シナリオ詳細
再現性東京2010:ドッペルゲンガー(いまならオプション尻尾をおつけして特別価格)
オープニング
●前振りであり、紹介であり、危機。
突然だが、マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)の話をしたい。
もとはリアナルという偽名を名乗っていた彼女。その突飛な行動力やちょっとばかり偏った趣味によって様々な(時には奇妙な)呼び名が突いては居るが、彼女自身は狡猾な魔術師であり、ある場所では優秀な夜妖ハンターである。
時には教師、時には生徒と立場を変えながら希望ヶ浜地区各所を点々と駆け回る。そんな彼女がある日立ち寄ったバーで、それは起こった。
「ヘイ、マニエラ! 尻尾ちょーだい☆」
●尻尾在らば祓い奉り候
ダイナー『KUDOKAN』。希望ヶ浜北区に存在する洋食屋である。
しかし洋食屋とは名ばかりの、バイカーたちが毎晩酒を飲むための店だ。
マニエラはいつものようにバイクを店の前にとめ、店の前に立った。
12月の冷たい夜風がライダースーツの上を撫でていく。
ちらりとみれば、商店街らしい通りはほとんどがシャッターを下ろし冷たく無表情に沈黙している。その中で唯一看板のライトを灯し、窓からオレンジ色の光を漏らして歓迎しているのがこの店である。
たまたま丁度近くで仕事を終えてきたところだったので立ち寄ったのだが、夜遅くでも食事ができて酒も大体揃っているのだから、通いがいのある店である。
重い木製の扉を押し開けると、ガラランというスクラップで作ったであろう手製のウェルカムベルが鳴り、店内で流れる穏やかなラップミュージックが出迎えてくれる。
空き瓶で作られたらしい手製シャンデリアの下。丸い椅子に腰掛けヘルメットを脇へ置いた。
さて何を注文しようか……とメニューをチラ見したところで、再びガラランとウェルカムベルの音がした。
何気なく振り返り、眉を上げる。
「ポメラニか。珍しい所で逢うな」
入ってきたのはケモミミ型のヘルメットを小脇に抱えた女。桜色のポニーテールと赤い瞳、そしてなにより背負ったギターケースからわずかに漏れ出る精霊のオーラは見間違えようがなかった。
ポメラニ・ブロッサム・テイルテイル。マニエラとは酒飲み友達になる程度の、まあ深くも浅くもない仲だ。
ポメラニはマニエラに気づいた様子で手を上げ。
そして。
「ヘイ、マニエラ! 尻尾ちょーだい☆」
……皆様のご想像よりずっと早くこの言葉が、出た。
さて、この『指詰めろや』と同等の要求をされたマニエラの気持ちを答える国語のテスト問題は置いておくとして。
何事にも、理由はあるものである。
「実はさー、この辺にちょっと厄介な夜妖が出るっぽいんだよね。
出現条件が限られてて、討伐するにも一人じゃ厳しい感じの」
ポメラニが言うには、この街の廃棄区画には不明な夜妖が出現するらしい。
ビルの建設現場を装って周囲をアドフラットパネルで覆われているが、そういつまでも隠蔽できるものではない。
一日も早い討伐が希望ヶ浜学園より依頼されていた。
マニエラがスマホアプリを立ち上げてみれば、確かにその案件が『条件が揃い次第なるはや』というコメントつきで上がっていたので情報は確かなようだ。
だが夜妖の詳しい情報が不足しているらしく、現地のワーカーからの提供待ちとなっていた。
「アタシ、詳しく調べたんだけど。どう?」
「……聞こうか」
『飲みながら話そっか』のジェスチャーに、同じジェスチャーで答えるマニエラ。
その直後、テーブルに酒が二杯差し出された。
●オンボノヤス(仮)
夜妖はオンボノヤスと仮称されている。
空間内が異常性のある霧に包まれ、音波や電波そのた様々な外部観測方法をシャットアウトしているため全容の把握を困難にしているためだ。
しかしポメラニは内部へ幾度か侵入するなど(言葉に出来ない方法も含めて)調査した結果、どうやら内部の夜妖の正体を掴んだらしい。
「オンボノヤスはいわゆる『コピーおばけ』だね。
こっちとソックリの外見とそこそこ近い能力をもって出現する怪異だよ。
違いは全員特徴的な尻尾が生えてること」
「……ほう」
見てすぐ分かるほどの外見特徴があるなら、敵味方の識別を困難にするのが目的ではないようだ。
「一人で侵入しても出現はしてくれないの。人数と時刻と、出現時間が限られてるんだね。マニエラがお仲間呼んでくれたら話が早くて助かるんだけどナー?」
猫なで声で首をかしげるポメラニ。どうやらマニエラのコネを頼りたいということのようだ。
マニエラはフウと息をつくと、スマホをタップする。
「わかった。いま来れる人間に声をかけてみよう。どうせ学園から報酬が出るだろうし、手間賃は……そうだな、全員に一杯ずつ奢れ」
「オッケー! サンキュー!」
- 再現性東京2010:ドッペルゲンガー(いまならオプション尻尾をおつけして特別価格)完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年01月25日 22時01分
- 参加人数6/6人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 6 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(6人)
リプレイ
●オンボノヤスのいる家
フラットパネルで覆われた、そこそこの広さがある建設現場。
施工を示すパネルには鮫島建設株式会社という名前と共に、ひどくかすれてよめない施工予定期間や商業施設を建設するむねが書かれている。無論、すべてカバーストーリーだ。
備え付けのドアをくぐると、『策士』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)たちを煙のようなものが出迎えた。
最初に顔をみせたマニエラをはじめ、集まったイレギュラーズやポメラニたちの姿が象られていく。一見して仕組みは分からなかったが、どうやら煙が凝縮して彼女たちの形をとったようだった。
違いがあるとすれば、皆ちょっぴり特徴的な尻尾をはやしていることくらいである。
「本当に2本尻尾の生えたマニエラちゃんがいるね……」
後ろからひょこっと顔を出した『医術士』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)。
「あの尻尾……イイ」
目を細めてぺろりと上唇を舐めるポメラニ。
「倒したら尻尾ちょうだいね。奢るから」
「いやまて、結局私の尻尾を欲しがった意味がわからん。あれは偽物ので私のじゃねぇ」
「まってまって、足して3本なら1本くらいあげたってよくないかな?」
「このタイミングで余計なことを言うな姉弟子ィ!」
「おっとそうだった!」
ココロは気を取り直して、ビッと格闘の構えをとってみせた。
「わたしのかわいい可愛い妹弟子を守らないとね!
紫髪の弟子コンビ、負けはあり得ないから!!」
一方で。
「ふひひ……ドッペルゲンガーって知ってるかしら……。
正体はわからないけれど……基本的に……出会ったら死んじゃうって……そういう類の都市伝説よ…
ま、まさか……実際に出会うなんて思わなかったわ……今回は……オンボノヤス……って、妖怪みたいだけど…
ほんとに、あたしに尻尾、生えてるのね……」
『非リア系魔法少女』黒水・奈々美(p3p009198)は急に饒舌になって語りだし、隣で若干聞き流しモードに入っていた『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート(p3p008639)が頭上にぽこんと『!』マークを出して振り返った。
「こちらの能力をコピーするエネミー、だったね。
シミュレーターはやったことあるけど実戦で私と戦うのは初めて。
けど、火力で偽物に後れを取るわけにはいかない。負けられないな……」
そう言ってマジカルステッキと言うなのライフルのセーフティを解除すると、どこからともなく走ってきたミニ戦車型ドローンが分解、そしてオニキスの四肢や腰へと装着されていく。
「魔法少女オニキスハート、戦闘準備よし」
「奈々美ィー! 魔法少女負けしてる! 魔法少女負けしてるよ! こっちも変身して! できれば例の牛ファッションに!」
「えぇ……」
目を充血させながらかっぴらいたバンピアが叫びだし、奈々美は『これでいいでしょ』といってパープルのフリルドレス姿へとチェンジした。
「魔法少女ナナミ……た、ただいま、けんざん……」
「今日はそう言うテンションの日なのです?」
『シティガール』メイ=ルゥ(p3p007582)はついついしていたスマホから顔をあげ、ビッとスマホ持ったまま横ピースした。
「メイたちの偽物が現れてしかも尻尾を増やして来るとは……これは負けられないのですよ!
いくら真似をしても本物には勝てないということを教えるのですよ!
それに急造の偽物チームでは、きっとチームワークで負けたりなんてしないのですよ」
「ローレットもある意味急造チームだけどね」
『薔薇の少女』ルビー・アールオース(p3p009378)がアハハとから笑いをしてメイの後ろに立った。
希望ヶ浜の風土にあわせるためか、希望ヶ浜学園の制服に赤いフードパーカーというちょっとバージョンの違う格好をしたルビー。スマホを本型のケースに閉じてポケットへしまうと、かわりに肉球のついた革手袋を装着した。
「まっ、なにはともあれ! 今日のお仕事はオバケ退治だね。自分たちと戦うなんて不思議な感じだけど……気張っていくよ! がんばろー!」
おー! と言ってメイと一緒に拳を突き上げるルビー。
すると何を思ったのか、オンボノヤスたちも一斉に拳を突き上げ『オー』と叫んだ。
どうやら向こうも、やる気らしい。
●ワンサイドカレイドスコープ
「さぁーて、見せてよマニエラ? 紫髪の弟子コンビのチームワークってやつ!」
ポメラニはギターケースを開いて木刀を取り出すと桜色のオーラを展開。マニエラを庇うような位置で構えた。
ポメラニの偽物こと尻尾ポメラニもまた尻尾マニエラを庇う位置で木刀を振って桜模様の結界を展開。
「狙いは一緒か。なら、迷い無く打ったほうの勝ちだな」
全く同じ狙いでチェスをうちあったなら、迷った方が負ける。
マニエラは護戦扇『陽玉裏』をびらんと開くと、力強い足踏みによって特殊なフィールドを形成。地面に描き出された魔方陣が20mほどまで拡大され円柱状の光を空へと打ち上げる。
全く同じフィールドを形成しはじめる尻尾マニエラめがけ、オニキスと奈々美はそれぞれ攻撃態勢にはいった。
「魔法少女コンピ――集中砲火、いくよ」
「あ、うん……! た、他者を騙る悪しき妖怪は……魔法少女奈々美がせ、成敗します……!!」
オニキスは背部からマジカル☆アハトアハトを展開。設置アンカーを足下へ打ち込むと砲撃形態へ移行。マニエラめがけ、狙い澄ました魔法の高射砲をたたき込んだ
轟音と暴風。それに便乗するかたちで奈々美はマジカルステッキを地面に突き立てて魔法の力を発動させた。
空へシャボン玉のように飛び上がったパープルカラーのハートバルーンがマニエラたちへとホーミング。
次々と紫の爆発を引き起こしていく。
渦を巻いて吹き上がる煙――の向こうから、全く同じバルーンと魔法の高射砲弾がすっ飛んでくる。
「マジでマジなのウソでしょこれー!?」
ポメラニが素っ頓狂な声を上げて防御。結界は一瞬にして崩壊し、マニエラを庇っていたポメラニが吹き飛ばされかけた。
地面に木刀を突き立ててなんとか踏ん張り、ココロへとアイコンタクト。
「まかせて! そのくらいのダメージなら一瞬で……二十秒で? 三十秒くらいかな」
急に不安になりはじめるココロ。
「ココロ!?」
「アタッカーの火力が高すぎるの! 最近はみんなこうなんだから、もう!」
この手のスーパーアタッカーを割と間近で(というか真後ろで)見ているココロ的には、Emmanuelを打ちまくるだけでは足りないことは重々承知しているのである。
「けどもうしばらくこらえられる筈! メイさん、ルビさんー! こっちはとにかく人間トーチカになって撃ちまくるから、反応型の足止めよろしく!」
「あ、私そっちでいいんだ?」
マニエラの盾になって踏ん張るのが仕事かなと思っていたルビーだが、どうやらそっちはポメラニがやってくれるらしい。防御は得意じゃないし丁度良かったなとつぶやいてルビーは敵陣へと走り込んだ。
その横を豪快に追い抜いていくメイ。
羊型リュックサックからスラスターを露出させると、猛加速をかけて敵陣の尻尾メイへと跳び蹴りを繰り出した。
それを跳躍と宙返りによって回避する尻尾メイ。
が、からぶったばかりのメイを見てハッと目を見開いた。
「フフン、気づいたのですね
ジャジャーン! ダブルつけ尻尾なのですよ!
これを付ければメイは尻尾が3本に……勝ったのですよ」
ドヤァってするメイに鋭いハイキックがたたき込まれ、ドヤ顔したままのけぞり回避。
メイと尻尾メイは互いの手首をがしりとつかみ合った拮抗状態を作り、正面からにらみ合う形になった。
一方のルビーはメイたちの上を飛び越え宙返りをかけてから尻尾ルビーへと殴りかかる。
クロスアームでガードした尻尾ルビーはさらなる追撃の連続パンチをボクシングでいうファイティングポーズでガードしながら凌ぐと、一瞬の隙を突いてルビーを家屋側へと放り投げた。
空中で身をひねってのスピニングステップで無理矢理復帰したルビーへ、追撃のパンチを繰り出してくる尻尾ルビー。
途中の花屋さんで買った薔薇の花がポケットの中にあるのを再確認して、ルビーはそれを腕でガードした。
「私の仕事はこの二人をマニエラたちの所まで行かせないことね! わかりやすい!」
●オペレーションブループリント
飛来するマジカル重機関銃の射撃を桜模様の結界を何重にも張りまくることで防御し、ホーミングしながら四方八方より飛んでくるハートバルーンを木刀で次々破壊していくポメラニ。
だがそれにだって限界というものがる。
「ほびゃ!?」
結界が何枚も同時に破壊され、ポメラニの脇腹を砲弾がかすめていく。かすめただけで酷い衝撃が渦状に走り、ポメラニの身体は回転しながら吹き飛んでいった。くずれかけの犬小屋を今度こそ全壊させ、バウンドしながらフラットパネルへと激突していく。
「ポメラニ――!」
「マニエラちゃん、今!」
「ちゃん付はやめようココロ!?」
ココロは治癒のために絶え間なく響かせていた『Emmanuel』の音色を切り替え、結界をフルオープン。
ぎゅっと握った拳を引き絞る動作をとった。
「そうやっていつも良い子みたいに振舞ってぶってばかりいて! 偽物め、正々堂々と勝負しなさい!」
マニエラはそれに応じて扇子を閉じ、結界を反転。攻撃術式にすべて注ぎ込むと、尻尾マニエラめがけて全力で発射した。
ほぼ同じタイミングで吹き飛んでいった尻尾ポメラニをすり抜けて、尻尾マニエラの脳天を打ち抜いていく白い光線。
「これで『詰め』だよ」
と囁いたその瞬間、すぐ脇まで高速で詰め寄っていた尻尾ココロのアッパーカットが炸裂した。
「――!?」
咄嗟のことでガードをし損ねたマニエラは派手に吹き飛び、追撃のためにムーンサルトキックをたたき込もうとした尻尾ココロを刈り取るようにココロのオーバーヘッドキックが割り込んだ。
無理矢理地面に打ち落とされた尻尾ココロ。ココロのスタンピングを転がってかわすと、至近距離から無理矢理『神気閃光』の魔術爆発を引き起こした。
カウンターヒールでEmmanuelを展開するも、そのままココロと尻尾ココロは至近距離からの蹴り合いに発展していった。
そんな状態でのオニキスがとるべき行動はひとつ。
ココロへの援護射撃――ではなく。
「できれば避けたかったけど……勝負、だよ」
低空フライトユニットを展開。尻尾オニキスを軸にした周回軌道上をホバー移動しながらマイクロミサイルポットからミサイルを一斉発射。
無数の煙糸をひくミサイル群をまるで交わすこと無く、こちらをピッタリとロックオンした尻尾オニキスのマジカル☆アハトアハトがオニキスのフライトユニットを直撃。
転落し地面を滑――りながらもオニキスは無理矢理大砲を構えた。
「マジカル☆アハトアハト、発射(フォイア)!」
自分の身体が反対側に吹き飛ぶほどの衝撃。と共に尻尾オニキスの斜め上半分が吹き飛んでいく。
勝利……したが失ったものは大きい。
使えなくなったユニットをパージして起き上がろう……としたオニキスの脚をハート型のビームが打ち抜いていき、続いて無数のハート型バルーンが殺到した。
「しまったな。避けられない」
連続して起こる爆発。
爆煙の中を、尻尾奈々美がステッキ片手に爆走してくる。
「ヒッ!? あたしの偽物だったら後ろのほうで震えてればいいのに……!」
殺意マックスで追いかけてくる尻尾奈々美に、奈々美は回れ右して逃げ出した。
というより、逃げながら紫のハートバルーンを次々作り出してはけしかけていく。
それが片っ端からハートの魔術弾で打ち抜かれていくが……。
「奈々美! 取れ高チャンス! 今こそ牛さんフォームだ!」
「え、今!? 今なの……!?」
もうこうなったら、と奈々美は覚悟を決めて尻尾奈々美へ向き直った。
そのことでぴたりと脚を止め警戒した尻尾奈々美……に対して。
「よいしょ、よいしょ……」
奈々美が突然服を脱ぎ始めた。
「……」
「……」
戦闘中にいきなり脱衣しはじめたら誰だって驚く。尻尾奈々美も驚くし絶賛格闘中だったココロたちも驚いて振り返った。
ぽいっとドレスを放り投げ、牛柄のビキニ姿をさらす奈々美。
「ま、魔法少女ナナミ……丑年バージョン、です……!」
「…………」
背景に宇宙が見えるような顔でこっちを見てくる尻尾奈々美。
「今だよ奈々美!」
「う、うう……!」
奈々美は目一杯力を込めた(具体的には両手でハートを作った)ハートビームで尻尾奈々美を打ち抜いた。
一方こちらはルビーたち。
一瞬仲間が脱衣しはじめて振り返りかけたが、顔面狙いのソバットキックをガードしたことでルビーは壁に半壊した民家の屋内へと転がり込んだ。
色あせた畳の上。まっすぐ突っ込んでくる尻尾ルビー。防御するルビーと一緒になって背後の壁に激突し、脆くなっていたのだろうかそのまま浴室へと突っ込んだ。
ポケットから落ちた薔薇の花が一枚だけ花弁を散らし、それを見たルビーは咄嗟に花に手を伸ば――しかけて、すぐそばに落ちたコンクリートブロックを握って起き上がりかけの尻尾ルビーの側頭部にたたき込んでやった。
ぐらりと傾き、倒れる尻尾ルビー。
「ふう……なんだか、今更だけど……」
あちこちぶつけた場所をさすりながら立ち上がり、ルビーはあらためて花弁を拾い上げた。
「折角だから猫耳とかもつければよかったかな?」
赤い猫尻尾をはやした尻尾ルビーを見下ろして、肩をすくめる。
ルビーの決着がついた頃、メイもまた決着に近づいていた。
「やはり偽物では都会力が足りないのですよ。希望ヶ浜で都会をいっぱい体験したメイ達の敵ではないのですよ!」
リビングの椅子を踏み台にしてテーブルへ駆け上がるメイ。
尻尾メイは壁を蹴った三角跳びで高度を稼ぎ、両者は握りしめた羊さんボールを投げつけ合った。
交差するボール。荒ぶる風圧。
ココロは首を動かしてギリギリ回避し、尻尾ココロはテーブルを蹴ることで無理矢理回避。
再び拮抗するかと思われた――その時、尻尾ココロは視界にココロの姿がないことに目を見開いた。
左右を探すように視線を走らせ、そしてハッと上向いた。
「これがシティガールの――」
天井に両足をつけ、羊さんリュックからスラスター噴射をかけるメイ。
宙返りからの高速踵落としを仕掛けたメイによって、尻尾メイはそのまま地面をぶち抜いて頭を突っ込むことになった。
――かくして、カバーストーリーによって隠蔽されていた夜妖『オンボノヤス』は退治され、ポメラニは回収した尻尾をほくほく顔でリュックサックに詰めていった。
でもって。
「勝利を祝して-?」
「「かんぱーい!!」」
ダイナーでの打ち上げが、始まるのだった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――mission complete
GMコメント
■オーダー
夜妖『オンボノヤス(仮)』を討伐すること
■エネミーデータ
オンボノヤスはPCたちの外見と能力をコピーします。
……ので、参加メンバー次第と言うことになって御座います。
最低でも万能アタッカーのポメラニと優秀なサポーターのマニエラがいるので敵もそれなりに歯ごたえがある集団になるはずです。
性能が若干異なっていたりぱっと見で分かるくらい目立つ尻尾がはえている以外は大体本人と一緒です。
ちなみに最初から尻尾がはえてる人には二本目が生えます。
といっても、こっちにはパンドラ復活や情報のアドバンテージがあるのでそうそう負けはしないでしょう。
本物VS偽物の対決をお楽しみください。
■フィールドデータ
建設現場に偽装した空き地です。
半壊した二階建ての一軒家が建っていますが、もちろん住人はいません。
戦闘は主にこの内外で行われることになるでしょう。
■味方NPC
・ポメラニ・ブロッサム・テイルテイル
精霊や植物の力を借りて戦うテクニカルなバトルスタイルが特徴。
希望ヶ浜地区内では若干戦いづらそうですが、持ち込んだ花や種を駆使して上手に戦います。
元々一人で活動する賞金首ハンターなので大体一人でなんでもできます。
今回は皆さんとの共同作戦ということで、戦闘中にできる穴や隙を勝手に補完してくれるでしょう。
『尻尾ちょーだい☆』の台詞の通り、オンボノヤスの尻尾をぶったぎって自分のしっぽコレクションに加えるつもりのようです。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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