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シナリオ詳細

<Raven Battlecry>フフとプティと黒煙爆弾。或いは、ネフェルスト防衛戦…。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●乾いた風の吹く都
 乾いた風が吹き荒れる。
 美しきオアシスの都。そこは、ラサの首都である“夢の都ネフェルスト”。
 その場所へ向け、砂漠を走る馬車が1台。
 荷物を満載したそれは、どうやら商人の操る荷馬車のようだ。
「プティ! 連中は!? まだ追ってきていますかぁ?」
 馬に鞭打ち走らせる、青い髪の女性が叫ぶ。
 彼女の名は“フフ”。
 ラサを拠点として、各国を旅する若き女商人だ。
 荷馬車に載った小柄な少女は、瞳をすがめて背後を見やる。
「うん……来てる、よ。でも、目立ちすぎ。これじゃあ、すぐに迎撃されるよ? それに、わたしたちを追ってきている、っていうより……もしかしてラサを目指している?」
 小柄な少女の名はプティ。
 フフの行商に同行する参謀役である。
 
 フフ、そしてプティを追う盗賊の名は“大鴉盗賊団”
 つい最近、ラサで多く発見された小さな願いを叶える宝……色宝を狙う盗賊団だ。
 発見された“色宝”は、ネフェルストにて保管、管理をされている。
 それを強奪するために、盗賊たちは一斉に行動を開始したのだ。

 フフとプティがその事実に気づいたのは、ネフェルスト目前でのことだ。
 爆音。
 地響き。
 粉塵。
 そして、馬のいななき。
 馬車が傾き、倒れる寸前、フフは慌てて馬の走りを停止させる。
「フフ。車輪が壊れかけてる……スピード、出せないよ」
「えぇ、分かっているわぁ。でも、ここで止まるわけにもいかないでしょ?」
 困ったわぁ、と間延びした口調でフフはそう呟いた。
 一見するとさほど慌てたようには見えない彼女だが、内心では今にも叫び出しそうなほどに錯乱していた。
 爆音に驚き平静を失った馬。
 爆発に巻き込まれて、壊れかけの馬車。
 一部の積荷は燃えている。
 乗員は女が2人。護衛は無し。
 馬車と荷物を捨てて逃げても、すぐに盗賊に追いつかれてしまうだろう。
 捕らわれるのと、その場で切り殺されるのと、果たして楽なのはどちらだろうか。
 なんて、悲観的な未来像を思い描かずにはいられない。
「と、いうかぁ……爆弾が仕掛けられていたってことはぁ」
「盗賊の仲間が、既にネフェルストに潜り込んで、る?」
「可能性は高いかもぉ。この爆弾も、音や煙の割に威力は低かったみたいだしぃ」
「きっと……攪乱用の、爆弾」
 爆音と煙で、ネフェルストにいる警備隊の注意を砂漠に引きつける。
 その間に、盗賊たち……おそらく、フフとプティを追う者たち以外にも多くの別動隊が存在している……が、ネフェルストに襲撃をかける心算であろう。
 背後に迫る盗賊たちと、先ほどの爆発。
 そして、周囲の様子を伺いフフとプティは盗賊たちの思惑を、およそではあるが予想した。
 だからと言って、彼女たちに何が出来るわけもなく。
「ど、どうしましょう?」
「……フフの判断に、従う、よ?」
「え、えぇぇ~?」
 フフは左右に視線を振って、周囲の状況を把握した。
 きっと辺りには、ほかにも無数の爆弾が仕掛けられているだろう。
 それらを起爆させてしまえば盗賊たちの思う壺。
 また、威力が低い爆弾とはいえ、これ以上踏めば馬や馬車……自分たちの安全も危ういことが予想できた。
 はぁ、と一つ溜め息を零し……。
「迎え撃ちましょうかぁ。誰かが気づいて、助けに来てくれるかもぉ?」
「神頼みなんて、フフらしく、ないね」
「神になんて頼らないし、信じてないわぁ。私が信仰しているのは、私の頭脳と運だけよぉ」
 これでもツイてる方なのよぉ、なんて。
 そう言ってフフは、荷物の中から2丁のマスケット銃を取り出した。

●砂漠の花という名の爆弾
「大変大変、大変っすよみなさん! 作戦結構を少し速めて、迎撃に行くっす!」
 作戦本部に駆け込むなり、『パサジールルメスの少女』リヴィエール・ルメス(p3n000038)が腕を振り回して叫ぶ。
 それから彼女は、壁に貼られたネフェルストと、その周辺の地図を指さし告げる。
 指し示されたのは、街の西側。
 広大な砂漠の広がる区画であった。
「予定外っすよ。まさか、あっちの方向から商人が来るなんて!」

 盗賊たちの襲撃について、実のところリヴィエールたちは事前に情報を取得していた。
 当然、西の砂漠地帯に盗賊たちが大量の爆弾を埋めたことも知っている。
 襲撃に合わせ爆弾を起爆し、警備の攪乱に利用するつもりだったことも、当然……。
 爆発により撒き散らされるは【暗闇】と【窒息】状態を付与する膨大な量の黒煙だ。
 迂闊に迎撃に出れば、きっと甚大な被害を受けることだろう。
 しかし、事前に盗賊たちの作戦が判明しているのなら話は別だ。
 首都の郊外で待ち伏せし、爆弾を使わせることなく大鴉盗賊団を返り討ちにすることだって、本来ならば可能であった。
 そのための準備を進めていたイレギュラーズたちだったが、その作戦は2人の商人の来訪により破綻した。
「たぶん盗賊たちは、砂漠で待機しているところで商人たちと遭遇したんっすね」
 フフとプティがネフェルストに辿り着けば、盗賊たちの隠れ家がリヴィエールたちに伝わってしまう。
 それを危惧した盗賊たちはフフとプティを追いかけた。
 捕らえて、口封じを行うつもりだったのだろう。
 ともすると、捕らえた2人を誰かに売り飛ばす、なんてことも計画していたのかもしれない。
 けれど、2人はネフェルスト近郊にまで逃げ切った。
 運悪く、盗賊たちの埋めた爆弾を踏んでしまったことで現在はその場で移動を止めているようだが……。
「ラサの民を見捨てるわけにはいかないっす。作戦を前倒すことになっちゃうっすけど、急いで2人を助けにいくっす!」
 リヴィエールの話で判明した情報は以下のようなことだった。
 フフとプティが立ち往生しているのは、爆弾の埋まっている地帯の中央部分。
 2人を襲う盗賊の数は20名ほど。全員が防塵マスクとゴーグルを装備している。
 内訳としては馬に乗った盗賊が17名。巨大な蛇に乗った盗賊が3名となる。
「フフとプティは銃器を手に抵抗中っす。辺りには爆弾が埋まっていることや、黒煙が漂っていることもあって、今のところ盗賊たちの攻撃も散発的な様子っす」
 足を止めた商人2人を討つために、視界の悪い中、地雷原に踏み込む必要は無いというわけだ。
 約1分ほどで黒煙は晴れる。
 それを待って、地雷を避けながら2人に接近しようという心算だろう。
「地雷を爆発させずに、2人の元に辿り着くのは不可能っすね。場所によっては結構密集して埋められているみたいっす」
 どこに埋まっているのかを、盗賊たちが知っているのかは現状不明とのことだ。
「盗賊たちの武器は【毒】の塗られた捕鯨銃や手槍っす。蛇に乗った指揮官たちは長槍っすね。【石化】や【狂気】に陥らせる薬物が塗布されているみたいっす」
 また、盗賊の乗る馬と違って、蛇の移動では地雷が誘爆しないらしい。
「1人ひとりは大した強さじゃないかもだけど、数と地雷が厄介っすよ!」
 なんて、言って。
 リヴィエールはイレギュラーズを送り出す。

GMコメント

●ミッション
盗賊の撃退&フフとプティの救出

●ターゲット
・騎蛇盗賊×3
大鴉盗賊団構成員。
地雷分隊の指揮官を務める。
騎乗した巨大な蛇は、とても静かに走るため砂漠に埋まった地雷を起爆させない。
武器に長槍を携えている。

薬物塗れの槍:物近単に大ダメージ、石化or狂気
 怪しい薬物の塗布された長槍。


・騎馬盗賊×17
大鴉盗賊団構成員。
馬に騎乗した盗賊たち。
捕鯨銃や手槍を装備している。

捕鯨銃:物遠単に小~中ダメージ、毒
手槍投擲:物中単に中ダメージ、毒
 毒の付与された武器による攻撃。

※盗賊たちはゴーグル&防塵マスクを装備している。おそらく黒煙対策だろう。


・地雷
砂漠に埋められた地雷。
踏むと爆発する。
威力は低いが爆音は大きく、また周囲に黒煙をまき散らす。
正確な数は不明だが、少なくとも20個は埋められている模様。

神中範に小ダメージ、暗闇、窒息



・フフ&プティ
フフは青髪の商人。
プティは赤茶色の髪の小柄な少女。
各地を旅する行商人。
積荷は主に民芸品や書物。
現在、ネフェルスト郊外の地雷原にて盗賊たちと交戦中。


●フィールド
砂漠の都“ネフェルスト”
西の郊外。砂漠地帯。
半径50メートルほどの範囲内に地雷が埋められている。
地雷原の中心部にフフとプティが孤立している。
2人の乗った馬車の車輪は破損しているようだ。


●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <Raven Battlecry>フフとプティと黒煙爆弾。或いは、ネフェルスト防衛戦…。完了
  • GM名病み月
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年12月13日 22時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
アレフ(p3p000794)
純なる気配
ソア(p3p007025)
雷虎
チェルシー・ミストルフィン(p3p007243)
トリックコントローラー
雪村 沙月(p3p007273)
月下美人
しにゃこ(p3p008456)
可愛いもの好き
バスティス・ナイア(p3p008666)
猫神様の気まぐれ
藪蛇 華魂(p3p009350)
殺した数>生かした数

リプレイ

●濛々たる黒煙
 乾いた風が吹き荒れる。
 濛々とした黒煙が舞う。
 夢の都ネフェルストの郊外にて、1台の馬車を囲む盗賊たちがいた。
 盗賊の数は全部で20。うち3名は、巨大な蛇に騎乗している。
 手に武器を持つ彼らが狙うは、馬車に乗った2人の商人。
 彼女たちの名はフフとプティ。
 砂漠に潜んだ盗賊たちを偶然見つけてしまったことから、こうして命を狙われていた。

 馬車を停めたフフとプティの周囲には、黒い煙が漂っている。
 煙の発生源は、前もって盗賊たちが砂中に埋めた地雷であった。
 その地雷は、大鴉盗賊団によるネフェルスト襲撃作戦の際に使用されるはずだったものだ。しかし、フフとプティが誤って踏んでしまったことで、その計画は既に御破算となっている。
「フフ。敵、たくさん……」
 マスケット銃を構えたプティが告げる。
 小柄な少女だ。記憶力に優れた彼女は、フフの良き相談役であり参謀でもある。つまるところ担当は頭脳労働ということで、当然のように荒事の経験など無いに等しい。
 非力なせいか、銃弾を1発撃つだけで、反動によって手がしびれるなどするほどだ。
「分かってるわぁ。分かってるけどぉ、逃げられないしぃ」
 なんて、間延びした声で応答するのは青い髪の女性であった。
 彼女の名はフフ。ラサ近郊を主な拠点とする行商人だ。
「あぁもぉ~、こんなことになるのなら、近道なんてするんじゃなかったぁ」
 などと後悔したところで既に手遅れ。
 大鴉盗賊団の不穏な動きを察知して、フフは本来の旅路を変えて砂漠を進んだ。砂漠を超えれば、予定よりも大幅に早くネフェルストに到達できるからだ。
 けれど、その選択が不味かった。
 フフの選んだルート上に、運悪く件の大鴉盗賊団が潜伏していたのだから。
「ツイてないのかしらぁ、私ってぇ?」
「死んだら、ツイてなかったってことで……もし生き延びれたら、それはツイてるってことだよ」
 なんて、軽口で応じるプティの顔は青ざめている。
 そんな彼女を一瞥し、フフはきつく唇を噛んだ。
「そうねぇ。それじゃあ、やれるだけやってみましょうかぁ」
 ガチャリ、とマスケットに弾丸を込め、フフは引き金を引き絞る。
 そして放たれた弾丸は、けれど盗賊には当たらない。
「おいおい、どこ狙ってんだ、姉ちゃん!」
 盗賊の1人が嘲った。
 その手に握った捕鯨銃をフフへと向けて、彼は下卑た笑みを浮かべる。
「狙撃ってのは、こうやるんだぜ!」
 と、そう告げて盗賊は捕鯨銃のトリガーを引く。
 その、瞬間……。
 火薬の弾ける音が響いて、盗賊の肩を1発の弾丸が撃ち抜いた。
「それで、狙撃ってのはどうやるんですかっ!」
 痛みに呻く盗賊に向け、そう告げたのは『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)であった。

●砂塵舞う戦場
 桃色の髪に小さな身体。頭頂にあるハイエナの耳。
 見覚えのある姿と、元気に過ぎる大音声には覚えがあった。
「あ……しにゃっこさん」
「しにゃっこ!? いや、ちょっと違くって、神の如き可愛さのしにゃこです! 助けに来ましたよー! っていうか、フフさんプティさんも中々巻き込まれ体質ですね……」
 プティの呟きに返答しながら、しにゃこはふわりと宙を飛ぶ。
 ハイエナなのに、飛んでいた。
「ちっ……もう出てきやがったか。こうなっちゃ仕方ねぇ。おい、街に乗り込むぞ!」
 こうなってしまえば、もはや作戦も何もあったものではないのだろう。
 蛇に乗った盗賊が、手下たちへ向けそう叫ぶ。
 その声に従い、数名が即座に馬の鼻先をネフェルストへと旋回させた。
 けれど、しかし……。
「そうはさせません。作戦内容が少し変わろうとも目指す所は同じ……盗賊は根絶やしにしてさしあげましょう」
 金の髪を風に躍らせ、盗賊たちの眼前に立ちはだかるは『月下美人』雪村 沙月(p3p007273)。
 そして『雷虎』ソア(p3p007025)である。
「お待たせしたね、イレギュラーズだよ! さぁ、ボクたちが来たからにはもう大丈夫!」
 紫電を纏う拳を握り、ソアは姿勢を低くした。
 その様はまさに、獲物に襲いかかる寸前の獣のごとく。
 舌打ちを零して、盗賊の1人が捕鯨銃の引き金を引く。
 そして、放たれた毒矢はしかし、2人の身には届かない。
「ドラマ! こいつらを片付けて少女達を護るわよ!」
 宙を疾駆する剣刃が、その矢を切り裂き叩き落した。
 紅色に光るそれを操っているのは『片翼の魔剣』チェルシー・ミストルフィン(p3p007243)。 飛行する彼女は、仲間たちの進路を切り開くべく、数本の刃を展開させる。
 盗賊たちが動揺しているその隙を突き、沙月とソアは駆け出した。
 流れるように歩を進め、沙月は手刀を一閃させる。
 接近から攻撃につながる一連の動作を騎馬盗賊は察知できずに、その胴を薙ぎ払われた。落馬した盗賊に向け、獣のごとくソアが迫った。
「ぐっ、調子に乗りやがって!」
 盗賊の繰り出す短槍が、ソアの頬を掠めて裂いた。
 槍に塗布された毒液がソアの身を侵す。
 けれど、しかし……。
「こんな毒、効くもんか!」
 その身に紫電を纏ったソアが、大上段から拳を振るう。
 渾身の殴打が盗賊の顔面を激しく殴打。
 へし折れた歯と、噴いた鼻血が飛び散った。
 
 チェルシーの合図を受けて『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)が地面を走る。
 魔女に似た装いの彼女の顔は、ゴーグルと防塵マスクに覆われていた。
 盗賊たちには目もくれず、走る彼女はただ一直線にフフとプティの元へと向かう。
「あっ? おい、正気か? 地雷原に突っ込んでいきやがった」
「放っておけよ。勝手に爆死してくれるってんなら、手間が省けていいじゃねぇか。それに、もし生きてたところで、黒煙に撒かれりゃ動きも止まる」
 そこを狙い撃ってやるのさ。
 なんて、言って蛇に乗った盗賊が手にした長槍を構えてみせた。
 直後、ドラマの足元で地雷が起爆。
 辺りに黒煙と爆炎をまき散らす。
 けれど、ドラマは止まらない。その身に火傷を負いながらも、黒煙の中を突っ切ったのだ。
 ドラマの足元で次々と爆弾が爆ぜていく。
 その様子を見て、盗賊たちは彼女の意図を理解した。
「……この依頼が終わったら、念入りに砂や汚れを落とさないと、ですね」
 フフとプティが停まっているのは、周囲に地雷が埋められているからだ。
 ならばそれを、全部爆発させてしまえば安全なルートを確保できる。
「素晴らしいご活躍ぶりでございます。ええ、これは小生も劇薬…おっと回復薬で応援しなければなりませんねぇ。腕がなりますねぇ〜」
 駆けるドラマの後を追い、『殺した数>生かした数』藪蛇 華魂(p3p009350)が黒煙の中を駆け抜ける。
 その手に握るはカラフルなステッキ。
 先端に飾りの付いたそれは、魔法少女の杖と呼ぶのが相応しいか。よくよく見れば、血のような染みが付着しているのが分かる。
 キラキラと輝く燐光を散らし、華魂はそれをゆるりと振った。
 飛び散る燐光の向かう先にはドラマの姿。
 癒しの光を浴びながら、ドラマは次の地雷を踏んだ。

 黒煙の中に奔る閃光。
「私が神罰を、というと中々皮肉な物だが──受けよ、我が洗礼」
『純なる気配』アレフ(p3p000794)の放った魔力光に飲まれ、騎馬盗賊が悲鳴を上げた。
 アレフの背には光の翼。フフとプティを狙う者から順番に、閃光を浴びせているようだ。
 そんな彼に音もなく迫る影が3つ。
 しゅるり、と黒煙の中で蠢くそれは巨大な蛇だ。
「そこらの雑魚とは違うようだな。しかし、状況は決して良くは無いが最悪という訳でも無い。フフとプティの両名が敵の手に落ちていないだけマシという感じか……」
 盗賊たちの一部が、今なお2人を狙っているのは彼女たちを捕らえるためだ。護衛対象であるフフとプティを人質にされてしまっては、イレギュラーズは十全な行動を取れなくなってしまうだろう。
 黒煙の中、一瞬見えた蛇に向けアレフは魔弾を撃ち出すが……。
「狙いはいいが、読みは浅いな」
 アレフの魔弾が射貫いたそれは蛇の尾だった。
 背後から聞こえる微かな囁き。
 直後、アレフの背に激痛が走る。
 黒煙の中、背後から槍で貫かれたのだ。
「邪魔をしなければ、長生きできたものを……今からでも遅くはない。我らを色宝のもとまで案内するのなら、生かしてやるぞ」
 アレフの周囲を囲むのは、蛇に乗った3人の盗賊たちだった。
 黒煙に紛れ、彼らはアレフの元へ……否、おそらくはフフとプティのもとへと向かっていたのだろう。
「……いや、悪いが遠慮させてもらおう」
 そう吐き捨ててアレフは笑う。
「そうか」
 それ以上、交渉を続けることもなく盗賊はアレフに向けて槍を放った。
 その、瞬間……。
「そんなに色宝が欲しいの? 願望器に頼らない生き方こそが、往々にして穏やかに過ごせるものなのにね」
 黒煙を払い飛来する影。
『猫神様の気まぐれ』バスティス・ナイア(p3p008666)は、躊躇なく槍の前に身を投げ出すと、アレフに向けて腕を伸ばした。
 バスティスの背を槍が抉った。
 褐色の肌を血に濡らしながら、バスティスは墜落。しかし、アレフの手を離しはしない。
 アレフを引き摺るようにして、地面を転がる彼女の周囲を燐光が舞った。
 リィン、と空気が振るえる音がする。
 降り注ぐ淡い光が、バスティスとアレフの傷を癒した。
「ちっ……」
 舌打ちを零し、騎蛇盗賊の1人がアレフとバスティスを追う。
 残る2人は、音もなく黒煙の中に姿を晦ませた。

 黒煙を突き抜け、真っ先にフフ&プティと合流したのはドラマであった。
 彼女が踏み抜いた地雷によって、周囲はすっかり黒煙に覆い隠されている。
 黒煙の中から響く戦闘音。そして、馬の駆ける音。
 暴れる馬が地雷を踏んだのか、どこか遠くで爆音が響いた。
「予想はしていたけれど、ある程度乱戦状態になるのは避けられないですね……」
 頬を濡らす血を拭い、ドラマはそう呟いた。
 ドラマに続き、現れたのは華魂である。耳を抑えて顔を顰める華魂の手には1枚の符があった。治癒の力を込めたその符を、華魂はドラマの背にそっと押し付ける。
「さて、お嬢さん方を保護した後は回復しつつ安全なところへ撤退……と、いきたいのですが」
 すぐには難しそうですね、と。
 耳を抑えて華魂は言った。爆音の轟く中を駆け抜けたせいで、少々聴力に異常が出ているようである。
「しかし、悠長にしている時間はないですよ? 退路を塞がれても面倒ですし、ここはしにゃが前に出ましょう!」
「敵の数は多いけれど、これだけいれば、切り抜ける事は出来るよね」
「荷物と馬車は一旦諦めてもらう必要があるがな……この場を切り抜ける為だ。お互い、無事に生き残る為にも協力してくれ」
 ドラマと華魂に続き、しにゃこ、バスティス、アレフの3名もフフたちと合流。
 頭数が増えたことで、黒煙の中を突破する算段も付いた。
「えっとぉ……荷物と馬車はこの際、仕方ないとしてぇ」
「地雷が埋まっている……はず」
 不安そうな表情を浮かべるフフとプティの問いかけに、バスティスは得意げな笑みを返した。
「大丈夫あたし達に任せて」
 多少の傷なら治療をしよう。
 盗賊たちは排除しながら進めばいい。
 黒煙の中、退路を確保するために沙月やソア、チェルシーが盗賊と戦っている。
「ドラマ! 合流できたのなら、急いで撤退してちょうだい! 安全が確保できたら、こいつら纏めて、砂漠のサボテンの栄養にしてあげるから!!」
 黒煙の中で響くチェルシーの叫び声。
 それを聞いて、ドラマはくっくと肩を揺らした。
「友人もあぁ言っていますから。急いで安全な場所に逃げちゃいましょう」
 なんて、言って。
 疲労にふらつくプティに向けて、ドラマはそっと手を差し伸べた。

●撤退開始
 騎蛇盗賊の繰り出した槍が、チェルシーの肩を刺し貫いた。
 槍に塗布された毒が血管を通ってチェルシーの全身を駆け巡る。しかし、チェルシーはにぃと笑うと、腕を掲げる。
 その腕に宿る膨大な魔力を危惧してか、盗賊は素早く黒煙の中に身を潜らせた。
「BS無効だからね、その程度の薬は気持ちイイだけよ」
 チェルシーの放った魔力の砲が、黒煙を貫き霧散させた。
 騎蛇盗賊には命中しなかったようだが、潜んでいた数名の騎馬盗賊がそれによってダメージを受ける。
「でも、煙は晴れたわ」
モブ盗賊は、あく! と叫んだチェルシーは翼の魔剣を無数に複製。それらを流星のごとく解き放った。

 フフとプティを引き攣れて、一行は街へと向けて駆けていく。
 道中を阻む盗賊へ向け、ドラマとアレフが閃光を放った。
 光に焼かれた盗賊たちが踏鞴を踏んで立ち止まる。そんな彼らを押しのけるようにして、血塗れの蛇と、それに跨る盗賊が疾駆する。
 全身に負った裂傷は、チェルシーによってつけられたものだ。
「攻撃手段を削いでいきましょう!」
「敵は手負いだ。逃がす手はないな」 
 ドラマが前進するのに合わせ、アレフは後退。
 光の翼を広げたアレフは油断なく周囲に視線を走らせた。
「ここはしにゃたちに任せて、お2人は無理せず身を守ることに専念を!」
「多少の傷ならすぐに治癒してあげるから、安心して戦ってきてね!」
 ライフルを構えたしにゃこと、回復術の行使に移るバスティスがフフとプティの左右を固める。 黒煙に紛れ接近した盗賊を、しにゃこの放った弾丸が撃ち抜いた。

 駆けるドラマと騎蛇盗賊が交差する。
 一閃、振り抜かれた槍の先端がドラマの腹部を深く切り裂く。
 血に濡れた腹を抑え、蹲るドラマ。
「……ぐ、ぉ?」
 しかし、苦悶の声を零したのは騎蛇盗賊の方だった。
 盗賊の肌に浮かんだ黒痣は、ドラマの行使した【イクリプス】によるものだ。傷を負ったドラマの頭上に、ひらひらと降り注ぐ燐光。
 バスティスによる回復術が、ドラマの傷を治療する。
「…………」
 歯を食いしばり、騎蛇盗賊が槍を構えた。
 まだ戦いを続けるつもりなのだろう。
 けれど、しかし……。
「あぁ……これは出来れば使いたくなかったのですがねぇ」
 トス、と。
 軽い音を立て、盗賊の首に1本の注射器が突き刺さる。それを放ったのは華魂だ。人体に有害な薬物を投与された結果か、盗賊は意識を失い地に伏した。

 槍と拳が打ち合う度に、周囲に鮮血が飛び散った。
 至近距離での高速戦闘。沙月と騎蛇盗賊の戦闘は激化の一途をたどっていた。
 沙月の手刀が盗賊の腹部を強打する。
 盗賊の槍が沙月の太ももを深く抉った。
 手刀と槍とが激しくぶつかり、2人は同時に後方へと跳ぶ。
 着地と同時に、盗賊の乗った蛇が高くへ跳びあがった。
 合わせて沙月も地面を蹴ったが……。
「くっ……傷が」
 脚に負った傷のせいか、その跳躍は不十分。頭上を取られる形となって……。
「なかなか手こずらせてくれたな」
 蛇上からの刺突によって、沙月は地面に叩き落される。

 ソアの爪が蛇の片目を鋭く裂いた。
 悲鳴を上げる蛇の上から、盗賊は振り落とされる。砂を散らし、地面を転がる盗賊へ向け、獣のごとき機敏さでソアは駆け寄る。
「命までは奪わないよ。捕まって、ネフェルストの法で裁かれて!」
 毒の塗布された武器も、視界を覆う黒煙も、ソアにとっては大した脅威足り得ない。
 ただ1点、手間に感じる事象があるとするならば、それは盗賊たちの乗った馬や蛇たちの存在だった。
 相手がそれらに騎乗している以上、フフやプティが走って逃げきることは出来ない。
 しかし、先の攻防で目を裂かれた蛇は、おそらくもう使い物にならないだろう。地面に落ちた以上、盗賊ももはや脅威足り得ない。
「さっさと片付けて、沙月さんを……いや、大丈夫そうだね」
 先ほど、地面に叩きつけられた沙月だが【パンドラ】を消費し既に戦線に復帰していた。
 彼女が続けて2度も不覚を取ることはないだろう。
 となれば、ソアの役割は……。
「残る幹部はアナタだけだよ!」
 紫電の軌跡を描いて跳んだ。
 その様はまるで地上を走る雷。
「な、はやっ……」
 最後まで言葉を発することはなく。
 盗賊の胸部を、ソアの爪が深く抉った。

 徒手空拳。
 されどその一閃は、斬撃にも似た冴えを見せた。
 盗賊の意識を刈り取った沙月は、血振るいのごとく腕を払う。
 ふらり、とよろける沙月の肩を支えたのはしにゃこであった。
「お疲れ様ですっ! さぁ、盗賊たちの腰が引けている隙に、急いで街に戻りましょう!」
 なんて、叫んでしにゃこは駆ける。
 進路を塞ぐ盗賊たちを鉛の弾で牽制しながら、強引に帰路を切り開いた。

成否

成功

MVP

ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでした。
フフとプティは無事に救助されました。
盗賊幹部3名は捕縛。他、騎馬盗賊も半数近くが捕縛されました。
依頼は成功となります。

この度はご参加ありがとうございました。
また、縁があれば別の依頼でお会いしましょう。

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