シナリオ詳細
大怪獣ギョワスVS特異運命座標
オープニング
●破 壊 神 降 臨
14:42 ジャポネス国 首都キョートウ上空。
雲を切り裂くように鋭く4機の戦闘機が空を駆け、現場へと急行している。
「こちらA28部隊。緊急避難区域の境界を突破。目標確認後、速やかに戦闘行動を開始します」
3機を率いるように隊列の前を行くのは隊長機。パイロットの凛子は無線を取る手を震わせた。
眼下に広がる焼け野原と瓦礫の山。首都のシンボルだったキョートウタワーは半ばで大きく折れ曲がり、ヤツの寝床と化している。
大怪獣ギョワス。それはある日突然、人類に降りかかった未曽有の厄災。
北海より突如現れ、瞬く間に街を火の海に沈めた化け物は徐々に南下。防衛隊の攻撃を振り切り、ついに首都へ侵攻するに至ったのだ。
しかし防衛隊もただ犠牲を出し続けてきた訳ではない。幾度も大怪獣と衝突するたび収集した戦闘データで、始めてヤツに有効とされる麻酔弾を開発したのだ。
これさえヤツに撃ち込む事ができれば、キョワスの体細胞を内側から沈め、人類は勝利するだろう。しかし失敗してしまえば、この国に残された自衛手段は最早――ない。
(私達の肩に、ジャポネスの全てがかかっている……なんて重い任務なのかしら)
『おいおい、なにシケたツラしてるんだ隊長。ピンチの時ほど笑顔でいこうぜ!』
唐突に無線から軽薄な声が届く。部下のスコットだ。ギョワスという厄災さえ無ければ、彼は今頃、出身国で婚約者と挙式をあげている筈だった。
ジャポネスを救いたい。
その一心で彼は帰国を踏みとどまり、最前線へ立ってくれているのだ。
「ありがとう、スコット。そうだな……私達に憂いはない。人智を尽くしたこの麻酔弾と頼れる仲間がいれば、何も迷う事はない!」
●この戦いで、すべてが終わる。
「ギョワ―――ン!!!」
その時、大地を揺るがす咆哮が響いた。現れたる人類の脅威、ギョワス!
「フォーメーションP! 各位、散開せよ!」
『了解。ここが正念場だ!』
『任せてください、隊長ッ!』
他の部下も気合と共に戦闘態勢をとる。ゴツゴツした表皮を散弾で砕き麻酔弾を喰らわせるのだ!
「命中! 続けて撃て!」
『ギョワスの左肩に損傷あり! 麻酔弾、いけますッ!』
『お注射の時間だぜ、ギョワスちゃんよぉッ!!』
立ちのぼる爆炎と粉塵。麻酔弾も命中し、作戦は成功した――はずだった。
『ギョワス、沈黙せず! 弾幕の中で熱源がうごめいて……よ、4つに分離しました!』
『バカな!? 信じられん!』
突如、煙を裂いて放たれた一筋の光。躱し切れず戦闘機が一機、左翼に大きく被弾する。
「スコット、高度を上げろッ! スコット――ッ!!」
『……そんな顔すんなよ、隊長。最後くらいアンタは、笑って――』
墜落し、煙を上げるスコットの戦闘機。終焉の足音が聞こえた。視界が晴れるとそこには、4体に増えた大怪獣。
『たった1体でさえ、倒せずにいたのに……』
「――ッ! 狼狽えるな、悲しむな!スコットの死を無駄にしたくなければ、前を向くの!!」
そうだ。私達は諦めない。諦めてはいけない! 涙ながらに前を向く凛子。その前に――奇跡は降った。
遥か彼方。上空に4つの星がキラリと輝き、ギョワスの前へ着弾する!
この異世界を救おうと馳せ参じた、異界の巨神――その名は、特異運命座標!!
●来たぞ、我らの特異運命座標
「――という訳で、今回は大怪獣を倒してきて欲しいんだ! 敵はざっと、40メートル規模かな」
特撮映画の台本を握りながら、『境界案内人』神郷 蒼矢(しんごう あおや)は目を輝かせて語る。特異な見た目をしているが、この一冊もまたライブノベルの世界なのだ。
「そんな大きなものどうやって倒すの? って思うかもしれないけど、そこは大丈夫!
異世界へ渡る時に『巨大化の魔法』をかけてあげるから……あ、効果時間は有限だから、そこだけ気を付けて戦ってね!」
- 大怪獣ギョワスVS特異運命座標完了
- NM名芳董
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年12月27日 22時01分
- 参加人数4/4人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●
『こちら本部! A28部隊、何があった?!至急、状況説明を!』
眩い4つの星が目の前に着弾し、粉塵が巻き上がる。あまりの衝撃に揺れる大地。無線から響く上官の声に、兵藤は呆然としながらも声をふり絞った。
「上空より4つの飛来物が着弾。新たな生体反応を確認。あれは……」
信じがたい光景が広がる。幼い頃、夢中になって見ていた特撮ヒーロー。ピンチの時に颯爽と現れ、星を守るため死力を尽くす。テレビではあれを何と言っていただろうか。そうーー。
「希望の巨人!!」
●
「見たところ練達に少し似ているか……本当に様々な世界があるものだな。そして脅威もまた、様々か」
初めて降り立ったライブノベルの異世界にユリウス=フォン=モルゲンレーテ(p3p009228)は戸惑いを隠せない。事前に境界案内人から説明を受けていたものの、想像と現実でやはりギャップは生じるものだ。普段するような何気ない仕草でも、巨大化した身体の質量ゆえか大きな力の巡りを感じる。
「わー!! すごいすごい!!あたしおっきいー!!」
真面目なユリウスのすぐ隣で、ずしーん! ずしーん!!と大きな地鳴りと揺れが起こった。『ぬくぬくしてたい』リュリュー(p3p009320)は奔放に、普段はあり得ない巨大化した姿を楽しんでいるようだった。ぴょんぴょんと跳ねまわっている彼女の襟首を、悪戯する猫を捕まえるかのように『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)が掴む。
「はしゃぐ気持ちは分からんでもないが、あまり跳ねると街に被害が出るぞ」
「あっ、そっか! 世界君冴えてるー!」
純粋なリュリューの褒め言葉に世界はさり気なく視線を逸らした。
……言えるものか。事件が片付いた暁には、お礼としてこの世のお菓子を戴こう等と思っているとは。ふと足元に視線を向けると甘味屋があった。名物はお汁粉の様である。
(この区域は潰さないように立ち回るとするか……)
「それにしても、まさか混沌で特撮っていう単語が出てくるとは……あ、此処は境界だから混沌じゃないんだっけ?」
無辜なる混沌と、果ての迷宮第十層に生じた枝葉『境界図書館』。その関係性を掴めずとも漠然と"繋がったもの"と恩恵を享受する者は多い。『陽の宝物』星影 昼顔(p3p009259)はこれまで幾つもの異世界を依頼を通して渡り歩いて来たが、向かう度に様々な彩を見せるライブノベルという存在に少なからず興味を抱き初めていた。
「普段と勝手が違う部分もあるが、敵も同じ大きさならやりようはあるさ。ところで……先程から貴公は何故、顔を隠している?」
ユリウスの鋭い指摘にギクリ、と朝顔が肩を跳ねさせて恐る恐る顔を覆っていた両手下ろす。
「特に意味はないけれど、巨大化しているのに生身でいる事が僕の何かが許せないんだ……だから」
せめて仮面くらいは付けたい、なんて思っていたらーーいつの間にやら朝顔の顔には、白銀に白と赤のラインが入った鉄仮面!
「おぉ、プルトラマン! プルトラマンじゃないか!!」
「世界君は知ってるの? あのマスク」
「子供の頃、あのヒーローが出てくる番組に触発されて、腕でL字を作ったり変わった紅白帽の被り方をする奴を見たりした」
「懐かしいけど、自分が着けるとなるとちょっと恥ずかしいな」
「そういえば、アレも巨大な怪獣と巨大なヒトが戦う話だったか。ただ戦える時間に制限があってーー」
はた、とそこで4人の動きが止まる。
「はしゃいでるとこじゃなかった! サイズが元に戻っちゃう前に倒さなきゃ!」
大翼を広げ、慌てた様子で空へ飛び上がるリュリュー。それを契機に各々がギョワスの方へと駆け、かくして大乱闘は始まった。
●
――3分。誰が言い始めたかは記憶にないが、ユリウスは巨大化の力をせいぜいもってそのくらいだろうと見積もっていた。
「こちらは4人、敵も4体、特に他に案が無ければそれぞれ1体を相手にすればよいだろうか」
「意義なしだよ。短期決戦狙いでさっさと倒したい」
巨大化しても立ち回りで焦る事はなく、朝顔は一振りの刀を構える。ふわり、その時一迅の風が吹き抜けた。黎明恵風――彼の刀が、軍師の才が、そして絆が。仲間を支えようと力を送る。
「……風よ、吹いて。皆に恵みを齎す為に!」
漲る力を確かめるように拳を握り、ニッと笑む世界。今なら1人1体と言わず、10体でも捌ききれるーーそんな自信が湧いてくる。
「最初からフル稼働、最大戦速……(想定)時間制限までの180秒でケリをつける!」
ギョワ―ン!!
怪獣の咆哮が木霊する。ギョワスの口から放たれたビームは、向かってくる世界の頬を掠めた。
「ビームやら何やらノリで出せるらしいが、何でもアリだからこそ通用する技がある。それは――」
振りかぶる右手。ギョワスは再び口を開けるが、エネルギーを集約する隙を世界は勿論見逃さない!
「拳だ!!」
ガコォン! ギョワアアァ!
勝ち筋はやはり暴力……すべてを解決する万能な手段! 殴りつけられた拍子にギョワスのビームは口の中で暴発し、大きな爆発と共に怪獣は自滅した。すぐさま追撃の蹴りを喰らわせ、仕上げとばかりに虚空へ描く白蛇の陣。
「悪いが、さっさと片付けさせてもらう」
召喚者が巨大化していれば、現れる蛇も相応に大きく。さながら世界蛇のような巨大さと迫力で、毒牙でギョワスを引き裂いた!
「凄い……ギョワスをあんなにも容易く倒すなんて!」
状況を伺っていた兵藤の声に興奮が混じる。この調子で残りの3体も倒す事が出来れば、或いは――。
『ははっ、やっぱりアンタは笑顔がよく似合うな』
無線から聞こえた声に面食らう彼女。その横をすれ違い滑空するのは、撃墜された筈の機体だ。
「スコット! 生きていたのね!」
『アメイジングだろ? 不思議な風がまた、俺を空に還してくれたのさ』
ちら、とスコットはコックピットから朝顔を見上げる。仮面越しでも伝わる想い。
「誰も死なず、壊さずでいたい。これは守るための戦いなんだ!」
鋭くなった爪と牙で、彼はギョワスに襲いかかる。狙うは尻尾。あれを振り回され続ける限り、広範囲に被害が広がる一方だと悟ったからだ。ズバッ! と豪快に尾を切られ、バランスを大きく崩したギョワス。反撃にくり出されたビームは朝顔へ真っすぐと向かい――じゅうッ! と焼ける臭いと共に煙がたちのぼる。
(……? あれ、痛くない……?)
被弾した、と思い強く瞼を閉じていた朝顔。しかし攻撃を受けたのは彼ではなく、庇おうと立ちはだかったユリウスだ。
「ユリウス氏! どうして……!」
「貴公と同じだ。誰も失わせるつもりはない」
ユリウスは考える。我々が手助けできるのはこの場限り、この世界のこれからを守って行くのは、今この空を飛んでいる彼らの仕事だ。一人たりとも失わせるつもりはない。
そして特異運命座標もまた、数多の世界の救い手だ。助ける事が出来るなら、躊躇わず救いの手を差し伸べる。
誇り高く、高潔に――それが名門貴族の誇りだ。怪我を負っても眉一つひそめず、ユリウスは果敢にギョワスへ立ち向かう。
「思い出せ、ここに来る前の事を。私達には"彼"の助言があった筈だ」
「彼? ……あっ!」
――特撮にはさぁ、お約束の大技があるんだよね!
この世界へ降り立つ前、興奮気味に拳を握りながら蒼矢が語っていたお約束。そのうちのひとつを想い出し、朝顔は戸惑いながらも腕を十字に構える。
(いくらお約束って言っても、いきなりビームなんて……)
ズビビビビ!!
「!?」
放たれた閃光が派手にギョワスへ着弾、爆砕!! ぽかーんとしている朝顔を横切り、リュリューが更なる強襲をかける。狙うはビームを放とうとする、3匹目のギョワスだ。
「面白そうっ! あたしも真似しちゃうよ!」
口を開けるリュリュー。その口内に光が灯り、放たれた緑色のビームがギョワスのビームを相殺しきる! 怪獣が二発目を撃つ前に、彼女は息を吸い込んでーー。
「ぐぎゃあ!!」
ギョワスの鳴き声を圧倒する大声。この奇襲には流石の怪獣も思考を止めた。その隙にと、怯んだギョワスへ彼女は鮮やかな格闘コンボをキメる。
攻撃は最大の防御なり。敵に反撃の隙を与えないようにと立ち回り、大口を開けてガブリ! と鋭い牙でギョワスの首筋に齧り付く!
「っっ~!? かったい!まずい!噛みつくのなーし!」
大穴を開けるつもりが、とんだ誤算だ。八つ当たりのパンチで水平線まで吹き飛ばし、ほぼ同時にピカーンピカーン、と明滅しはじめる胸のブローチ。猶予は無いが敵はあと1体。対峙しているのはユリウスだ。足を払い、倒れたギョワスへ馬乗りになった。
「これが……虐げられた民の怒りだッ!」
繰り出される拳で何度も、何度もギョワスを殴りつける!
「効いてそうだぞユリウス、あと少しだ!」
世界の声援を受けるユリウス。しかしギョワスも一方的にやられるつもりは無いと、起き上がり彼を跳ねのける。反撃とばかりに振り上げられた自慢の尻尾。重たいテールアタックを、ユリウスは――ガッシィ! と豪快に受け止め。
そのまま尻尾をガッチリ腋に挟んで固定し、己の身体を軸にブォン、ブォンと振り回し始めた!
これぞ特撮の大技――ジャイアントスウィング!!
「はあああぁっ!!」
遠心力を利用してブン投げられたギョワスは空へ豪快にふっ飛ばされ、遥か彼方、遠くの空でキラリと星になった。
「やった~、完全勝利っ! ……って、あれ?」
リュリューの姿が急激に縮み、世界がすかさず掬い上げる。
「あぁ~…もう小さくなっちゃった……。ちえ~…もうちょっと暴れたかったなあ~」
「俺だって謝礼にお汁粉を戴きたかったさ」
しかし、世が平和になれば颯爽と去るのがヒーローのお約束だ。空へと飛びあがり立ち去る4人。その背中に戦闘機乗り達は経緯を表し、啓礼した。
ありがとう希望の巨人。ありがとう特異運命座標!
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
特撮っぽい雰囲気を楽しんでいただければ幸いです!
●目標
ギョワス4体の討伐
●場所
特撮世界《ガワニナル―ン》
大怪獣や宇宙から襲来した悪の組織など、いろんな特撮っぽい悪役たちの脅威にさらされ続けている異世界です。
今回は大怪獣ギョワスがジャポネス国の首都・キョートウで暴れている様子。文化レベルは近代日本に近いのですが、大怪獣の脅威にさらされ壊滅状態です。
●特殊アイテム
大怪獣と戦うため、今回はご参加戴いている特異運命座標に境界案内人が『巨大化の魔法』をかけました。
だいたい全長40メートルくらい。案内人いわく、魔法は有限で切れてしまうまでに大怪獣を倒す必要があるとの事。
巨大化の魔法が切れそうになると、異世界へ来る前に配られた光るブローチが音や光で知らせてくれます。
●敵
大怪獣ギョワス
全長40メートルくらいの大怪獣。頑丈そうな表皮の茶色っぽいゴテゴテしたシルエットの怪物です。
口からビームを吐いたり、尻尾を振りまわして攻撃してきます。鳴き声はギョワ―――ン! です。
●登場人物
『境界案内人』神郷 蒼矢(しんごう あおや)
今回の依頼を特異運命座標に依頼した境界案内人。特撮けっこう大好きな方です。
空軍A28部隊隊長 兵藤 凛子(ひょうどう りんこ)
ジャポネス国の防衛隊に所属している戦闘機乗り。ギョワスを倒すため、部下を含めた3機の戦闘機で援護します。
上記の人物たちは特に大きく活躍する予定はありませんが、プレイングで呼び出されればサポートをしてくれるようです。
●その他
ビルを踏み潰せるほどの巨大な自分にビックリしたり、たった今考えたばかりの必殺技を叫んでノリでビームを出してみたり。
プレイング次第で派手に描写していきますので、思う存分特撮っぽいノリを楽しんで戴ければ幸いです!
それでは、よい旅路を!
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