シナリオ詳細
鬼の人退治
オープニング
■昔々のお話
桃から生まれた侍が、犬、猿、雉をおともにして鬼退治。悪さをしていた鬼を懲らしめ、人々から奪った財宝を持ち帰り、もとに戻して平和を齎したとさ。
というのが大凡の伝わるお話。しかし、その後のお話を知っている者は少ないだろう。
何故ならば、その後の物語はとても陰惨なものなのだから……。
「おい、そこの鬼! さっさと動けい!」
「ひ、ひぃっ!」
「鬼娘、さっさと飯を作らんか!」
「は、はいただいま!」
人の都より少し離れた、それでも相応に栄えている街では。鬼の島より連れてこられた鬼達が奴隷として働かされていた。ろくな食事も与えられる事なくやせ細り、かつての筋骨隆々で力自慢だった姿はどこへやら。
よく見ると鬼の象徴である角もない。皆一様に根本から折れてしまったかのようになっている。
「くそ……俺のご先祖様の角さえ折られなきゃ……!」
街の外れにある鬼のボロ集落。赤い肌が特徴的な男子が悔しげに言い放つ。彼の名は赤丸。その先祖は鬼の島の頭領であり、件の侍との一騎打ちに負け、象徴の角を折られたのだ。
その侍が持ち帰った鬼の角。都の陰陽師が呪いをかけて、鬼の手に角が戻らない限り鬼の力は戻らないようになってしまったのだ。そのために今の鬼は奴隷扱い。日々生きるか死ぬかの生活である。
「俺、やっぱり角を取り返しに行ってくる!」
仲間の制止を振り切り、赤丸は夜に忍び込む事を決意。
さて、この赤丸の物語の行く末は……。
■二つの問題を解決せよ
「……ということなんだけど。皆にはこの赤丸君の手助けをして欲しいの」
物語を読み終えた境界案内人のポルックスは集まったイレギュラーズにそう告げる。その中の一人が、人間を倒して角を取り返せばいいのか? と問いかける。
「そうなんだけど……恐らくそれだけだと、力を取り戻した鬼達が人間に戦争を仕掛けるわ。そうすると血で血を争う世界になっちゃう。角を取り戻すのに協力して、その上で暴走しかける赤丸君をなんとかなだめて欲しいの」
本当ならば、人と鬼、手を取り合って助け合っていけるはずなのに。
そう願いを込めて、ポルックスはイレギュラーズを本の世界へと送り出す。
- 鬼の人退治完了
- NM名以下略
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年02月09日 22時00分
- 参加人数4/4人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
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参加者一覧(4人)
リプレイ
■闇夜の潜入
「……なんだお前ら」
鬼の角が保管されているという屋敷は大きい。その為に入口からでなくとも侵入できる場所はある。例えば年月が経ち穴が開いた壁、伸びた樹の枝など。それを狙って闇夜を歩く赤丸の前に四人の人影が現れる。
見回りの人間かと身構える赤丸。しかしその四人は敵意を示さない。
「あんさんが赤丸君やねぇ?」
『呪刀持ちの唄歌い』紅楼夢・紫月(p3p007611)が赤丸の名前を呼ぶ。闇に紛れて見えにくいが彼女の背にあるのは黒き翼。赤丸はどうやら鴉天狗か何かの仲間だと思ったようだ。警戒心を解く。
「ああ、そうだが、お前達は?」
「ハンモはハンモだよ、同じ鬼さ」
『祝福を授けし者』金枝 繁茂(p3p008917)の朗らかな顔に赤丸は視線を向ける。彼の体は赤丸の知る鬼の誰よりも大きく立派であった。陰陽師の呪いから逃れられた仲間だと納得する。
「すげぇなお前。呪いが効いてないんだな」
「ちょっと離れたところから来たからね。力と誇りを奪われた鬼の噂を聞いてやってきたんだ」
『半妖の依り代』斑鳩・静音(p3p008290)が混沌世界の事をぼかしながら説明する。彼女の言葉に少しだけ苦い顔をした赤丸だが、すぐに「有り難い」と言葉を返す。見た目は人の静音だが、赤丸の目には妖怪に映るようだ。
しかして最後の一人に向ける赤丸の視線は鋭い。それもそうだろう、『凡骨にして凡庸』浜地・庸介(p3p008438)は普通の人なのだから。
しかし庸介はその視線を受け流す。
「俺は人だ、だがこいつらと共にお前を手助けする。だが、その後の事までは手伝わん。お前が人に仇成すなら」
「言うな」
庸介の言葉を遮り、壁に開いた穴に身を潜らせる赤丸。嫌われたもんだな、というぼやきを残し庸介は樹の枝より中へ飛び入り、他の三人もそれぞれ屋敷の中へと潜入する。
「うーん、ばらばらにだけど見張りっぽい人がいるね」
繁茂が得意の聴力を活かし、周囲の人の声を聞く。流石に無警戒という訳ではないようだ。松明の明かりも、その近くに立つ人の姿も見える。
さて、どうしたものかと考える一行。赤丸はさっさと突撃しようとするが、静音が彼の肩を掴んで押し止める。
「ちょっと待ってて。あそこの人の注意を引いてくるから」
彼女が指差すのは、屋敷の入り口らしき場所に立つ男二人。一人で静音は男の前にまで歩み出る。当然警戒されるのだが……。
「何者だっ」
「す、すいません、旅の者なんですが……少し休ませて下さい。なんでもしますから……」
扇情的に体をくねらせ、魅力的な肢体を見せつける静音。二人の男は一度顔を見合わすと、彼女の肩と腰に手を回して下卑た笑顔を見せる。
「そういう事なら仕方ねぇな」
「こっち来いよ、可愛がってやる……ぐぁっ!?」
二人の注意が完全に散漫になったところを狙い、紫月と繁茂が後ろから殴りつけて気絶させる。念の為にと庸介が気絶した二人を暗がりへと運んでいき、赤丸も合流する。
「嫌やねぇ、相手が弱いと見るや見下すんは人の性とはいえ」
「同感だな。こういう奴が一定数いるからこそ……俺が言っても説得力はない、か」
ため息を落としながらも庸介は仕事を終え、紫月も男を殴りつけた刀の鞘をもとに戻す。そこではた、と静音がもうひとつの目的を思い出す。
「あ、しまった。角のある場所も聞こうと思ってたのに、皆を呼ぶの早まったかな」
「心配するな、角の場所は俺が知ってる」
足音を立てないようにして屋敷へと先に踏み入る赤丸。彼が言うには、以前この屋敷の者が自慢げに「奥の物置部屋に突っ込んだ」と語るのを耳にしたそうだ。
鬼の反乱など夢にも思っていないからこその言動だろう。これでは赤丸が復讐を考えるのも無理はない。
■角は元へと、鬼は怒る
紫月の聴力と、庸介の暗視、繁茂の物質透過は暗闇での隠密行動に抜群の相性を見せた。赤丸に先導してもらい、物置部屋へと向かいながらも、物音や人の影を逃さず感知。壁の向こうも繁茂が先行し安全を確認する、と無駄な戦闘を避けて遠回りながらも奥へと進むことができた。
やがて行き止まりにあった部屋の扉を赤丸が開ける。そこは確かに物置部屋。普段は使わないであろう着物や家具などが所狭しと置かれていた。
「この部屋のどこにあるんかわかる?」
「ああ、ここまで来れば匂いでわかるさ」
紫月の質問に、自信満々に返す赤丸。彼は一つの箱に手を伸ばす。
長年放置されてきたのであろう箱は、埃が積もっていた。それを赤丸は雑に払い、蓋を開ける。中には折れた鬼の角が二本。布に包まれて安置されていた。
「これが鬼の角……」
「ああ……これで、俺が頭領だ!」
赤丸の肩越しに静音が角を見つめる。僅かに血の匂いが残っていたのは、角を切り取られた先祖の者だろうか。
ここまで来れば遠慮なしだと赤丸が高らかに吼える。繁茂が周囲に人がいたら危ないと慌てるも、近くには人がいなかったようだ。
赤丸の手から、頭頂部へ角が置かれる。決して合わないはずのそれは、不思議な事にぴったりとくっつく。すると、貧弱な子供そのものだった赤丸の体が急に筋骨隆々の青年へと成長を果たす。妖気が溢れ出し、部屋の壁を吹き飛ばす。
イレギュラーズ達も荒れ狂う力に襲われるが、それぞれ自力で踏みとどまる。まだ赤丸が本気でなかったからであろう。しかし、流石に壁が壊れた騒音で人が集まりだす。
「何事だ!?」
「お、おいあいつ、あの鬼……!」
「角が、角が戻っている!!」
「よう、人間共。世話んなったな。……ここからは、俺達鬼の時代だ、覚悟しろよ!!」
■月下の語り
赤丸……鬼に角が戻り、人々は鬼の恐怖を思い出す。今まで虐げていた存在が、自分たちより強くなったと悟り逃げ惑う。
赤丸は復讐に染まった笑みを浮かべながらゆっくりと一歩踏み出すが、イレギュラーズがその前に立ちはだかる。
「どけよ。お前らには感謝してんだ。……人間もいるが、今だけなら見逃してやる」
「そうは行くかよ。復讐したいのがわかる。ここの人間共がお前達を奴隷にしていた悪どい奴らだってのもわかる。だがな、お前が非道を働けば、こいつらと同じ鬼以下の何かになっでしまうんだぞ」
力の波動を滾らせる赤丸に怯む事なく、庸介は淡々と語る。その口からは鬼だ、人だという区別はない。非道を働いたかどうか、で彼は判断しているというのが伝わる。
「そうやねぇ。人間が畜生な事したんやろぅ。その畜生と同じになってもええんやったら……」
刀の柄に手をかけながら紫月は視線を鋭くする。復讐してもええんちゃう? と言いながらも、簡単に通す気はないと言った風に。
その言葉に迷う赤丸だが、それを振り払おうと腕を突き出す。力を取り戻した鬼の一撃は相応に鋭く疾い。だが、歴戦の猛者たる紫月はより疾い。刀に手をかけた姿勢そのままに、最小限の動きで拳を避ける。赤丸を獲物と半ば見出した紫月の唇が、妖しく笑う。
その様子にたじろぐ赤丸。こいつは本気だと本能で理解する。
「その拳、力。暴れたいなら私を殴ればいいよ。私は全部受け止めるから」
両の手を広げた静音が覚悟を決めた表情で赤丸を見つめる。少し迷った赤丸が、彼女を殴りつける為に再度腕を振るう。眼前まで拳が来ようとも身動ぎ一つしない静音の覚悟を目にした赤丸の動きは、直撃する直前で止まる。
「力ではどうしようもない事もあるんだよ。力がないと何もできないけど、復讐は何か違うよ。ここで人間を殺しても、赤丸ちゃんの仲間や未来の子供達に、人間が復讐する理由を与えるだけだよ」
動きが止まった赤丸の腕を、繁茂が掴む。繁茂の巨体からくる腕力は確かなもので、力を取り戻した赤丸なのに、掴まれた腕が動かない。
「……俺に、どうしろってんだよ……!」
「皆を導くんだ、人と対等に生きる為に交渉の場を作っていくんだよ、君が」
その言葉に、赤丸の憎しみに染まった顔からほんの少し力が抜ける。思いもしなかった、夢物語を同じ鬼の繁茂から聞いた事で、想像した。
鬼の国をもう一度作り直し、改めて人と交渉の場に立っている。そんな自分を。
「今ここで暴れるというんなら、私は容赦せんでぇ?」
穏やかな口調とは裏腹に、本気の殺気を放つ紫月。恐らく彼女一人倒すだけでも相当苦労するだろう。それに加えて他に三人。
「同じく、だ。だが、ここで暴れないならば、俺はお前を認める。人もそのうちお前を認めるだろう」
『人間』である庸介が、眉一つ動かさず語る。先祖は都で暴れたが為に退治された、その話を思い出す。もし、彼の者が無法を働かなければ。そして今、自分が無法を働かなければ未来はどうなるかを夢想する。
「……飲み込んで、我慢しよ? ほら、いい子いい子」
力が抜けた赤丸の体を、静音が抱きしめ背中を撫でる。赤丸の目からは、一筋の熱いものが流れていた。復讐したい己の気持ちに蓋をして、仲間の為に生きる。そう決めた男の、決意が。
「泣いてる場合じゃないよ、若頭!」
繁茂が背中を叩く。その呼び名に、応、と応えた赤丸は静音から離れると屋敷から飛び出していった。その背中を四人のイレギュラーズは見送る。
「行っちまったな」
「けど、もう大丈夫だよ」
初めて庸介が肩の力を抜く。役目は終わったとばかりに。静音は間近で彼のぬくもりを感じた事で、何かを確信したようだ。
「今度会うまでに腕磨いときぃ? ……殺しはなしで、斬り合いたいわぁ」
「……ブレないようで、ちょっと変わった?」
去っていく赤丸の背に、紫月が声をかける。その内容にちょっと引き気味の繁茂だが、彼女が赤丸を斬らなかったのは、彼女なりの優しさだったのだろうと自分を納得させた。
その後の赤丸達がどうなったかのお話は、また何処かで。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
2月3日が近いので鬼シナリオ出しました以下略です。
少々ややこしいですが、オーダーは二つ。前半は『赤丸が人間の屋敷にある鬼の角を取り戻すまで護衛』、後半は『鬼の角を取り戻した赤丸を殺さず説得する』です。どちらかが未達成でバッドエンドとなります。
以下詳細。
・赤丸
鬼族の頭領の子孫。自尊心は強いが角がないので力は人間の何分の1もない。放っておくと簡単に殺されてしまう。
但し角を取り戻せば普通の人間の数倍は強い。復讐心に囚われ暴れ始めるので、殺さないように取り押さえて下さい。
・屋敷の護衛
薙刀、刀、弓を持った侍達が警備しています。イレギュラーズの敵ではないですが、角のない赤丸にとっては強敵です。
また角を取り戻した赤丸を放置すれば大半が殺されてしまいます。そうなる前に赤丸を説得して下さい。
・フィールド:夜の屋敷
忍び込む形になるので明かりをつける事は見張りに見つかりやすくなるので逆効果です。明かりに頼らずに動ける方法があれば良いかと。
日本でいう平安時代ぐらいの屋敷を思い浮かべて下さい。
節分関係ないシナリオですが、どうか良き結末を迎えられるようにお願いいたします。
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