PandoraPartyProject

シナリオ詳細

すべての子鬼を破壊する。それらは再生できない。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ジェノサイドオーダー
 イレギュラーズに課せられた依頼は単純明快。
 『子鬼(ゴブリン)の巣を駆逐せよ』。

●「子鬼との契約は雇用というより入れ知恵に近い」
 肩のメタルパーツがゆっくりと、そして的確に回転を示す。肘部の噴射口から細く鋭い蒸気を噴き出したのは、まさに小柄な怪物たちが『彼女』へ飛びかかったその瞬間であり、そして握った刀が彼らをまとめて横一文字に切り裂いた時だった。
 ドンと音をたて、同じく蒸気を噴き出す右足でブレーキをかけると、両手それぞれに持った刀と拳銃をお手玉でもするように入れ替える。
 半身姿勢で銃を構え、腕のアーマーで自動照準補正をかけると三度発砲。
 子山羊をかついで逃げようとした『怪物』の脚と背中と後頭部をそれぞれ的確に打ち抜き、排出された空薬莢がそれぞれ雑草の上にぽすぽすと音を立てて落ちる。
 転倒した怪物から逃れた子山羊はしばらく仰向けになってめえめえと鳴いていたが、彼女が――鬼城・桜華(p3p007211)が歩み寄って片手で引き起こしてやると、礼でもいうように頭をあげてめえと長く鳴いた。
 頷き、そして。
 草むらから今更ながら顔を出し粗末な木弓を構えた怪物、もとい『子鬼(ゴブリン)』を、背面撃ちで撃ち殺した。

 朝焼けの農場を、子山羊を抱えて歩く桜華。
 早起きの農夫が家から出てきて、その様子に目を細めた。
 日光がまぶしいのか、それとも仕事をかたづけたらしい桜華に安堵してか。あるいはその両方か。
「だから言ったろう。この辺は子鬼が出るって」
 農夫の言葉を受け、桜華は彼に子山羊をパスしてから頷いた。
「最初から、疑ってなんてないのだわ」

●「君たち先に行って、すぐ追いつくから」
 豊穣郷カムイグラ。その首都である高天京が魔種や凶神の脅威から解放されたのはつい最近のこと。今や四神結界によって守られ、当時結界破りのために四つもの軍団を組織して奇襲をしかけた魔種集団『羅刹十鬼衆』もそれから姿をみせていない。
 あの機に乗じての奇襲が失敗した以上、都を落とすのは極めて困難だと判断したのだろう。
 こうして大々的な脅威の消えた都は欠けた人員の補充や破壊された町並みの再建に安心して追われることになったのだが……。
「地方はひどいものね。都の影響力が弱まった途端領地の奪い合いを始めるなんて。つい最近まで国が滅びかけてたっていうのに」
 農場の柵によりかかり、手にした牛乳瓶を見つめる桜華。その中身を飲み干したころ、荷車にいくつものタンクを積んだ農夫のギュウベエがやってきた。
 厳密に言えば今回の依頼主、ということになるのだろうか。
 報酬は一泊の宿と朝食だけだったが、桜華からすればそうわるくない条件だった。
 ごちそうさま、といって瓶を掲げ、桜華がギュウベエに並んで一緒に歩き始める。
「領主達は何を考えてるのかしら」
「さあね。おかみの考えることは俺ら農民にゃわからんさ。逆らえるもんでもない」
 歩いて行くと、膝やら腕やらを泥だらけにしながら稲田の手入れをする農夫のタンスケとすれ違う。
 タンスケ達は軽い挨拶を交わし、そして天気や髪型について語るみたいに桜華を見て語った。
「その子が都から来てくれたっていう何でも屋さんかい。腕やら脚やら、都の子は派手だねえ」
「別にあたしはカムイグラの民じゃないのだわ」
「え、でも……」
 頭の角をジェスチャーするタンスケに、桜華は肩をすくめてみせる。
「確かに鬼人だけど、あたしは外来種。別の外来種が蔓延ってるから、狩りに来たの」

 ここはカムイグラ東部にある山村カナン。
 青龍の山の更に先にある小高い山中に作られた農場地帯である。
 木々を伐採し酪農と稲作をいとなむのんびりとした風景の村だが、村人はみなこの土地の領主から土地を与えられているという。端的に表現するなら、農奴というやつだ。彼らは他の地域から身分事買われた人間たちであり、労働力として使用されている。
 桜華から見れば痛ましい仕組みだが、彼らはこれを特におかしいとは思っていないようだ。
 荷車が倉庫へ到着し、積み込みを始めるギュウベエたち。
 一部は彼らの食料として再配布されるらしく、米や牛乳が小瓶につめられて一家庭ぶんずつに仕分けられている。
 そこで作業を手伝っていたのが咲野 蓮華(p3p009144)であった。
「わるいね異人さん。子鬼退治の後だってのに」
「いいアルよ。ほんの手持ち無沙汰アル」
 それに力仕事は得意アル、と腕をポンと叩いて見せる蓮華。
 そして桜華に気づき、振り返って手を振った。

●「撃て、狙え、構え!」
 蓮華と桜華は、なにも下の名前が似ているからという理由だけでこの村へ一緒に訪れたわけではない。
 先のカムイグラで起きた『我流魔小鬼津波』と共に戦ったことから、面識こそ薄いながらも同じ事件を追うものとして一緒に地方の村々で子鬼たちの足取りを追っていたのだ。
「やっぱりこの村も子鬼の被害をちょっとずつ受けてるアル。果物を盗まれたり家畜を盗まれたりっていう些細なものアルけど、件数が……」
「うん。この村だけで異常に件数が多い。ここから導き出されるのは……」
 彼女たちが自分の足で作ったマップにはいくつも赤いマークが書かれ、そのマークは奇妙に球を描いているように見えた。
 まるで、ある場所から定期的に子鬼たちが出入りしているかのように。
「子鬼の巣が、ここにはある」
 桜華と蓮華は頷きあい、ローレットへの連絡を行った。

 日を改め、充分な人員を揃えてチームとなったローレット・イレギュラーズたち。
 領主の役場前に集まった彼らに、蓮華は『よろしくアル』と手をかざした。
「今回みなさんにやって貰うのは、子鬼(ゴブリン)の巣の駆逐アル。依頼人はこの土地の領主。期限は……今日の夜まで」
 というのも、子鬼たちの盗みは小規模ながら頻繁であり、その頻度も日を追うごとに増していた。
 巣の中で子鬼が数を増やしている証拠だと、蓮華たちは言う。
「規模からして『本体』ではない筈アル。都の襲撃から逃げた集団の一部がこの土地に逃げ込んで巣を作ったってところアルね」
 それでも、一匹見れば数十匹というねずみ算ならぬ『子鬼算』式に増えていく子鬼。このまま放置すれば巣を維持できずにあふれ出し、村への大々的な略奪を仕掛けるのは明らかである。
 そうなるまえに巣へ突入し、すべて殺しきるというのが依頼の本質だ。
 桜華がマップの一部にペンを立ててみせる。
「偵察したところ、巣は山の岩場にできた洞窟……それを拡張したもののようね。中はアリの巣みたいに複雑に分岐している筈だから、『子鬼をそとに逃がさない』って目的も併せると、手分けしながら子鬼退治にあたることになると思うのだわ」
 それでも、今回集まった人員で充分に事足りる規模だろう。
 子鬼たちの奇襲や密集に注意し、撃退にあたりたい。
「一匹でも残せば将来の脅威になる。残らず倒しきるのだわ。子鬼殺しの名に賭けて!」

GMコメント

■オーダー
 子鬼の巣を駆逐します。一匹残らずです。

●シチュエーションデータ
 洞窟の中は暗く、照明器具や発光等のスキルがあると便利です。
 手分けして探索&戦闘する場合照明器具系のアイテムやスキルを持ってるメンバーが多ければ多いほど便利でしょう。
 もし条件があうなら暗視系のアイテムやスキルをもったメンバーだけで行動してみるのもお勧めです。

 洞窟内はいくつも分岐しており、あんまりモノ考えて作ってねえなっていう構造になっています。
 おそらくは細長い一本の洞窟を作ったものの子鬼が増えるたびに横穴を拡張しまくっていったのでしょう。
 逆にいうと、横穴の先には大体子鬼がいるはずです。

 また偵察したところ、罠を作るような知識はなかったとのこと。洞窟内は暗いのでそこそこ夜目がききますが、例えばそれまでつけていた光源をいきなり消されたら周りがみえなくなってしまうかもしれません。これフリです。

●エネミーデータ
・子鬼(ゴブリン)
 知能が低いモンスターです。
 固体戦闘力はとても低いですがとにかく数が多く、そして低知能ではあるが狡猾でもあるので数で押し切ったり後ろに回って奇襲したりといったカンタンな作戦はとれるようです。

 子鬼は鬼人系魔種ガルマによって生み出されましたが、カムイグラ各地に散った上急繁殖するのでとても厄介な存在となりました。
 OPの雰囲気からも分かるとおり、村人が被害に遭う程度では領主が動かないので、巣を特定してやっと領主から依頼をもぎとるに至りました。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • すべての子鬼を破壊する。それらは再生できない。完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年12月22日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ティスル ティル(p3p006151)
幻耀双撃
鬼城・桜華(p3p007211)
子鬼殺し
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女
ゼファー(p3p007625)
魔女
小金井・正純(p3p008000)
燻る微熱
希紗良(p3p008628)
鬼菱ノ姫
咲野 蓮華(p3p009144)
ラルス・クラスティ(p3p009215)
剛力無双

リプレイ

●「愚かさと無知は男女に似ている。同居するが、時に浮気し分裂する」――鉄帝の哲学者
 山の険しい斜面を登り、木々を抜け、川から大きく離れた岸壁を目指す。
「なんでまたこんな山奥に。人里を狙うなら近くに拠点を作ったほうが楽じゃない?」
 いくら翼あるものとはいえこう連続して斜面をのぼっては疲労するもの。『白雀』ティスル ティル(p3p006151)は手ぬぐいで汗を拭ってつぶやいた。
 それに応える形で岩から岩へと飛び移り、補助するための手を差し出す『子鬼殺し』鬼城・桜華(p3p007211)。
「子鬼は基本的に、人が近づかない場所を住処にするのだわ。
 弱いうちはそこに籠もって小動物を狩ったりして過ごすんだけど、数が増えるようになるとその身体能力を活かして人里に下りるの。奴らは知性が低いなりに協力しあうし、思想や死生観を持たないから働き蟻みたいに動けるのよ」
「それって、幻想で見かけるゴブリンとはちょっと異なる性質よね?」
 『never miss you』ゼファー(p3p007625)もまた身軽に岩をよじのぼりつつ、後から続く『躾のなってないワガママ娘』メリー・フローラ・アベル(p3p007440)たちが楽になれるように岩にハーケンを打ち込み、ロープを通して下へと投げた。
「カムイグラだけで繁殖した固有の種族って感じがするわ」
「だな。俺もゴブリン退治の情報は山ほど見てきたが、ここのはひと味違うみたいだ」
 『剛力無双』ラルス・クラスティ(p3p009215)は手慣れた様子で道具を使って斜面を登り、時折足跡を調べては道を確かめている。
「ここの『子鬼』は一人の魔種を起源にして繁殖したんだったか。そうなると、もはや固有の眷属だな」
「そういうことなのだわ」
 桜華は刀の柄を握り、目の光を強くする。
 故郷が滅ぼされるとはどういうことか。それを身をもってしっているだけに、子鬼のもたらす恐怖と脅威を理解しているのだ。そしてそれゆえに、彼女はこの短期間で子鬼殺しのエキスパートへと成長していた。
「子鬼共…奴等は本能の赴くままに動く癖に狡猾な所もある卑しき獣共。
 必ず残せば将来の禍根に、無辜の民を襲う悪鬼外道共になるのだわ。
 それだけは何としても阻止しないといけない。
 子鬼は絶対殺す。この子鬼殺しに誓って、だわ」
 ラルスは『可愛いお嬢ちゃんの頼みなら喜んで』と言って、歩きやすいようにサバイバルナイフで小枝を切り落としていった。
「これぞ冒険、これぞ傭兵。腕が鳴るな!」

 先の戦いから変化したのは一人だけではない。咲野 蓮華(p3p009144)もまた、カムイグラでの情勢変化を察して独自に動いていたひとりである。
「今回はなんとか領主からなんとか依頼をもぎ取ったアルからな。村への被害をなくすために頑張るアルよ!」
 子鬼は害虫害獣のたぐいだが、しかし賢い害獣だ。しぶとく生き残り素早く繁殖し、そして人の生活に対し致命的な害を与えうる。
 領地経営の視点から見れば人口や食糧資源がちょっと減る程度の些細なものだが、『減った』本人にとって被害は絶大である。
「それに、こういう巣をいくつも潰していけばいずれ『本体』も見つかるアル」
「子鬼が少々作物をちょろまかす程度なら目こぼしもできたやもしれぬであります。が、それに味を占めたのか巣を作り洒落にならない有様になってしまっては討伐やむを得なし、でありますな」
 『鬼菱ノ姫』希紗良(p3p008628)は偵察に出したリスが戻ってきたのを見て、刀を掴んで斜面を駆け上った。
 すると、大きく切り立った岸壁と自然にできた洞穴が見える。
 熊でも住み着いていそうな穴だが、住んでいるのは子鬼である。そして今もこの中で繁殖を続けているのだろう。
 この巣を潰すのが今回の依頼内容、でしたね。
 弓を肩から斜めがけしていた『不義を射貫く者』小金井・正純(p3p008000)が、ふうと息をついて顔を覗かせる。
「数や拠点を増やされる前に討滅してしまいましょうか。都は今それどころじゃないでしょうしね」
 そう言って、暗視効果のある書物を懐から取り出した。

●「依頼がモンスター退治なら、それがどんなモンスターか聞きなさい。相手がゴブリンだと答えたなら、それがどんなモンスターかをもう一度聞きなさい」――幻想の冒険者ギルド員
 岸壁にできた穴。
 まるで迷い込むのを待っているかのように、暗闇の向こうから何かの声が漏れ聞こえている。反響を重ねてもはやそれがなんなのかはわからないが、少なくともそれが子鬼の群れがだす生活音なのだと、知識あるものは理解するだろう。
 そしてそんな場合、洞窟の前に匂いの強い丸薬を蒸し焼きにした状態で放置するのだ。
 匂いにつられた子鬼の数匹が穴蔵をでて鼻を上下に動かす。
 その隙に、最も奥の一体を矢が貫いた。
 足を狙ったその矢は、狙い違わず子鬼を転倒させ、その叫び声と倒れた子鬼への驚きで野外にでた子鬼たちは一斉に飛び退く――が、恐怖からかそれとも焦りゆえか密集してしまう。その習性をつくかのように、茂みから飛び出したラルスの斧が子鬼たちの頭部をまとめて刈り取っていった。
「よっし。ゴブリン退治のセオリーは通じそうだな」
 もうでて良いぜとハンドサインを出すラルスに応じて、いざというときのために第二矢を構えていた正純が茂みから立ち上がった。
「はい……けど、最初に誘い出したのはどういうわけなんですか?」
「構えさせるため、かな」
 分かるだろ? と振り向く彼に、桜華は銃を構えた姿勢で洞窟の前に立った。
 そして奥歯でカリッと飴をかみ砕くと、洞窟の丁度闇に隠れるあたりで木の槍を持って構えていた子鬼の額を打ち抜いていった。
「子鬼の巣潰しは、なにげに入った直後が危ないの。
 目が暗闇に慣れてない隙をついて襲ってくるから、それを見越して先手を打つ必要があるのだわ」
「あとは、気になる匂いへ偵察に出したところで味方が帰らなかったら仲間を密集させて守りを固める。バラバラに散ってるよりもその方が戦術のカウンターをうちやすいんだ」
 ラルスの知識は戦闘というより害獣退治の知識である。相手が知性をもって対処行動をとるなら、むしろこちらはシステマチックに狩ることが出来る。
「さ、行くのだわ」

 子鬼の洞窟は広く、そしてかなり奥まで続いているようだった。
「これだけの洞窟が自然に出来たとは考えづらいでありますよ。おそらくは子鬼たちが……」
 力は小さくとも数が揃えば岩をも砕く。さながら働き蟻の如く、岩を削って巣を広げたのだろう。
「生きる者が餌を求めて何が悪い、と言われそうであります。が、只そなた達の腹を満たすためにムラが存在しているわけではない。ここで全てを絶たせて頂くでありますよ」
 刀に手をかけ、鞘から素早く抜き放つ。
 近づく敵の気配を、仲間のかざしたランタンと足音で察知したのだ。
 サイバーゴーグル越しに目を細め、自ら飛び出す。
 攻撃のタイミングをずらされた子鬼たちが棍棒での殴りかかりに失敗したところで、希紗良は敵陣中央の子鬼を素早く斬り捨てた。
 子鬼の戦術は至ってシンプルだ。次々に飛びついて処理しきれなくなった所へ一斉に攻撃し倒れた所を押さえ込む。
 それゆえ最初に誰が飛び込むのかを決めている。それさえ制すれば、この連続攻撃を乱すことができるのだ。
「逃がさないよ。面倒になる前に終わらせてあげる」
 子鬼とこちらの決定的な違いは、多様なスキルを重ね合わせて様々な連携攻撃ができるということ。
 要するに知恵の差である。
 ティスルは伏せてと鋭く叫びながらまっすぐに飛ぶと、細く長く延長させた流銀剣で周囲の困惑する子鬼たちをまとめて切り払った。
 そこへメリーが『慈術』でもって追撃を仕掛けていく。運良く生き残った子鬼たちを一人も逃がさず潰していくのだ。
「まとめて襲ってきて、無理と分かったら逃げる……。単純なだけに慣れると対応しやすいのね」
 ゼファーは暗視効果をもつ目薬をうちなおすと、『交替よ』といって先頭の警戒にあたっていたメンバーと入れ替わった。
 常に落ち着いた態度のゼファーだが、だからこそ『侮る』ということをしない。
 仮に十回中十回同じ穴から顔を出すモグラ叩きがあったとしても、同じ穴の上にハンマーをかざして口笛を吹くようなことは大きな空振りの元となる。それがモグラ叩きならハイスコアが出せないだけで住むが、相手を殺しにかかるときなら逆にこちらの命をとられかねない。
 自分が狩られる側の立場だったなら、油断した狩人の喉を不意に食いちぎってやるだろうとも考えるからだ。
 ゆえに。
「ギッ――!」
 身体に黒い土をぬって闇に紛れていた子鬼たちが、投石によってティスルとメリーのランタンを破壊した。
「灯りが!?」
 ゼファーは両手をかざしてキョロキョロと見回す仕草をし、そんなゼファーの胸元めがけて尖った木のナイフを構えた子鬼が飛びかかる――が。
「なんて」
 ゼファーはかざしていた手で流れるように子鬼の頭を掴むと、相手の力をそのまま利用して洞窟の壁に顔面を叩きつけてやった。
「なまじ知能があると、ちょっとのことで優位を奪った気になるものよね」
「けどそれは思い込みアル」
 蓮華は身体全体を流れる川の如くなめらかに走らせると、子鬼たちの間を駆け抜けながら連続で掌底をたたき込んでいった。
 スッ、と手のひらを突き出した姿勢で動きを止めると、その後ろで子鬼が血を吐き、うつ伏せに倒れていく。
「試合の場で本当に見るべきものを見失ったなら、敗北するだけアルよ」
 それ以上の追撃がないことを確認すると、蓮華は他のメンバーよりもよく効いた暗視能力で分かれ道の様子を調べ始めた。
「この辺りからいくつも分岐が続くみたいアル。横穴も多いから、手分けして進む必要がありそうアルな」
 メンバーはもう決めてるアル。そう言って、蓮華はラルスを人差し指で手招きした。

●「神はダイスしか転がさない。だから神に頼むときは、ダイス以外のすべてを固めるべきだ」――ラサのギャンブラー
 暗く、他よりもずっと狭い横穴を進んでいく。
 ずっと奥で子鬼が声を上げているのがわかるが、同時に子鬼とは異なる声がするようにも思えた。
「後先考えずに横穴をどんどん作っていった結果がこれ、でありますかね。矢鱈と数が多い」
 穴の先から時折ちょろちょろと子鬼がやってきては、こちらを見つけて慌てたように襲いかかってくるばかり。
 希紗良はそうして襲いかかってきた子鬼の棍棒を刀で払い、返す刀で子鬼を袈裟斬りにしていく。
 正純はそのたび、不意打ちを狙う子鬼を警戒して弓を構えるが子鬼の襲撃は一体きりのものばかり。
「変ですねぇ。入り口の悲鳴を聞いていたなら警戒して戦力を固める筈なのですが……」
 自分たちの身を守る事以上に重要なことでもあるのだろうか。
 そんなものあるわけが……。
 そう考えていた正純は、穴の奥からするにおいの正体に気づいて希紗良を『下がらせた』。
「人には無害なガスグレネードを打ち込みます。その間に救出を」
「は。え……?」
 人。救出。という二つの単語に一瞬反応できなかった希紗良だが、それも一瞬のこと。すぐに状況を理解して刀を収めた。グレネードを先端にそなえた矢を、正純は穴の奥へと放つ。

 メリーの神気閃光がばらまかれ、子鬼たちがばたばたと倒れていく。
 残った個体も目を覆い暴れている。
 フラッシュグレネードでもうけたような有様に、ゼファーは素早く追撃を仕掛けた。
 まだ倒れていない子鬼だけを狙って的確に蹴りと突きを打ち込み、女性の足を掴んでいた子鬼の喉を鋭く親指で押しつぶす。
 ゲッと喉を押さえ、呼吸が出来ずにのたうち回る子鬼をサッカーボールのように蹴り飛ばし、そしてゼファーはすぐそばに倒れけいれんする女性へとかがみ込んだ。
「少し、気になってたのよ。子鬼はただ『繁殖力が強い』とだけ言われていたけど、ならなぜ略奪なんてするのかって」
 サバイバルナイフを打ち込んで鎖を断つと、追撃を警戒して後方へと視線を向ける。
「あれだけ数が増やせて武器を扱う知性もある。働き蟻みたいに従順で思想や自我が弱い。それなら味方を捨て駒にしながらより多くの食料を野生生物から得られるし、なんなら動物のように木の実や草を食えば良い。人間なんて、元々生きていくのに必要ないのよ。
 これだけ思想の弱い生物が、必要のないことなんてしない。なら、何に必要なのかといえば……」

 仲間達が横穴の攻略を進める中で、蓮華たちはより深部へと至っていた。
 そう確信できたのは洞窟の長さや大きさやその掘削の丁寧さでもなく、なによりとも……。
「大物のご登場アルな」
 通常の子鬼より三倍ほど大きい、『子鬼大将』とでも言うべきモンスターが、穴の奥で牛の足を掴んで肉を食いちぎっていた。
 立ち上がってみれば、蓮華の慎重をゆうに越す。
 子鬼大将が低い声でゴゥと吼えると、周囲の子鬼たちが一斉に手にした木の槍を構え始める。
「お嬢ちゃんには指一本触れさせねえ……と言いたいとこだが」
 ラルスは龍から削り出したと噂される斧を水平に構え、不敵に、そしてどこか苦しげに笑った。
「こいつは一人じゃ荷が重いな。蓮華お嬢ちゃん、同時にいくぜ!」
 ラルスはあえて獣のように吼えると、子鬼の集団へと自ら突入。
 反射的に槍を突きこんだ子鬼に続いて――おそらくは習性なのだろう、残る子鬼たちも一斉に槍を打ち込んでくる。
 一斉攻撃をうけたラルスはガフッと血を吐くが、次の時には全身の傷口と口から焔を吹き上げていた。
 洞窟内がぼうっと茜色に照らされる。
「驚いたかよ。こいつが熱き男の血潮ってやつだ!」
 気合いで斧をぶん回し、周囲の子鬼たちをまとめて蹴散らしていく。
 狙いをつける必要などない。全員自分に『食い込んで』いるのだ。
 そうして綺麗になった道を、蓮華は弾丸の如く突き進む。
「一度で仕留めるアル!」
 棍棒を振り上げた子鬼大将の腹へ打ち込まれる掌底。
 たった一発の掌底が、しかし流し込まれた闘気の炸裂によって子鬼大将の体内を激しく崩壊させ続けた。
 まるで腹に爆弾でも放り込まれたかのごとく、内側から破裂し仰向けに倒れる子鬼大将。

「そういえば、桜華さんと一緒に戦うのって割と久しぶりね。
 相手は違っても羅刹十鬼衆を追ってる者同士だし。これから力になってみせたいの」
「そう言ってくれると心強いのだわ」
 桜華は子鬼を、もとい我流魔を追い続ける宿敵だが、一方ティスルは例のおぞましい天女使いに付け狙われている身である。まるでマーキングでもするようにかかった呪いが麒麟の加護と混じって彼女の髪色を不思議に移ろわせている。
「てことで今日は前衛頑張るよ! こんなところでおしまいなんて嫌だものね!」
「ええ――!」
 桜華の能力はこと子鬼狩りにおいては優秀を極めた。
 いわば限定強化版エネミーサーチである。子鬼の位置や数が、こちらに気づいているか否かに関わらず把握できるのだ。あくまでなんとなくだが、子鬼たちの性質から考えればここまで分かっていれば充分である。
 桜華の進んで泥にまみれる性質と相まって、彼女は今や子鬼へのキリングマシーンと化していた。
 小さな横穴に隠れようと、土や毛皮をかぶって縮こまろうと、すべて見つけ出して銃殺し、たとえむかってこようとも斬り殺した。
 そんな彼女たちがたどり着いたのは、もう一人の子鬼大将。いわばこの巣を作り上げた『最初の子鬼』とも言うべき固体だった。
 その証拠に首から骨を用いたアクセサリーを下げ、周りには捧げ物が並んでいる。彼が子鬼たちに命令を下す存在だとわかるだろう。
「今宵の子鬼殺しはその血を望んでいるのだわ」
「気をつけて、こいつ強い」
 相手の強さを察したティスルはまず自らが子鬼大将へと突撃。
 剣に光の力を纏わせると、すさまじい斬撃でもって子鬼大将の肉体を破壊――するが、それを意に介さず強烈な打撃がティスルを襲った。
 地面に叩きつけられる。が、それこそが狙いであった。
「今ッ!」
 鋭く叫ぶティスルにこたえ、桜華は拳銃を連射しながら接近。
 振り下ろした棍棒をすぐには持ち上げられなかった子鬼大将はついには素手をかざして弾を防ごうとし、そうして出来た肉体的隙を突くように桜華の子鬼殺しが子鬼大将の首を切り取った。

 こうして、桜華たちは巣にのこるすべての子鬼を殺し尽くした。
 例え生まれたばかりの固体であっても、そのすべてを。
 二度と人里を害さぬように。二度と、誰も奪われないように。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――子鬼の巣を破壊しました。
 ――カナン村の安全は守られました。

PAGETOPPAGEBOTTOM