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シナリオ詳細

<Chaos Diffence Project>ゴブリン軍団、襲来

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●実力が反映され、痛覚も感じるゲーム内世界にて
 ゲームの世界にダイブしたオレは、崖に挟まれた道の上に降り立った。この後ろには、守るべき場所がある。
 ウォーッ! 魔物達の遠吠えが聞こえる。ここまで魔物達が迫るのも、時間の問題だろう。だが、オレの実力では太刀打ち出来るはずもない。
「は、早く救援を送って下さいよ……!」
 祈るように、味方に救援を求める。そして敵の接近が先か味方の到着が先か、心臓をバクバクさせながら待ち続ける。だが、目の前に先に現れたのは敵だった。コボルトアーチャーが、弓で次々と射かけてくる。
「ああああああ! 痛い痛い痛ぁい!」
 避けるのもままならず、矢が次々と突き刺さる。その痛みにたまらず、オレはだらしなく叫んだ。
「待たせたな!」
 だが、気が付けば眼下に、待ち望んだ味方が現れた。革鎧に身を包んだ戦士だ。コボルトアーチャー達は新しく現れた戦士に次々と矢を射かけるが、戦士には大して効いていないようであった。そして戦士は、コボルトアーチャーを追い越して迫ってくるゴブリンを斬り伏せる。せめて援護しようと拳銃を撃つが、オレの実力ではろくに当たろうはずもなかった。

 そして戦士は次々と迫り来る敵を倒していくが、やがて戦士だけでは捌ききれないであろう狼の群が現れる。
「やばっ、これ……!」
「大丈夫、大丈夫」
 焦るオレとは対照的に、戦士は余裕といった風情だ。その理由は、オレにもすぐにわかった。
 オレの前方にローブ姿の魔術師が現れると、狼の群を火球で次々と焼いていく。戦士は、この魔術師が現れるのをわかっていたらしい。
 討ち漏らした狼がなおも先へと駆けるが、そいつらは戦士に止めを刺され、一匹たりとも戦士の先に進むことは出来なかった。

 やがて次々と到着した味方によって、魔物の群れは一匹たりともこの場を通り抜けることなく、残らず倒された。
 そして味方は――オレがやや危なかったけど――誰も倒されていない。パーフェクトだ。

●ゲーム開発陣の要望
「お疲れ様でしたー!」
「お疲れ様でしたー!」
 ゲーム世界のダイブから戻ってきたプレイヤー達が、互いの健闘を称え合う。ただ、味方に救援を請うしか出来なかった『真昼のランタン』羽田羅 勘蔵(p3n000126)は何処かバツが悪そうであったが。
「……で、どうでした? ダイブモードは?」
「うーん……私は普通に画面見てプレイする方が性にあってますねえ。でも、面白いんだろうなとは思います」
 そんな勘蔵に、スーツ姿の男が話しかけてくる。このタワーディフェンスゲーム『Chaos Diffence Project』の開発スタッフである。
「では、イレギュラーズの方達には?」
「そうですね……話はしてみますよ。誰かしら興味は持ってくれるかと」
「それはよかった! 是非お願いします!」
「わかりました。では、依頼としてお受けしましょう」
 『Chaos Diffence Project』の開発陣としては、是非このゲームをダイブモードでイレギュラーズに遊んでほしいと言う希望があった。イレギュラーズが遊び、楽しんだゲームとなれば広報戦略上、箔が付く。そこで依頼を出すために勘蔵を招き、実際にプレイしてもらったというわけだ。
(さて、誰か興味を持ってくれそうな人は……まぁ、適当に見つかるかな)
 そして開発陣からの依頼を受けた勘蔵は、興味を持ってくれそうなイレギュラーズを脳内でピックアップする。だが、すぐに面倒くさくなり、成り行き任せにすることにした。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。
 今回は実験作として、練達のVR技術を使ってタワーディフェンスゲームの世界にダイブして遊ぶ、と言うシナリオを出してみます。
 通常のシナリオとはかなり違う特殊な挙動・ルールがありますのでご注意下さい。

●成功条件
 ライフを1以上残してステージをクリアする=ゴブリン軍団の拠点突破を9体以内に抑える

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 左右を崖に挟まれたS字状の道です。具体的には以下のようになっています(1マス10m)。
 なお、崖と言っても高さは3メートル強であり、そこまで高いわけではありません。

 ABCDEFGHIJ
0▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
1▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
2▢        ★
3▢ ▢▢▢▢▢▢▢▢
4▢ ▢▢▢▢▢▢▢▢
5▢        ▢
6▢▢▢▢▢▢▢▢ ▢
7▢▢▢▢▢▢▢▢ ▢
8☆        ▢
9▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢

▢:崖の上。遠距離ユニットのみ配置可能。
 :通路。近接ユニットのみ配置可能。敵はここを進攻。
★:敵の出現地点。
☆:拠点。ここを敵が通過する度にライフ減少。

●初期ライフ
 10です。敵が拠点を突破してこれが0になるとゲームオーバーです。

●ゴブリン軍団
 ゴブリンロードが率いるゴブリンの軍団です。総勢100体。ゴブリンロードの存在によってゴブリン達にはバフがかかっていますので、普通のゴブリンよりは手強くなっています。
 プレイヤー側部隊=イレギュラーズの皆さんの守りを突破して、拠点へと向かっていきます。
 ボスであるゴブリンロードの他、範囲魔法攻撃を行ってくるゴブリンシャーマン、弓矢で攻撃してくるゴブリンシューター、攻撃力と生命力の高いホブゴブリンがいると予想されます。また、一気に多数が押し寄せてくるラッシュもあるでしょう。
 一気に100体全部が押し寄せてくるのではなく、最初は2,3体程度が、多い時には10体以上の集団が続々と★から☆へと押し寄せてきます。
 
●Chaos Diffence Project
 練達で開発されたタワーディフェンスゲームです。普通に画面を見て遊ぶだけでなく、VR技術でゲーム内世界にダイブして遊ぶ事も可能であり、このゲーム内世界にダイブして遊べることがこのゲームの売りになっています。

・タワーディフェンスとは
 ディフェンス、と名の付いているとおり、拠点に侵入しようとする敵を倒して防衛するゲームです。
 下記の特殊ルールについては、某⚫年戦争をベースにしています。

・特殊ルール
 このシナリオには、タワーディフェンスゲームを再現するために通常とは違う以下のルールがあります。
 ・キャラクターは、配置された位置から移動出来ません。
 ・通常攻撃、スキル使用以外の主行動、副行動は出来ません。
 ・戦場から離脱することは可能ですが、一旦離脱した場合戦場に再度出ることは出来ません。
 ・APに関係なく、通常攻撃を行ったりスキルを使用したり出来ます。
 ・スキル使用にAPは使いませんが、スキルの使用、再使用にはクールタイムが発生し、連発することは出来ません
  (配置されてから3ターン、スキルを使ってから6ターンがクールタイムとなります)。
 ・スキルとしてゲーム内で使えるスキルは、基本的に1種類となります。
 ・範囲攻撃には、自動的に【識別】が付きます。

・近接ユニットと遠距離ユニット
 このゲームでは、キャラクターは近接ユニットと遠距離ユニットの何れかに分類されます。
 それぞれ、通常状態で以下のようになります。
 ・近接ユニット:同マス内の地上敵1体に攻撃出来ます。また、地上敵2体を同時に同マス内に足止め出来ます。
  飛行する敵は攻撃することも足止めすることも出来ません(なお、今回は飛行する敵は出ません)。
 ・遠距離ユニット:武器の射程を問わず、30m以内の敵1体に攻撃出来ます。飛行する敵にも攻撃が可能です。
  攻撃の対象はプレイングで指定しない限り、飛行する敵、拠点に近い敵が優先されます。
  敵近接ユニットの攻撃対象にはなりませんが、敵遠距離ユニットの攻撃対象にはなります。

・コスト
 皆さんが戦場に配置されるには、コストと呼ばれるものを消費する必要があります。
 これは時間経過(1ターンで1回復)の他、後述する要素によって増加させられます。
 なお、皆さんの基本的なコストはレベル÷2(端数斬り上げ)となりますが、能力を半減させる代わりにコストを半減させたり、逆にコストを倍にする代わりに能力を倍にしたりすることも出来ます。
 また、後述する要素の獲得によりコストは増減します。

 今回のシナリオの初期コストは10です。なお、このゲームのゴブリンの機動力は4とします。
 これにより、コストが18になった時点で最初の敵が☆を通過してライフが減ることになりますので、注意して下さい。

・コスト増減要素
 以下の要素の取得で、コストは増減します。
 ・通常攻撃をスキルにする(+5)
  これにより、最大でスキルを2つゲーム内に持ち込むことが出来るようになります。
  また、味方の回復を通常の行動とする場合は、必ずこれで通常攻撃を回復スキルにして下さい。
  通常攻撃にしたスキルについてはクールタイムは発生しませんが、【溜】の影響は受けます。
 ・足止め数を増やすor減らす(1体につき+3、もしくは-3)
  同マス内に足止め出来る数を増減させます。0は今回は不可とします。
  足止め数を増やすと、それだけ多くの敵に同時に攻撃されることに注意して下さい。
 ・スキルをコスト増加スキルにする(+3)
  スキルを自分のスキルではなく、コストを増加させるスキルにします。
  このスキルを用いると、コストが15増加します。
 ・敵を1体倒すとコストが1増加するようになる(+3)
 ・足止めしている全員を攻撃出来るようになる(+5)
 ・通常攻撃を範囲攻撃にする(+5/+10)
  遠距離ユニットのみです。+5は指定マスのみ、+10は指定マスと隣接マスの全ての巻き込みます。
 その他、欲しい要素があれば内容に応じてコストを増減します。ただしあまりに便利すぎるものは通さない可能性がありますのでご注意下さい。

・ゲームを有利に進めるテクニック
 ・避雷針
  敵の遠距離攻撃の対象は、射程内で最後に配置された者が優先されます。
  これを利用して、後から固い味方を置くことで脆い味方を守るテクニックです。
 ・差し込み
  ボスなどの強敵の直前に強い味方を出現させて、その強敵をそこで足止めして味方を守るテクニックです。

●プレイングの書式について
 プレイングについては、以下の書式に従って頂きますようお願いします。
 書式が守られてないとか記入がないとかの場合は、GMの判断で適当にやります。

1行目:近接ユニットか遠距離ユニットかの別
2行目:配置されるマス
3行目以降:配置のタイミングや取得した要素、その他プレイング

例:
【近距離】
【B-8】
必要コストが貯まり次第、最初に出撃します。
足止め数を1減らして、スキルをコスト増加スキルにします。
HPが最大の20%を切ったら戦場から離脱します。

 それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。

  • <Chaos Diffence Project>ゴブリン軍団、襲来完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年02月25日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談9日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

グレイル・テンペスタ(p3p001964)
青混じる氷狼
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
ルーチェ=B=アッロガーンス(p3p008156)
異世界転移魔王
楊枝 茄子子(p3p008356)
虚飾
白夜 希(p3p009099)
死生の魔女
アスル=トゥルエノ(p3p009254)
蒼雷玉
Я・E・D(p3p009532)
赤い頭巾の魔砲狼
タイガ(p3p009549)
灰色の魔女

リプレイ

●ダイブ用のポッドを前にして
 タワーディフェンスゲーム『Chaos Diffence Project』をプレイすると言う依頼を受けたイレギュラーズ達は、ゲーム会社を訪れていた。そしてゲームの開発スタッフに案内されて、ゲームの世界にヴァーチャルリアリティーでダイブするためのポッドが置かれている部屋に通される。
「ぶいあーるぶいあーる! 練達はハイテクなものがいっぱいで飽きないね!
 今回はタワーディフェンスのゲームを遊べばいいのか!ㅤゲームを遊ぶだけとか楽でいいね!
 まぁ、会長はゲームでも手を抜かないよ!!ㅤきっとクリアしてみせるね!!」
 部屋に置かれている八人分のポッドを見て、楽しそうにはしゃぎながら意気込むのは『羽衣教会会長』楊枝 茄子子(p3p008356)だ。
「……タワーディフェンス。こういうゲームは初めてだけど……結構頭を使いそうだね。
 折角だからパーフェクトを狙いたいけど……上手くいくかな……?」
「今回に関しては敵の詳細が判ってるわけじゃないから、細かい事とかは気にせずに好きにやって楽しむのが正解だと思うよ」
 考え込むように首を傾げる『青混じる氷狼』グレイル・テンペスタ(p3p001964)に、『赤い頭巾の悪食狼』Я・E・D(p3p009532)が応じる。
 実際、タワーディフェンスゲームではマップによって初見殺しなどもあり、敵を逃さず味方を死なせずのパーフェクトを狙うには敵の出現パターンや能力を予め把握しておかなければ難しいことも往々にしてある。その点において、Я・E・Dの言うように無理にパーフェクトを狙わずに気楽に楽しむのは確かに正解だった。
「拠点防衛、ですか。当機の製造目的と重なるものがあります。それをゲームに、ですか。
 電子上での試行は兎も角、何故感覚をダイブさせて遊ぶのでしょうか? 体験すれば、理解できるでしょうか?」
「練達のVR技術には毎回驚かされるが、個人的にゲームは画面を見ながらやる方が好きかな?
 あまりリアルなVRだと、普段の依頼での戦闘と変わらなくなるからね」
 『蒼雷玉』アスル=トゥルエノ(p3p009254)は、ゲーム内世界にダイブすることが理解出来ない様子だ。もっとも、このゲームのターゲットはあくまで、『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)の言うように普段から依頼を受けて戦闘したりはしない一般人だ。そして、非日常を仮想体験で楽しむ上において、リアリティを重視する志向は存在するのである。
「ま、たまには変わったルールでの戦いも悪くはないさ。参加した以上は楽しませてもらうよ」
 ゲームは画面で遊ぶ派のゼフィラだったが、それはそれ、これはこれで楽しむ気は満々だった。
「ゴブリンか、雑魚だな……いや、慢心は良くない、今の私は弱いと言うことをしっかりと胸に刻んで戦おう」
 今回プレイするステージがゴブリン軍団が襲来するステージと聞いて、『灰色の魔女』タイガ(p3p009549)は大したことはないと侮りかけたが、思い直して自身を戒める。
「魔王である余からすれば、ゴブリンの軍団など大したことはないな」
 一方、タイガと違って慢心しきっているのは『異世界転移魔王』ルーチェ=B=アッロガーンス(p3p008156)だ。それでしっぺ返しを食らうかどうかは、神のみぞ知る。

●序盤の攻防
「開発者さん、開発者さん」
「はい、何でしょう?」
「他のスキルと違ってコスト増加スキルって、完全にシステム的なものだよね?
 たぶん、わたしコストを出しているだけだから、ドーナツを食べていたらコストが増加する感じにできないかなぁ?」
「コストを出しているだけ……ええと?」
 Я・E・Dはゲーム世界にダイブする前に開発スタッフを呼び止めて要望を出した。だが、スタッフはЯ・E・Dの言葉に困惑する。
「……えっ? それ、出来ないの!?」
「ええと、すみません。コスト増加スキルは通常攻撃化には対応していなくてですね。
 あと、そうしてしまうとゲームバランスがぶっ壊れますので……。
 あっ、コスト増加スキルにエフェクトを付けるのは大丈夫なので、そちらはやらせていただきます」
「そうかぁ……でも、無理もないかぁ」
 仕方ないと言う風にしながら、Я・E・Dはポッドの中に入っていった。

(ドーナツを食べてるだけでいいと思ってたんだけどね)
 ゲーム世界の中、拠点より少し前方にダイブしたЯ・E・Dがしばらく待っていると、スキルが使用可能になりその手にはドーナツが握られる。Я・E・Dがドーナツを口にすると、コストが貯まり『神は許さなくても私が許そう』白夜 希(p3p009099)が崖の上に現れる。だが、その時には最初のゴブリンがもうすぐЯ・E・Dに迫らんとしていた。
 希は、周囲一帯を丸ごと圧し潰すような黒い光の塊、と言うよりも柱をゴブリンに落としていく。ドーン! と大きな音を立てて黒い光の柱は地面に衝突したが、ゴブリンは傷を負いながらもЯ・E・Dの方へと向かっていった。
 Я・E・Dは暗器でゴブリンを迎え撃つが、それでもまだ倒れるには到らない。だが、それも仕方のないことではあった。二人はコストを軽減するために能力を半分に制限されている上、ゴブリンの方はロードの存在によってバフが付いているのだから。
(能力半減はなかなかしんどいなー……。
 この世界に初めて来た時に混沌肯定を受けてレベル1になった時みたいな……。
 今までも何度も異世界転移してきて味わった感覚ではあるけど……ストレス溜まる……!)
 そう思いながらも何度かゴブリンに黒い光の柱を落とした希は、Я・E・Dとの協力の末に最初のゴブリンを撃破する。
「おっと……行かせないよ」
 そして、Я・E・Dは自身の横を過ぎ去ろうとした後続のゴブリンの足を、辛うじて止めた。

「余、推参である!」
 さらにコストが貯まり、ルーチェがゲーム内世界にダイブしてきた。S字のようになっている道のうち中央の直線と、敵の出現地点を射程に収められる位置に出現したルーチェは、Я・E・Dに迫ろうとするゴブリン達に遠距離術式を次々と仕掛けていく。これで、ゴブリンの襲来するペースは増えつつあったが、Я・E・Dには討ち漏らしが到達する程度になっていった。
 そうしているうちに、十体のゴブリンの集団がルーチェの視界の中に現れる。いわゆるラッシュだ。
「数で押してきたか。ならば、まとめて'薙ぎ払ってやろう!」
 ルーチェは口を大きく開くと、そこに全身の魔力を収束させ、光の奔流としてブレスの如く吐き出した。だが、ゴブリン達は深い傷を負いながらも先へと進まんとする。
「……ごめん、少し遅れたね……でも、ここからは大丈夫……僕が通さないから……」
 しかし、ゴブリン達に立ちはだかるようにグレイルがゲーム世界にダイブしてきた。十体全部を止めるのは流石に無理であったが、それでも半数近い四体の足を止める。
(んー……いつもは後衛で戦っていたから、この戦い方は……ちょっと慣れないな。
 前線で攻撃を受け止める役の人は……こんな感じに戦場が見えてたんだね……。
 さて、と……慣れない立ち回り方とはいえ、手を抜くつもりは無いし……これ以上は通さないよ……)
 ゴブリン四体と接近戦を演じることになったグレイルは、手にしているカンテラ『幻狼灯』で一体ずつゴブリンを殴り倒す。その間に、グレイルの横を通り抜けたゴブリン達はルーチェと希の追撃によって倒されていった。

●中盤~ボス撃破
 グレイルがダイブした時点から、戦いの流れは変わりはじめた。
「コスト到達、これより参戦します。当機の『意義』を達成します。障害は、一切排除します」
「よーし回復するよー!!ㅤその場から動かないでね!ㅤって動けないか!」
 こうしてアスル、茄子子がダイブしてくるにつれて、戦局は安定しはじめた。
 出現したばかりの敵を攻撃出来る位置にいたルーチェが、出現してきたばかりのゴブリンアーチャー数体に集中攻撃を受けて残りHP一割で撤退せざるを得なくなると言うハプニングはあったものの、ゴブリンがグレイルを通り抜けることは皆無となる。
 まず、ゴブリン達は最初のカーブでアスルの魔弾によって深手を負う。アスルの攻撃の隙を付いてに差し掛かる前にタイガの精神力からなる弾丸によって数を減らしていく。最初はアスルの魔弾を受けずに済んだゴブリン達はカーブを突破せんとするものの、その前に攻撃の準備を整えたアスルによってまとめて傷を負っていった。そこに、希の黒い光の柱が振って深手のゴブリン達をまとめて圧殺していく。通常のゴブリンがグレイルを突破することは、これでほぼ皆無となった。
(……これは幻覚の類か? うぇぷ……気持ち悪い)
 さらに、慣れない仮想現実に酔いながらもタイガがダイブしてくる。タイガはすかさず、カーブに差し掛からんとするゴブリンアーチャーやゴブリンマジシャン、あるいはホブゴブリンを中心に己が精神力から練り上げた弾丸を放つ。
(まだ足りない! この程度のゴブリン、昔の私なら一撃で魂すら消滅させられたのに……もっと火力を引き出さなければ……!)
 タイガの放った弾丸は、ホブゴブリン以外は瞬殺した。だが、ホブゴブリンはタイガの弾丸に耐えて進行していく。能力が倍増していても過去の自分の実力にはとても及ばないと痛感したタイガのショックは大きいようで、タイガはもっと力を付ける必要を痛感した。
 なお、タイガがダイブするまではアスルが、タイガがダイブしてからはタイガがゴブリンアーチャーやゴブリンマジシャンからの遠距離攻撃を受けていたが、その傷は茄子子が都度癒やしていったため、アスルやタイガが倒されたり撤退に追い込まれるようなことはなかった。
 最後にゼフィラがダイブする頃には、ボスであるゴブリンロードがゴブリンマジシャンの取り巻きを従えて出現していた。
「戦術的な話は得意ではないので、今回は作戦からなにから仲間に頼りっぱなしだけどね。
 せめて与えられた役割は果たさせてもらおうか」
 ゼフィラはゴブリンロードが射程に入るやいなや、精神力から練り上げた弾丸を放つ。突然の弾丸が効いたのか、ゴブリンロードはぐらりと後ろに仰け反った。
 一方、ゴブリンマジシャンの放った火球がゼフィラとタイガをまとめて攻撃するが、タイガの反撃によってゴブリンマジシャンはことごとく倒され、火球によって追わされた傷も茄子子が癒やしていった。
 ゴブリンロードはボスだけあってさすがに強敵であり、茄子子による回復を以てしてもグレイルをパンドラを費やす寸前まで追い込んだ。だが、希、アスル、タイガ、ゼフィラによる攻撃も熾烈であり、ゴブリンロードはその生命力をどんどんと削り取られていく。
「これで……終わらせる!」
 最後は、ゼフィラが渾身の気力を注ぎ込んで練り上げた弾丸が、満身創痍のゴブリンロードの心臓を貫いた。どう、とゴブリンロードの身体が地面に倒れ伏した瞬間、ファンファーレとステージクリアのメッセージが一帯に響き渡った。

<図>戦闘終了時、イレギュラーズ配置図。イレギュラーズは頭文字で表示。括弧内は撤退者。
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
▢        ★
▢ ▢▢▢▢▢▢▢▢
▢ ▢タゼ▢▢▢▢▢
▢    グ  (ル)
▢ア▢▢茄▢▢希 ▢
▢▢▢▢▢▢▢▢ ▢
☆      Я ▢
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢

●感想は様々に
「よしクリアだぜ!ㅤみんなお疲れ!
 これでイレギュラーズがプレイしたってことで箔もつくし!ㅤいい感じに広報されるといいね!」
 ゴブリン軍団との戦闘を終えてゲーム世界から現実に戻ってきた茄子子は、戦果に満足した様子で快哉を叫んだ。
「……未だに理解できません。当機は、固定状態での迎撃に理解はあります。
 ですが、現行の戦闘では、移動しながらの遊撃戦が多いと思考します。これが何かの役に立つのでしょうか?」
「そう言うゲームだからね。要は、遊んで楽しめればいいのさ」
「楽しむものであって……役に立つ、とか、そういうのではない……?」
 実際にプレイしてみてもこのゲームの意義がわからないと首を傾げるアスルに、ゼフィラはあくまでゲームとして楽しむものだと説明する。
「……今回は盾役として遊んだけど……割といい体験ができたかも?
 ゲームだとしてもこのリアルさ……普通に遊んでいても、戦闘訓練とか……大規模な戦場での立ち回りの練習に良さそうな気がするな……。
 怪我は残らないのにダメージが残るのはどうかと思うけど……それでも、思い切った戦い方が試せそうかも……?
 ここにはたまに戦闘訓練も兼ねて……遊びに来ようかな……? 今度は……いつもと同じ戦い方で、ね……」
 その一方で、グレイルはこのゲームに訓練としての価値を見出していた。普段と違う役割を担ったことが、刺激になったようだ。
「本当に、ゲームなのにダメージが残るのはどうにかならんのだろうか……」
 ギリギリで撤退したため辛うじて死亡扱いにはならなかったルーチェが、ぐったりとしながらグレイルに言う。
「……まぁ、そこは上手くヒーラーと組むことかな」
「もちろんその場合、ヒーラーを遠距離攻撃から守る手段が必要になるけどね」
 白夜はグレイルとルーチェに癒やしを施し、Я・E・Dはゲーム内世界と変わらずドーナツをもぐもぐしながらその様子を見守っている。
「次は……次こそは能力強化無しでホブゴブリンを一撃で消し飛ばす!」
 タイガは、次にプレイする時までには能力強化無しでホブゴブリンを瞬殺する力を付けると心に誓っていた。
 そこに、開発スタッフがやってきてイレギュラーズ達に声をかける。
「いやぁ、皆さん。プレイして頂いてありがとうございました。
 イレギュラーズの方々にプレイして頂いたという実績も出来ましたし、参考になるご意見も頂けました。
 本当に、ありがとうございました!」
(――何かの助力になったのであれば、良かったと当機は思考します)
 その様子に、アスルは一応何らかの役には立てたらしいと、満足感を感じたのであった。

成否

成功

MVP

グレイル・テンペスタ(p3p001964)
青混じる氷狼

状態異常

グレイル・テンペスタ(p3p001964)[重傷]
青混じる氷狼
ルーチェ=B=アッロガーンス(p3p008156)[重傷]
異世界転移魔王

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。皆さんが無事にこのステージをクリアしたことで、茄子子さんの言うようにこのゲームにはイレギュラーズがプレイしたという箔がつきました。希さんが推察したようにまだβ版であり今後調整はされるでしょうが、いずれ発売されるでしょう。

 コスト増加スキルを通常攻撃扱いにされた点については、特殊ルールを書いていく中でその可能性を見落としてました。
 これに関しては、コスト増加スキルは通常攻撃扱いに出来ない旨を書き損ねていた私のミスです。大変申し訳ございません。
 ただ、さすがに毎ターンコスト+15は、1ターンに増えるコストが増えすぎてぶっちゃけチートレベルなので、これでご勘弁下さい。

 MVPは、中盤以降ゴブリンロードまで含めて足止めを果たしたグレイルさんにお送りします。

 それでは、お疲れ様でした。一風変わったシナリオでしたが、お楽しみ頂けましたら幸いです。

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