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シナリオ詳細

<濃々淡々>甘くて苦いちょこれゐと

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●果てより伝来せしは
「ん……?」
 冬といえども常に桜の咲く美しき世界、濃々淡々には、とある食べ物が伝来し話題を呼んでいた。
 勿論そこに住まう絢も例外ではなく、その食べ物に出会いたいのだと街を歩いていた。もちろん一目は忍ぶように、異形をも受け入れる花街を、だけではあったが、花街ですらその噂でもちきりだった。
 甘い香りと艶やかな色。その味。とろけるように甘美で、誘うように耽美だとか。
 舌触りはなめらかで、熱に触れれば溶けて消えてしまう、そんな食べ物。
(まるで雲のような食べ物だなあ)
 と、まばたきひとつ。ああ、そうだ。雲ならば綿あめのようなものかもしれない。あれは口どけが柔らかく、それから酷く甘いのだ――
 視線斜め右上、ぼんやりと考えていた絢の肩に男が当たる。
「嗚呼、すまない」
「なんだぁ兄ちゃん、眠いのか? しっかり前見てあるけよ」
「少し流行りの食べ物のことを考えていてね。おれもそれを食べてみたいなあと思っているんだが、如何せんたどり着けないのだよ」
「なぁんだ、そういうことか」
 男は耳を寄せるように絢に手を振った。首を傾けた絢は、ゆるやかにその状態を屈めて、耳を寄せた。
「あれは、選ばれたものしか食べられないのだそうだ。そのためには麻の葉をいくつも持っていかなければならないらしいんだ」
「麻を……?」
 眉根を寄せた絢。麻は所謂幻覚を呼び寄せる葉ではないか。それを集めるなどと、奇妙な取引が行われているに違いない。
(……あまり好ましいようではないね)
 俯き、思考し。
「それの名は、なんというんだい?」
「ああ、それは――」

 ちょこれゐと、だってさ――

●猛毒幻覚ランデヴー
「ってことがあってね。おれも、食べてみたかったのだけれど……なんだか残念だよ」
 緩やかに肩を落とし、少しだけ寂し気に。しかしそんなことはないと、取り繕うように笑みを浮かべ。
「ってことで、皆にはこのちょこれゐとの情報を仕入れてきてほしいんだ。味見は、危険だろうからだいじょうぶ」
 しかしながら、そのちょこれゐとと呼ばれたものは混沌世界におけるチョコレートと同義のようだ。甘くて、すこしだけ苦みを含んだ其れ。きっと絢も食べたいに違いないだろう。
 伺う様にあなたは視線を向けた。
 その先には、少しだけ不安げな絢の顔が見えた。
(……ちょこれゐと。他の仲間は、口にしたりなどしていないだろうか)
 脳裏によぎった、僅かな不安を取り除くように。

NMコメント

 染です。新年は甘くて苦いチョコのお話からいかがでしょうか。
 久しぶりの執筆となりますが、誠心誠意取り組みますのでお楽しみいただければ幸いです。
 それではシナリオの説明に入ります。

●依頼内容
 『ちょこれゐと』について情報を集める。

 人でもモノでも妖怪でも植物でも霊魂でも何でも構いません。
 ちょこれゐとの情報を集めましょう。
 散策しながら街の情報や様子を集めていただくシナリオとなっておりますので、戦闘はありません。

●ちょこれゐと
 甘いくてほろ苦いと噂されるお菓子。
 とろける舌触りが独特なようです。

●麻の葉
 彼らの世界では大麻と同じに使われています。妖怪の間ではその存在が危険視されている危ない植物です。
 万が一見つけても口にしないでください。

●世界観
 和風世界『濃々淡々』。

 色彩やかで、四季折々の自然や街並みの美しい世界。またヒトと妖の住まう和の世界でもあります。
 軍隊がこの世界の統制を行っており、悪しきものは退治したり、困りごとを解決するのもその軍隊のようです。
 中心にそびえる大きな桜の木がシンボルであり神です。
 昔の日本のイメージで構いません。

●絢(けん)
 華奢な男。飴屋の主人であり、濃々淡々生まれの境界案内人です。
 手押しの屋台を引いて飴を売り、日銭を稼いでいるようです。
 屋台には飴細工やら瓶詰めの丸い飴やらがあります。
 彼の正体は化け猫。温厚で聞き上手です。お呼びがあればご一緒します。

●サンプルプレイング
 私は霊魂疎通をいかして幽霊に聞いてみようかしら。
 ねえ、ちょこれゐとってしってる? 甘いらしいじゃないの。
 私も気になるんだけど、なにかしらないかしら!

 以上となります。
 ご参加お待ちしております。

  • <濃々淡々>甘くて苦いちょこれゐと完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年01月31日 22時20分
  • 参加人数4/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
カイン・レジスト(p3p008357)
数多異世界の冒険者
灰羽 裕里(p3p009520)
期怠の新人

リプレイ


『怠惰な新人』灰羽 裕里(p3p009520)は見慣れぬ街におっかなびっくり。とはいえこれは依頼であるから、気を引き締めなくてはならない。
(シティアドの、基本、は。人から、聞く事、から。……ターゲットは、人、じゃ、ないけどね)
 しかしながら会話ができてしまうのも事実であり現実。致し方あるまい、張り切って依頼遂行といこうじゃあないか。
 今日手にしたのはオイルワイン、蜂蜜酒、エールなとのアルコール。ちょこれゐと、同様、この世界、では、珍しい筈の西洋風のお酒だ。
「絢、さん」
「ん? どうかしたのかい?」
 朗らかに笑った絢に裕里は軽く一礼を。絢も其れを返し、ひらりと手を振った。
「人の良い、妖怪達、を、教えて、もらえますか?」
「ふむ。構わないけれど……どうしてかい?」
「ええ、と。このお酒、が、売れるか、どうか、試飲して、貰う。
 その、流れで。同じく、この世界、では。珍しい、らしい、ちょこれゐと、について、聞いてみよう、かなって」
「なるほど。それは良いね。よし、今から行ってみようか」
 こくりと頷き。桜に押されるように二人は商いを行う妖怪の元へ。話はとんとん拍子で進み、快晴の空のもと酒の試飲ははじまった。
 ほのかにアルコールの香りが鼻を擽る。どうやら気に入ってもらえたようだ。ほっと安堵したのもつかの間、値踏みするような視線が投げかけられる。
 気を抜くことなどできそうになかった。

「ああ、おかえり。なにかわかったことはあるかな?」
 絢は不安げに。怪我がないのは安心だけれど、と付け足して。
 不安そうなのは手に取るようにわかった。皺のよった眉根とせわしなく動く尻尾、何より彼の表情と言ったら!
「……大丈夫、だよ。わかったのは。とても、甘美、で、溶ける様な、舌触り、らしい事」
「! ほう。そうなんだ」
「出来れば、仕入れてみたい、が。なかなか、辿り着けない、こと、も」
「……ふーむ」
 しばし黙考。絢は後に頷いて、裕里もそれに合わせて。
「……割と、面倒、だけど。始めた、事、は、真面目に、やるよ」
 そう告げた裕里はとても頼もしく思えて、絢は笑みを浮かべて頷いた。


 『数多異世界の冒険者』カイン・レジスト(p3p008357)は考える。
「ふぅむ、ちょこれゐと……」
 情報収集ならばお任せ、と胸を張ったはいいが手掛かりなしの探索は少しばかり難しい。
 そんな訳で、彼は人の集まる酒場を探して足を進めることにした。情報収集と言ったら酒場、これは定番である。ローレットだってきっと酒場があったはずだ。知らないけど。
(……ん?)
 酒場を探して歩む途中に甘い香りがしたような気がした。カインはその場の様子をしっかりと観察してから、改めて酒場へと向かった。

 酒場というには小さいが、人はたくさん入っている店のようだ。にこにこと笑みを浮かべた店員も客も幸せそうで、胡散臭い。怪しいと踏んだカインは席に腰掛け、手を挙げる。
「お勧めの品と酒をくれないかい?」
 さあ、情報収集を始めよう。
 小さく息を吸って。零すように囁いた。
「そういえば、この酒場にはちょこれゐとは置いていないのかな」
「……ほう」
 伺う様に視線を向けた店主に笑顔で一瞥。高らかに告げるは――
「説明しよう! 口当たりも良く甘露の様に甘いちょこれゐとは酒との相性が抜群なのだ!
 苦味渋味がある酒は勿論だけど、特に甘味が強い酒と組み合わせれば酒とちょこれゐと、互いの甘さが引き立ち合い絶妙なハーモニーを奏でるのだ!(混沌書房調べ)」
「は、はぁ……」
 と、そんな力説をして店主にちょこれゐと、或いはそれに繋がる、類する物は無いか知らないかと聞き込み。
 恐らくはそれに近しいのであろう物が手渡される。
「……毎度!」
 客のどよめきが聞こえた。そそくさとカインは店を去った。

「……ふうん」
 麻薬でつけこまれたお菓子、というのが分析結果だった。こんなものを食べれば幻覚どころで済みそうにはないだろう。
(残念だけど絢さんには渡せそうにないなぁ)
 苦笑を浮かべつつ、カインは絢の元へと戻っていく。そのポケットにはほんもののチョコレートを忍ばせて。


(ちょこれゐとって普通にあのチョコレートの事だよな? それだったらいくらでも持っているんだけど……。
 しかしそう決めつけるのは早計かもしれないな。別世界に常識が通じないこともままあるし、麻……大麻が関わってくるとなれば色々穏やかじゃない事は確かだ)
 『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)もまた事態を危惧する一人だ。
 ふむと頷き一瞥、ちょこれゐととはなんなのか。
「これって通称『ちょこれゐと』的なやばいブツじゃないよな? 今から色々心配になってくるぞ……」
 近くの店に並んだチョコレートですら怪しく見えてくる。口に含むのもはばかられてしまうのが悔しいところではあるが、とりあえず進むことにした。

 さて。情報を集めるならば人から聞くのが手っ取り早い。ということで己の足で探索を進める世界は律儀と言うかなんというか。
「幸いこの世界には前に来たことがあるし多少のコネクションはあるだろう。そこから聞き込みを始めていくとしようかな。問題はどれだけそのちょこれゐとが認知されてるかだが……」
 そればかりは時の運と直感次第。
 聞き込みを地道に進める内にいくつかの大本となる販売先の尻尾を掴むことに成功した世界は、メモをとりつつ街の様子を観察する。
 一見平穏そうに見えるそれは以前と何ら変わりないように見えたが、しかし。二度見れば簡単だ、人々は警戒心が強くなっているのがわかった。
(……なにがあった?)
 それは調べればわかることだろうと自分を嗜めて。とりあえずは帰ろうと、情報を纏めて世界は立ち上がった。

「――それでだな……もし仮に万が一何かの間違いでやばいブツだったとしたら、販売経路を潰しておいた方が良くないか?
 いや、まあ俺達が直接乗り込んだりするわけじゃないんだけどな。依頼の範囲外だし」
「……うん」
 調査報告書を舐めまわすように見つめ、上の空な絢に世界は呆れてため息一つ。
「この世界の治安を守る軍隊とやらに相談した方がいいんじゃないか?」
「んーーー……」
 ようやく書類から目を離した絢。はぁ、とため息をついて世界の方へ向きなおして。
「俺は妖怪だから、もしも俺が悪だととらえられてしまったら殺されかねないんだ」
「……難儀だな」
「でしょう?」
 また深く肩を落とした絢に少しだけもやもやとした感情が残る世界だった。


「蕾から咲きたての綺麗なお姉さん、ちょっと聞きたいことがあるんやけど、教えてくれへん?」
 黒髪をさらりと耳にかけ、『姫立金花』蜻蛉(p3p002599)は花に語り掛けた。しゃがみ、つんと指でつついて。あらあらと寝坊助な花は目を覚まし、ふわりと微笑んだ。
「ちょこれゐとについて、教えてくれんやろか、ほらその…麻の葉と交換らしいんよ。
 甘くて苦い、食べた人を何やら虜にしてしまう食べ物言うて聞いて、それがどんなものなのか調べてくるお仕事やの」
『同胞が最近やけに生き急いでいるのはそのせいなのね?』
「たぶん、そうやね。お姉さんは何か知っとる?」
『……そうねえ、同胞が丸ごとそれに使われていることは、うわさ話から聞いてるわ』
「……そう」
 水をたっぷり、それから愛情も。優しく撫でた蜻蛉は柔く微笑んだ。
「おおきに、これからも綺麗に咲いてや」
 からころ、なった下駄の音。
 遠くで麻を求めるような声がした気がした。ゆらりとゆれる尻尾は警戒心を忘れない。
 赤い番傘がくるりとまわった。
 ああ、そうだ。敵陣に赴く時こそ、堂々と。
 ――弱いと思わせては、いけない。

 ぼんやりと空を眺める絢は、蜻蛉の姿を見かけるとひらりと手を振った。
「絢くん。顔が晴れんけど、何か心当たりあるんやない…?」
「……なんとなく、かな」
 情報を探していたのだろう、握っていた報告書や地図には書き込みがびっしりだ。疲れているのだろうか目の下に隈もできている。
「これはうちの勘やけど……ううん。聞き込みの結果も入ってる。…その食べ物の材料に麻の葉が使われとるんやないか、って」
「……悔しいけど、同感だ。聞き込みの結果もなら、的中だろうね」
 苦し気に微笑んだ絢。蜻蛉の表情は硬くなっていく。
「そのための、よおけの麻の葉と交換ていう条件やないかしら…うちらの世界にも、同じような「名前」のものはあっても、自分がとろける感覚にはならへんのよねぇ…妖しいわ」
 ますます眉間の間のしわが深くなっていく。うなるように口をとがらせて、じっと固まって。
 そんな絢の様子を見兼ねて、蜻蛉は鼻の頭をちょんと突つく。
「わ!?」
「ようやっと、気付いてくれた。ほんまのちょこれゐとは美味しいんよ?」
「……そう、なんだ」
 なら、よかった。食べ物の作り手でもあるが故に複雑な気持ちを抱えていたのだろう、少しだけ安心したように笑みを浮かべた絢に、蜻蛉は頷いて。
「でも、うちは…絢くんの飴のが好きや♪」
「……はは、光栄だよ。ありがとう」
 それじゃあ、今日も寄っていきなよ。なんていう前に、絢はポケットから蜜柑の味の、淡い橙の飴を手渡した。
「……助かったよ」

●報告書
 危険な店がいくつかある模様。しばらく監視を続ける。
 また麻の葉は危険な方法で使用されているだろう。人々も存在は認知しているものと思われる。

 絢

成否

成功

状態異常

なし

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