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シナリオ詳細

再現性東京2010:逃げるべきか恥ずべきか

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●脅迫にしては手が込みすぎでは
 その日、ニコラス・コルゥ・ハイド (p3p007576)はカフェ・ローレットで謎の封筒を受け取った。教師として希望ヶ浜に滞在している情報屋によれば、都合10通の封筒が職員室やカフェ・ローレットに届いており、それぞれ別個のイレギュラーズ――希望ヶ浜では特待生や教師――宛なのだという。
 怪しいことこの上ないんだが、さりとて無断開封をキメるわけにもいかない。情報屋は、一旦渡して本人に処遇を任せることにしたそうだ。
 少なくとも、預かっている間に彼女に怪我などは出ていないので安全性は高い、らしい。しかし、軽く光があたっても中身が見えない辺り、油紙かなにかで厳重に封されているのは間違いない。
「……んん?」
 そこには、ニコラスが依頼の参加者以外には見せたくないあられもない全裸写真が!
 誰だこんなモン撮ったやつ。確保したやつ。
 怒りに震える彼は同封されていた『招待状』に目を通し、それが自分たちを招き寄せるための罠であることを理解した。だが、放置すればこの写真が拡散することになる。
 襲撃(カチコミ)をかけねばなるまい――こんなふざけたものを送りつけた企画担当者に!

●企画にしたって金をかけすぎでは
『本日、君達には私達の番組の企画に参加してもらう。1人でもこの企画を攻略できれば、君達の秘密はこちらで処分しようじゃないか』
 そして後日。
 集まった面々は希望ヶ浜体操服に身を包み、ディスプレイに表示された黒尽くめ(マジで黒マントで何も見えない)の男(?)の言葉を聞いていた。番組企画に参加せねば、そして攻略せねば写真は開示(バラ)される。
 そしてその企画は――。
『これから1時間半、君達には我等がハンターから逃げ切ってもらう。彼らは無敵だ。触れられれば牢獄に入ってもらおう。彼らから隠れ、時間いっぱい逃げ切ればいい』
 逃げ切るだけか、簡単だな……そう思ったのも束の間、続く声に一同は身を固くする。
『当然だがここは希望ヶ浜なので、不思議なことは起こってはいけない。余りに不自然、不可解なことが起きれば最悪失格として本来企画で捕まってもらうのとは別の牢獄に案内するからそのつもりで』
 「不思議なことが起こってはいけない」。つまり、過当に不自然な――番組用の隔離施設で異常な数の動物が観測されたり、そうでなくても本人がパルクールの域を越えた滞空時間を実現する――ことは起きるべきではない。
『とはいえ、我々も君達に制限ばかり強いるのは本意ではない。逃げている間に、幾つかミッションを設けようじゃないか。万一捕まったお仲間がいても、開放したりするような』
 勿論、ハンターが増えないとは言わないが……と笑った声に、一同は怒りを覚えた。
 だが、やらなければ自分の未来が真っ黒だ。
 イレギュラーズは、各々準備を始めた。まず生き残ること。そして誰かに託し、最悪の事態を切り抜けることを――!

GMコメント

 年末年始特別企画シナリオも3本目になってまいりましたが全部リクエストです。どういうこと?
 今回はちょっと企画が企画なので情報がおおいです。ごめんなさい。

●達成条件
 最後まで「1人でも」ハンターから逃げのびる

●臨場鬼ごっこin希望ヶ浜アウトレットパーク内
 なんかまあ四半期に一度やるアレ。
 アウトレットパーク内(キッズエリア、メンズエリア、レディスエリア、食品エリア、アトラクションエリア……等)なので自己申告でまだあるかもしれません。あるかもしれませんがその分行動範囲が広くなります。
 皆さんには専用aPhoneと右手首に端末(捕縛・自由判定用)が支給されます。

 ハンターは(番組都合上)無敵で、一同は(希望ヶ浜で放送されるので)過当に派手なスキルの使用が制限されます(ファミリアーも複数人or複数体使用とか貸し切り施設に現れるのが不自然な猫や鳥、持ち込みは勿論不可です。飛行浮遊もってのほか。あとは個々人の『良識』におまかせしますが、マスタリングが入る可能性だけご了承願います)。
 隠密系スキル等は当然有効ですが、ハンターはハイセンス相当の感覚と高い機動を実現しています。
 ただし、一定距離引き離せば諦めます。
 複数名固まっていた場合、狙う対象はランダム。
 余りにアレなパルクールで近づいてきたりはしません。直線的に走って捕まえられる距離から走ってきます。
(機動力判定みたいな機械判定というより運の要素が絡むので機動力が低いから絶対捕まる、ってこたないです)
 制限時間は1時間半、ハンターは初期3、増減あり(固定値として1時間経過後2人増えます)。

 ハンターにはいくつかの行動制限があり
・不可侵エリアには入りません
・ミッションで足を止めているプレイヤーには襲いかかりません
・ハンターは不可侵エリア周辺を通ることがあっても、待ち伏せなどは行いません
・ハンターは偶発的に同じ対象を襲うことはあります。が、連携は取りません
 以上を厳守します。

●ミッション
 3つほどご用意しています。
1.ハンター出現阻止イベント(開始20分後スタート、20分経過でタイムオーバー)
 複数のエリアにまたがって設置される場所でミニゲーム(回避と反応判定)をこなすことで手に入る番号をアトラクションエリアにあるハンターの檻に打ち込むことで出現を阻止できます。
 合計3つ。アトラクションエリアに一番近いのはキッズエリア、一番遠い設置場所は食品エリアです。

2.救出ミッション(50分経過後スタート、制限時間10分)
 場内にドローンが出現します。
 各所に用意された専用のトイバズーカで狙って当てることで落とすカードキーを持って監獄(レディスエリア内)に向かうと1人救出できます。合計2つ。

3.ハンター大量解放イベント(1時間経過後スタート、制限時間20分)
 突如として巨大な機械が大量のハンターが入った檻を壊しに現れます。
 メンズエリアにある端末(神攻判定)から得た番号を食品エリアに出現する金庫に打ち込み、出てきたボールを機械の頭部にある的に当てることで起動停止ができます(命中判定、部位狙いなので下方修正あり)。
 制限時間がすぎるとハンター10人追加。

 以上となります。
 時間に余裕があれば是非。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 再現性東京2010:逃げるべきか恥ずべきか完了
  • GM名ふみの
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年01月31日 22時20分
  • 参加人数10/10人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

ニコラス・コルゥ・ハイド(p3p007576)
名無しの
※参加確定済み※
メイ=ルゥ(p3p007582)
シティガール
バルガル・ミフィスト(p3p007978)
シャドウウォーカー
※参加確定済み※
わんこ(p3p008288)
雷と焔の猛犬
楊枝 茄子子(p3p008356)
虚飾
ボディ・ダクレ(p3p008384)
アイのカタチ
秋野 雪見(p3p008507)
エンターテイナー
トスト・クェント(p3p009132)
星灯る水面へ
※参加確定済み※
コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)
慈悪の天秤
※参加確定済み※
ノワール・G・白鷺(p3p009316)
《Seven of Cups》
※参加確定済み※

リプレイ

●それとこれとは別問題
「録画予約はしたな。……よし」
「ニコラスくんも変な写真で脅されてるんだよね? やけに落ち着いてない?」
「あ? テレビにせっかく出れるんだろ。なら気持ちはどうあれ記念に取っておくぜ」
 『無名の熱を継ぐ者』ニコラス・コルゥ・ハイド(p3p007576)はいやに落ち着いた様子で録画予約が出来ているかを(過去の自分の行動で)確認し、1人頷く。『よく食べる』トスト・クェント(p3p009132)はその様子が堂に入ってる感じがしたので疑問に思ったのだが、どうやら「落ち着いている」というよりは「落ち着けている」といった様子だ。
「それにしても、写真は何時撮ったのでしょうか。私にも、恥じらいの1つや2つあるのでございますよー?」
「写真ってなんだ……行きつけのBARで飲んだくれて大の字で寝てる所かしら……それかノワールのプリン間違って食べちゃった所とか……? いずれにしてもバラされたらアタシの威厳がゼロになってしまう、なんとしてでもふせぐのだわ!」
「え?」
「え?」
 『《Seven of Cups》』ノワール・G・白鷺(p3p009316)が秘蔵の写真を思い返して頭を悩ませている傍らで、『自堕落適当シスター』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)は自分の過去の所業を指折り数えて思い返していた。どうやら自分で見ることなく、仲間のリアクションで察したらしいが……要らんこと口にしたせいでノワールとの空気が悪化している。
「都会の鬼ごっこなのですよ! すごく楽しそうなのですよ!」
「すごい! これテレビで見たことあるにゃ!!! こんな番組に参加できるなんて……」
 『シティガール』メイ=ルゥ(p3p007582)と『ネコメイド本領発揮♪』秋野 雪見(p3p008507)は本企画について知識があるらしく、純粋に参加できることを喜んでいるフシがある。
 とはいえ、雪見はそれはそれとしてプロデューサーをボコす気満々であるようだが。
「後で催しを開催した方には是非とも“挨拶”したい所ですねぇ。何せあの写真の流出は、ねぇ!」
「いや割とシャレになんない!ㅤまじでシャレになんない!ㅤコスプレで通るかギリギリだ!」
「こんないたいけな女児のマル秘写真をどうするってんだ主催者ァ!!!」
 『豪華客船の警備隊』バルガル・ミフィスト(p3p007978)、『羽衣教会会長』楊枝 茄子子(p3p008356)、『シャウト&クラッシュ』わんこ(p3p008288)の3名の写真はどうやら他の面々より輪をかけてマズい写真であるようだった。
 バルガルのものは当人と主催者(P)しか知らぬだろうレベルだし、わんこはなんかリバ倫貫通しそうだし茄子子に至っては羽衣教会の存続に関わるかも知れない。こいつら地雷だらけだな。
(この写真、人型夜妖討伐時の私ですね。ソレの赤い体液を全身に浴びてますね。…これ、知らない方が見たら犯罪の現場では?)
 なお、茄子子が写真を見られてはいけないランキング暫定1位の『痛みを背負って』ボディ・ダクレ(p3p008384)はといえばまあ夜妖のことを知っていれば問題ないのだが希望ヶ浜ではそれも叶うまい。犯罪者だと思われたらちょっと勘弁願いたいのではないだろうか。
「絶対許さねぇ……!! これは! 世の中に出ちゃいけねぇもんだろうがよ!!!」
「おれはともかく、女性陣の写真を流出させるわけにはいかないな……いやおれも普通にヤだけど」
「私もですね。誤解を生むような写真は、ダメです」
「意見が合いますねぇ。それではこの番組、真正面からブチ壊し……じゃなかった勝ちにいきましょうか!」
 ニコラス、トスト、ボディ、バルガルの男性陣4名はそれぞれ(自分のためか他人のためかの)重みは違えど主催者をなんとかせねば、という意見で一致した。トストとボディはどちらかといえば利他寄りだが、バレて困るのは彼らも一緒だ。
「まぁ何にせよ、知られたからには……という奴でございます。やるだけやってやりますとも」
「絶対、絶対生き残らねば……!」
 ノワールとコルネリアは互いをチラッチラッとしながら依頼の達成目掛けて体を解す。コルネリアはもうノワールに終わってからごめんなさいしようね。
「あとでプロデューサーはボコボコのボコにゃ……」
「まー、わんこの奴をばら撒くのは構いマセンガ、他の方のは許しちゃおけねぇ。約束違えるなよ!」
「よーし、メイも頑張って逃げるのですよ!」
 雪見とわんこの全身からは絶対勝つという気合が炎のように揺らめいて見える。なお、メイは多分写真自体がそこまでダメージ無いものだったのかもしれない。なおわんこの「約束違えるなよ!」のあたりは完全に炎文字とかで加工されそうなアレである。
「絶対に逃げ切ってやる……他の誰かが!」
 茄子子はこんなんだが、実際彼女はクソ雑魚な点が多いとはいえ土壇場でのどんでん返しに定評がある。あと行動効率。多分バレない程度に術理に走ればワンチャンあるのはこの子だ。
 ともあれ、イレギュラーズは「この状況を盛り上げ」「1人でもタイムアップまで逃げ切る」という重い依頼を達成せねばならない。相手はプロの追跡者……果たして逃げ切る事はできるのか?

●3人の狩人
(ハンターには捕まりたくないけど、皆の無事を考えると先に見つけておきたい……!)
 トストはまず、エリア間を繋ぐ通路、その街路樹の影へと身を潜めた。目的はハンターの早期発見。序盤に自分が見つけ、仲間に連絡を取ることで少しでも捕まる可能性を減らしていくのが得策だ。
 無敵とはいえ、ハンター達とて人間。多少目鼻が利くとはいえ、序盤から飛び跳ねて動いたり空を舞うわけでもない……だから、無表情に正門からキッズエリア――メイが居る辺りだ――に向かおうとした1人が他の2人と別れた後に突如として自分の隠れている木に向き直った時には喉奥から悲鳴が漏れかけた。
「…………っ!」
「………………」
 トストは息を呑んでこちらを向いた男の動向を見守る。ほか2人はそれぞれメンズエリアとアトラクションエリアに歩いていったようで、彼だけが慎重にその木へと歩を進める。
 数秒ほどの緊張は、しかし男が唐突に木(に隠れたトスト)に興味をなくしたかのように踵を返したことで終止符を打った。
(危なかった……! もしかして香水のお陰……?)
 トストは事前に吹き付けておいた香水瓶を見ると、ひとまず胸をなでおろした。
 ハンターたちは散り散りの探索を始めた。値千金の情報を、仲間達に伝えることが叶うのだ。

「よ……よし、まだこっちには来ないな? 今のうちにこの辺を探っておかなきゃな……」
 ニコラスはトストの送ってきた情報を確認すると、aPhoneを懐にしまいこんで深く息を吐いた。最初のミッションをこなすには遠い場所だが、序盤を安全にやりすごせれば次の目がある。なにより、広く動くよりどう逃げるかを想定できる分、居場所を決めておくのも悪手ではないからだ。
「食品エリアは第一ミッションのクリアポイントから一番離れてる場所! こういう所にギミックがあるのは常識にゃ……」
 他方、雪見はここを遠いからこそヒントのある場所ではないかと推測を立てた。アトラクションエリアに真っ先に向かって無策で待機するよりはマシと考えたのだ。
「うわっ!? ……なんだ、アンタかよ」
「にゃっ!? びっくりさせないでほしいにゃ……」
 そんなわけで必然、2人は鉢合わせになる。お互いに驚いて飛び退くと、相手を理解して胸をなでおろした。
 そしてお互い、「何か見つかったか?」「んにゃ、何も」という不毛な会話を交わすことになったのだが……両者のaPhoneが鳴り響く。
『ミッション開始』
 そう記されたメッセージと共に、ミニゲームの設置位置の座標が指し示された。

「ふふふっ、捕まえてみるのですよ!」
「…………」
 その頃、キッズエリアに現れたハンターはメイを捕捉。声を上げて逃げ回る彼女の居場所は分かりやすかったとはいえ、まあ驚くほど逃げ足が速い。ハンターが駆け出すか否かのタイミングで、彼女はスタートを切っている。そして、声はすれど姿を見失えば追跡を止めるのがルール。曲がり角の先から見えなくなった彼女を、男は見過ごすことにした。
「見つけたのですよ、第1ミッション……これは……」

「ピッチングマシンのボール受け止める……ということでしょうか」
 食品エリアに向かう途上、ボディはメンズエリアで『それ』を見つけた。反応速度と回避能力、か。確かにその通りだ。食品エリアには仲間達がいる。ハンターは、ボディがミッション用のサークルに入った時点であらぬ方へと歩いていった。
 ピッチングマシンが機械の腕をしならせ第1球を投げつける。身を捻ってかわしたボディは、そのままボールに手を伸ばす。握り込むには至らずだが、確かに指先はボールを掠めた。
 軽快に鳴るファンファーレ、ピッチングマシンの上に投影される4桁の番号。これがロック番号か。

「これ、二人一組でやってOKかにゃ……?」
「1人ずつ一回ってルールはねえしな! こっちにハンターが来る前に終わらせようぜ!」
 雪見とニコラスは頷き合うと、前に雪見、その後ろにニコラスが待ち受ける形で布陣を組む。飛んでくるボールを身を引いて躱した雪見の背後、ニコラスがそれは素晴らしいドヤ顔でボールを受け止めていた。そして、即座に2人は散開する。

「逃げ回ってる内にミッション開始、しかも番号が出揃ってるって早すぎるのだわ……!?」
 アトラクションエリアの地の利を活かして逃げ回るコルネリアは、喉から絞り出すような声と共にaPhoneに視線をやった。今しがた、遮蔽物を駆使してハンターをまいたが……相手が居るところがまさに、目的の檻があるブースへの入り口だったのだ。コルネリアとの追走撃で偶然とはいえ、運が悪すぎる。
 ……の、だが。そこに突如として現れた(としか見えなかった)バルガルが、鮮やかに囮としてハンターの耳目を引きつけ、何処かへと去っていった。彼が簡単に捕まるとは思えないが、凄まじい度胸だ。
「い、今だわ、今のうちにロック……!」
 コルネリアはこれ幸いとハンターの出現を阻止。ひとまずの危機を脱したのだった。

●増えて、追って、救いに向かう
「会長体力くそざこなんだよ……持久力もないし……とりあえず最終ミッションだよね?」
 茄子子は息も荒く駆けずり回っていた。体力に自信がなく、救出されることを前提で(でも真面目に)メンズエリアの近く……レディスエリアとアトラクションエリアの中間辺りをうろうろしていた。
 そこまではまあ、まだよかった。
「ハンター大量解放とかやばすぎだよ!ㅤあれだよ!ㅤくそげーだよ!」
「…………」
「ヒィッ……!?」
 そんな事を言っている最中にハンターが現れるんだから洒落にならない。鉢合わせとまではいかぬが、彼我の距離は50mあるやなしや。腰が抜けかけた格好で踵を返した茄子子は、明らかに捕まるんじゃないかって状況だった。
 だが、彼女はここで意地を見せた。
(……うおおおお!ㅤアーリーデイズアーリーデイズ! バレなきゃバレない!!)
 口の奥で術式を吐き出しながら、全盛時の能力を引き出してみせたのだ。それでもハンターを振り切るにはギリといったところだったが、その緩急こそがハンターを翻弄した。
 レディスエリアの外側の大通りを迂回するように逃げる先、ニアミスしたのは……トスト!
「えっ」
「ああああああごめん会長の代わりに、いや会長が代わりに……?」
 意図せず押し付ける格好となった茄子子は涙目。警戒していた外側からきたトストは悲鳴を上げながら駆け出した。さあこれで問題ない……そう、思いたかった。
「ですよねー」
 が、不幸にもメンズエリアに踏み込んだ彼女は早々に遭遇した2人目のハンターに手首を掴まれたのだった。空では、ドローンが舞っている。レディスエリア目掛けて。

『茄子子、トスト、確保』
「このタイミングで捕獲デスカ……?! っていうあアレじゃないデスカ、ドローン!」
 わんこはアトラクションエリアでハンターをまいたところで頭上を仰ぐ。バズーカはレディスエリアに隣接したメンズエリア・キッズエリアの2箇所に配置されたのだという。でも、徘徊するから持ち運ぶ必要がある。
「これはなかなか厄介でございますね?」
「本当に……って大丈夫デスカ、ノワールサマ。姉御は見ましたカ?」
 aPhoneを弄りつつ首をひねったノワールは、唐突にわんこの傍らに現れ、指を一本立てて提案する。
「バズーカは2つ必要ですが、それぞれボディ様とメイ様が近いと思われます。ですので、どちらか片方のハンターをこちらで引きつけます。最後のミッション対策に茄子子様は必要ですので……」
「じゃあわんこはレディスエリアに向かうデス。メイサマからキーを受け取ってわんこが逃げた方が早いデスから」
 無論、こんな話をしている間にもアトラクションエリアにはハンターが闊歩している。が、2人がエリア内から抜け出せたのはひとえにバルガルが現れてはハンターを振り切ってを繰り返しているからである。

「バズーカは見つかりましたけど、なかなか狙いが定まらないのですよ……!」
 その頃、メイは通知に従ってバズーカを確保したはいいものの、ドローンの動きと風の流れに苦戦し、なかなか命中させられずにいた。カスりはするのだが、存外厄介な種目であるらしい。
 それはメンズエリアボディも同じらしく、卓越した命中率を誇る彼でも、引き当てたバズーカがやや狙いが悪いのだから始末が悪い。
 ……が、両者はそれでもやってのけた。檻から近いのはメイ→わんこのリレー、残り時間を鑑みてボディが向かって五分。
 ボディは迫りくるハンターから踵を返し、茄子子の再来を待つ……最後のミッションを確実に終わらせるために!

●成否ボーダーライン
「会長復活! ありがとうねメイくんわんこくん! この際羽衣教会に入信しない?」
「どういたしましてなのです! でもそのお誘いはごめんなさいなのです!」
「遠慮するデス」
 茄子子はタイムオーバーギリギリにメイに救出されると、新規のハンター解放の通知にビビりながらもメンズエリアへ駆け出した。ついでのようにメイとわんこを勧誘したが秒で断られた。
 当然ながら、新規のハンターは入口付近から中央通路を通って各エリアへと分散していく。既存の3人はメンズエリア、アトラクションエリア、食品エリアに散っている……バルガルが1人を釘付けにしているのは凄まじい成果といえよう。
「っていうか、あの機械なにあれ?! 中央通路のぐねぐねした道を進んでるのだわ?」
 新たに現れたハンターに追い回されるコルネリアは、中央通路を鈍足で進んでくる巨大機械に目をむいた。普通、ああいうのは直進しかできないはずだ。ライントレーサーでも積んでるのだろうか? 練達の技術は恐ろしいモンである。
「…………」
「やべえ……誰かが生き残らないとやべえ! 祈りの時間サボって競輪場に居た事がバレればやべぇ……!」
 生放送だったら完全に放送事故だ。が、放送局もプロデューサーも鬼じゃない。伏せてくれるよ、成功すればな。
「それじゃあこの辺で! 会長が先に着けばなんとかするよ!」
「わんこも機械に強いデスから、その時はおまかせデス!」
 先んじてハンターの囮になりにいったメイを横目にメンズエリアにたどり着いたわんこと茄子子は、お互いの健闘を祈りつつ二手に分かれた。

「何で私が狙われてるにゃーっ!?」
 ……そして食品エリア。ハンター達がわんさか入った檻を背景に、雪見とハンターは壮絶なドッグファイト(と言う名の追いかけっこ)に奔走していた。食品エリアは文字通りフードコートが多いので開けているが、ヘタな動きを見せれば事故案件になりかねない。真面目にガチでやるといっても弁えねば、だ。
 だからこそ放送映えする雪見が逃げ回ってるしニコラスはこっそりと金庫側に向かっているのだが。
『会長が確保したよ! わんこ君が機械に向かったからパスよろしく!』
「――って簡単に言ってくれるぜ」
 で、ニコラスが金庫の前にたどり着くのと茄子子が全体配信で暗証番号を送ってきたのはほぼ同時。もしかしたら増援のハンターを引き連れて他の仲間が来るかもしれないし、機械の前で挑戦しない自分は、ボールを投げ渡した瞬間に飛びかかられても文句は言えない……考えうる限り損しかない選択肢だ。
 だが、これを阻止すれば誰かが逃げ延びてくれる。
「ああ畜生、やりゃあいいんだろやりゃあ!」
 彼の心からの叫びに反応したハンターは、しかしボールを持っている彼を狙えず、そして巨大機械に向かっていくわんこへ全力でトス。
 直後、彼は背後からハンターに確保されたが……わんこが受け取り、一発で巨大機械の頭部へとボールを命中させた!
「ソレジャ、わんこは逃げマスヨ!」
「なんとかなったのに捕まってんのは癪だが、後は任せたぜ……!」
 文字通り尻尾を巻いて逃げる格好になったわんこを見やり、ニコラスはため息を一つ。
(博打に負けて素寒貧になった挙句触手でくっ殺ポーズ取らされた時の写真なんてバラされちゃたまんねえからな……!)
 本当にロクな写真じゃなかったんだなこの人。

「ちゃんと写真消してね!ㅤ立ち会うからね!ㅤハードもぶっ壊してね!ㅤクラウド上からも完全削除してね!!」
「つ、疲れました、本当に……。それはそれとして、写真は回収させて頂きたい所でございますねー?」
 茄子子とノワールはぐったりした様子ながら、写真だけは確実に消させる気で番組Pに詰め寄らんとした。
 だが、タイムアップ後に唐突に流れ出したVTRは、彼女らの想定を超えていた……そう、それはすべてのデータが削除されていく過程のVTRだ。
 つまり――手元にある写真が、最後のひとつ。
「え、ええ……?!」
「約束守ったのはいいけどもうちょっとやり方あるデショウが!」
 膝を折ったトストの横で、わんこが流石にキレ散らかす。なお、他6名から吹き出す黒いオーラは見なかったことにして頂きたい。
 「高視聴率間違いなしだな!」っていってる番組Pがロクな目にあわないので。

成否

成功

MVP

バルガル・ミフィスト(p3p007978)
シャドウウォーカー

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。
 途中何人か捕まったのは想定通りでしたが、最後のミッションがクリアされたのでこれは厳しいなと思いました。元ネタだと開放されて逃げ切った例もあるそうですが……それはさておき。
 今回は見事に回避できたようです。本当に、なんで普通にアポ取らなかったんだろう……。
 なお放送時は、自分の写真についてゲロってる発言は全部ふせられたそうです。よかったね。

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