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シナリオ詳細

<アアルの野>Memory of laboratory

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●それがあなたの「こころ」なら
 『彼女』は随分と前に亡くなってしまったと聞いている。だが、彼女の名を冠したラボは残されている。
 『こころラボ』。それが彼女の遺した『我々の居場所』である。
 男は研究員だった。『こころラボ』に籍をおいていたことは在るが、紆余曲折あってそこから去り、放浪の身へ日々を費やしていた。
 男は研究員としてそれなりに優秀だったはずだが、感情に重きを置きすぎていたきらいがある。『Dr.こころ』と呼ばれるラボの創設者の話に引っ張られる形で「ここは自分がいるには狭すぎる」と定義した。
「……ここは……」
 そして放浪の果てで、遺跡群『FarbeReise(ファルベライズ)』へと辿り着いたのだ。その奥、地底湖へと。
 彼は答えが知りたかった。答えを聞きたかった。
 この世界にある多くの現実に対し、悲しい末路に対し、こころの在り方を問いたかった。
「『Dr.こころ』、あなたなら……ここを見てどう思ったのだろうか。これは正しいのか……?」
 彼は何処へともなく問いかけた。答えなど返ってくるはずがないと知りながら。
 そして失意のまま彼は踵を返した。彼は最初から、答えを知りたかったわけではない。
 彼は最初から、自分で答えを見つけたかったのだ。色宝がなんであれ、彼はきっと自分で答えを出そうと決めていたのだから。

 だから、彼は『それ』を見ていない。
 地底湖に生まれた仮初の命――新たな『ホルスの子供達』のいち個体でしかない彼女は、不完全な命に不完全な名前を与えられたサイアクのまがい物だった。
 だからきっと、彼女はこれから最後まで、人の心を理解できない。

●そこにはだれの「こころ」もないから
「ファルベライズの地底湖の先、中核にあたる場所には『ホルスの子供達』と呼ばれる、色宝と土塊で作られた人形達が潜んでいます。彼等は故人の名前をトリガーにその姿を変え、それらしく振る舞うことがありますが……かつて現れた『月光人形』とは全く異なり、色宝さえあれば復活し、思い出を持たない……飽くまで『人形』として振る舞っているなどの特性があります。ですから、今から説明する内容はあくまで『ホルスの子供達』の情報であり生前の「その人物」の情報ではないことにご留意ください」
 『ナーバス・フィルムズ』日高 三弦(p3n000097)はファルベライズの現状、そしてこれから対峙すべき相手について手短に説明する。『イヴ』と呼ばれる個体と同じ存在。されど、概ね敵性存在。自分達が紛い物であることを認識している彼等は、呼ばれた名前に対し「そう」であろうと振る舞っている。
「今回、皆さんに向かってもらう場所に居る個体の外見情報はこちらで確保済みです。どうやら、かなり昔の人物であるそうなのですが……」
 そう言って三弦が壁に投影した覚書程度のスケッチに、フリークライ(p3p008595)がゆっくりと歩み寄った。
「ン。フリック コノ人 知ッテル」
「……え?」
「Dr.こころ。フリック 作ッタ」
 フリークライの言葉に呆然と返した三弦に、更に驚きの言葉が続く。
 つまり、額面通り受け止めると「彼女」はフリークライにとってかなり重要な相手である、ということだ。
「……だとすれば合点がいきます。当該フロアの内部構造は研究室のような構造で――といっても『ホルスの子供達』が研究という概念をなぞっただけなのでひどく出鱈目な構造なのですが、内部にある装置らしきものから絶えず小型の生物が生まれているとのことです。尤も、『生物』という型に嵌めているだけで、錬金モンスターが彼女の演技に合わせているだけの可能性もありますが……」
 フリークライは、その話を聞いてそれが『彼女』ではないことを改めて理解した。
 Dr.こころは、無為に心なき生物を生み出すことはないだろう。だから、それは違うものだ。
 紛い物とはいえそれを手に掛ける覚悟、仲間にそれを託す覚悟が――彼に試される。

GMコメント

 皆さんすっかり忘れたかも知れませんが私のPPPデビュー作は月光人形事件なんですよ。

●達成条件
・『Dr.こころ(偽)』の撃破、『シェセル』の殲滅、『キムファス』の破壊
・(オプション)『Dr.こころ(偽)』撃破の前に後者2つの達成条件を満たすこと

●『Dr.こころ(偽)』
 大体はOPの通り。本人の記憶などは有しておらず、僅かな情報から上辺をなぞっているに過ぎない。会話能力もほぼ皆無といってよく、意思疎通は困難だろう。
 本人に攻撃能力はほぼ無いがHP、防技高め。HP減少量に比例し『キムファス』の稼働効率上昇(後述)。

●シェセル×15(初期数)
 キムファスから排出される、頭が鋭い矢の形をした鳥や蛇などの怪生物。実際は生産されている、というわけではなく既存の錬金モンスターに精霊が鋳込まれ、拒絶反応に苦しみ暴れているようなもの。
 HPは然程多くないし基本レンジ0~2の通常攻撃(【致死毒】【崩れ】【懊悩】【喪失】)を主にするが、1ターン1~2体(初期2)発生する変種は範囲回復を用いる。

●キムファス
 シェセルを製造する錬金装置。
 初期状態で毎ターン5~7体、Dr.こころのHP減少量に比例し製造数が加速する。
 当然ながら破壊難度はそれなり高く、【棘】常備。

●戦場
 ファルベライズ中核フロア、『研究者の部屋』。
 研究資材らしきものの模造品が散乱している。なお、壊すとDr.こころ(偽)が悲しそうな顔をする。 
 雑然としているので足場に注意。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <アアルの野>Memory of laboratory完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年01月17日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女
Tricky・Stars(p3p004734)
二人一役
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
イカルガ(p3p007758)
特異運命座標
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)
人間賛歌
黄野(p3p009183)
ダメキリン

リプレイ


「主ヲ 思ッテクレタ人ガイタ ソノコトヲ 嬉シク 想ウ」
「ガワだけ似せて中身はナシ。話しを聞くにタチの悪い話ね」
「ダガ フリック “彼女”ニ 怒リ ナシ」
「まさしく作品に泥を塗る行為だ。不愉快極まりない」
 『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)は朧気に覚えていたその相手の面影に目を細めつつ、純粋に“彼女”を想う誰かに対する感謝を口にした。『never miss you』ゼファー(p3p007625)や『二人一役』Tricky・Stars(p3p004734)、こと『稔』にとって『ホルスの子供達』はただ単に、在るべき思い出の場所に陣取っただけの碌でもない存在でしかない。が、本人にとっては「彼女を信じる人がいた」事実として証明されたわけで、喜ばしいと思うのも道理だろう。
「この年になりゃあ、死んだ奴というのは山ほどいるもんで。そいつらにはおとなしくしていてもらいたいもんだ」
「こころもたぬ生き物、か……なんだか、物悲しいの」
 『銀河の旅人』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)の積み重ねた人生を思えば、知り合った者と別れた者とのバランスが徐々に崩れだす年齢だろう。だからこそ、忘れた者や別れた者との再開は望むまい。『正直な旅人』黄野(p3p009183)は目の前の『ホルスの子供達』のことを知識として理解できても、実際に声を放ち人らしく振る舞おうとするその在り方がわからない。虚しいだけではないか。
「どれだけ姿が似ていても、どれだけそれらしく振る舞っていても、それが“本物”だという事なんてあり得ない。たとえ奇跡に縋ったとしても、死者が蘇る事なんてあり得ないのよ……」
「フリック……貴方とは付き合いも短いし、正直言ってよく知らないけど、その……」
「ン。フリック 覚悟 デキテル」
 『プロメテウスの恋焔』アルテミア・フィルティス(p3p001981)の喉奥から響いた音の意味を、この場に居て理解できぬ者はそう多くあるまい。失った者と再開し、そしてまた失った。その心がどれほどの重石で沈められたのか。だからフリークライの感情も同様にそうであろうと、最初は思った。
 『暁の剣姫』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)も一度ならず別れを経験している身として、その姿を見た。だからきっと、フリークライは心を痛めているのではないか……と。だが、現実はどうだ。
 その秘宝種はその状況、そうあることを受け入れている。常道にあらざる眼の前の現実を、誰かが主人(と彼が朧気に記憶している相手)を想うが為だと。
「……随分いい機械を持っているな」
「シェセル 非道ナレド 君 製造サレタ役目 果タソウトテイルダケ。タダ 寂シク 思ウ」
『フリークライ君にとって大事だった人がこんなものを作らされたのは、確かに……胸糞悪いぜ』
 『ノイジーリスナー』イカルガ(p3p007758)はこの世界の道理がどう、『Dr.こころ』がどうであろう、という前提を知らない。だから、もともといた世界、これまでの人生に刻みつけられた数多ある不快感の最たるものとしてキムファスを睨みつけた。それが、二重の紛い物である研究者もどきから生まれたものだとして、生まれたシェセルに罪がないとしても、彼の心をざわつかせるものだ。
 フリークライは彼の怒りを理解しつつも、心なき者しか生み出せないそれに憐れみを向けるだけの機微があった。その器の広さを見たればこそ、『虚』はなおのことその秘宝種に縁在るものの外観をした個体を手に掛ける、という行為を躊躇する。
「貴方が紛い物に対しても気持ちを割けるのは、貴方を作った人がとても優しかったから、とアタシは思うの。だから……止めなくっちゃね!」
「フリックの覚悟、受け取った。現世は生きてる者の場所だ。思い出は犯しちゃならん宝物だ。無理やり呼び出された亡霊には御退場願おうとするか!」
 ミルヴィとヤツェクはフリークライの意志を汲み、そしてその心根の強さを理解した上で各々の得物をとった。
 ヤツェクはその心根を称賛する。覚悟の重みを知っている。だからそれに報いなければ。
 イレギュラーズから決意と怒り、そして戸惑いの入り混じった感情が溢れる。
 シェセル達はその段になってやっと、彼らを敵と認識した。キムファスの胴体部分が駆動音に震え、新たな個体を排出せんとする――その様子を、『Dr.こころ』は感情のない目でじいっと見つめていた。


「千里をも駆ける、とはいかんが……うむ、任せおれい」
 黄野はそう告げるなり己の速力の許す限りに一気に間合いをつめ、仲間から離れた位置のシェセルの1体へと斬りつける。なめらかな切り口は、彼のこの世界での研鑽あらばこそ。
「敵が物量なら……速攻で押し切る!」
「…………」
 ミルヴィの思考は単純明快で、それでいて止め難いものだった。発生源であるキムファスを叩き、以てシェセルの発生を止める。距離を一気に詰められれば有利に働くことは間違いない。……が、彼女とキムファスの間にシェセルのいち個体が割り込んでその進行を押し止めた。ただでさえ数で上回る敵方で、本陣に『踏み込む』のは簡単なことではないのだ。
『Dr.こころの方はノーマーク……攻撃されてもいい、か。それは作られた側としてどうなんだ』
 『虚』は微動だにせずに視線を巡らすDr.こころへと肉薄すると足を止め、彼女の視界を塞ぐように立ちはだかる。彼女とキムファスが連動しているのなら、一歩も動かさない、向かわせないことこそ最善策だ。それが1人分のリソースを削ってでも為すべき彼の役割である。
「それじゃあライヴといこうじゃねえか。アンタの舞台だ、最後まで踏ん張れよフリック!」
「ン。 託ス 願ウ 皆ニ ドウカ命ノ解放ヲ」
 ヤツェクはギターのビートに乗せ、魔力循環の効率化を促す。己とフリークライへ向けたそれは、両者が攻防両面で重大な柱となるがゆえである。
「……分かってる。分かってるわ。待っていて」
 アルテミアはロサ・サフィリスとプリゼペ・エグマリヌの2振りを握り、シェセルの群れへと切り込んでいく。黄野とミルヴィが傷つけた個体へは届かぬまでも、広く深くに叩き込んだ斬撃は彼女の斬撃の精度をしてより深く突き刺さり、5体ほどを一気に薙ぎ払った。脳裏に叩き込まれる精霊達の悲鳴が、一瞬にして感謝と解放の喜びへと転じたことは、もう一歩踏み込む原動力たり得る。逸る足を止めた彼女が双剣を揃えて前方に突き出した瞬間、周囲のシェセルが飛び退いたのは、偏に邪剣の気配を感じ取ったからだろう。
「……喩え完璧なのはガワだけだとしても、それって尚のこと最悪よねぇ」
「演じ分けが出来ない演者なんて、人生の舞台に立たせて置くのも惜しい。君はそういうタイプだろう?」
「…………」
 ゼファーはrun like a foolを振り回し、キムファスへの道を塞ぐシェセルを切り裂いていく。高い精度と思い切りのいい踏み込みは確実に数体を蹴散らすが、一体だけ入りがやや、浅い。仲間達に喰らいつき傷と不調を撒き散らすそれは、残り1体とて脅威に変わりはない。
「……チ。あの機械、厄介極まりないというのに」
 イカルガは目の前で繰り広げられる仲間達の機敏な動き、連携のとれた戦いぶりと、それに追いつけぬ自分に焦りを感じていた。踏み込み、己の『異能』を叩きつけることであれを壊せる可能性はある。だが、シェセルと呼ばれる異形がそれを阻む。視界いっぱいに広がったシェセルの胴が視線を遮り、その身に鏃と化した頭部が突き刺さって漸く、彼は『ままならぬ』ことを理解する。
「ねじ曲がれ――!」
 まず、目の前の個体を潰す。機械はそれから。脳内をかき乱す雑念を無理やり追いやったイカルガの叫びは、ゼファーが取り逃した1体、その頭部を捻じり爆ぜさせた。
「ままならぬのう、お互い」
 黄野は荒い息を吐くイカルガを見て、静かに頷く。ままならない。自分が出来ることが、どれほどのものかを客観視するには戦場で力を振るうしかなく、その時はじめて、諸々を思い知る。
「だが、数で有利に立てる以上はままならぬが道理じゃ。今為したように、まず小兵の数を減らさねばな」
「わ、かっ――て」
 イカルガは黄野の軽口に声を荒げようとしたが、シェセルから受けた多数の毒に膝をつきかける。目眩と痺れと身の捌きを減衰させるそれらは、彼に抗う暇を与えず――。
「イカルガ 立派 ヨク倒シタ」
「アンタの不調はこっちで無視させてやる! アルテミアとゼファーに数撃ちの雑魚は任せて、キムファスをぶっ叩きたいならそうしろ!」
 瞬間、直前までの傷ごとイカルガの身から不調が消し飛んだ。否、不調の『影』は隠れている。だが発現せぬようにヤツェクが術式を付与したのだ。傷はフリークライが癒やした。
 彼1人なら、シェセル数体がやっとといったところだろう。が、仲間の意図を汲んで「そう」させることに関して、ここに轡を並べたイレギュラーズは一級品の精度を誇る。
「変種の見分けがつくようになったら此方でも倒すけど……黄野さん、万が一のときは?」
「任せられい。1体ずつならオレでも足りる」
 双剣を振って血を払ったアルテミアは、黄野へ目配せし言葉を紡ぐ。黄野もまた、彼女の意志を汲み取った。
「ミルヴィ、シェセルが吐き出される位置がわかったら……いいわね?」
「真っすぐ行って――」
「「ぶっ壊す」」
 ミルヴィとゼファー、その戦い方は決して同列には語れぬもの。だからこそ、同じ敵を狙った時に「自分にできぬ手段」を託せる。だからこそ、息が合うこともある。
『フリークライ君にとって大切な人を傷つけるわけにはいかない。けど、偽物だからそうと限らない』
「俺は知らないけど、不出来な作品は“彼女”が一番嫌うところだろう。否、そういうものを愛してこその“彼女”なのかな?」
「Dr.こころ 出来不出来 分ケナイ 等シク 与エル」
 『虚』と『稔』はDr.こころを知らない。けれど、彼女を傷つけることでキムファスの稼働を上げるわけにはいかない。ゆえに、衝術で彼女を壁際に追いやり、誰も庇わせない。それしかできない。彼が全ての可能性のリソースをその一つに注ぎ込む意味は、語るまでもない。だからフリークライに問う。フリークライも、かつての彼女を思い出すように……秘宝種という存在が覚え得ない『混濁した情報』から拾い上げた断片を口にする。
「ガワが完璧なら、人の心は如何様にでも揺れ動かせるもの……ね」
 ゼファーは真っ直ぐに槍を突き込み、シェセルの排出部を貫く。頑健さゆえに完全には貫けぬが、それでも動きの乱れは次へと続く。
 ミルヴィが決心したように息を吸い、己の中の殺人鬼の側面を引きずり出す。
 理性をそのままに、ファル・カマルとイシュラークを構えた彼女はより激しく踊り狂い、キムファスの可動部へ次々と攻撃を叩き込む。
「これがアタシの全力の剣! ファム・ファタル!」
 ゼファーが破損させた部位に、確実に乗せたそれはより激しい破壊を送り込んだ。
「……れ」
 それがお膳立ての全てだ。
 それで視界は拓けた。
 世界に数多ある『異能』のひとつ、彼に与えられた特別は、そこに立つ資格がひとつで全て。
 得意運命座標であるという事実が、他すべての「足りぬ」「至らぬ」を押し流す。
 イカルガの『歪曲世界』が、破損したキムファスの可動部をイメージする。ねじ曲がったそれをイメージし、現実に重ねる。
「ねじ曲がれ」
 そこから先は『答え合わせ』だ。内燃機関や稼働する冷却液などが持つ全ての運動エネルギーが乱れ狂い、イカルガのイメージへと整合する。……彼自身の実力の限界はあろうが、初陣にしては『よくやった』方だ。
「それじゃあ、ここからはおれも攻勢の時間だ。全部潰すまで倒れるなよ、イカルガ!」
 ヤツェクはR.S.Cを握ると、天井へと銃弾を放つ。新たに生まれたシェセルごとキムファスへと降り注ぐそれは、仲間達をなんとか避けつつ叩き込まれ、着実に稼働効率を下げていく。
「…………、!」
「なんて不出来な演技だ」
 『稔』は壊れゆくキムファスに声にならぬ絶叫を上げるDr.こころに心底からの嫌悪を示した。
 人の感情も、造物に愛を注ぐということも知らぬのに、己の臓物には一丁前に物惜しさを感じるなどと。
「君ハ 最後マデ役目 果タシタ」
「いいのかい?」
「ン」
 フリークライは、ゆっくりとDr.こころへと歩を進める。壊れ逝くキムファスではなく彼女を、己の手で仕留めるために。
「君ニ オ疲レ様ト オヤスミナサイヲ」
 治癒のために高めた魔力は、彼から攻勢という側面を削ぎ落としていた。それでも振り下ろす拳は、彼女に対する手向けであろう。
「普段は鼓舞の歌だが、今日はレクイエムだ――叩き起こされたドクターの概念に対する、な」
 ヤツェクはそううそぶきながら、ギターをより激しくかき鳴らす。
 イレギュラーズ達は、彼の決心の背を押すために、彼の苦しみを長引かせぬために、全霊を以て――彼女を殺す。

「貴方のその表情、仲間が壊される度につらそうな顔をするのはどうして……?」
「…………」
 ミルヴィは、死に瀕したDr.こころに語りかける。返答は無形の声。だから意味などわからなかったけれど。
「『痛いのに愛されていた』……そう。彼女は愛し方を間違ったまま……今まで?」
 アルテミアは、精霊達を通して彼女の過ちを知った。それは紛い物としてしか生まれることの出来なかった女の、たった一つの過ちだ。
「喩え中身が伴わないものだとしても、感傷って奴は甘やかな毒ですもの。……誰しもが、過去を切り離せるほど強くはありませんからね」
 ゼファーはそう呟くと、朽ち始めた土塊から色宝を抜き取った。

 ……主。主。主。アア。寂シイ、ヨ

成否

成功

MVP

ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)
人間賛歌

状態異常

イカルガ(p3p007758)[重傷]
特異運命座標

あとがき

 フリークライさんの持つそれが本当の記憶かは、誰にもわかりません。
 けれどたしかに、Dr.こころの紛い物の根底とフリークライさんが知る彼女の心根は同じものだったのでしょう。

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