シナリオ詳細
再現性東京2010:雪惑のサンタクロース
オープニング
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お決まりのクリスマスソングが鳴り響く。再現性東京は『クリスマス』を待ち望み冬を粧い、光の奔流に包まれる。イルミネーション溢れる街の中をするりするりと抜けるように歩む少女は「見つからないなあ」とぽそりと小さく呟いた。
赤いランドセルを背負い、マフラーに赤くなった頬を埋めた彼女が探すのは『サンタクロース』。幼い頃からクリスマスの日に決まってプレゼントをくれる白髭の不思議なおじさんだ。
彼の手伝いがしたいのだと一念発起し、放課後、両親に黙って市街地まで出てきた少女は『サンタクロース』を見つける前にとっぷり沈んだ太陽に名残惜しそうに白息を吐く。電灯に灯された仄明かりは規則正しくちかり、ちかりと点灯を繰り返す。
華やかなる街を往く脚も次第に重たく。行く手さえ分からなくなったと涙滲んだ眦は不安を湛え。幼い少女は手袋に包まれた指先でコートをぎゅうと握りしめる。
サンタさんは、会ってくれないのかなあ。
サンタさんは、どこにいるのかなあ。
スピーカーから流れる音楽が聞き飽きてきた頃、少女の目の前に立っていたのは。
「メリークリスマス」
――赤一色の衣服に身を包んだ大男であった。
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「悪性怪異のサンタクロースって知ってる?」
カフェ・ローレットの軒先で飼い犬の面白山高原先輩と遊んでいた『探偵助手』退紅・万葉(p3n000171)は訪れた『愛娘』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)にそう問い掛けた。
「ああ。最近街を騒がせているヤツだろう」
「そのとーり! クリスマス目前の希望ヶ浜でちょっぴりお騒がせな人攫いさん。
面白山高原先輩と一緒に調査をしたんだけど、聞いて聞いて?」
若葉の色の瞳をきらりと輝かせる万葉は『探偵』ごっこの最中にその夜妖を補足したのだという。
「日がとっぷり沈んだ頃、サンタクロースに会いたいってお祈りしながら一人で立っていると赤い大男が現われるそうなの。
それがね、『悪性怪異:夜妖』のサンタクロース! プレゼントなんてくれないよ? 色んな噂の尾鰭が付いててとっても危険なヤツなんだから!」
サンタクロースに纏わる都市伝説は数多い。姿を見られたら殺してくるだとか、赤い服は返り血が目立たない為だとか……。
何とも夢がない。もしもサンタクロースの存在を信じているような――そう、万葉のような娘が居たならば卒倒してしまいそうな内容ばかり。
条件さえ満たせばサンタクロース(怪異)が現われるのならば、と万葉は市街地に程近い人気無い空き地を見つけたのだと手にした手帳に挟み込んだ地図をずいと差し出した。
サンタクロースを倒した後に少しならば華やぐ市街地のイルミネーションを覗き見できる、そんなロケーション。冬の寒々しい空気に負けないように暖かい格好は必須かとエクスマリアは地図を眺めた。
「サンタクロースを倒したらイルミ見にいっても良いと思うんだよ」
「……そうだな」
「でね、それで、此の儘だとホンモノのサンタクロースが出てこられないよね?
それに、攫われた子供達も早く助けてあげなくっちゃ……きっと寒いもの!」
「……あ、ああ」
エクスマリアは頷いた。
ふんすーと拳固めて「よね?」と問い掛ける万葉の背後では幾人かが渋い顔をしているのが見て取れる。サンタクロースを信じると言う設定が付帯している天真爛漫な娘の傍らで重い腰を上げた犬が「行くか?」とアイコンタクトを送った。
「さあ、皆! 行くのだよ!」
淡く色づくミルクティブラウンの髪を揺らした娘は「悪いサンタクロースを撃破しに行こう! 夢を護る為に!」と力強くそう言った。
- 再現性東京2010:雪惑のサンタクロース完了
- GM名日下部あやめ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年12月26日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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クリスマスソングが響く街角で、一人の少女が楽しげに歩を進める。歩みは淀みなく、花咲くような桃色の眸には喜色が満ちる。『魔法少女』エシャメル・コッコ(p3p008572)は「サンタさんに会えると聞いてやってきたな!!」とそのかんばせを綻ばせた。
「サンタですか……私はそこそこの歳ですので子供のように無邪気に信じているわけではないですが、それでもなんだかんだでいると思いますよ」
子供達の夢の象徴。クリスマスにプレゼントを配り歩く赤い服のおじいさん。信じてないとは言い切れなくとも信じているとも言えやしない。『姫騎士アイドル』海紅玉 彼方(p3p008804)は「とはいえ、騒動を起こすサンタクロースは別ですね」と大きく頷いた。
再現性東京で子供を拐かす事件が発生しているのだという。それもサンタクロースを信じる純真無垢な子供達である。
(何時の時代もどの世界でも良い囮ってのは子供だ。キレイでも汚れていても使える。
依頼は依頼だからな……夜妖をおびき寄せるまでは役だって貰う。用が済んだら……回収するか)
『探究の冒険者』サジタリウス・パール・カッパー(p3p008636)は前を進むコッコの背を眺めながら後方の溢れるイルミネーションを受け止める。鮮やかな其の光の海を受け進む一行の中でふと首を傾いだのは『愛娘』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)。
「サンタクロース、か……詳しくは知らない、が、偽物が蔓延るのは、良くない」
「元いた世界にはクリスマスもシャイネンナハトもなかったから不思議な気分。
……けど、誰かの楽しみを、子供の夢を傷つけるような相手は許せない。しっかりと解決しないといけないね」
所変われば文化も変化するから。『鏡の誓い』ドゥー・ウーヤー(p3p007913)は自身も余り詳しくないけれど、と頷いた。エクスマリアもサンタクロース伝説を耳にすれば屹度存在するのだろう、と感じて鳴らない。
「サンタさんはいるよ! どの世界でも絶対いる! クリスマスって概念は俺の世界もここにもあるし。それに信じてた方が楽しいじゃん」
力説する『レッド・ドラマー』眞田(p3p008414)。サンタクロースと唇乗せて、『蒼騎雷電』イルミナ・ガードルーン(p3p001475)は「赤い服に白いおひげのアレですね……!」と大きく頷いた。
「そうそう。夜妖じゃなくってホンモノのサンタさんならいいのにねー。ボクは最新の練達のゲーム機が欲しいんだ!」
赤いリボンをぴょこり、と揺らして。『魔法騎士』セララ(p3p000273)は偽物のサンタさんなんて許せないと力強くそう言った。
「……サンタさんの偽物。嫌だな……サンタさんはもっと楽しい存在なんだ。子供にあげるのはいいけど奪うのはやめろよな!」
拗ねた様子の眞田に大きく頷くセララ。一人進むコッコの背を眺めて居たサジタリウスは「標的が来るぜ」と静かな声音で囁いた。
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コッコ曰く――『チキューにサンタさんはいて、あっちのサンタさんとは魔神タクロースサンとの戦いでキョートーしたけど、こっちではそんなことしないな? こっちのサンタさんはヘーワなー』
コッコはサンタさんが大好き。サンタさんもコッコが大好き。何故ならコッコはいいこだからと胸弾ませて。コッコのお気に入りの『コッコミサイル』もサンタさんからのプレゼントだと思えば、今日『夜妖』を誘き寄せる囮役にも自分はぴったりなのだ。何故ならば、其れを持っていれば『いいこの証』なのだから。
「それはそれとしてコッコ、サンタさんに会うな!
サンタさんに会いたいってお祈りしながらうろうろしてればいいな? ちょーカンタンな!」
サンタさんに会いたいとうろうろと歩くコッコのその背に「おい」と低く地を這うが如き声が聞こえる。ゆっくりと振り向いてからコッコは「サンタさん……?」と首を傾いだ。
「ところでこっちのサンタさんはお顔がないな? かわってるなー」
淡々と、穏やかにそう呟いたコッコへ向けて現われた夜妖の手が伸ばされる。サジタリウスのバイクがエンジン吹かせ、エクスマリアは氷雪の如く美しい刀身をすらりと抜いた。
「万葉と面白山高原先輩は、危ないからもう少し、離れていると、いい」
「ええ、わかったわ! 面白山高原先輩と待機しているから!」
「面白山高原先輩、任せたぞ」
若葉の色の眸を煌めかせる万葉が何処まで理解しているかは分からない。共連れの犬に一つ、頼んでエクスマリアは地を蹴った。
薄らと光を帯びたその氷の刃の煌めきと共にぱち、ぱちとエクスマリアの美しい蜜色の髪が電気を帯びる。雷弾は地を走りコッコに手を伸ばすサンタクロースの腕を弾いた。
「おっと、こっちだ」
「わー、サンタさん、またなー」
サジタリウスがコッコを抱え上げて後方へ。狙い定めた子供から引き離され、攻撃を受けた夜妖は驚いたように顔を上げた。
「やっぱり偽物サンタさんなんだね。もしかしたら本物が来てくれるかもって思ってたから残念。
さあ、偽サンタ退治だよ! クラスカード『サンタ』インストール! 魔法サンタセララ参上!」
ミニスカサンタクロースの衣装をその身に纏う。ファーがふんわりと揺れて、紅色の衣裳に身を包んだセララはラ・ピュセル――の代りに白い袋をむんずと背負う。
「子供達の夢はボクが守る! 偽サンタを倒して、ボクがサンタになってみせるよ!」
びしり、と指さしたセララの美しい金の髪が靡けば、イルミナの前にエネルギーフィールドの如き盾が展開された。腕部から生成される細く、鋭く形成されたエネルギーの杭がサンタへと打ち込まれてゆく。
ドゥーは憎悪の剣を思わせる強き決意を胸に不可視の悪意を放つ。神託者の杖に乗せた神秘はサンタクロースを包み込む。
「サンタの名を騙りし怪異よ、覚悟しなさい! この私が成敗します!」
淡く水色が揺らぎ紅の色へと変化する。彼方は刻んだ最小の『儀式魔術』に強き決意をその口上に乗せサンタの意識を奪い取る。
「―――」
その顔面は何も語ることは無かった。小さく溜息を吐く。リボルバーを構えたサジタリウスは「よお」と静かな声音を這わす。
「俺の元居た世界には白いサンタクロースと黒いサンタクロースがいた。
白は良い子にご褒美を、黒は悪い子にお仕置きを。どちらも子どもを思っての事だが、お前はどうなんだ?」
「――――」
「……夜妖に問い掛けても返事は得られないと思うが、な」
顔がぐねぐねのサンタクロース。それが『そうしたウワサを集合させたもの』だとしても、コッコは何も疑わない。珍しくも無ければ、怖くもない。世界が違えば常識だって変化する。屹度、『そういうご当地サンタ』なのだと信じて疑わない。
「でもなんで包丁もってるな? そんなの振り回したら危ないな? みんなケガしちゃうな?
……はっ! さてはこのサンタさんニセモノな!? サンタさんが誰かを傷つけるわけないな!」
「そうだよ!」
気付いた? と微笑んだ魔法騎士にコッコはこくこくと大きく頷いた。魔法騎士と魔法少女、騎士アイドルの揃った戦場は圧巻だ。夢の詰った総員に眞田はサンタクロースに奇襲を果たし指さした。
「おいおいその顔…姿は赤いし顔は黒いし、俺ちょっとシンパシー感じちゃうな! でも、俺の方がすごい。俺の方が夢配れる自信あるもんね!」
「それはシンパシーをかんじて良いのかわからないな!」
コッコの言葉に眞田は「確かに」と小さく呟いた。袋に攻撃しないようにと気を配り、サンタクロースを攻め立てる。袋に攻撃が当たれば『中身』が傷つくからだ。それはゲームオーバーである。
「コッコ、ワルモノにはよーしゃせんな! そーいんせんとーたいせーな!」
我に続けとずんずん進むコッコを追いかけて進むセララはその刃に彩を乗せる。
地を蹴って、振りかざされた巨大な包丁をひらりと良ければ兎の耳を思わせたリボンがひょこりと揺れた。
包丁を受け止めた彼方が「今だよ!」と紅色の眸煌めかせてそういえば、イルミナの蒼雷の軌跡が辿り往く。サンタクロースを突いたその攻撃が淡い軌跡を描いて宙を踊る。
「……ふふん、まぁイルミナには通用しませんが!」
大きな包丁を振り回すパワーすら、通じないのだと胸を張ったイルミナにドゥーは頷いた。
サンタクロースは素敵で、コッコの言ったとおり人を傷付けるような存在ではない事は理解できる。自身が大人と判定されなければ、彼は純真無垢な心を持っていると手を伸ばしただろうか。
考えても栓は無く、悪意の魔術を使う自分は屹度、このサンタクロースの敵であることには違いない。
(サンタクロースは素敵だけど、誰かを傷付けるような相手がサンタクロースだとは思えない。ここは全力で戦わせて貰うよ……!)
弓を番えれば、悪意の魔術がサンタクロースを包み込む。眞田は単調かと思われていた包丁の動きが変化したことに「わ」と小さく声を上げた。早かったり避けれなかったら――保険として投げたナイフ二本が急所へと刺さってゆく。
「俺も痛いし超怖いし、子供達も痛いし怖かっただろうし……だから夜妖さん君にも同じものをプレゼントしてやるよ」
青年の唇にゆったりと笑みが乗る。「痛いだろう」と問い掛ける声音は低くは無く、何処か楽しげに。夢を配る青年は臆すること無くサンタクロースと向き合い続けた。
「サンタさん! コッコはいい子な! いい子のコッコに包丁を振るのは悪いサンタさんのあかしな!」
憤慨した様子のコッコは偽物ならば容赦はせず、とべえ、と舌を見せた。ぴよぴよステッキをくるくる回す。夢と希望と乙女心でステキで不思議な奇跡を生み出すようにサンタさんい『だめなのな』のしるしの冠位封印を施した。
召喚獣のひよこちゃんとひよこくんはお留守番。サンタさんに対するコッコの傍でその包丁を受け止める彼方の魔神の指環が美しき光を帯びる。真鍮の指環の魔力が光放ち、接触箇所から生命力を『逆転』させた。傷を気にせぬようにと努力続ける彼方の傍で「任せて」と声が響く。
加速し、地を蹴った指先がアスファルトから跳ね上がる。聖剣は閃き、鮮やかな雷鳴を美化瀬田。
「雷鳴一閃! ギガセララブレイク!」
サンタクロースの袋が地へと落ちる刹那、サジタリウスが其れを抱き抱える。中に入っているのは今まで拐かされてきた子供達だ。
「俺の仕事はここまでだ、締めは頼んだぜ」
サジタリウスが保護する子供達。眞田とドゥーはサンタを引き離すように攻撃重ね、彼方はもう少しで押し切れると顔上げる。
「――――」
「これ以上、何を言う。サンタクロースとも呼べぬ存在」
ぞう、と金の髪が伸びる。眸は合わせ鏡。伽藍なるそれは何もかもを飲み込む洞。満ちぬ底なしは、心を蝕むが如く――
「知っている、か? お前の基となった存在は、聖人として、世界中の子らに、夢を与えているそう、だ。その夢を餌に、子らを襲う魔性。叩き潰すに、容赦は、要らない」
無尽蔵に膨れ上がった魔力が渦巻く顔を捉えては放さない。まるで、相手の眸を捉えるように。眼球が其処にあると認識したかのようにエクスマリアの魔性が迫る。
「なんでも、マリアの名もその世界では、聖母、等と呼ばれるらしいので、な。
眼球どころか、顔自体定かにならない粗悪品の様だが、視えているのなら、問題ない。さあ、マリアの眼を視て、爆ぜて、潰えろ」
●
「悪い偽物サンタは本物サンタのボクがやっつけたよ。クリスマスにはまだ早いけど、良い子にプレゼント!」
冬空を踊って本物のサンタクロースを演じたセララはぱちりとウィンクを一つ。ギフトで作ったデフォルメ絵柄の漫画を子供達へとプレゼントすれば「有難う、サンタさん!」と子供達は微笑んだ。
「偽物の怖いサンタさんを倒したら、代りにウサミミサンタさんが良い子の所にやって来るよ!」
ウサミミサンタさんのプレゼントをぎゅうと抱き締めて。幸せそうな子供達に彼方は「無事で良かった」と呟いた.その眸は淡く紅色に染まり、彼方から『オーシャン・ルビー』に変化する。
「みんなー! 悪いサンタはもういないから、お姉ちゃんたちと一緒におうちに帰ろうねー!」
にんまりと微笑んだ『オーシャン・ルビー』に子供達は小さく頷く。万葉と共に子供達を親元に帰してからキッチリ仕事はコンプリートだ。もう少し掛るけれど――一緒に居ようと微笑んで。
「一件落着、事件解決かな? 顔を黒くしても探偵がいちゃ捕まるのがオチだよな……ああ怖い、なんか他人事じゃない気がするぜ」
「ねえ、眞田さんって捕まる要素があるの? 私ったら『探偵助手』という生き物なのだけど」
「ぅえ」
慌てる眞田をまじまじと覗き込む万葉。慌てる彼を他所に、一件落着なら『お腹も空く』と言わんばかりにコッコは手をふりふりと大きく振って見せる。
「よーっしおまえら、コッコについてくるな!
さいこーのプリンをごちそうしてやるな、しょーりのプリンな! コッコ、おーばんぶるまいな!」
楽しげににんまり微笑むコッコに頷きながらドゥーはaPhoneを通じて子供を見つけたことを連絡する。近くの交番まで連れて行けば、時期にお迎えも来ることだろう。こう言う時にaPhoneは便利だと実感しながら「立てる?」と問い掛ければ幼い子供達は「ぷりんたべたい」ともじもじと呟いた。
「うん、プリンを食べながら行こうか。イルミネーションも見ながら」
ドゥーに頷く子供達。共に歩くエクスマリアはぱちりと大きな眸を瞬かせた。
「ああ、ところでコッコ。そのプリン……マリアにも一口、良いだろう、か?」
首傾げ、そう問い掛けるエクスマリアにコッコは「どうぞなのな!」と大きく頷く。
飾り立てられた街をのんびりと進もう。光の海は体を包み込むように溢れているのだから。
「よし、清々しい心でイルミネーションを見よう!
無邪気な子供たちを見ていると俺まで子供に戻ったような気分になるな。俺もプリン食ーべよーっと!」
「眞田さん」
つんつんと突く万葉に眞田はにこっと笑みを浮かべた――だけだった。
「イルミネーションか……行くか」
重い腰を上げたサジタリウスに「一緒に行ってくれるのな!」とコッコが笑みを浮かべる。
「ガキだけで夜出歩かせていると後で面倒になりそうだからな」
「そうっすね、再現性東京は補導されたりしやすいっすから」
うんうんと頷いたイルミナにコッコは「ほどー?」と首を傾げる。
「危ないのは駄目って教えてくれるっすよ」
「ああ。マリアたちが歩いていると、サンタのようなものが遣ってくるからな」
ははあ、と頷くコッコにイルミナとエクスマリアは頷いた。
「なんていうか、夜なのにきらきらで……寒い夜なのに不思議と温かい気持ちになる」
こうして、この世界に来て綺麗なものを見ることが出来て、嬉しく感じるのだとドゥーは周囲の鮮やかな煌めきを見回した。木々に飾られた電灯は星のように光を帯びる。
プリンを食べて、この時を楽しもうと微笑む仲間達を眺めながらバイクにもたれたサジタリウスはブラックの缶コーヒーをちびちびと飲み続ける。暖かな缶のぬくもりが白い息を作り出した。
「セララちゃんやコッコちゃんとアイドルしてみるのも楽しそう!」
瞳を煌めかす彼方は「万葉ちゃんもどう?」と問い掛ける。面白山高原先輩の背を撫でていた万葉はすくりと立ち上がり、「私でもアイドルになれる?」と楽しげに微笑んだ。
光の海で、少女の歌声が響き出す。楽しげに、声を震わせ、響かせて――何処までも届くように。
屹度、本物のサンタサンにも声が届くね、と微笑めば「ウサミミサンタさんがお姉ちゃん達にも来るね」と子供達は揶揄い笑った。
それは、聖夜訪れる少し前の優しい時間――甘いプリンに舌鼓を打ちながら、今は光に包まれていよう。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
この度はとっても素敵なクリスマスを有難う御座いました。
サンタさんもとってもとっても喜んでおります。
GMコメント
日下部あやめです。アフターアクション有難うございます。
●成功条件
夜妖『サンタクロース』の撃破
●悪性怪異:夜妖『サンタクロース』
巨大な大男です。顔の部分は黒い虚空が渦巻いて、「誰もサンタさんなんか見た事無い」とお顔が分からない様子になっております。
『ンタクロースに会いたいってお祈りしながら一人で立っていると赤い大男が現われる』……そうです。
出会った子供達を袋の中に詰め込んで運んでいます。サンタクロースを信じていない人や大人だとその命を奪おうと襲い掛かってきます。
子供は純真なこころを持っているから、きっとサンタさんを信じているはず……。
物理的な攻撃が多く、夢の住民には似付かわしくない大きな包丁を握っています。
●現場状況
希望ヶ浜の市街地より少し離れた人気の無い場所です。
遠くにクリスマスキャロルが響き、イルミネーションを覗き見ることが出来ます。
もうすぐクリスマス(シャイネンナハト)と言うのを感じさせる華やぐ街の程近くはいつもの日常。障害物などのない空き地です。
サンタクロースを倒した後、少し歩けばイルミネーションを覗き見ることが出来そうです。輝く街をよければご覧くださいね。
●退紅・万葉(p3n000171)
サンタクロースを信じている小説の登場人物(小説から召喚された少女)。
連れて行っても置いていっても無害です。面白山高原先輩と呼ぶ犬と一緒です。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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