、ミケにシロが、道端にゴロゴロと転がっていた。
「あはは、勿論だよ。疲れた子達も乗っていって」
「さあ、マリアさんの元に急ごう」
目的を果たした一行は、峠を下りていく。帰れば、皆が楽しみにしていたお茶会の時間だ。
●いざ、お茶会へ
「おかえりなさい、待っていたよお」
イレギュラーズの帰りを、マリアがシフォンの家で待っていた。
「ただいま、マリアさん。これだけあれば足りるかな」
「まあ、こんなにたくさん。これなら、いっぱいお客様がいらしても大丈夫ねぇ」
イレギュラーズ達の収穫を、テーブルに一つ一つ並べる。傷や割れ欠け一つなく持ち込まれた食器は、マリアの目を少女のように輝かせる。品質、量ともに問題はないらしい。何にせよ、依頼はこれにて達成だ。
「それじゃあ、お約束のご褒美ね。ちょっとだけ待っていて頂戴」
そう言ったマリアは、キッチンへと入っていく。彼女が皆の元に戻るまでに、そう時間はかからなかった。
「お待たせ。この家特製のシフォンに、ホイップ川のクリーム添えよ」
「待ってましたーっ!」
ここは何もかもがお菓子の街。マリアの家で取れたシフォンケーキが、存分に振る舞われる。他にも、サクサクのスコーンにジャムが添えられたり、フルーツポンチを固めてゼリーにしてみたりと、目にも鮮やかなメニューが並ぶ。
飲み物はリサの要望どおり、温かい紅茶たっぷりのティーポットや、ハニー池の蜜を加え温めたホットミルク、チョコレート噴水の恵みを使ったココアも並べられた。
「いただきます」
「ええ、どうぞ召し上がれ」
「ここのお菓子はワンちゃんネコちゃんも安心して食べられるから、ようく味わって頂戴な」
「ありがとう、ご婦人。やはり、シフォンケーキにホイップは定番だな」
……にゃーん、みぃー、なぁーご、んなぁー、ごろごろごろ、めぇー。
「ああ、お前たちの分もしっかりあるからな」
「ふふっ、皆仲良しさんなのねえ」
「ああ、ここは平和な所だから、久々にこの子達とものんびり過ごせたよ」
「ああ、こんなに寛ぐお客様が見られるなら、長生きした甲斐があったわあ」
「何をいうか。ご婦人もまだまだ若かろうに」
ゲオルグはまた、一口ケーキを口にする。ふんわり紅茶が香るシフォンケーキに合わせるのは、意外にもサラッとした、甘さ控えめのホイップクリーム。ゲオルグ本人も、ティシエール街の美味を味わうが、それ以上に友人達の、美味しそうにお菓子を食べる姿に、ほっと心が安らいでいる。
「マリアさん! どれも美味しいっす!」
「本当? そう言ってくれて良かったわあ。食べ切れないものがあったら包むから、お家もゆっくり召し上がって頂戴ね。あと、お土産も用意してあるからねぇ」
「マジっすか!? あーもー、私いっそ、ここの子になりたいっす〜!」
「うふふ、なんだか孫が増えたみたいで、嬉しいわあ」
「あっマリアおばあちゃん! これおかわりー!」
「はいなあ」
ここで美味を堪能できるだけではなく、素敵なお土産も持ち帰れるとあらば、リサのテンションも上がるばかりだ。住めるなら、ここに住んでしまいたい……が、彼女にはイレギュラーズとしての仕事も、練達での作業も山積みだ。またいずれ、遊びに来るとしよう。
「飲み物も、どれも美味しいよ、マリアさん」
「そう? 子供から大人まで、皆この味の虜になっちゃうのよね。よかったら、これも後で、何かに入れてお渡ししましょうか」
「本当に? 楽しみだ」
「皆頑張ってくださったんだもの、これぐらいはさせて頂戴な」
「そう言われると、こっちも働き甲斐があるなあ」
「嬉しいついでに、チョコチップクッキーもあるからねぇ」
嬉しいお土産は、更に増えそうだ。こんなに喜んでくれて、手土産も増えると言うならば、冒険の甲斐もあったものだ、と、カインは一層笑顔を浮かべた。
「うん、ティシエール祭で食べた時も美味しかったけど……少し手を加えるだけで、こんなにも美味しくなるなんて。やはりすごいな」
「うふふ、」
「ところで、マリアさん」
「どうしたの、イズマさん」
「このお菓子って、どこで取れたんだ?」
「シフォンケーキはうちのだけど、ホイップは近くの皮。ジャムは、キャラメル通りの井戸。フルーツポンチは、シュガーハーバーの海よ」
「そうか……ここはお菓子の味だけでなく景色も魅力的だから、どこで取れたか知れば、観光客も皆そこに行きたくなると思うんだ」
「まあ、いいアイデアね。町長さんにも相談してみましょうか」
マリアとの対話の中で齎されたイズマの提案は、この街をきっと良い方向に導くだろう。イズマにとってティシエール街は二度目の来訪になるが、きっとまだまだ、良いところが見つかるに違いない。
ごちそうさま。それを合図にして、お茶会は静かに、歓談のうちに幕を下ろした。
お腹も心も満たされる、素敵なお茶会。幸せの記憶を胸に、イレギュラーズは街を後にした。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
ティシエール街へようこそ。
町おこし、その準備のために、イレギュラーズの皆さん。力を貸してあげてください。
以下、詳細になります。
●ティシエール街
家も公園の遊具も外灯も、お菓子で作られた不思議な街です。
街中のお菓子全てに不思議な魔法が掛かっていて、思いっきり踏んだり叩いたりすれば割れるものの、何をしても汚れる事はなく、食べてお腹を壊すこともありません。
また、食べてもまたすぐに、新しいものがどこかからやってきます。
『チョコ噴水』『パフェ公園』『シュガーハーバー』『ハニー池』『ベークド通り』等、人気のスポットから寂れた裏通りまで、お菓子に覆い尽くされています。
この街のお菓子は適当に剥がしたのを食べても美味しいのですが、アレンジを加える事で、より美味しく作り変えるものも多いようです。
詳しい雰囲気などは、以下のリプレイをご参照ください。
↓↓↓
【Tissier Town】お菓子の街を、味わおう
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/5091
●目的
・カトラリー峠で食器を『収穫』してくること
ティシエール街を訪れる客人へのおもてなし、その準備のためにはとにかくモノが必要です。
皆さんはマリア(後述)からの依頼を受け、ここを登ることになります。
道中、モンスターや野生生物の危険はありませんが、単純に道のりが長いので、歩きやすい靴、こまめな水分補給があると良いでしょう。
カトラリー峠は、町外れ近い『ハニー池』を起点に、山に向けてずうっと歩いた方向にあります。
●NPC
・マリア
今回の依頼人で、ティシエール街の名物おばあちゃんです。
ティシエール街のお菓子をより美味しく味わう方法を、誰よりも知っています。
皆さんの帰りを、ホイップ添えのふわふわシフォン、温かいココアや紅茶、その他多くの美味と共に待っています。
以上になります。
ひと仕事して、美味しい時間を楽しみましょう。
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