PandoraPartyProject

シナリオ詳細

スイート・ローズの迷宮

完了

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「こんにちはです」
 妖精フロックスは花弁のスカートをつい、と持ち上げて丁寧に礼をした。
 可愛らしい空色の妖精はイレギュラーズ達を誘う役割を担っているらしい。
「どこへ行くの?」
 瞳をきらりと輝かせてルアナ・テルフォード (p3p000291)は楽し気にそう問いかけた。ローズゴールドの髪をふわふわと揺らしたルアナは「おじさま、どこだと思う? 素敵なところかなあ?」と傍らで保護者の表情をしたグレイシア=オルトバーン (p3p000111)へとそう声を掛けた。
「さあ。『聖カカオ三世』を良く知ってはいない。
 ……しかし、それが精霊の一種だと良い、イレギュラーズに用事があるならば答えない訳にも行かないだろう。何やら試練もあるというが……」
「そんなに難しくはないはずなのです!」
 大丈夫だと念を押すフロックス。彼女曰く、聖カカオ三世と呼ばれる精霊はグラオ・クローネの時期には妖精と縁が深い存在なのだそうだ。妖精たちもグラオ・クローネの準備の為に聖カカオ三世の試練に挑み、カカオをゲットして帰って来るそうだが……。
「カカオを取りに行くってことだよね?」
 エストレーリャ=セルバ (p3p007114)が問いかければフロックスはこくりと頷いた。
「それを二人組で挑めっていうのは、聖カカオ三世の迷宮に挑むお約束なの?」
 今回の依頼は『二人組で来て欲しいです』とフロックスにお願いされていた。ソア (p3p007025)はそれを思い出し首を傾いだ。
「はい。聖カカオ三世の迷宮は決まって二人でペアを組んで協力しなくっちゃいけないのです。
 わたしもストレリチアと女王様の為のカカオを取りに来たですけど………」
 黙りこくった。
「……ストレリチアと? それでどうしたんだ? フロックス……」
 恐る恐ると声を掛けたポテト=アークライト (p3p000294)に彼女は首を振って「何でもないのです」とそう言った。

 ――屹度、「チョコレート味のお酒も美味しいの!」と途中でペアのストレリチアが酒盛りをしたんだろうと感じたリゲル=アークライト (p3p000442)であった。

「こほん! 説明するです。
 聖カカオ三世は妖精郷から繋がっている迷宮『スイート・ローズ』に居るです。
 決まって二人ずつ入って、協力してダンジョンをクリアするのです!
 モンスターも出てくるですけど、驚かし系ばっかりなのです!」
「驚かし系?」
「ええっと……前にイレギュラーズに聞いたです。こういうのは、そう……お化け屋敷っていうらしいです!」
 ばーって出てくるです、とフロックスがアピールすればルアナが「ぴょっ」と声を上げてグレイシアの背後へと隠れた。
「大丈夫なのです。そんなにとっても怖くはないのです!」
「……うん、とりあえず美味しいカカオをゲットしたいなら挑まなくっちゃならないな」
「はいなのです!」
「一先ず行こ――」
 進もうとポテトを振り返ったリゲルは手を繋いでいたポテトとの腕をまじまじとみやる。
 ……いつの間にか茶色いチョコレートカラーの鎖が二人の間には付けられていた。

「あ、それは聖カカオ三世の『参加証』なのです! いってらっしゃいなのです!」
 その鎖はダンジョンをクリアするまで解けない精霊の魔法です、とフロックスが鼓舞する様にそう言った。
 ……どうやら、進まねばならないようだ。

GMコメント

 夏あかねです。コメディ寄り!

●成功条件
 聖カカオ三世のダンジョンクリア!

●ダンジョン
 このダンジョンは『二人組』で進んでください。
 カカオ三世の取り計らいで、
【エストレーリャさん&ソアさん】【ルアナさん&グレイシアさん】【リゲルさん&ポテトさん】が鎖で繋がれています。
 迷宮の中は簡単なお化け屋敷&迷路です。
 子供だましなお化けが『ばー!』と声を上げて出てきます。ドッキリ系が多そうです。
 迷路自体だけは難易度が高そうです。迷子になりやすいぞ……。
 時々罠が存在しています。命には別条はありません。どんな罠でしょう……。
 こんなのがあると書けばそうなると思います。精霊は気まぐれですから。

 また、精霊は『恋心』や『大切に思う気持ち』などに対してはやけに好意的です。
 困った時は相手の好きなところや可愛い所、大切だと思う所を叫びましょう。カカオ三世が助けてくれます。

●カカオ三世
 そう名乗ってる精霊です。カカオの形をしています。妖精達にはとっても愛され系です。
 自身の居住地である迷宮を踏破した物に対して美味しいカカオを授けてくれます。
 精霊の加護があるチョコレートは、食べた者にしあわせを齎すという噂があります(妖精たちのなかでのウワサです)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
 依頼人は妖精なのです! ダンジョンの中の情報は「なんだかぐわーっとしてこわかったのです!」程度です!

  • スイート・ローズの迷宮完了
  • GM名夏あかね
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年01月29日 22時00分
  • 参加人数6/6人
  • 相談7日
  • 参加費---RC

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (6人)

グレイシア=オルトバーン(p3p000111)
知識の蒐集者
ルアナ・テルフォード(p3p000291)
絶望を砕く者
ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
ソア(p3p007025)
虎風迅雷
エストレーリャ=セルバ(p3p007114)
賦活

リプレイ

●聖カカオ
 聖カカオ三世――妖精達の小さな噂。深緑の森にその姿を現したフロックスに案内され、辿り着いたダンジョンの入り口で『分断』される事となる『知識の蒐集者』グレイシア=オルトバーン(p3p000111)はその状況に「成程」と小さく呟いた。
「再び皆と会う時は、ダンジョンをクリアした時になるのだろうか……協力は出来んが、皆でカカオを持ち帰れる事を祈ろう」
 流石は愛の妙薬チョコレイトを作る材料。ペアでダンジョンをクリアして絆を測定しようとでも言うのだろうか――グレイシアと鎖で繋がれることとなったのは『勇者』と『魔王』という浅からぬ因縁の相手である『絶望を砕く者』ルアナ・テルフォード(p3p000291)。現在は天真爛漫な可愛いお嬢さんである。
「皆で一緒に頑張ろう! ……て、できたらよかったんだけどなー。残念」
 冒険と捜索を極めた元・冒険者(記憶は無い)であるルアナにとってこうしたダンジョンのクリアは容易なように思えている。故に、皆で協力してその後は一緒に楽しくチョコレート作りを楽しめればと考えたのだが――二人ずつでダンジョンクリアをしなくてはならないというならば仕方が無い。
「聖カカオ三世は、なかなかお茶目な方のようだ。皆の健闘も応援しているよ」
 小さく笑った『白獅子剛剣』リゲル=アークライト(p3p000442)。聖カカオ三世と名乗る精霊である時点で何とも愉快な存在だ。だが、ちょっとした『お巫山戯』に何時もは明るい『優心の恩寵』ポテト=アークライト(p3p000294)の表情も僅かに曇る。
「……お化け屋敷か……」
 再現性東京での学園祭でも『お化け屋敷』ではちょっぴり酷い目に(主に旦那様の悪戯だ)あったポテトである。美味しいカカオは楽しみで、リゲルにとびっきりのチョコレートを作りたいとも願っていてもお化け屋敷と言う言葉に僅かに腰が引けた現状だ。
「行こうかポテト。君が傍に居てくれるなら、どんな試練も乗り越えられる」
「ああ、怖いけど、リゲルと一緒だから頑張る」
 頷き会ったアークライト夫妻の傍らで美味しいチョコレートに夢中であるかのように雷の色彩を宿した瞳をきらりと輝かせたのは『虎風迅雷』ソア(p3p007025)。
「とびきりのチョコレートつくろうね!
 精霊の声を聞けるボクたちにかかれば迷路なんて簡単! おててを繋いでスイスイ進むよ!」
「うん。頑張ろうね。迷路は、難しそうだけど。二人ならきっと大丈夫」
 とびっきり美味しいチョコレートを作ろうねと微笑み合えば、『賦活』エストレーリャ=セルバ(p3p007114)じゃソアの手を握った。
「入り口が皆違うみたいなのです。それでは、いってらっしゃいですよ!」
 此の迷宮で酷い目に合った経験のあるフロックス。手をぶんぶんと振る彼女に「いってきます」とルアナは明るく返した。

●おじさまと少女
 グレイシアの所有しているギフトは『知識の書架』。ある意味で旅の経験を記憶できているのは幸運だ。脳内でダンジョンをマッピングできる魔王の能力に、ルアナは「おじさますごい!」と笑みを浮かべていた。
 分岐の位置や数を数えるのは二人で行えば良いだろう。距離も正確なものは計測したわけではないが何歩分と数える事で記憶する。
 知識を駆使して『戦略』を立てるグレイシアの傍らで、ある意味ご機嫌に歩き続けているのはルアナ。まるで、おじさまとの楽しいお散歩を謳歌するかのようである。
「ねぇ、おじさま。どうせ繋がるなら赤い糸が良かった」
 運命の赤い糸っていってね、と。幼い少女が披露する知識は童話のプリンセスがうっとりと語るようなものである。ドラマがあってロマンチックで――うっとりとするルアナがきゃっきゃと楽しげにグレイシアを見上げてから……ぴた、とその動きが止る。
「糸の場合、引っ張られた際に怪我をしそうだな……」
 ――おじさまは普段通り冷静だ。もうちょっと『赤い糸か(きゃっきゃ)』みたいな雰囲気出してくれてもと思いつつも、それはそれでおじさまらしくない気もするルアナ。
 鎖をまじまじと見遣ったグレイシアは「赤い糸には程遠いが」と前置きする。カカオの精霊と名乗るだけあってか鎖はチョコレートを思わせる。ルアナも同じようなことを考えたのだろう。鎖を顔の位置まで持ち上げてルアナはくい、とグレイシアの袖を引く。
「これ、齧ったら甘いのかな? 齧ってもいい?」
「齧らない方が良い。味がしないという確証は無いが、まず間違いなく硬いだろう」
 一見すればチョコレートではあるが、と呟くグレイシアにルアナは「はあい」ともごもごと言った。お腹が空いたからとグレイシアの冒険バッグに突っ込んであった菓子を取り出して咥内に放り込む。
「はっ……そうそう。今年のチョコも頑張って作るね! おじさまのお手伝い沢山したから、お料理の腕ちょびっとは上がってる筈」
 その言葉にグレイシアはふと、思い出す。昨年のグラオ・クローネはチョコレートは美味ではあったが片付けが大変だった。幸せそうにルアナがハートのチョコケーキを差し出す手前、グレイシアは感謝を述べる事しかできなかったが……。
「おじさま?」
「……カカオから作るとなると、流石に難しい…途中までは、吾輩も一緒に作るとしよう」
 グレイシアは余り嬉しくなさそうな反応だ。どうしてだろうと首を傾げるルアナは「だいじょうぶだもん、失敗しないし、お片付けだってちゃんとするもん……」と小さく呟いた。
「ねえ、おじさま。そういえば『オバケさん』出て来るんだよね?」
「ああ、そうだな」
「出てこないね」
「ああ……」
「もしかして、わたしとおじさまのらぶらぶっぷりに出てこれないんだ!
 きっとそうだよね?! でも、『オバケさん』が出てきたらちゃんと『きゃーっ!!』ってびっくりするから。素っ気ないとオバケさん? もやる気でないだろうし!」
 そうしようね、と同意を求めて瞳を輝かせるルアナにグレイシアは本当は後ろに何書いた気がするというのは黙っておこうと、そう考えた――話に夢中で『オバケさん』をスルーしているとは勇者は露とも考えては居ない。
「ねえ、おじさま」
 お菓子を齧り終えたルアナにゴミ袋を手渡したグレイシアはしょぼしょぼと瞬く彼女にふと気付く。お菓子を食べてこの長い道のりを歩いて来たのだ。先も知れぬダンジョンではさぞ疲労も蓄積したことだろう。
「眠くなってきちゃった……んにゃ……」
 眠たげなルアナを慣れた仕草でおぶったグレイシアはゆっくりと歩き出す。おぶられている事に気付いてルアナは優しいなぁと広い背中に全てを預けるようにもたれ掛かった。
(……わたし、いつまで優しさに甘えていられるのかな……)
 ――心の中で、『私』が見て居る。大人の、勇者の、『彼の天敵』の『私』は出てくることはない。この姿勢なら、隙だらけの魔王を殺す事はできるのに。『大人のルアナ』はそうすることは無かった。
(『私』と『あの男』を繋ぐ糸が赤いならば、それは間違いなく血の色ね……)
 嘆息したルアナの想いに気付かぬままにグレイシアは「……寝てしまっただろうか?」と背中のぬくもりを確かめる。
 ふと、グレイシアは気付く――カカオの精霊は大切に思う気持ちに対して好意的だったか。そうした所まで『グラオ・クローネ』らしいとは、とルアナを起こさぬように小さく呟く。
「小さな勇者が休めるよう、罠やお化けは遠慮願いたい」
 ――その言葉に、分かったとでも言うように扉が開いた。

●おしどり夫婦
「さ、迷路は難しいと言っていたが……変な引っ掛けとかはないよな?」
 分岐点には印を付けるポテト。リゲルは透視を駆使して先を見通して危険を避けながら進み続けた。天上に隠れるオバケなども咲きに察知していれば対処は出来る。
「今の所は妙な引っ掛けもないし、順調みたいだな」
「ああ、そうだな」
 ――対処は出来る、とは言ったがリゲルは『対処をしたわけ』ではない。底に存在することには気付いているリゲルではあるが、ポテトにその事を伝えるわけではない。
 勿論、お化け屋敷での可愛い奥様の事は十分知っている。怯えたようにして縋り付いてくる様子は愛らしい。リゲルの目では『オバケ』が此方に不意打ちを狙っていることは見えている。だが、其れを黙って受けようかとリゲルは「さあ、進もう」とポテトと共に一歩前進し――
「うん、そうしょぉわあああっ!?」
 後半は言葉にならなかった。何処から声が出たのかという程に叫びを上げて咄嗟にリゲルの背へ張り付く。オバケに対して「安心した所に脅かしはずるいぞ……!!」と拗ねたように告げるポテトにリゲルはついつい小さく笑みを零した。
「ポテト?」
「だ、大丈夫……。ほ、ほら、リゲル。フロックスたちの言う『こわいの』が来たようだが……」
 指させばふよふよと浮かんだチョコミントカラーのモンスターが突き進んでくる。
「どうやら、一応の障害の様だ。ポテト、大丈夫か?」
「ああ。こういう時、リゲルと一緒に動けるように鍛えていて良かったと思うよ」
 鎖をじゃらりと鳴らす。余り離れられないが、その分は夫婦の絆(と言う建前の統率)にて連携をとり続ける。
 回復に専念するポテトに、剣を持って蹴散らすリゲルは「ポテトには、指一本触れさせはしない!」と堂々と言い放った。共に戦ってきた者同士だ。連携はお手の物。寧ろ、共に鍛えたからこそ互いのクセが分かる。容易に倒すことが叶ったモンスターにほっと一息吐いたリゲルは少しばかり荒れた足場に気付いたようにそっとポテトへと手を出しだした。
「転ばないように気を付けて。大丈夫か? 怖くはないかい?」
 その手を握り、段差に気をつけ歩くポテトは「大丈夫」と頷く。
「……それに、戦いよりもこの迷路は驚かしのほうがびっくりする」
 モンスターは対処は出来ても『おばけ屋敷』には中々慣れることがないポテトであった。
 共に進んできたは良いが、磁場が乱れているのか動けなくなってしまったとリゲルはポテトを振り返る。
「確か……カカオ三世は『互いを大事にする想い』や『恋心』が大好きだったのだろう?
 救援を求める声にはならないかも知れないが……伝えてみるのは如何だろう?」
「ああ。其れが良いと思う。此の儘じゃ、どうしようもないし……」
 リゲルはすう、と小さく息を吐いた。ポテトと手を握り、剣を構え直す。光を帯びた切っ先で天を切り裂くように構えたリゲルは「カカオ三世!」と鋭い声音で呼び掛ける。
「ポテトの笑顔は世界を照らす光だ! 彼女が傷付くなんて耐えられない!
 これからも沢山の世界を共に見て回ると誓ったんだ! この窮地を脱し、共に歩むとここに宣言する!」
 自身はポテトの騎士だ。故に、ポテトを護るのは自分でありたいと自負している。故に、救援を求めるのではない、自分の在り方を示すようにリゲルは堂々と告げた。
 ポテトはその言葉に笑みを浮かべてリゲルの手を強く握りしめる。伝えたい想いはいつだって心の中にある。
「強くて、優しくて、格好良くて、それから誰かのためにいつだって全力で頑張る姿が素敵で……でも、たまにちょっと抜けてる所もあったりしてそこが可愛くて。
 一緒にいると幸せで嬉しくなる、最愛の私の旦那様――大好き」
 頬へとキスを。ふにゃりと浮かべた笑みが直ぐに赤く染まり、其の儘リゲルへとぎゅうと抱きついた。
「……嬉しいけど、すごく恥ずかしいぞ……!」
「でも、本当のことだ。ポテトの告白、嬉しかったよ」
 微笑んでその頬を撫でたリゲルにポテトは照れくさそうに微笑んだ。二人が前を向けば、磁場を発生させていたであろう宝珠がふわりと浮き上がっている。それがカカオ三世の答えなのだろう。
 リゲルは剣を構え――そして、宝珠を叩き切ると共に、ポテトへ迫る魔物を一閃する。
「――言っただろう。彼女に指一本触れさせはしないと!」

●精霊と声を聞く者
 二人で手を繋いで迷わないように。精霊達の声を聞くエストレーリャの案内に従いながらソアは耳と尾を揺らしながら周囲を見回す。
「わあ」「ひゃっ」
 二人揃って驚けば、可笑しくなって顔を見合わせて笑う。互いにしがみ付く格好はまるで鏡に映したようで。同じ相手に驚かされてしまったからと揶揄い合って、進む二人はどうしても『開かない扉』へと辿り着く。
「エスト、どうする?」
「ソア、ここに何か書いてある。えーと……ちゅーしないと、開かない扉……?」
「ちゅー?」
 二人は顔を見合わせた。エストレーリャはきょとりとしたソアの顔を至近距離で見てどきりと胸が高鳴ったことに気付く。
「えっとえっと……」とソアは困ったように身を捩った。想い出の引き出しを開けたり閉めたりを繰り返す。
(あれはちゅーに入るかなっ、どうかなっ? ほっぺのは入らないことにするの! でもお菓子をお口であーんしてあげたのは?)
 ああ、けれどそれはやっぱり『ちゅー』ではなくて。エストレーリャは緊張したようにソアに「大丈夫?」と問うた。
「大丈夫、エストも緊張する?」
「緊張する」
 これがやっぱり『はじめて』で。する、と決めてから行動に移すのは、ドキドキが止らない。エストレーリャはこのドキドキは嫌じゃないドキドキであるとソアをじいと見詰めた。
 ソアも同じ気持ちだろうか? 目を瞑って繋いだ手に少し力を込めたソアはエストレーリャが近づく気配を感じて。

 ――いつ扉が開いたのかも分からなかった!

 其の儘手を繋いで、ふわふわと上の空。二人揃ってぽかぽかとした気持ちになって歩き続ける。
 余韻が心を一杯にするからと二人はふと、行き止まりだと顔を見合わせた。
「次は?」
「好きなところを、言う所だって」
「そっか! 好きなところ、いっぱいだよ!」
 ソアはぱあ、と眸を輝かせる。エストレーリャは指折り数えるようにソアへと向き直った。
「いっぱい変化する表情が好き。君の瞳が好き。
 勇ましくてかっこいいけど、傍にいると、ほわっとして、温かい気持ちにさせてくれるところも。見るたび、引き込まれる君の笑顔も。全部大好きだよ」
「ふふ。エストはいつもボクのこと受け止めてくれるの。
 それに色んな景色を見たね。なによりお星さまみたいな目の輝きが好き。きれいな心を映したみたい。それにね……」
 最後まで言い切る前に開いてしまったと拗ねたソアへとエストレーリャは「また帰ったらお話ししよう」と微笑んだ。
 合わせ鏡の迷路で、気付けば沢山の自分たち。鎖も途切れていて、本物を探せと迷路が囁くようで。
「本物は1人ってことね」
 ソアが周囲を見回せば「ソア」と呼ぶエストレーリャの声がする。
「声まで真似てくる、狡いよ! でもね、本当のエストはボクもう分かっちゃった」
 さっき、『ちゅー』した時に残ってる。香りを辿れば分かるから、進むソアは迷うことはない。
 エストレーリャとて迷わなかった。エストレーリャの知っているソアの笑顔はもっと視線が柔らかくて、表情と一緒に尾が揺れる。
 エストと呼んで両手を広げて微笑んでくれるソア。だから、それに応えるようにエストレーリャは腕を広げてソアをぎゅっと抱き締めた。
「ソア、みーつけた♪」
「エストみっけ!」
 ――そうやって笑ってくれる顔が何よりも好きだから。

●おかえり
 開いた扉の先で、眠ってしまったルアナを背負っていたグレイシアが振り返る。
「ボク達が一番最後だったみたいだね」
 手を繋いだままのエストレーリャとソアは周囲を見回した。ふわふわと浮き上がったチョコレートカラーの精霊種は「よくぞ参った!」とふんぞり返る。
「えらそう……」
「偉いのだ!」
「そ、そうなんだ……」
 首を傾いだソアにカカオ三世は「ご褒美のカカオであるぞ」と各々へと差し出した。此れでミッションはコンプリートだ。例年、カカオを取りに来る者は多いが下手に乱獲されては叶わないとこうしたダンジョンの奥に引きこもっているらしい。
 グラオ・クローネの準備も整った。眠ったままのルアナの分も鞄へと詰め込んだグレイシアは「14日までに準備をしなくては」と材料に考えを巡らせる。
「さ、カカオを貰えし、甘さ控えめの美味しいチョコを作ろう。ワインに合うチョコも良いな」
「ああ。それとポテト好みのとびきり甘いチョコレートも作ろう」
 リゲルとポテト、其の何方もが願うのは食べて幸せになりますように――だ。
 良きグラオ・クローネの訪れを期待して――

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

素敵なグラオクローネになりますように!
美味しいチョコレートを作って下さいね!

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