シナリオ詳細
【黄昏幻影奇譚】ワタリの章・ワタリ様
オープニング
●ワタリ様
ワタリ村。
この村では『ワタリ様』という土着の神を崇める地方宗教が存在していた。問題はその教義。ワタリ様が降臨する日に世界は滅び、神の信徒だけが神の国に導かれるという一種の終末思想を有していた。その信徒の証として自分の子供を一人、贄として捧げなければならないのだ。
そしてこういった類のものは伝承や噂などに縛られる傾向がある。それが例えば容姿。それが例えば異能の力。そして場所。
このワタリ様もまたそういったものに縛られた存在であった。
ワタリ村で信仰され、畏れを喰らい、そして贄の子供を喰らう事で力を蓄えた。この世界は化け物が蔓延る世界。力こそすべてなのだ。
だが、そのワタリ村が壊滅してしまった。どこかへ急いで移らねばならない。それも力がありながらもその使い方や力がある事を知らぬ愚かな人間どもがいる場所へ。
●書斎
境界図書館の一室である書斎。
境界案内人のミヤコに呼び出されたイレギュラーズは用意されていた椅子に腰掛けた。
「やあ、よく来てくれたね。イレギュラーズの諸君」
その手にはライブノベルの『黄昏幻影奇譚』が握られている。
「早速だが、諸君にはワタリ村へ向かってもらう」
ワタリ村。前回のミヤコの依頼でイレギュラーズが向かい、その村の調査と敵性存在の討伐をした場所だ。
「そこにはまだ本命が一体残っていてね。これの討伐が目的となる」
ワタリ様と呼ばれる存在が前回の調査で示唆されている。
「これの存在が確認できてね。どうも別の場所に向かおうとしているようなんだ」
これも敵性存在である為放置は出来ない。
「こういった類のものは伝承やらなんやらに縛られると聞いた事あるけど、住処を移すなんてことが出来るのか?」
それなんだけど、と続けるミヤコ。
「本当ならそういう存在だからね。言い伝え通りの行動やテリトリー内がいた方が力を発揮できるし、逆に言えばそれ以外の場所では力が思うように発揮出来ない」
だが、この世界では少し毛色が違う。自らの力と引き換えに場所を移す事が出来るのだ。もちろんその度に自身にまつわる怪談の類を広げ、そして力を蓄える必要がある。
「それに何より厄介なのが、このワタリ様。文字通り村を渡り歩いてもその力を失う事がないんだ」
だから急いでワタリ様を見つけて討伐してほしい。まだ村の中にいるはずだから、とミヤコに送り出されたイレギュラーズであった。
- 【黄昏幻影奇譚】ワタリの章・ワタリ様完了
- NM名アルク
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年01月26日 22時10分
- 参加人数4/4人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
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参加者一覧(4人)
リプレイ
●暗闇
何か来た。迷い人だろうか。いや、何か違う。どこか異質でしかも強い。恐らくは人形神を倒したのはこいつらだろう。ならばその血を。その肉を。その畏れを。喰らいつくしてくれよう。
●ワタリ村
ワタリ村へ再びイレギュラーズがやってきた。その時は人形神という怪異を倒し、それとは別にワタリ村に関する調査をしていたのだ。その中でワタリ様の存在が示唆され、そして今回に至る。
「最早誰も居ない廃村……うん、過去に起こった事に想いを馳せるよりはお仕事、だね!」
調査や探索、はては戦闘に対する意気込みは充分なカイン・レジスト(p3p008357)。とはいえ、そのワタリ様の気配は村全体から感じるもののそれがどこからなのかがわからない。よって虱潰しに探していくしかない。
「ワタリ村か……今度こそは決着が付けられれば良いのだがね」
『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)は前回の調査・戦闘に参加していた身だ。前回の人形神はワタリ様から村を守るという目的の元に作られた怪異であったが、それが村人を全員食い殺すという暴走が起きたのだ。だがもしそれが。それが暴走でなかったとしたら?であるならばやはりワタリ様が関わっているのは間違いないだろう。
「他の村へ移っちまう前に、今後こそきっちり片つけようぜ」
『特異運命座標』トキノエ(p3p009181)は――彼も前回の参加者だが――ヤベエ奴がもう一体いることにうんざりしている。そしてその怪異は力を持ったまま他の場所へ移動することが可能だ。探すのはもちろんとしてもあちらから出てきてもらえるとありがたい。
「擬態出来るみたいだし、離れずに行動した方が良さそうね」
信仰される立場である『神様』とはいえ、裏からワタリ村を支配していたような存在だ。擬態できても不思議ではないし、何より警戒すべき能力である――と主張するのは『アンラッキーハッピーガール』リズ・リィリー(p3p009216)。リズ自身がはぐれてしまえばシナリオ的においし――もとい、その『不運体質』による危険が本人に起きかねない。いや、こんなところではぐれていること自体不運であることには違いないのだが。
そして調査。ワタリ様の居場所もそうだが、村での風習や生贄以外にも供物があったのではないか――など調べることはあるのだ。
●調査
まず一同が目をつけたのが廃屋の中だった。ワタリ様が祀られていたということはお社が村のどこかにあるはずである。あるいは家の中に仏壇や神棚のような神様を祀るものもあるだろう。もしかしたらそういうところに何かしらの資料があるかもしれない。
が、小さな村とはいえ。それなりに家はある。時間がかかってしまうのは致し方ないが……それでも収穫はあった。
村の外から来た怪異に詳しい者から聞いたものをまとめたらしい、そのレポート。
曰く。ワタリ様のその正体は祟り神である。
御霊信仰、というものがある。祟り神――荒御霊ともいうが、これは本来、畏怖・忌避されるもの。だが、手厚く祀ることでこれが強力な守護神となりえる存在である。よって、これらを崇め奉るのが御霊信仰であり、その信仰の仕方により恩恵も災厄も違ってくるというもの。
そしてこのワタリ様は人に擬態する能力を持つが、真に恐るべきは。洗脳や催眠に類する能力を持っているということ。その能力が具体的にどんなものなのかは不明である。だが、それは自分より力が弱いものや自我が弱い、もしくはそれがないものを操ることができる代物だ。
そして一番肝心のワタリ様がなぜ荒御霊になっているのか。残念ながらそのあたりまで文章が書かれていながら途切れてしまっている。だが、紙の裏に気になる文章が一つある。それには『まずい、人形神を作っているあの男にも知らせねば』。
「…………」
顔を見合わせる一同。
「……これってけっこうまずくねーか?」
トキノエの声。ワタリ様の正体が人を祟る存在である、というのは納得できる。だが、それが同時に人に恩恵を与える存在でもある、というのは驚きである。だが、問題はそこではない。
「洗脳って……」
前回イレギュラーズが倒した人形神。この怪異の暴走はワタリ様による仕業だろう。ただ、身を挺してまで村を守ろうとした人形神製作者とその仲間と思しき者、村人のことを考えると、リズやその他の者たちもやりきれないものはある。
そしてその洗脳も恐らくは戦闘で使ってくる可能性が高い。
「……戦闘中での洗脳だが。恐らくは大丈夫だと思う」
ゼフィラだ。
「え、なんで?」
カインの疑問はもっともである。
「この文面を見る限り自分より弱い者にしか効かないんだろう?私たちはそんなことはないし、自我もちゃんと持ってる。そして何より――」
黄昏幻影奇譚の理から外れた存在であるイレギュラーズが、この世界に縛られた――そんな都合のいいものに引っかかるとは思えないのだ。
●邂逅
ふん、何をしているのかと思えば。我について調べているのか。それにしても。この村の住人は愚かな連中ばかりだった。人形神などとくだらんものを作ったばかりに殺されたのだ。大人しくしていれば降臨の日まで生き永らえられたものを。それに童子。あれはよかった。大人でもよいがその恐怖心や自分さえ助かろうという利己心。そういった負の感情も確かに美味ではある。だが童子の純粋な恐怖心に勝るものはない。そしてその童子が力を持っていればなお格別である。だからこそ。子を供えると書いて子供と書くのだ。……あの怪異も本来なら我が喰らうつもりだったが、それはもうよい。異邦の者たちよ、早く我のところまで来い――。
一通り廃屋を調べ終わった一同。だがワタリ様は見つからず。どうするか。
「仕方がない、あまり気乗りはしないが……」
ゼフィラがエーオースの標を使用。一時的に空を飛翔する力を得る。あらかじめこれを使っておけば探索の効率は良かったかもしれないが、使わなかった理由はひとつ。
――スパアアアン!!
何かがゼフィラに向かって飛んでくる!狙撃だ!
だが、警戒していたゼフィラにとってそれをかわすのはたやすい。飛んできた方向を見るとそこには黒い影が洞窟に入っていくのが見える。どう見ても誘われている。罠かもしれないが行かないという選択肢はない。
そしてその洞窟。入り口には注連縄が飾られている。その入り口と洞窟内の通路の両脇に設置されていた篝火が勝手に灯される。中に進めば祭壇らしきものがある。どうみてもここで祀られていたのだろう。そしてその祭壇の手前。
「あんたがワタリ様ね!あんたはここで倒す!他の村には渡らせないわよ!」
そう宣言しつつ胸元から赤い宝石を取り出し、短剣へ変化させるリズ。
そして魔法少女特有のお約束である。
らぶりー ちぇんじー らずべりー
すちーるはーと あんぶれいくっ
不運に負けずにキラメキシャイニー!
魔法少女(強調)ラブリー☆ラズベリー
ピカッと参上! ヨロシクねっ♪
(原文ママ)
魔法少女の変身シーンは多分探せばいくらでも転がってるんじゃないかと思うので、好きなものを使って是非脳内再生をしてほしい。もちろんリズが最後に若干照れながらびしっと笑顔とウインクとポーズを決めるところまでセットで。
お約束も終わったところで最初に動き出したのはカインだ。相手の死角を瞬時に見つけ出し、不殺の光を放つ。もちろん相手を倒すスキルも所持している。だが、初撃で倒せるとは思っていない。ならばダメージを負わせつつBSで仲間を補助する。
「語り手が居なくなった怪談は、それでお終い。それが道理って物だよね」
道理に逆らい、何より逃すことのできない存在。それに逃走しようとする可能性すらある。ならば速攻で畳みかけ、撃破した方がよい。
「――――っ」
「!?」
怨嗟の声。その言葉になっていない声がひとつの言葉に聞こえた気がした。
――すべてが憎い。
それはワタリ様の記憶と思われる映像だった。
今まで人間を他の怪異から守り恩恵を与えてきたというのに!なのになのになのに!ああ、人間が憎い恨めしい妬ましい!さもそれが当たり前のように扱う人間!できなければ用がないといわんばかりの眼差し!神とは理不尽なもの。崇め、畏れることこそが当たり前なのだ!それを思い出させてくれる!
「大丈夫かい!?」
ゼフィラによるクェーサーアナライズ。力ある言葉によるBS解除。そして時間さえ置き去りにする一閃。そんなものを食らえば防御することさえかなわない。
「今まで人間騙してたらふく食ってきて、もう満足だろ。さっさと消え失せな!」
過去に何があったとしても倒すしかない。その為に自分たちはここへ来たのだから。トキノエは耐性強化魔術で自己強化しつつ奇襲しようとしたが、ひるがえされたマントにより防がれ大きくはじかれた。ただ、その先には
「ちょっとーー!?」
ピューピルシールを放とうとしていたリズが慌てふためく。
「いちち……」
リズの不運体質によるファンブルである。
「早くどけてくれる……?」
トキノエの下敷きになっていたリズ。
「あ、わりい……」
慌ててよけるがトキノエの表情が強張る。リズさん、顔が怖いです……。
「もう怒った!過去に何があったか知らないけど!そんなもの、知ったことか!ここであんたを倒す!」
激昂したリズ。手近な獲物の血肉を喰らおうとしていたワタリ様に、魔力弾による弾幕。
「ハチの巣になりなさい!」
慌てて射線上から逃れたイレギュラーズを尻目に高威力を叩き出すリズ。クリティカルだ。
そして体力がなくなったのか地煙とともに霧散するワタリ様。
それを確認したイレギュラーズだが念の為にと村内をもう一度探索する一同。
だが、これでワタリ村と関わることは恐らくないだろう。イレギュラーズのおかげで静寂は取り戻せたのだから。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
アルクです。
黄昏幻影奇譚のワタリの章の第2弾となります。
前作の
【黄昏幻影忌憚】ワタリの章・人形神編
の続きとなりますが、中身を知らなくとも問題ございません。
●舞台
今は廃村となってしまったワタリ村。
その村ではワタリ様を崇める土着の宗教がありましたが……。
●目標
ワタリ様の討伐
ですが、その居場所も分かっていないため調査が必要です。
怨嗟の声
呪縛を孕んだ怨嗟の声を周囲にばら撒きます。
黒いマント
マントをひるがえす事で目の前の敵に呪いを与えつつダメージを与えます。
取り込む口
相手の血肉を喰らう事で体力を回復しつつ敵にダメージを与えます。
●他に出来る事
ワタリ様に関する資料が村の何処かに残っているかもしれません。
●ワタリ様
今回の討伐目標
人に擬態する事もでき、普段は村民として生活していました。
そして降臨の日。伝承では神の国へワタリ様が誘ってくれる、とされていました。
が、実際のところはワタリ様が力を蓄える為の捕食行為です。
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