シナリオ詳細
尼寺の塀に開いた穴は祟りではありません。物理です。
オープニング
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「面妖な――」
由緒正しき尼寺の塀に、穴が開いている。
ただ開いたのではない。穴の内側が真っ黒く溶けて、磨いた石のように光っているのだ。こんなもの見たことがない。
夜盗や暴徒の仕業とは考えにくい。
満月の夜、やけに騒がしかったが物の怪の仕業であろうか。
やんごとなきご身分の方もこちらに身を寄せておられる。万が一のことがあってはならない。何かの祟りであろうか。呪詛の現れだとしたら、その道の専門家に見てもらわねばならない。
「仕方ありません、海の向こうからいらした神使様方にお頼り申そう――どうしました。顔色が悪いですよ」
庵主様付きのその尼は、あの夜何か恐ろしいものを見てしまったような気がするのだ。障子に写る恐ろしい影。気を失ったので現実とも思えないが、ただの夢とも思えない。
「いえ、光の加減でございましょう」
回廊を、先日髪を下したばかりの尼御前がお渡りになる。
そう。あの恐ろしい影は、あの方のいらした棟から本堂の方に飛んでいったのだ。
ひいひいと細い声を上げながら。
泣いているようだったのだ。
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「――という訳でですね。高出力火炎砲でぶち抜いたような穴があるそうで、尼寺の皆さんはおびえておられますし、職人たちもあまりにも様子がおかしいので祟りと思って引き受けてくれないんだって」
黒くてドロッとしてたのが固まったのがつやつや光っているのだ。知識がなければ真面目に怖い。
「防犯上不味いでしょ。穴。尼寺の塀に小さな穴が開いてたらのぞきたくなるし、くぐれる穴があったら入りたくなるでしょ」
性善説は信仰していない『そこにいる』アラギタ メクレオ(p3n000084)は、言い切った。
見るし、くぐる奴がいるとか断言するのどうなのかな。きれいな心はないのかな。
「都の皆さんは自分たちのことで精いっぱいだからということで、ローレットに依頼が来ました」
情報屋は天井を見上げ、ポリポリと頬を指でかいた。
「ぶっちゃけると、穴開けたのはローレットのイレギュラーズ。作戦上必要な措置だったので、仕方ないね―的な。だからと言って、放置ってのも、なんかあれじゃない? ヒトとして」
よもや、おたくのお寺にいるやんごとないご身分の方が生霊と化して危うく尼寺を水没させるところでした―なんて口が裂けても言えないから、粛々と依頼という形でお受けしましたが、いたお金は復興に使っていただくため、しかるべき筋に寄付しすることとなっております。正直は美徳だが、情報漏洩は罪である。と、薬師は言う。
「その、なんだ。心を込めて、壁の修繕して、心配ありませんよ。と、安心させてきてよ。ほら、疑心暗鬼って言うでしょ。疑うと呼びこむからさ。あえて、モノノケじゃないですよ方向で! 実際、モノノケじゃないことはちゃんとわかってるから。禍根はないから! 祟りも呪いもないから!」
高密度火炎弾にドリルだから。物理だから。
「だからさー、ここは海の向こうの厄払いと称して、なんなりしてよ。宗教的なんとか? ああ、そういうの気にしなくていい。君ら、神使だから。こっちから、そういう感じのエキスパートを送りますって言っとく。話は通しとく」
不安があり、それに適切な処置をした。放置しない。ケアをしたという認知が疑心暗鬼を殺す。
「アプローチは面子に任せるよ。科学的解説でも、自分のとこの宗教儀式でも好きにして。いっそ、なんちゃってで構わない。『神使様が来て、何かをなさり、絶対大丈夫だと言ってくださった』 という『事実』が大事なんだよ。あ、それじゃ報酬もらいすぎと思う場合は、境内のお掃除とかしてくるのどうかな。季節柄、落ち葉すごいみたいだし」
- 尼寺の塀に開いた穴は祟りではありません。物理です。完了
- GM名田奈アガサ
- 種別通常
- 難易度EASY
- 冒険終了日時2020年12月24日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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「ええ。何やら寝苦しい夜でございましたね。気が付いたのは朝でございます。これ、この通り」
『銀河の旅人』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)は、無言で何度もうなずいた。
「アンタも動乱の時代に重荷を背負って大変だ。尼寺を取り仕切るその手腕、惚れ惚れするぜ」
皆まで言うな。刻まれた顔のしわが庵主を黙らせる。
真円を描く穴。中はつやつやと黒く光っている。
(わあお。派手にやっちまったのう!)
『正直な旅人』黄野(p3p009183)は、扇子の奥に驚嘆の音を隠した。
(黒曜石や天然ガラスは高温で溶けた岩の冷え固まったものと聞くが。まんまそれではないか)
好奇心旺盛な随従は身を乗り出して覗き込んだ。
(つやっつやの切り口、もはや工芸品の域じゃぞアレ。あまりに美しゅうてしみじみしてしまうわ)
「きゃわー☆」
かわいらしい感性に、イレギュラーズ及び尼寺一同が振り返る。
『花合わせ』暒夜 カルタ(p3p009345)は、パ。と、口元を押さえ、その場でじたばたするのを我慢した。
(カルタの知らない常識と技術で空いてる大穴…やっぱりイレギュラーズの先輩たちはすごいですねぇ!)
それは見事な大穴だった。
通り抜けは辛うじてできないというか、潜れなくはないが確実につっかえる。特殊性癖を刺激する格好になり変えない絶妙な高さである。というか、尼寺に潜入しようという不埒者は晒されちゃえばいいんじゃないかな。
(カルタもぉ、いつかこんな風に圧倒的な力の差で何もかもを消し飛ばしてやりたいですぅ!)
一方、『おやすみなさい』ラヴ イズ ……(p3p007812)は、胃の辺りを押さえている。
(……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。先日の依頼の相談で、塀に穴を開けましょうと提案したのは私なのよ……)
ラヴは何も悪くない。ぶっ放した奴も悪くない。色々めぐりあわせがあれだっただけだ。誰のせいでもない。そういうことってある。
「必要な事だったとはいえ、そのままにしちゃって色々影響出しちゃうのはまずいし、ここはしっかり直して、お寺の人たちを安心させないとねっ」
『一番の宝物は「日常」』セリカ=O=ブランフォール(p3p001548)は、そっとラヴの耳元でささやいた。
下手な慰めより背中を押す言葉。
「よくわからない穴が壁に開いてさぞお困りでしたでしょう」
『遺言代筆業』志屍 瑠璃(p3p000416)は、たっぷり同情を乗せた声でご心中お察し申し上げますと言った。
「妖気の類は感じられませんね。そちら方面の御心配には及びませんよ」
いかにもその筋の瑠璃がほほ笑むと不安げだった庵主がほっと息をついた。
「そうですね、私からは雷ではないか、と申し上げましょう。壁に残った水の跡から雨の激しさが伺えます。おそらく光や轟音もあったのではないでしょうか――皆さんはどう思われます?」
「漆黒の闇より這い出でし六根清浄のナーマルーパがヴィンニャーナより作られ、ルーパは意根を示しているですぅ、これは五覚では認知出来ないヴェーダナーですのでカルタ達はタンハーによりそれを見極めているところなのですぅ」
女童が流ちょうに語りだすのに庵主も目を白黒させるが、言っているカルタの方もいつもは感覚で掌握していることを無理やり言語化して難解にしてしゃべっているので、結局自体は曖昧模糊なのだ。
「――つまり、邪悪なウーローの気配はなく清浄なヴィンターの発動によってなされたのです」
物理です。
皆、モノノケではない。と、異口同音で言った。
「――ですが、不安なお気持ちはわかります。都がこんな状況ならなおのことですね」
不安な気持ちに根拠はない。それを薄める根拠を作るのが今回の依頼の肝だ。
「そうね!」
ラヴが庵主様の手を握った。
「うん、物の怪の類のしわざでは無いと思うけれど。その恐れる心が物の怪を呼び起こさないとも限らないわ。だからこの穴は私達が責任をもってしっかり塞ぐし、お祓いもしておくわね。だからもう大丈夫、安心して頂戴、ね?」
いつになく早口のラヴの言葉と、庵主の手を取った指先には罪滅ぼしだけではない情熱があった。
だから、庵主は微笑んだのだ。
「よろしくお願いします」
と。
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(……こうして見てみると、穴をあけたモノのすごさが分かっちゃう……)
声にすると庵主がおびえるので、セリカは口元はキリっとひきむすぶ。沈黙は金。
『何事も実践あるのみっ!』がキャッチフレーズの参考書を横目に補修材を調合していく。
「修繕はー……あー、すまぬがたのむぞ男衆!」
「任された」
『一般人』三國・誠司(p3p008563)がこんこんとガラス化した部分を割っている。化学の知識がなければ呪いの結晶としか思えない真っ黒いガラス質。
それを集めて袋に詰めた。
削った後のもろくなった箇所に、セリカが出来立てホヤホヤの補修材をたっぷり塗った。
後はせっせと埋めるだけだ。ここに穴があったとわからないように。
「こ、これがまさに文字通り、自らの行いの穴埋めね……」
せっせと竹骨を入れ、藁や土を詰めるラヴがポロリとこぼした。
「穴の縁周りが塀の色と違って目立ちそう」
誠司が塀に近寄ったり遠ざかったりしながら確認して言う。
「うすーく塀にも敢えて土を塗って、穴を目立たなくする――」
「それでいきましょう」
ラヴはきびきびと穴の周囲を塀になじませた。
やがて、穴などどこに開いておりました? というほど見事に修復された。意に堂の周年の賜物である。何もなかった。何も、なかったっ!
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セリカは放棄で境内を掃き清めている。
目を皿のようにして、違和感を探る。
(水が浸かった跡はもちろん……)
出来ている泥の線を入念にブラシでこする。
(斬撃や魔法、銃弾の跡とかもきれいにしておかないと、お寺の人や後々訪れる人が心配になっちゃうし、そこは念入りにっ!)
敷石の上に走る黒い線。高熱の何かが通過した場所に残りがち。やけに深くえぐれた地面。前衛が踏ん張ったりしたところに起こりがち。
「後、何か――男手が必要なことないですか? 力仕事とか全然――屋根とかそういう所もいけますよ」
誠司は雨どいに詰まった落ち葉を掻きだしていた。浸水した時逆流したのか、本来雨どいにあるわけもないモノがぎっしり詰まっていた。人目につかないように廃棄、廃棄。
境内に笑い声が満ちる。
「可愛い子だ。おじさんに思いのたけを話しておくれ」
境内の一角にたたずんでいた若い尼は、いきなりの美声にピクリと肩を跳ね上げた。
横に年かさの男性の神使――『銀河の旅人』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)――が立っていたのだ。
これが若い男性だったら若い尼も警戒しただろう。しかし、ヤツェクは彼女の父より年上で警戒心が緩むのも仕方ないことだった。ただし、イケオジに限る。残念だけど、それが混沌でも共通なのよね。
「海を越えて会えたのも神様の導きだ……」
見た音もない色を持ち、異国、異郷の風をまとった殿方に、現実感は遠く吹き飛んでいく。
若い尼はぽつりぽつりと恐ろしい影を見た気がすると話した。それが、尼御前に似ていた気がする。と。
ヤツェクは、何度もうなずいた。
「アンタの優しい心が皆を心配しすぎて、恐ろしいものを想像しちまったのさ。あんた、その尼御前が『妖になってもおかしくない』ほどつらい境遇だと思ったんだな。じゃあ、アンタはそうならないようにしてやらなきゃな。それこそシンブツのお導きだ」
頼れる大人の風格。下心がみっちり詰まっていたとしても、このひと時、若い尼の心をやわらげればあとは時間薬がどうにかする。本人がちょっとしたカウンセリング、心を癒すための人間らしいふれあいと考えているのだ。境内裏の茂みに引きずり込むなどする訳がない。ローレット経由連絡先を握らせるくらいは大目に見ていいだろう。
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セリカが温められた液を撹拌すると、細い煙が立ち上る。
穏やかな香りは場を清浄にし、かいだ者の精神のいら立ちを鎮め、穏やかにする。
『特異運命座標』司馬・再遊戯(p3p009263)は、練達のゲーマー。つまり――。
(……いやいやっ!?私宗教儀式なんて知らないんですけどっ!!)
ですよねー? 再遊戯のイレギュラーズとしての道筋はまだ定まっていない。無限の可能性状態だ。この先典型を受けないとも限らない。空飛ぶスパゲッティモンスターが心のドアをノックしないと誰が言えよう。
まあ、ノックされなくてもお仕事なので、それっぽいのをでっちあげた。昨日の夜、設定とか詰めた。中二病罹患者、割とそういうことするのに違和感を感じない。
飲んだら最後、頭の中はエッチなことでいっぱいになってしまうお薬をグイっとあおりう小さく息をつく。
五芒星を描いて中心と5つの角の上に亀甲縛りされた藁人形を置く。豊満な肢体を締めあげる縄が柔肌に食い込み、唇から熱い吐息が漏れた。
突如場に満ちる淫靡な雰囲気に、居心地の悪さを感じるモノ多数だがここは涼しい顔でやり過ごさなくてはならない。
(なんか儀式は儀式でも呪いっぽくなったけどまあ良いや)
お薬効果で、思考もゆるっゆるである。全部おくすりのせいです。
「縛られし全ての者よ、HPに帰依せよ。HPこそは縛られて動けぬものに与えられし救い。神は仰られた、どえむは頑丈であれと。責めし者の愉悦と責められし者の愉悦のためにHPは遣わされた。今こそ救いの時!!」
咆哮ともとれる激しい祝詞に、庵主は瑠璃に「どのような儀式なのでしょうか」と尋ねた。巫女装束に着替えて戻ってきたばかりの瑠璃は逃げられなかった。ヤツェクは若い尼のケア。誠司は尼御前のケアである。
「厄払いです――あの戒められた藁人形に周囲の厄を取り込むべく同じ姿をした上で、激しい言葉を使っているのです」
らりった再遊戯の世迷言なのだが、五芒星の内側に妙な力場が発生した。
でっち上げたでたらめがまあまあいい感じに正鵠を得て、微妙に効果を生んでしまうのが中二病あるあるである。
異変に気がつけるほどの正気はない。
「どえむはHPに帰依せよ!」
「あの、あれはどういう――」
若い尼は、ヤツェクに問うた。
「大いなるものに首を垂れるものは心身の健やかに保たねばならぬ。という意味だな」
痛めつけられてうれしい奴は体丈夫じゃなきゃ話にならねえから鍛えとけ。とは言わない。貴婦人を怯えさせないのがイケオジである。
「彼女は今、この場の憂いを一身に受けて自ら狂乱に身を投じて、それを身代わり人形に封じてるって訳だ。アンタの胸のつかえもみんなあいつが持ってってくれるから安心して吐きだすがいい。俺が聞いた分も全部だ」
構成要素がそうなっているので、意図してなくとも発動する。魔法陣を踏むときはきをつけような! セリカが精神安定剤を調合してる香気のおかげで、エロいお薬の効きと拮抗し、社会的死を免れている。ああ、人生は綱渡りだし、ローレットの評判も綱渡りである。聞いてますか、そこの宇宙おじ様。あなたにも言ってますよ。
続けて、ラヴが顔を真っ赤にしながら、彼女が元いた世界の動揺を口ずさみながら素朴な踊りをする。
(お遊戯です。お遊戯なんですっ!)
顔から火を噴きそうな勢いだが、異郷の旋律はカムイグラの人々にはとても珍しく、先ほどの凄まじさとの落差にみな大いに胸を熱くした。
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誠司としては残念。尼御前は大層かわいらしかったが、巨乳に育ち切るまであとは五年くらいかかりそうだった。
最近、夢見が悪いという尼御前は、少し目をとろりとさせている。
「人というのは夢を見るには原因があるときがある」
尼御前は頷いた。
「僕の元居た世界ではそういう研究が進んでいてね」
墨染の袖の下で、尼御前は、まあ。と、感嘆の声を上げた。
「……最近嫌な事とか、我慢してるなーってことある? そういうのが出てくる」
まさしく。先の生霊騒ぎは、それがあふれたためのことだった。しかし、それも本人も気が付いておらぬこと。ローレットが隠すべきこと。表面化させてはいけないパンドラの箱だ。
「悩み事は御天道様が昇ってる時だけにするんだよ?」
「どうしてでございましょう。神使様。不吉だからでございますか?」
論点ずらしだ。心配事の中身ではなく、その悩みに時間的区切りをつけ、常時緊張状態から解放する。
「よく眠らないと、朝ご飯がおいしく食べられないからだよ」
尼御前は、まあ。と、今度は小さく笑った。
黄野が真言を唱えながら、尼達と袖を交えるように歩く。
「それに、多少の不安は言の葉にしたほうがよい。度が過ぎれば身を縛りかねんがな」
言ってはならないという思いは、結果、逆にその輪郭を濃くすることがある。
「少しであれば、ほら、たすきや帯のようなものじゃ。背筋がしゃんとのびるであろ? 大丈夫。かの大禍刻を乗り切った主らには、もはや悪しきものも寄るまいよ」
からからと笑う水干姿の少年に、尼達はときめきを感じた。やだ、推せる。
「壁が壊れた際に穴が開いてしまった結界の綻びを繕射ましょう。よきご縁がありますように」
そう言って、境内で神楽舞を奉納する。
(故郷で学んだ神道様式の儀式そのままでも、こちらの神事とは差異があるでしょうし、そのまま使ってもバレないでしょう、たぶん)
厄除けに九字を切ると、慣れた雰囲気の儀式で締めくくられたことに対するアンド化、余性質の口から安堵の息が漏れた。
瑠璃は場の雰囲気が和らいだのを見て、厳かに言った。
「それでは、お芋を焼きましょう」
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ローレット・イレギュラーズは芋持参だった。ローレットには落ち葉焚きには芋をうずめるという掟を持ったウォーカーがそれなりに存在し、よい文化はブームからムーブと化すのだ。儀式が終わったら、おいしいものを食べましょう。焼き芋に向いている芋は、飢饉に強い。復興には最適だ。
「えと、色々争いがあったかもだけど、もうみんなで直しちゃったし、これからはぐっすりお休みできるからねー!」
セリカは、声を張り上げた。
「でもでもきっと、いままでおっきな穴や争いの跡を見てて、心が疲れちゃってるかもだから」
自然に回復しないなら、ちょっと手助けがあったっていい。
「そんな『疲れてる感じ』を軽くできるお薬や、眠ってお休みする時に、心身共にもっと回復できるようになるお薬を用意したから、これを飲んで、心と体の疲れを癒してくださいっ!」
ローレット・イレギュラーズから提供される薬物は安全です。用法・用量を厳守の上、服用してください。乱用、ダメ。絶対。
不安も恐怖も押し葉と一緒に焼いてしまいましょう。いっぱい笑っていっぱい食べていっぱい眠れば大丈夫。ちょっぴりのときめきも人生のスパイス。
尼寺総出でのお見送りを受けたローレット・イレギュラーズは、大きく手を振りながら尼寺を後にした。
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神使様達が見えなくなって、ようやく尼寺の人々は本堂の方を向いた。
「あれは……!?」
本堂の屋根に麗しの瑞獣。優しげな眼が見下ろしている。
「麒麟――!!」
「神使様方が辺りを払い、随獣を呼びこまれた」
「なんとめでたき事」
「きっと良いことがありますよ」
麒麟――急ぎ取って返し、ギフトによって本性を解放した黄野は、尼達の見交わす顔が笑顔になるのを見届けて、踵を返した。
(おれは瑞なる獣、麒麟。仁薄き世を憂く人の心こそ、我が手を伸ばすべき所ゆえ!)
今日の思い出は、海の向こうから来た神使様達のお話や踊りにお祈り。それによってきたのか幸運の獣まで現れた。
もはや、塀に開いた穴のことなど誰も気にしていなかった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れさまでした。みなさんのケアが実を結び、尼寺に活気が戻りました。ゆっくり休んで次のお仕事頑張ってくださいね。
GMコメント
田奈です。
大丈夫です。モノノケでも、物取りでもありません。そのなんだ。あれだ。ん~。激しい戦闘の跡?
拙作「<神逐>私の涙でみんな溺れてしまえばいい。」を参照いただければより感慨深くご参加いただけますが、「戦闘作戦の一環で大穴開いたのは依頼人には内緒」というスタンスを把握していただいていれば何の問題もありません。
情報漏洩なく、壁の穴が塞がれば成功です。
場所・尼寺・境内。
屋外・昼・晴れ。
大きな境内です。周囲は高い塀で囲まれています。壁や建物にはスネくらいまで上がった水の後。みなさんにはわかる激しい戦闘の痕跡。具体的に何を見つけてしまったかプレイングに書くと臨場感と皆さんの慧眼具合が上がります。
塀に開いた穴。
OPに書かれたとおりです。
直径一メートル弱。
具体的に言うと、高出力の火線でもろくなった塀に疑似生命体でドリル攻撃を重ねて、穴を穿ちつつ高熱処理にしました。黒い部分はガラス化しています。呪いではありません。物理です。
*お掃除する。
境内のお掃除です。「掃除する」と書いていただければ失敗はしません。
*穴をふさぐ。
壁の材料は用意されておりますので、ガラス化したところを取り除いて、穴を埋めてください。「埋める」と書いていただければ失敗はしません。
*それっぽい儀式をする。
もちろんきちんとしてくれて構いませんし、心得があるイレギュラーズがいない場合は、即席のおまじないで構いません。「神使さんがしてくれた事実」が大事です。
「する」と書いていただければ失敗はしません。
おまけ要素。
*言いくるめる。
「モノノケじゃないですよ」と本当のことを言いつつ、生霊の存在を隠し通す簡単なお仕事。
神使様である皆さんに直接接触してくるのは、以下の三人です。納得させられたらいいですね。ただし、生霊が出たことは言ってはいけません。
*庵主様 一番偉い人。
*やんごとない身分の若い尼御前 暴れてしまった生霊の元。記憶はありませんが、その夜嫌な夢を見たのを覚えている。
*おびえた妙齢な尼 当日何か見てしまった気がするが、気を失ったので記憶が朧げ。
こちらの対応が出来たら、とても良いです。
境内に入って塀の穴を検分するところからスタートです!
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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