PandoraPartyProject

シナリオ詳細

冬を楽しむ、そのために!

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

⚫︎月下の計画、深夜の侵入

 大人が聞けば「そんな馬鹿げたことを考えている時期ではない」と口を揃えるだろう。それでも今以外にないと頷き合える、彼らとならば——

「……よっ、と」
「金網、まだ直ってなくてよかったねー」
「ちゃんと下調べしてた俺を崇め奉ってくれてもいいぜ」
「あーはいはい、えらいえらい」
「心がこもってない! もっと愛犬を褒め称えるように!」
「しーっ……騒ぐと見つかっちゃうよ……」

 ——真っ暗な道だって、怖くない。
 声を潜めて、気配を殺して、知っているけれど知らない闇の中を歩く。くっきりと浮かぶ白い息が誰の目にも留まりませんように。体の内側で跳ねる心臓の音がうっかり漏れてしまいませんように。一歩毎に強く願う。試験本番よりもずっと緊張していることに気づいて湧き上がるおかしさも飲み込んで、僕は、僕らは月の照らす舞台を目指した。


⚫︎日常だったり幻想だったり追憶だったりするもの

「冬休みの学校に忍び込んで凍ったプールで滑っちゃおうゼ! ……とまぁ、そういう話だネ☆」

 ズズッと湯気立つマグカップのレモネードで暖をとる案内人の少年曰く、そこは練達における再現性〇〇のような、所謂『現代世界』とよく似たところであるらしい。
 目につく違いを述べるならば学生と呼べる年齢層がやや多く、初々しい恋愛、馬鹿げた騒動といったイベントの発生確率が高いことだろうか。
 そして、それらが何となく上手くいく『ご都合主義的な作用』が働いたりもする。
「まさに、青春を謳歌するための世界ってワケさ」
 文庫本をぺらぺらと捲る指は軽快に、何も難しいことは無いと言う。実際に似た環境にあった、あるいは物語の中で知っただけのものでも構わない。誰かが一度は想像した『学生のうちにやってみたかったこと』が詰まった場所なのだ、と。

 夜に紛れた冒険譚。高校最後の冬、仲良し3人組が立てた計画に混じってスケートをすること。目標でも何でもない、ただの遊びのお誘いだった。
 『ご都合主義』の名の下に、貴方達は事前に直接、または間接的に知って参加。もしくは、侵入する場面に遭遇して飛び入りするのでも構わない。特に考えなくても辻褄は合う。
「でも『設定』があったら馴染みはよくなるんじゃないカナ☆ 風邪なんかひかないんだろうけど、着込んでいった方がきっと季節感は出るでしょ?」
 そういうモノだよ、と小さな案内人は笑った。気が向いたら考えてみるのもいいかもしれない。

NMコメント

そこそこ降る地域でしたので、小学校のプールは雪の下でした。
どうも、少しお久しぶりの氷雀です。
なお、中学校はそもそもプールがありませんでした。
今回は埋まっていません。まるで磨かれたような銀盤がそこにある。滑るっきゃない。

⚫︎登場人物(モブ)
中学三年生の仲良しトリオ。卒業後は別々の高校です。
PCの皆さんが絡んでも絡まなくても勝手に仲良くやります。
絡まなければ彼らは舞台装置として必要最低限の描写になります。
『ご都合主義』により、友人・クラスメイト・友人の友人など違和感のないレベルでそこそこの関係性からのスタートです。

男A…愛称:えー君/本名:英(はなぶさ)
元気で親しみやすいけどちょっとお馬鹿。滑れる。

男B…愛称:びー君/本名:美原(みはら)
大人しくて真面目だけど流されやすい。運動音痴。

女C…愛称:しーちゃん/本名:椎本(つちもと)
明るくて優しいけど男子にも物怖じしない。上手い。

⚫︎場所
軽く雪が降ったあと、月が雲から出たり隠れたりする冬の晩。
ABCトリオの通う中学校。
敷地を囲う金網の一部の補修が遅れています。潜っちゃってください。
スケートリンクは校舎裏にある屋外プール。
柵は頑張れば登れます。登っちゃってください。
プールサイドには柔らかい雪が積もっています。おかげで安全に着地できます。
水はしっかり凍っているので割れる心配はありません。存分に滑りましょう。
スケート靴は持ち込まれています。必要であればご自由にお使いください。
余程の大声を出さなければ見つかることはありません。ご安心を。
日が昇る前に撤退しましょう。それだけはお約束です。

  • 冬を楽しむ、そのために!完了
  • NM名氷雀
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年02月11日 22時00分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
カイン・レジスト(p3p008357)
数多異世界の冒険者
フィーア=U=ツヴァンツィヒ(p3p008864)
実証・実験
耀 澄恋(p3p009412)
六道の底からあなたを想う

リプレイ

⚫︎挑戦の様相、友好の追走

 月が陰る。今だ。4対の瞳が頷き合って踏み出そうとした一歩は、静かに響いた声で跳ねるように止まった。
「こら、こんな時間に何をやってるんだお前たちは」
 ギギギ、とたった今潜った金網よりも錆びた音が聞こえそうな動きで見上げる白衣は闇に殊更浮かび上がる。順番にこちらの顔をなぞっていく、見知った男の眼鏡越しの視線は厳しい。
 やばい。見つかった。怒られる。少なくとも3/4の頭の中には始まりもせずに終わった冒険譚のエンディングが流れていたことだろう。「冗談だ」とあっさり声音も表情も緩められるまでは。
「おどかすなよぉ、回言せんせー……」
「ほんとほんと! 心臓止まっちゃうかと思った!」
 口々に浴びせられる非難を『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)演ずる【理科教師】は、すまんすまんと重さの足りない謝罪と教師らしい問いで塞いだ。
「わざわざこの寒いなか学校に忍び込もうっていうんだ。やりたいことがあるんだろ?」
 こくりと頷く子供らに悪い大人が囁く。暖かい部屋で布団にコタツにみかんがあれば十分だと俺は思うんだが、と前置きしながら。
「学生というやつは普段と違う何かを求めたくなるんだよな。俺も少しは覚えがある」
「……つまり?」
「仕方ない。驚かせたお詫びに、その非日常に少しだけ協力してやるとしよう」
 わあ、と上がりかけた歓声を再び制して金網を潜る彼を殿に、一同は雪上をサクサク進軍していくのだった。

「先生とは、考えましたね」
 3人から少し遅れて歩き、【とりおの友人】として始めから同行していた『ハートキャッチ』澄恋(p3p009412)が世界へ耳打ちした。
「ご都合主義をもってしても俺を生徒とするのは色々無理があるだろう」
 白衣着てるし丁度いいだろ、と答える彼だが、自己申告しなければ【一昨年卒業した先輩】くらいの立ち位置に吸収された筈だ。多分。
「ええ、あの子達にとっては心強いでしょう。もしもの時にはお願いしますね、先生」
 冗談のお返しに狼狽る世界を置き去りに、早足に合流するのはそれぞれ進学先の違う友人達。こうして集まって遊ぶ機会も最後かもしれない。声に出せば本当になってしまいそうだから、澄恋は今を楽しむためだけに笑いかける。
「一生に一度の秘密の大作戦、最高の思い出にしましょう!」


 白い。すごい。『実証・実験』フィーア=U=ツヴァンツィヒ(p3p008864)は知識の中にしかなかった雪と初接触中だ。
「冷たい! 当たり前か」
 ちょんちょん。おっかなびっくり伸ばした指へ伝わる温度に驚き、すぐに知識との相違がないことに頷いた。知っているけれど知らないものが少しずつ実感を伴っていく。そうして知識を記憶に、記憶を楽しい思い出話にするために次なる行動へ移る。
「よいしょ、っと……」
 徐ろに目の前の柵をよじ登り始めたのだ。苦難と柵は乗り越えるもの。侵入者を拒む役目を仰せつかっている柵には申し訳ないが、青春のお約束である。
「あっ! 先客がいるね」
 天辺まで到達した彼女を迎えたのは、月明かりを反射するスケートリンクと驚く5人。その中のひとりが何とも言えない顔で言った。
「えっと、さ……鍵、開いてたよ」
 え、嘘。やる気満々で登り切った先でそんな報告を受ければ、うっかり手を滑らせるのも仕方ない。ぼすんと柔らかい雪に受け止められたまま、しばらく埋まっていたって許される。
「さっきは逆光でよく見えなかったけど【隣のクラスの】フィーアちゃんだよね」
「もしかして、滑りにきたの?」
「じゃあ共犯者じゃん!」
 どうやらご都合主義は彼女を同級生として組み込んだらしい。交流の薄かった子でも、助け起こそうと伸ばされた手を取って笑い合えばもう友達だ。きっと、青春ってそういうこと。



⚫︎とある冒険家(デバガメ)の裏方業務(サケノアテ)

 一方、その頃。校舎の屋上から彼らを見守る影があった。
「僕としては必要もなくあの中に入っていくつもりはないんだよねぇ」
 【びー君の顔見知り】である【ふしぎな冒険家(自称)】はひょんなことから今回の計画を耳にしてしまい——という設定の『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)だ。
「僕はこういうのが大好物なんだ……これはもう万事上手く行く様に全力を尽くして、肴にするしかないよね!」
 その手にしっかと酒が握られているところは不安だが、悟られないように手を回す技術は本物である。なにせプールの鍵の解錠はカインの活躍によるものだったのだから。


 スケートに励む面々はそんな援護射撃には気づかない。
「びー君には、わたしの華麗なとりぷるあくせるをお手本として見せつけてやりま……あら、あららら?」
 澄恋による月下のアイスショーがスタートするかと思いきや、慣れない靴と想像より滑る氷に腰が引けてしまい、あっさりコントロールを失っていく。姿なきアシスタントの手によって、転倒の原因になりそうな凹凸や雪塊も除かれているため、それもうよく滑るのである。
「な、何ですかこれ、勝手に前に進んで……いやぁ! 待って! 止まらないんです幽霊がわたしの背中を押して……んあ゛あ゛あ゛しーちゃん助けて!!」
「怖いこと言わないでよ! 今行くからっ」
 やはりイメトレだけでは足りず、仲良くびー君と一緒に手取り足取りレッスンを受けることになりました。頑張れ、氷上の乙女。

 フィーアにとってもこれまた初体験。当然、スケート靴で立つのだって覚束ない。
 「わ、わ……ったぁ!」
 どうにか氷を蹴ってみたはいいものの、バランスを崩してひっくり返ってしまう。
「ははっ、派手にコケてんなー! 大丈夫か?」
 尻餅をついた隣へ滑って来たえー君は初心者教室の方を指差すが、フィーアは首を振る。
「コツを掴めればできる、と思う」
「そりゃあの柵乗り越えられる運動神経はあるもんな!」
 けらけらと人懐っこい笑顔を見せるえー君。
「じゃあさ、俺が滑るとこ見ててみ?」
 そう言って返事も待たずに目の前を滑り出した。加速にターン。右に左に行き来する彼の自由な動きから姿勢、視線の位置、体重の移動の仕方などを学んだフィーアは、よろけながら再び蹴り出す。
「……おお、慣れたら楽しいねこれ!」
「さっすが、俺が見込んだだけのことはあるな!」
 贈られた拍手で調子に乗った彼女が雪壁に突っ込んでいったのは、その直後のことだった。

 プールサイドの雪でうさぎを量産する保護者枠の世界の周りは、幾分かファンシーな空間になっていた。次は雪だるまでも、と小さな雪玉を重ねたところへフィーアがやって来る。
「いいなぁ! 雪遊びの定番らしいね。せっかくだから私も作っちゃおう!」
 合流したえー君と3人でせっせと雪玉を転がした結果、だいぶ立派な雪だるまが完成した。ご都合主義が無ければ見つかって問題になったことだろう。
「張り切ったから手が冷えちゃったね」
「わたし肉まんを持ってきたんです。ほかほかのふわふわですよ、人数分あるのでよかったらおひとつどうですか?」
 はあ、と息を吹きかけるフィーアにそっと保温機能付き手提げを掲げてみせる澄恋はまさに良妻の鑑だが。
「あ、さっき悲鳴を上げてた子」
「あの生まれたての小鹿みたいな姿はどうか忘れてください」
 ふふふ、と差し出された肉まんと笑顔の圧がちょっと怖かった。
「皆さんも休憩にいたしませんか?」

雪像に囲まれてのもぐもぐタイム。
「フィーアちゃんの上達ぶりが一番! だって俺が教えたんだぜ」
「ちょっと! 澄恋ちゃんのトリプルアクセル(仮)を見てから言ってよ、ねぇ?」
「あはは……僕はもう、一年分のスケートを楽しんだから……」
 えー君としーちゃんはどちらの教え方が上手いかで元気に言い争い、彼らに手を引かれてようやくプールサイドまで辿り着いたびー君は息も絶え絶えで大の字に転がった。
 真冬のプールサイドという非日常の中であれ、これが今までは当たり前だった光景。その一瞬一瞬を噛み締めるように、たくさんたくさん話をした。いつかまた笑顔で思い出せるように。

「おっとそろそろ時間だね! バレないうちに退散しなきゃ」
 忍び寄る朝の空気を吸い込んでフィーアは立ち上がる。
「ああ、空が白みはじめましたか」
 プールの扉の南京錠を何事も無かったように戻し、トリオの様子を窺った澄恋は小指を一本差し出して。
「わたしたちと指切拳万しましょう」
 まだ帰りたくない。けれど帰らなければいけないとわかっている。そんな押し殺した解散ではあまりにも名残惜しかったのだ。
「ゆびきりげんまん♪」
「うそついたらはりせんぼん」
「のーます、ゆびきった!」
 しーちゃんが指を絡め、せえの、で澄恋と声を揃えて歌い出し、びー君がおずおずと続き、えー君はテンション高めに勢い良く指を離す。
「必ず、また会いましょうね! 約束ですよ!」
「いいか? たまには羽目を外すのもいいが、学業もちゃんとやるようにな」
 教師らしい忠告を残し、生徒達のさようならの合唱を背に立ち去る格好良い世界。
 金網を潜った5人はまだ興奮覚めやらぬまま。フィーアが「ばいばーい!」と無邪気に手を振って口火を切り、振り返しながら踏み出す足は未来へと向かっていた——

 ——そんな青春劇を見送ったカインは、空を駆ける靴で屋上からプールサイドに降り立つ。見つけたのはたったひとつの忘れ物、澄恋の手提げ鞄だ。これを届けて終了、と思ったところにメモ書きが目に入った。
『親切なあなたへ』
 どんなに気配を殺そうと、縁の下にだってスポットライトは当たる。これもまた、青春のご都合主義なのである。
「こういう締めも悪くはないかな」
 まだあたたかな肉まんを咥え、空を氷上に見立てて滑り出した彼は満足そうに退場していくのだった。

成否

成功

状態異常

なし

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